中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

今さら聞けない 中学受験超入門 01 中学受験ってどんな世界?

先日ある保護者からこう聞かれました。

「私も夫も地方の公立出身なので、中学受験のことが全くわからないのです。東京ではみなさん塾に行かなくてはならないのですか?」

この世界にどっぷりと浸かっていて、すでに中学受験について様々な情報を持っている方とばかり接していると、この基本的なことをつい忘れていました。

中学受験は、全国的な行動様式でもなんでもないのですよね。だから、「中学受験っていったいどんな世界なんだ?」というのは至極当然の疑問だと思います。

そこで、これから何回かに分けて、中学受験の世界について書いていこうと思います。すでに塾に通われていたりご自身が中学受験経験者であったりする方にとっては、当たり前すぎる情報ばかりですので飛ばしていただいてかまいません。

 

1.中学受験は「父親の経財力」と「母親の狂気」?

みなさんは『二月の勝者-絶対合格の教室-』という中学受験を舞台とした漫画をお読みになったことはありますか? 人気漫画だったそうで、テレビドラマ化もされたそうです。その漫画の冒頭に、カリスマ塾講師が言い放ったセリフが、「君たちが合格できたのは、『父親の経済力』そして『母親の狂気』」なんだそうです。

なるほど、「言いえて妙だなあ」、とも思いますし、「ひどいなあ」とも思います。まあ漫画ですので、話を大げさに盛ることでインパクトを演出しているのはわかります。

ちなみに私はこの漫画は読んでいません。どちらかというと読みたくもないですね。こうした漫画やドラマが中学受験をどのように扱うかは予想がつきますので、読んで不愉快な気分になりたくはないのです。読んだ知人の塾関係者曰く、「なかなか内情が良く書けていた」そうですが。

 さて、このセリフには2つの気になるワードがありますね。「父親の経済力」と「母親の狂気」です。まずはこのあたりを考えてみたいと思います。

 

2.中学受験はお金がかかるのか?

 最初に気になるのはこの点でしょう。

「我が家は私立にいかせるほどお金に余裕がないですし」

「子どもが3人いますので」

「家を買ったばかりなのでローンが・・・」

「子どもを私立に行かせるために母親がパートに出る人が多いんですってね」

「無理してまで子供を私立に行かせてもねえ」

そんな声を聞いたことがあるかもしれません。

中学受験にはお金がかかるのか?

そう聞かれれば答えは、YESです。はい、お金がかかります。

かかる費用は以下の3点です。

 (1)塾代・・・授業料・講習費・テキスト・テスト代等

 (2)入試受験料

 (3)入学金・学費等

 (4)その他

では一つ一つ検証します。

 (1)塾代

塾によっては授業料・テキスト代・テスト代等が別費用であったり一緒だったりと様々です。オプション講座のようなものを設定することで、基本費用を安く見せかけている塾も多いですね。

塾費用

ざっとですが、4大集団指導塾の4年生~6年生の費用を比較してみました。普段の授業料・特別講習費・テスト代・テキスト代などを入れてありますが、まだ洩れがあるかもしれません。特別な生徒だけを集めて行う授業や合宿費は入れていません。

こうしてみると、日能研が最安なのは何となく予想どおりでしたが、SAPIXが最高値でないのが意外でした。早稲田アカデミーは様々な費用を別途請求されるため結果として最高値となっています。

他の塾を探せばもっと費用の安いところはいくらでもありますが、教育ばかりは安かろう悪かろうでは困りますので、3年間で250万~300万くらいは覚悟しておく必要がありそうです。

 (2)入試受験料(検定料)

 中学受験の場合、1校あたりの受験料は3万円程度です。さて出願校数はご家庭にもよりますが、5校~8校程度が平均だと思います。もちろん事前にすべての出願を行わずに、合否結果を見てから出願される方も多くいます。

1月校の受験で2校、2月1日~5日で5校、午後受験で2校、それくらいは普通に聞く話ですね。

さてこれが6校分出願したとして18万円となります。

 (3)入学金・学費

 まず入学金について、25万~90万とだいぶ幅があります。

そして授業料については、32万~93万と、これもずいぶん幅がありますね。

その他、施設費や旅行の積み立て、さらに制服代もかかります。ほとんどの学校で寄付金を募っており、5万円~30万となっています。

これだけ幅があるので、6年間のトータルとなると、450万~870万円と、倍近くの開きが生じてしまいます。費用の目安がつかみにくいですね。

そこで、東京・神奈川・千葉・埼玉の私立中高一貫校300校ほどの平均を計算してみました。

◆入学金・・・33万円

◆授業料・・・46万円

◆設備費・・・16万円

◆その他経費・・・39万円

◆初年度納入金・・・130万円

◆6年間のめやす・・・609万円

ということになりました。これには寄付金は入っていません。また強、高校にあがるときに入学金がかかるケースもありますので要注意です。

ざっくりといって、6年間で600万円は覚悟する必要がありそうです。

これが国公立だとどうでしょうか?

