中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】こんな塾があったならーー理想の塾を考える

【中学受験】

ふと思ったのです。

理想の塾ってどんな塾だろう?

そこで今回は、「机上の空論」を展開してみたいと思います。

 

1.塾に求めるもの

 もちろんご家庭・生徒によって塾に求めるものはさまざまでしょうけれど、整理してみるとこんなところではないでしょうか。

 (1)環境

 ◆家のすぐ近く

 どう考えてみても、近いほうがいいにきまっています。とくに中学受験の場合は、通うのは小学生ですからね。たとえ一駅でも電車に乗せたくはありません。塾から帰る時間は21時・22時にもなります。「子どもがこんな時間に何やってるんだ!」と酔っ払いのおじさんに生徒が怒鳴られた、というのは実話です。まあだいぶ昔の話ですが。

 公立小学校にはみな歩いて通っています。塾にも歩いて通えるのが理想です。

 ◆通塾環境

 歩道もない交通量の多い道に面した塾は危険です。たとえ少しの距離といえども、安全に通塾できるロケーションにあってほしいです。

 ◆教室環境が良い

 別に素敵なインテリアを求めているのではありません。長時間の学習に適した机と椅子は必須です。また、空調も重要ですね。酸欠になりそうな教室は願い下げです。さらに、学習に適した照明も外せない条件です。

 (2)生徒について

 ◆生徒数が少ない

 わが子の成績や学習状況、さらに性格や志望校まで塾の先生には把握してもらいたいですね。そのうえで、わが子に最適の指導をしてもらいたい。これが希望です。

この希望を満たすためには、個別指導が最適ということになります。すでにわが子が理解している内容を、教室内の未修の他の生徒のために教師が指導している時間ほど無駄なものはありません。また、わが子だけが理解していない内容を、すでに既修として先を進まれるのも困ります。結局のところ、個別指導がベストという結論にいたります。

 ◆生徒数が多い

 前項と逆ですが、切磋琢磨する環境が子どものやる気を引き出し、思わぬほどの効果をあげるのは事実です。中学生になった生徒たちが、「塾の勉強は楽しかった」と懐かしそうに語るのはこれが理由です。しかも、生徒数が多いということはクラス数も多いわけですので、成績別にクラスを分けれると、自分と同じレベルの生徒たちに囲まれることになります。まさに最適な環境といえるでしょう。

peter-lws.hateblo.jp

 ◆塾の生徒の雰囲気

 せっかく良い塾だったとしても、通っている他の生徒たちが常に大騒ぎをしていたら台無しですね。また、塾を舞台としたいじめなど願い下げです。落ち着いた環境で勉強させたいと思います。

 

 (3)教師について

 ◆教師がベテラン

 新人教師よりベテランの教師がいいにきまっています。自分の授業をやるのにいっぱいいっぱいで、生徒のことを見る余裕がないようでは困ります。ベテラン教師は教室への目配りが行き届いています。生徒の学習状況の把握も適切です。

 ◆入試問題を熟知

 入試問題を知らなければ指導はできません。担当教師にはわが子の志望校の入試問題を熟知していることを当然要求したいです。

 ◆わが子との相性

 教師と生徒といえども人間ですので、相性というものはあります。厳しめの先生が合う生徒もいえれば拒否反応を示す生徒もいます。甘やかすと伸びる生徒もいればダメになる生徒もいます。ベテラン教師になると、生徒の性質を見抜いてそれに合わせて指導を変えてくれるのですが、なかなかそこまでの力量のある教師は少ないですね。

 (4)情報

 ◆学校情報が豊富

 塾に大いに期待したいものは学校情報です。

自分だけで学校情報を集めるのには限界があります。ネットの口コミ情報は全く信用できませんし、ママ友の情報も一面的です。ここはプロにまかせたい部分です。あらゆる学校に訪問経験があり、卒業生からの情報も豊富。そうしたものを期待したいですね。

 (5)システム

 ◆拘束時間が短い

 学校の放課後に通塾するわけですので、どうしても帰宅時間が遅くなります。せめて拘束時間が少しでも短ければ、食事の時間が不規則にならなくて済むと思います。

 ◆拘束日数が少ない

 本音をいえば週1回。それくらいの通塾で効果があがるのならそれにこしたことはありません。せめて週2回程度の通塾でおさえたいところです。

 ◆拘束時間が長い

 前項と矛盾しますが、「託児所替わり」「学童保育がわり」として塾を考えている家庭にとっては、拘束時間が長いほうがうれしいでしょう。また、家に幼い弟・妹がいて家庭学習が不可の場合もあるかもしれません。

 ◆拘束日数が長い

 前項と同様、毎日でも塾に行ってもらいたい、そうしたご家庭もあると思います。

 ◆親への連絡が頻繁

 わが子の学習状況や塾での様子、あるいは今後の指導について、毎週電話があり、月に一回は面談が行われる。そういう塾なら親も安心できますね。

 ◆塾からの連絡はない

 塾からの電話や面談は不要。必要な場合はこちらから連絡するので。そうしたご家庭もあります。

 ◆お弁当タイム・休憩タイムがある

 どうしてもお腹がすきます。途中で適切なお弁当タイムがあると安心ですね。また、休憩タイムがあると、子どもも疲れずに通塾できるでしょう。塾にょっては、近所のマクドナルドと提携していて届けてくれるそうです。

