中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】理想の学校の探し方-学校選びで私が重要だと思うこと

小学生の子を持つ知人・親類の何人かから、同様の質問を受けたのです。

「あなたなら、どうやって学校を選ぶの?」

「何が最重要?」

さすが知人だけあって、ストレートです。

学校選びについては、過去に何度も記事にしており、それらも読んでくれていたようですが、どうにも納得できないといいます。

「一般的な意見はいい。あなたの考えを知りたい。」

そうまで言われたら、もう書くしかありませんね。

 

そこで、今回は、「もし自分の子どもを進学させるなら」というつもりで、完全に私個人の意見を書かせていただきます。

「こんな考えもあるのね。」程度に読み流していただければ。

※本当に私の個人的な見解です。特定の学校を持ち上げたり貶めたりする意図は全くありません。

 

peter-lws.hateblo.jp

 

1.創立からの年数

 別に古ければ古いほど良いというつもりはありません。

せめて一巡してくれていないと判断がつかないという意味です。

ここで「一巡」というのは、その学校を卒業した生徒が、やがて自分の子を進学させる、それを勝手に「一巡」と呼んでいます。

厚労省によると、現在、平均初婚年齢は夫 31.1 歳、妻 29.4 歳となっています。また、平均出産年齢は30.9歳です。

妻・・・29歳で結婚し、その2年後に出産

夫・・・31歳で結婚し、その2年後に父となる

このモデルケースで考えると、12歳で入学した子が、女性31歳、男性33歳で子を持つことになります。さらにその12年後に、わが子を母校に進学させるとして、男性で33年、女性で31年の時が経ったことになりますね。

実は、東京都は全国平均より2歳近く、出産年齢が高くなっていることも忘れてはいけません。

乱暴にくくってしまうと、35年で一巡と考えてよいでしょう。

創立初年度に入学した生徒が、35年後にわが子を入学させようとしたとき、学校の校風等は大きく変化していそうですね。

 ①好ましい方向に変化した

 ②好ましくない方向に変化した

 ③変化しなかった

理想的なのは③です。

創立時の理念が35年程度で揺らぐとしたら、もともと大した理念ではなかったと言えるからです。懐かしい母校に子どもを連れて訪れたとき、お世話になった先生が校長室で出迎えてくれた、そうした学校なら安心できると思います。

また、①もよいですね。

何をもって「好ましい」変化であるとするのかは、ご家庭によって様々でしょう。

自分たちの時代には大学実績が振るわなかったが、今は実績がとても良い。もし大学実績に重きを置くのなら、好ましい変化です。あるいは、自分たちの時代には校則が厳しかったけれど、今は自由闊達な校風となった、そういう変化を歓迎する方もいるかもしれません

「不易流行」ということですね。

②では、おそらくわが子を入学させる気にはならないでしょう。

その学校を良く知る、いわば「身内」ともいうべき卒業生ですら敬遠する学校になってしまったということだからです。

はたして創立された学校が、上述の①・②・③のいずれなのか、それを判断するのに最低限必要な年数が35年であるというのが私の考えです。

新興校の成功例とされる渋谷教育学園渋谷の創立が1996年です。(渋谷女子時代を除く) まだ28年しか経っていないのですね。さすがにこの学校が10年後に「好ましくない」学校に変化しているとは私は思いません。しかしまだ1巡していないので、「もろ手を挙げての推奨」はしかねるというのが保守的な私の判断です。

渋谷幕張の創立は1983年です。ちょうど40年経ちました。渋谷幕張と渋谷渋谷が理念を共有していると考えると、渋谷渋谷への評価は変わります。

実は、私の教え子で初年度に渋谷渋谷に進学した生徒がいたのですね。その縁もあって、その後のこの学校の推移を気にしていました。今のところ私の評価は変わりません。また、共学の進学校でこのレベルの学校は他にありません。「開成も桜蔭も女子学院も麻布も好きではない、共学校の進学校じゃなきゃ嫌だ!」 という子の場合は、千葉に出られないのであれば渋谷渋谷一択です。

 

2.通学時間

 以前であれば、「1時間くらいは当たり前! 気に入った学校ならもう少し遠くても」という考えでした。

しかし、2011年を境に考えが変わります。

いざという時に、歩いてでも帰れる、迎えに行ける距離でないと進学対象とならなくなったのです。

もちろん自宅が多少遠くても、学校の近くに近しい親類がいるというのなら話は別ですが。

内閣府中央防災会議によると、帰宅距離10キロメートル以内は全員「帰宅可能」、10キロメートルを超えると「帰宅困難者」が現れ、20キロメートルまで1キロメートルごとに10%ずつ増加、20キロメートル以上は全員「帰宅困難」だそうです。

常識的に、10キロというのが一つの目安となりそうです。

例えば渋谷駅を起点とすると、国道246号を下るとして、二子玉川あたりまでがおよそ10キロメートルです。

あるいは、新宿駅を起点として甲州街道を歩くと、千歳烏山が10キロです。

◆ドアtoドアで1時間以内

◆乗継ぎは1回まで

◆徒歩距離で10㎞以内(に非常時に頼れる拠点がある)

私の中の優先順位はこの通りです。

6年間毎日通うことを考えると、通学時間は短いほうが幸せです。

 

3.教育理念

理念なき教育は教育ではない。これが私の考えです。

市場のニーズに合わせてのように理念を変える学校は信用できません。それは塾・予備校の世界観です。

学校の最高責任者である校長先生に、ぜひとも熱く理念を語っていただきたいと思っています。

4.生徒たち

12歳~18歳という、人間形成に最重要な時期を過ごす仲間です。

おそらくは、生涯の友を得る時期だと思います。共学・別学・大学付属・進学校、こうした要素によっても生徒の雰囲気は大きく変わります。

子どもの性格や志向を考えて学校を選びます。

 

私にとっての学校選びの基準は以上です。

偏差値も大学実績も優先順位は下のほうです。優秀な仲間に囲まれて切磋琢磨して伸びる子なのか、自由に過ごすことが大切な子なのか、そちらが重要だからです。

まして、学校の設備など気になりません。私立であれば、どの学校にしたところで最低限の設備はありますからね。

教育は器ではありません。萩の松下村塾跡を見ると、そう思います。