中学受験のプロ peterの日記

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今さら聞けない 中学受験超入門07 学校選びの第一歩

今回は、中学校選びの第一歩についてお話します。

すでに目標校が定まっている方には「今さら」の話になりますが、本当にゼロベースで学校を選ぼうとしている方には参考になると思います。

1.「学校案内」を入手する

中学校選びのファーストステップは、「学校案内」を入手することです。

学校案内の選び方・活用法についてはこの記事に書きました。

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 首都圏には多数の私立中があります。まさに選びたい放題です。しかし、いくらたくさんあるからといって、わが子に合う学校はどれなんでしょう?

 まずは各塾・出版社が出している「中学受験 学校案内」を1冊入手してください。

今の時期ですと書店に売られているものは昨年のものです。「2024年」と大きく書いてあるので間違える人も多いですが、よく表紙を見てください。「2024年(受験用)」となっていませんか? これは今年(2024年)に中学受験をした生徒が買うために昨年出版されたものなのです。最新版は6月頃に「2025年(受験用)」として売りだされます。

 ただし、BOOKOFF等のリサイクルショップ(古書店)を利用するなら今がよいチャンスです。もう不要になった受験参考書や過去問題集と一緒に売りに行く方が多いですので。とりあえず学校名と基本情報だけを知るくらいなら、1年前のものでも十分役立ちますので、中古本を安く手に入れるのは賢いかもしれません。

どれを買えばよいか迷ったら、「SAPIX」か「四谷大塚」を入手すれば間違いありません。どちらもおすすめです。

 実にたくさんの学校が載っていますね。もしお子さんが低学年なら、偏差値はとりあえず無視してかまいません。自宅からの通学時間が無理ない範囲の学校をいろいろ検討してみましょう。実に夢のふくらむ楽しい時間です。

 学校名が変わったり、女子校が共学校化したり、あるいは新設校ができたりと中学校も大きく変化しています。難易度も人気も変わっています。とくに昔ご自身が中学受験を経験された方は、いったん先入観を脇において、学校案内を読んでみましょう。

 

2.学校HPを見る

 学校選びのセカンドステップは、学校の公式HPを見ることです。

最終的には隅から隅まで見るのですが、私がいつも注目するポイントはこのあたりです。

 (1)教育理念(教育方針・教育目標等)

 理念なき教育は教育ではない

 これは私の信念です。

私が身を置いている塾の世界は、結果が全てです。そこに理念はありません。いかに生徒の成績を上げて合格に導くのか、それだけです。だから、教育ではなくサービス業だと思っています。(それでも個人的にはこっそりと理念を抱いてはいるのですが)

 しかし学校は違います。

 理念があり、それを実現するために高い志を持った教師と生徒があつまって学校が作られる、そういうものだと思うのです。

だから、最初に確認するべきは、その学校の教育理念なのです。この理念は変化してはいけません。時代に合わせて変化などするようなら、そもそも大した理念ではないということです。

 いくつかの学校のHPを改めて見直してみました。

みな素晴らしい教育理念をかかげていますね。

と言いたいところなのですが、実はそうでもないのです。HPの隅から隅まで探しても、どこにも「教育理念」のページを探すことのできなかった学校がいくつもありました。それは、そういう学校だということです。

 (2)沿革

 歴史の浅い学校も、古い学校も、学校の成り立ちには誇りを抱いているはずです。そこで、次に確認すべきは「沿革」のページです。

 どういった人物が学校を創立したのか、そしてそれがどのようにして受け継がれてきているのか。やがて自分の子どもがその歴史に連なる学校ですので、ぜひ見てみてください。

 しかし、ここでもまた「沿革」を見つけることのできない学校があります。やはりそういう学校だということでしょう。

 (3)学園長(校長)挨拶

 学園長(校長)はその学校の顔です。最高責任者です。いったいどのような思いで子供に接しているのか、学校を運営しているのか。その声に耳を傾けてみましょう。

 職業柄、いろいろな学校の校長先生にお会いする機会がありました。「人格者だなあ」と感心する先生もいらっしゃる一方で、「?」と思う先生もいらっしゃいましたね。

 (4)教育の特徴

 ここは実はあまりおもしい部分ではありません。各学校はそれぞれ工夫を凝らしているのですが、そのためかどうか、学校ごとの差があまり感じられないのです。それでも「自慢」の教育というものが見えてくるものです。

