中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】塾選びの羅針盤 吉祥寺編 ここは塾の激戦区



今回は、吉祥寺をとりあげてみます。

吉祥寺は、友人が何人か住んでいたため、よく遊んだ懐かしい街です。そういえば家庭教師をしていた高校生もこの町でした。

1.吉祥寺ってどんな町?

不動産情報サイト(SUUMO)の「住みたい街ランキング2024」では3位でした。その他の同様のランキングでも常に上位にランクインしています。確かに、商業地と住宅地が混然一体となったおもしろい街だと思います。

中央線と井の頭線ターミナル駅でもあり、またここを起点としたバス路線も豊富ですね。駅周辺は、昔ながらのアーケード商店街もあれば、駅ビルやデパートもあります。また、周辺には学校も多く点在しています。吉祥寺から徒歩やバス等でアクセスする学校としては、成蹊大学東京女子大学杏林大学・ICU・武蔵野大学日本獣医生命科学大学、さらに立教女学院・吉祥女子等の中高一貫校も近いですね。学生の街といってもいいでしょう。

そしてなんといっても井の頭公園。駅徒歩でこれだけの公園が広がっているのは素敵です。昔は、駅から井の頭公園に降りていく道の途中に焼き鳥屋さんがあって、よく行ったものでした。煙が道路まであふれてくるような活気のある店でしたね。何年か前に、久々に訪れたら、小ぎれいなビルに変わっていてびっくりしました。でも、味は変わりませんでしたよ。

 

2.吉祥寺にある塾

【集団指導】

〇栄光ゼミナール
駿台浜学園
〇アテナ進学ゼミ
Z会エクタス
〇トイズアカデミー
〇E-style
〇ena
〇エルカミノ
四谷大塚
日能研
〇ユリウス
早稲田アカデミー
〇栄光サイエンスラボ
〇受験ドクター
〇シグマTECH
〇LEO
〇スクールFC
SAPIX
〇グノーブル
〇武蔵野進学セミナー

【個別指導】
東京個別指導学院
〇ビザビ
〇TOMAS
〇プロ家庭教師の名門会
〇個別教室のトライ
〇城南コベッツ
〇さくら学習院
〇東京英才学院
〇レインボー学習会
〇個別指導専門教室アルファ
駿台個別教育センター
四谷学院
〇ceeds
ガロア
〇中学受験個別指導塾ドクター
〇プリバート
早稲田アカデミー個別進学館
〇さくらOne個別指導塾
〇ユニゼミ

いやあ、さすがにたくさんありますね。まだまだありそうですが、きりがないのでこれくらいにしておきます。集団指導塾にも、私が名前も知らない塾がありますね。個別指導塾については、小さなところは無数にありそうです。さすがに私も知らないところばかりです。

塾目線からいえば、吉祥寺は教室を展開したくなる街にはちがいありません。

◆商圏が広い・・・広く武蔵野エリアから生徒を集められます。

◆手頃な物件が多い・・・小規模塾・個別指導塾が出やすい雑居ビルがたくさんあります。

◆イメージが良い・・・これは塾にとっては重要です。大久保駅より代官山駅に出したほうが集客がよさそうだということです。(決して大久保を馬鹿にしているわけでは。)

 

3.集団指導塾ならどこを選ぶ?

〇4大塾

 いわゆる4大塾がそろい踏みですね。以前の記事でも書いたように、日能研四谷大塚SAPIX早稲田アカデミーのいずれを選んでも良いと思います。教材やカリキュラム・テストの信頼性が高いからです。また、母数も多いため、受験情報や志望校判定の精度にも期待が持てるでしょう。

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駿台浜学園

 首都圏で学生時代を過ごした方にとっては、駿台はビッグネームだと思います。かつては、大学受験予備校のトップとして名をはせていました。トップというのは、東大をはじめとする最難関大学への合格者がトップだったという意味です。駿台予備校の入校試験に合格するのは、早慶に合格するより難しいとまで噂されていましたね。実際にはそんなこともなかったのでしょうけれども。

しかし、高校生の現役志向が高まり、浪人生が減るにつれて、予備校の生き残り戦略が活性化します。といっても、打てる手はそう多くはありません。下の学年に触手を伸ばすしかないのです。現役高校生・中高一貫校生・高校受験・中学受験、そういったところに活路を見出そうとしたのですね。

駿台高校部・・・現役高校生大学受験
駿台中学部・・・高校受験
駿台個別教育センター
駿台国際部・・・帰国子女入試
駿台模試センター

こんなところでしょうか。

そして、中学受験に撃って出るために、2013年に関西の浜学園と提携したというわけです。

このニュースは、正直なところ私にとっては「?」なものでした。

なぜよりによって浜学園と?

浜学園といえば、1959年創業の関西における老舗の塾です。そして、灘中への合格実績を追求している塾でもあります。1992年に浜学園から独立した希学園と熾烈なバトルを繰り広げていることでも知られています。その希学園が2004年には東京に進出しましたので、もしかして焦りもあったのでしょうかね?

