中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

ヤギと小川がある学校 武蔵とは?


武蔵という学校も面白い学校ですね。

今回は武蔵中高について、とりあげてみます。

例によって、私個人の主観にすぎない感想ですし、正確さを欠く内容でもありますので、その点はご了承ください。

1.小川が流れ、ヤギが鳴く

武蔵中高は、練馬の真ん中にある学校です。環七の内側、というより環七に面したあたりですね。

最寄り駅は3駅あります。

西武池袋線江古田駅」南口より徒歩6分
都営大江戸線新江古田駅」A2出口より徒歩7分
西武有楽町線新桜台駅」2番出口より徒歩5分

となっています。

さて、江古田からアクセスする場合は、武蔵大学の敷地を通り抜けていくのが近道です。大学の建物がつきたあたりで、小川を渡らなくてはなりません。

そうです、武蔵名物の小川です。

一度HPを見てください。けっこう立派な小川が、ちょうど大学敷地と中高の敷地を隔てるような形で流れているのです。川の左右は緑が多く、ちょっとした散歩道になっています。

www.musashi.ed.jp

よく見ると、水を浄化循環させているようですが、そんな細かいことは気にするのはやめましょう。校内に小川が流れている学校が、都内で他にありますか?

もうこれだけで、武蔵で過ごす6年間が楽しみに感じられると思います。

さて、大江戸線新江古田駅から向かうと、中高側の東門が近いです。門を入り、テニスコートの脇を抜けると、ヤギが出迎えてくれます。

そうです、武蔵名物のヤギです。

数頭のヤギが、生徒の手によって世話されているのです。

武蔵といえば、自由な校風で知られています。

麻布とも違う、もちろん開成や筑駒とも違う。武蔵流の自由ともいうべき校風が特徴です。

 

2.大学実績

東大26(現役20)
京大8
東工大4
一橋3
早稲田23
慶應14

これが2024年の進学実績です。卒業生数171名ですので、都内男子校としては規模は大きい方ではありません。そう考えると、なかなかの実績だと私は思います。

ただし、昔の武蔵を知る人からすると少々寂しい数字かもしれません。

1974年からの東大合格実績だけを並べてみます。

40,57、68,63,77,87,78,67,60,73,86,73,73,79,77,63,65,70,85,47,58,57,66,58,44,64,45,45,37,49,26,34,30,26,18,20,24,28,20,29,22,27,26,32,27,22,21,28,19,21、26

 

すごいですね。80名を超えたときもあったのですね。生徒数を考えると、医学部志望の生徒や他大学が第一志望の生徒もいたでしょうから、驚異的な実績だったといえます。

そう考えると、20名台を推移しているここ20年くらいは、実績が落ちた、といわれるのもむべなるかなといえるでしょう。

 

しかし、武蔵に進学する生徒、あるいは卒業生はそんなことをおそらく気にしてはいないでしょう。

武蔵のここがいい! そういう思いで受験し進学する学校です。

武蔵にしか無い教育がある、そう胸を張れる数少ない学校の一つだと思います。

 

久々に学校のHPを覗いてみて、少々びっくりしました。

HPが洗練されているというか、学校の良さを上手にアピールしているではないですか。

昔の私の印象は、「宣伝下手」というより、宣伝する気が無いとしか思えない学校の一つでした。伝統校・難関校にありがちな傾向ではありますが、武蔵にはとくにそうした印象を持っていたのです。とはいえ、べつに不愛想でも不親切でもありません。周囲にこびずにわが道を行く、そういう学校だと思っていました。

 

どうやら、2020年に創立100年を迎えるにあたり、教育について徹底的に見直したようです。それが「新生武蔵のグランドデザイン」ということのようです。

 

3.合格発表風景

インターネット発表ではなく掲示板発表を行っていた時代のエピソードです。

主要校の試験は2月1日に集中しています。そして合格発表は㏡か3日に行われました。㏡の午前には桜蔭の発表を見て、その足で女子学院に向かいます。その後駒東に立ち寄ってから、日暮れ時に武蔵に向かうのが例年の行事?でした。

麻布・武蔵・開成、この3校だけが3日の合格発表なのです。そのはずなのですが、武蔵だけが、㏡の夜に、こっそりと発表するのです。

募集要項には「3日9時に校内に掲示で発表」となっています。それなのに、なぜか2日の夜に、掲示するのですね。

その掲示の仕方というのが、校内の1階ロビーのようなところに、合格番号を貼った掲示板を、鍵のかかったガラスドアほうに向けて置く、そうしたものでした。

もちろん公式の発表ではありません。それでも、塾関係者は皆知っていますので、武蔵を受験した生徒には、㏡の夜に発表を見にいくよう指示します。

ガラス扉の前に、今か今かと待ちわびる子供たち&保護者&塾関係者の人だかりができています。やがて掲示板が運ばれてきました。こちらに向けて置いてくれます。その瞬間、ガラス扉に向けて人垣がくずれ、いつかガラス扉が割れるのではないかと毎年冷や冷やしたものでした。

いったい武蔵がなぜ正式発表前夜にこの謎の発表を続けていたのかはわかりません。それでも2日に合否がわかれば、3日の入試を変更することも可能ですので、この発表はありがたかったですね。

 今でも覚えている生徒がいます。武蔵志望だったその生徒は、算国理社の点数が届いていなかったのです。でも、どうしても武蔵に入りたい、その思いだけは曲げずに受験しました。さて、1日に試験が実施され、すぐに入試問題を手に入れた私は驚きました。社会科が、冷戦構造について記述させるものだったからです。実はその生徒は、社会科でも歴史、とくに戦争の歴史が大好きな生徒だったのです。まさにその生徒のために作られたとでもいうべき出題でした。㏡夜に見に行くと、彼の番号があったのです。

嬉しさのあまり、私は普段では絶対にやらない行動に出てしまいました。その子の家に電話してしまったのです。(合否連絡は、家庭からの電話を待つのが鉄則です)

「おめでとうございます! やりましたね!」
どうもお母様の反応が変です。確認すると、どうせ受かっているはずはないと思っていたので、合格発表をまだ見に行っていないというのです。私からの一報により、親子でタクシーを飛ばして武蔵に向かったそうです。しかし、すでに門は閉ざされていました。母子で塀をよじのぼって合格を見たそうです。

 

4.入試問題

武蔵について語るならば、特徴ある入試問題に触れないわけにはいきません。とくに理社がおもしろいのです。

 

入試問題については長くなりそうなので、別の記事とします。