 (5)学校生活

 在校生の様子やイベント等が紹介されています。わが子がそこに加わっている様子を想像しながら見てみましょう。特色あるクラブ活動など見つかるかもしれません。

 (6)大学実績

 ここは最後にまわしたほうがいいかもしれません。嘘偽りのない冷徹な数字が並んでいますね。大学付属校でないかぎり、6年後には大学受験が待っています。言葉ではいくらでも耳障りのよい文言を並べることはできますが、結果がついていないことには困ります。もちろん大学受験の結果は、必ずしも学校の手柄ばかりというわけでもありません。進路指導もせず、生徒の自主性に任せているような学校の合格実績がすばらしい場合もありますし、手取り足取り生徒を受験に追い立てる管理型教育の学校の実績がそう良くはない、ということもあるからです。

 しかし、大学実績を見ることで、どういったレベルの生徒たちが集っている学校なのかが明確に見えてきます。

※注意

 大学実績の公表の仕方があいまいであったり、情報量が少なすぎる学校は要注意です。なかには複数年の合格者を合計して載せている学校もあります。

 表に出すと恥ずかしい数字だから隠すのです。

 たとえどんなにふるわない数字だとしても、在校生が頑張って合格した成果だと思います。きちんと公表している学校にこそ私は信頼を感じます。

 

 (7)学費

 これは明確に掲示してほしい情報ですね。とても大切な部分ですから。しかし、きちんと見やすく提示しているHPは意外と少ないのです。

 (8)入試結果

 合格者平均点や最低点を公表している学校もありますね。受験する立場からはとても助かります。そこまでは公表しないとしても、出願人数・受験人数・合格人数・進学人数は公表してほしいものです。ここをはっきりとさせない学校は、何か隠しているの?と思ってしまいます。

 念のために、定員割れしている学校をいくつかランダムにHPを確認したところ、いずれの学校も入試結果はHPに載せていませんでした。

定員割れ=だめな学校だとは思いません。親身に指導してくださる良い学校も知っているからです。しかし、学校経営のことを考えると、将来が心配になります。

 (9)施設

 学校の施設を重視する方ならここは気になりますね。複数ある体育館・広いグラウンド・屋内プール・カフェテリア・ライブラリー等、どうしても外せない重要な施設があるかもしれません。

 しかし、もしそこまでこだわりがないのなら、施設の項目をチェックする優先順位は高くはありません。なぜなら、人気を集めようとする学校が真っ先に手をつけるのが施設の充実だからなのです。目に見える変化ですし、訴えやすいアピールポイントだからなのですね。良い教員を揃えることや生徒を育てていくことには時間もかかりますし、なかなか目に見える成果もあがりません。それより光の差し込むカフェテリアや3Dプリンターが並ぶ実験室を作るほうが簡単です。お金で解決できますので。

 ある学校の真新しい図書室にお邪魔したときのことです。ウッディで明るい図書室はライブラリーと呼ぶ方がふさわしい素敵な空間でした。たくさんの本が並んでいます。しかし、本をチェックしてみると、ほとんど開かれた形跡がないのです。施設を作り本を揃えるところまではできても、それを利用する生徒を育てるのは時間がかかるのだなあ、としみじみ思ったものでした。

 施設については、行きたいと思った学校の施設が充実していると少しうれしい、それくらいにとらえるのがよいと思います。

 

3.学校を訪れる

 さて、学校選びのサードステップは、いよいよ実際に学校を訪問することです。

ただ、実際に受験する学校をチェックするのではありません。まずは、ちょっとでも気になった学校を気軽に見に行ってほしいのです。

「家から近いから」

「制服が気に入ったから」

そんな理由でもかまいません。まずは足を運んでみましょう。説明会では、校長先生のお話、教科主任の指導方針、入試の情報、そういったものが聞けます。また、校内を案内してくれる場合も多いです。

いくつかの学校説明会に参加していると、少しずつ自分の中に、学校を判断する物差しのようなものができてきます。

「この校長先生のお話よりも、この間聞いた校長先生のお話のほうが分かりやすかったな。」

「こちらの学校のほうが若い先生が多そうだぞ」

そういったぐあいです。

 さらに、学校説明会に集った保護者の方々を見てみましょう。あまりにもじろじろ見るのは失礼ですので、何となく雰囲気のようなものを感じていただければ十分です。服装や年齢層や醸し出される匂いのようなものに、違和感を感じませんでしたか?

もしお子さんがその学校に進学すると、同級生になる可能性のある子の保護者の方々です。ご自身のご家庭の方針とかけ離れたものを感じたら、その学校はもしかして「合わない」可能性があると思います。

 

ここまでくると、もう学校選びの初心者は卒業です。しっかりとした選択眼をもって、お子様に最適の学校を選ぶ準備はできたと思います。

 

説明会の服装に迷われたら、以下の記事が参考になると思います。

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