6年間のめやすの金額は、55万円程から174万円程度とずいぶん開きがあります。都立中高一貫校が高い傾向にあります。これも乱暴に40校ほどを平均すると、だいたい110万円になりました。国公立が安いのは、中学の間は義務教育のため授業料を徴収しないからです。

どうもこれらの費用については、大学付属校や新設校(リニューアル校)、「国際」を冠した学校が高い傾向にあるようです。たしかに最近の学校は施設が素晴らしいですからね。当然お金もかかっているのです。

上記計算は、あくまでも乱暴な概算ですので、一つの目安程度にお考えください。

ここまで見てくると、もう中学受験をする気力が失せてしまいますよね。

あまりにも高額です。

さらにあえて触れませんでしたが、修学旅行があります。

私立のおよそ2/3が国内で、奈良・京都など定番の行先です。費用は十万円台の半ばといったところでしょう。しかし、1/3が海外に行きます。行先はオーストラリア・ニュージーランドが人気だそうですが、費用は20万以上はかかるでしょう。

また、入学と同時に授業で使用するipadを全員が買うケースもあります。これも10万円くらいかかります。

※ご存じのように、東京都は高校完全無償化に踏み切りましたね。東京都在住の方の特権です。しかし、これがいつまで続くかは不明ですのでここでは取り上げません。

(4)塾代の節約法

 実は中学受験をするのに、塾は必須ではないのです。

どうもみなさんここのところを誤解されているようですね。

塾というのは、いわば教育のOutsourcingですから、利用すれば効率的ですし楽でもあります。しかし、ご家庭で真剣に取り組めば、塾無しでの中学受験は十分可能です。

下の記事にそのあたりの具体的な方法についてまとめてありますのでご覧ください。

 

peter-lws.hateblo.jp

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もちろん塾無しでの中学受験には、親の相当な努力が欠かせません。それをお金で解決するかどうか、ということなのだと思います。

 

(5)高校入試にもお金はかかる

中学受験をせずに公立中学に進学すると、全員が必ず高校受験をしなくてはなりません。そしてそのために皆高校受験の塾に通い始めるのです。

こちらも中学受験塾同様、塾に通わないで高校受験することは可能です。むしろ中学生にもなれば勉強は自主的にやるのが当たり前ですので、最初から塾に頼るという姿勢は良くないですよね。高校受験のほうが圧倒的に人数が多いので、市販の参考書類も充実しています。

 また、高校受験用の塾のほうが中学受験塾よりも費用が安いのも事実です。しかし、中学受験でも高校受験でも人件費も教材費も設備費用も変わるはずはないので、この費用が安い理由としては、

〇人件費が安い・・・教師に費用をかけていない

〇塾の授業時間数が短い

このどちらか、あるいは両方であることは考えなくてはなりません。

経験からいうと、中学受験より高校受験を担当する教師を育成するほうが簡単です。だって問題が易しいですから。これを言うと、知人の高校受験塾専門の先生が嫌な顔をするのですが、否定はしませんでした。もちろん、筑駒・開成・慶應女子といったトップ校をめざす生徒を指導する先生は高度なスキルをお持ちの方ばかりですが、地元の公立中学校定期試験対策を中心にした指導ならそんなに高度な授業は必要ありません。したがって教師育成費用も抑えられると思います。

 

以上中学受験とその後の通学にかかる費用を見てきましたが、結論としてはお金がかかると言わざるを得ません。ただし、その費用を「無駄」ととらえるのか、「必要なお金」ととらえるのかはご家庭の方針次第です。

金銭的に一番お得なのは、塾に行かずに国立(公立)中高一貫校に進学することですね。もしそれが実現できたら素晴らしい。

 

(6)大学入試に向けての費用

 多くの私立中高一貫校では、塾や予備校に行かなくても学内の勉強だけで大学入試に問題がないと言っています。これは真実でもありそうでもありません。

全ての中高一貫校にあてはまるともいえないのです。

しかし、多くの私立中高一貫校の教育内容を見ると、学校の勉強をしっかりやっているだけで、ある程度の大学進学は可能ではないかと思います。そこに+アルファの学習を塾・予備校で上乗せするだけでもかなりの成果が出ると思うのです。

 

冒頭に出した「母親の狂気」について書くつもりでしたが、だいぶ長くなってきましたので次回に回します。