関西と首都圏では、中受人口も私立中学校数も数倍の差がありますので。

こうして鳴り物入りでスタートした駿台浜学園ですが、その後大きな噂は聞こえてきませんね。教室は東京・神奈川に計6教室しかありません。

合格実績をHPで確認してみると、「開成32名! 筑駒16名!」などといった数字が目に飛び込んできて、一瞬「おっ!」となりますが、よくみると「浜学園グループ合格実績」となっていました。関西からの遠征受験組の実績が足されているのですね。

関西の入試統一日は1月中旬(2024は1/13)ですので、例えば灘中に合格した生徒達が、首都圏まで遠征して開成や筑駒を受験することが可能なのです。もちろんその逆も可能ではありますが、開成や筑駒を第一志望とする首都圏の受験生が、本命の受験日2週間前にわざわざ関西まで遠征するのにはデメリットしかありません。私が教えていた生徒でも灘まで受験しに行った生徒は、実家が関西にある、そうした生徒だけでした。

ところが関西からは灘の合格が決まったあとですから心にも身体にも余裕があるのですね。もちろん本命が筑駒・開成といった生徒も含まれているのでしょうが、大多数は塾の合格実績稼ぎを目的とした遠征受験と思っていいでしょう。(たまに、トロフィーハンターの生徒もいます。灘・開成・筑駒の三冠をとりにいくのですね)

入試日当日には、関西の塾の先生に引率された集団を毎年見かけたものでした。

さて、駿台浜学園のHPを下にスクロールしていくと、「駿台浜学園 9期生113名 合格実績」というものがちゃんと載っていました。日能研の偏差値表で偏差値60以上の2月1日のみ入試を行っている難関校の実績は、開成5名、麻布2名、駒場東邦0名、武蔵0名、慶應普通部1名、早大学院0名、桜蔭2名、女子学院1名、雙葉0名、フェリス1名、早稲田実業0名となっています。およそ10.6%の生徒がこれらの学校に合格しているということですね。正直に言うと、さほど素晴らしい合格実績というわけではありません。

参考までに、SAPIXで同様の計算をしてみました。

卒業生数6436名中、同じ学校の合格者数は、開成262名、麻布182名、駒場東邦183名、武蔵59名、慶應普通部113名、早大学院63名、桜蔭189名、女子学院131名、雙葉45名、フェリス68名、早稲田実業48名 でした。計算すると20.9%の合格率ということになります。単純に言って、SAPIXで上位2割の成績であれば、合格できる(かもしれない)ということになります。

※渋谷渋谷や渋谷幕張、あるいは慶應中等部等は計算にいれていません。1日午前の1回しか入試がない学校でないと、一人の受験生の複数合格がカウントされてしまうので、それを避ける目的です。また、卒業生数がきちんと開示されている塾は少ないので、SAPIXのデータを使いました。

やはり、関西の雄、浜学園といえども、首都圏入試では苦戦しているといえるでしょう。(そもそも6教室で113名というのも少ないですね)サピックス関西校舎が苦戦しているのと同じですね。

ただし、1名合格の学校まで全て公表している姿勢は立派です。

このような状況で、あえて駿台浜学園を選ぶとすると、「いつか関西に引っ越すかもしれない」、あるいは「灘に合格すれば引っ越す」といった方になるでしょう。あるいは「父親が浜学園→灘→東大だった」というケースでしょうか。

Z会エクタス栄光ゼミナール

HPで合格実績をみると、開成16名、麻布12名、武蔵17名、駒場東邦8名、桜蔭2名、女子学院2名、雙葉4名とあります。6教室125名の実績とあるので、48.8%となりますね。これが本当なら驚異的な実績です!

若干気になるのは、「筑駒・御三家・駒東 最難関スーパー講座(小6生)」というコースの存在です。土曜日の午前中のみのコースですので、他塾の優秀層をターゲットにしていることは明らかです。

HPによると、

エクタスは公益社団法人国学習塾協会が定める基準に沿って公正に合格実績を集計しています。以下の三条件に該当する、Z会エクタス栄光ゼミナールに在籍した生徒を集計しています。
 一.受験直前の6ヵ月間の内、継続的に3ヵ月以上在籍している
 二.正規の学習指導を受講している
 三. 受講時間数が30時間を超えている 

だそうです。件の土曜コースは計24時間だそうなので、この条件を満たしません。これでは何のために外部生に開かれた土曜午前講座を設けているのかわからないですね。

その他にも「筑駒必勝講座」というのは、日曜に開催していて、こちらだと合計が30時間を超えています。

ところで、栄光ゼミナールの合格実績をしらべてみると、開成16名、麻布13名、武蔵18名、駒場東邦10名、桜蔭2名、女子学院2名、雙葉4名などとなっていました。エクタスの実績とほとんど数値が一緒なのが不思議です。

栄光ゼミナールの優秀層をエクタスに凝縮したのか、エクタスで集めた優秀層の数字を栄光ゼミナールの数字に足したのか、どちらかの可能性が高そうです。

正直いって、栄光ゼミナールに最難関校合格指導のノウハウがある教師がどれだけ存在するのかは不明ですが、エクタスには優秀な教師陣を集約しているのかもしれません。最難関校志望で、SAPIXが嫌いな方の選択肢になるのでしょう。

 

4.個別指導塾ならどこを選ぶ?

個別指導塾については、なかなかアドバイスがしづらいのです。

〇合格実績が不明(集団指導塾とかけ持つ生徒が多いため)

〇費用が不明

〇講師のレベルが不明

など、どうにも内情が見えづらいのです。

例えば、「A個別塾がとても良かった! おかげでわが子が合格できたの!」という評判を聞いたところで、その塾のその先生に出会える保障はありません。教師次第、というのが実情だと思います。

人件費ひとつとっても、集団指導で20名を教えている教師を独占すると考えれば、高額になることはわかります。

〇お金のことは気にしない

〇とにかくわが子のことだけを特別メニューで指導してほしい

そうしたご家庭には合うと思います。

いずれにしても、直接足を運んでじっくりと検討すべきなのが個別指導塾だと思っています。

 

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※注意

 個別指導塾の中には、「元〇〇塾のカリスマ講師」といった謳い文句で講師を紹介しているところがありますが、あまり(ほぼ)信憑性はないと思ってよいでしょう。

本当に〇〇塾のカリスマ講師だったなら、転職する理由がありませんし、他の集団指導塾で引く手あまたでしょうから。