 ◆休憩・食事時間はない

 塾のためにお弁当をつくる余裕が無い場合や、少しでも授業を早く終えてほしい場合なら、休憩時間や食事時間などないほうがありがたいものです。こうしたスタイルの塾は、無駄をそぎ落として時間効率を高めることを優先しています。

 (6)塾の雰囲気

 ◆アットホームな雰囲気

 教師も事務職も、話しかけやすい雰囲気の塾はいいですね。勉強の悩みを相談したり、人間関係について相談したり。生徒を暖かく見守る雰囲気がある塾は素敵です。

 ◆ビジネスライクな塾

 的確な指導を行ってくれるだけでいい。塾にそれだけを求めたい方も多いでしょう。かかりつけの町医者よりも、システマティックな大病院を選ぶようなイメージでしょうか。

 

 (7)合格実績が高い

 合格実績が無い塾へなど通わせる意味はないでしょう。中学受験のために塾に通わせるのですから。

 合格実績が高い塾には、そうしたレベルの生徒を多数指導した経験のある教師がいます。この無形のノウハウというものが、とても重要なのです。

 

2.何を優先し、何を切り捨てるのか

 ここまでお読みいただくともうおわかりかと思います。

全てを満たす塾は存在できません。ご家庭によって求めるものが多様なばかりか、真逆である場合がほとんどだからです。

 ご家庭で、何を最優先するのか、何なら許容できるのか、何は許容できないのか。こうした点を十分に検討してから塾選びに入るとスムーズに塾選びがすすみます。

 いくつかシミュレーションしてみましょう。

 (1)筑駒・開成に何としても合格したい男子

 これは簡単ですね。SAPIX一択です。

SAPIXには、休憩時間も食事タイムもありません。塾から頻繁な電話連絡も無いと聞きます。生徒数は多いですし、アットホームな雰囲気であるかどうかは疑問です。拘束時間も短く、託児所替わりの利用はできませんし、自習室もありません。親の関与が必要な塾とされていますね。しかし、合格実績は図抜けています。開成・筑駒に合格(もちろん不合格も)した生徒の指導経験は相当あることが期待できます。

 

 (2)中央大学附属横浜中学校に行きたい女子

 各塾の合格実績を見てみましょう。

 SAPIX 114名

 日能研 76名

 四谷大塚 134名(※ 四谷大塚ネットワーク加盟塾総計)

 早稲田アカデミー 77名

6年生の生徒数は、SAPIX以外は公表していません。SAPIXのHPには6436名と明示されています。自信の表れなんでしょうね。日能研はその倍はいると思われます。四谷大塚は、おそらくは四谷大塚自身も生徒数を把握できていないのじゃないかな? ネットワーク塾が全国に散らばっていますので。ちなみに早稲田アカデミーもYTネット塾です。早稲田アカデミーは上場企業ですのでIRによれば小学部生徒数は2万人弱となっています。しかし6年生在籍者数まではわかりません。

日能研>>>四谷大塚>>SAPIX早稲田アカデミー といったところでしょう。

これだけみると、SAPIX一択にも思えます。SAPIXの偏差値表でも中大横浜は48となっていますので、まさにボリュームゾーンといえますね。

ただし、SAPIXの合格者数が高いのにはもう一つ理由があることを考える必要があります。

慶應・早稲田の付属、あるいは女子学院や豊島岡等、はるかに難易度の高い中学を目指していた生徒が、第2・第3志望として受験して合格しているケースが多数存在するからです。中大横浜に特化した指導は期待できないでしょう。

神奈川エリアの地元密着塾と言う選択肢も考慮する必要があると思います。

 

 (3)中受するかもできるかもわからない生徒

 近所の大手塾をおすすめします。日能研早稲田アカデミーあたりが、教室数も多いのでヒットするかもしれません。

 まずはお子さんのレベルが不明です。そのためには、大手塾のテストを定期的に受験しながら、成績を把握していく必要があります。日能研早稲田アカデミー四谷大塚)のテストなら信頼性は高いですね。イメージとしては、見知らぬ街で食事場所を探していたとして、目に付いたファミレスに入るようなかんじ? 味も値段もこなれていますので、大きく外すことはないでしょう。小さな定食屋や寿司屋は、当たれば大きいですが外すリスクが伴います。

 評判を良く知っているのでないかぎり、小さな町塾はおすすめできません。

 (4)目を離せないタイプの子

 親が仕事で忙しく、子ども一人で塾に行っている。そうした生徒も多いですね。ときどき聞くのが、「てっきり塾にきちんと行っていると信じていたのに、実はさぼっていた」という話です。こうした子の場合なら、勉強内容や合格実績を検討するよりも、面倒見の良さ、塾からの連絡の密、こうした要素を最優先すべきですね。

例えば、歩いていける範囲の個人でやっている小さな町塾。自習室もあって毎日行くことができる。ちょっとさぼるとすぐに親に電話が入る。親も気軽に仕事帰りに相談によりやすい。そうしたところが合っているでしょう。

 

このように、人によって理想の塾は異なります。

ご家庭の要望をきちんと整理しましょう。