中学受験用の学校案内は、どれを買うべきか、またどう使うべきか
中学受験を考え始めた時、真っ先に書店で手を伸ばすのが学校案内ですね。
いくつもの塾・出版社のものが書店に並んでいますが、いったいどれを買えばよいのか迷いませんか?
プロの視点から、ほんとうに役立つ「学校案内」と、「学校案内」をつかった志望校選びについてお教えします。
(載せている写真は2年前のもので恐縮です。今書店にあるのは2024年用、今年6月には2025年用が並ぶと思います。私も毎年全種類購入しているわけではないので、たまたま全種類がそろったのがこの年でした)
1.学校案内の種類
書店に行くと、各種学校案内が目につきますね。
私の入手したものは、上の写真の5種類です。出版されているものはたぶんこれで全てだと思います。
〇SAPIX
〇四谷大塚
〇日能研
これら3大塾の出しているものに加えて、
〇声の教育社
の2社のものを検討します。
ところで、早稲田アカデミーは四谷大塚準拠塾のため、独自の学校案内というものは作っていません。
(1)声の教育社 中学受験案内
ごぞんじ、声の教育社は過去問の出版社です。
「〇〇中学校 10年間 スーパー過去問」というタイトルで、黄色とオレンジ色が特徴的な表紙のものを学校ごとに出しています。
この出版社は塾とは無関係です。
したがって、どこの塾のカラーにも染まらないニュートラルな情報が期待できるでしょう、といいたいところですが、実のところ、塾が出版する他の学校案内も塾色に染まっているわけではありませんのでここは気にする必要はありません。
◆2100円(税別)
◆総ページ数・・・895ページ(含目次)
◆白黒
◆首都圏私立中学所在地マップが附属
◆巻頭に制服紹介カラーページあり
◆巻末100ページは、大学合格者数高校別一覧、指定校推薦、帰国生受け入れ校などのデータがまとまっている
◆本編は、1校あたり見開き2ページで紹介
◆とりあげられた学校数はこうなっています。十分な数の学校が網羅されていますね。
東京 私立179校
神奈川 私立57校
埼玉 私立31校
茨城・栃木等 私立16校
国公立 48校
※収録学校数が多いのが利点です
巻頭には、「受験ガイダンス編」と称して、偏差値利用講座・来年度入試の予想・志望校選びガイドなどがまとまっていますが、あまり参考にはならないでしょう。
この出版社は塾ではありませんので、これらの記事は生徒指導経験ゼロの社内スタッフか、あるいはどこかの塾の先生への原稿依頼により作られていると思われるからです。
本編の学校紹介ページには、合格の目安のグラフがありますが、声の教育社は模試データを持っていないので、四谷大塚の偏差値と首都圏模試の偏差値が併記されています。
ところで、偏差値については以前に記事にしました。
同じ中学校の偏差値でも、塾(の模試)によってこんなに違います。
SAPIX 60
日能研 65
四谷大塚 66
首都圏模試 74
〇フェリス中
SAPIX 54
日能研 62
四谷大塚 65
首都圏模試 74
偏差値50前後がその塾の模試受験者の一番のボリュームゾーンと考えると、志望校として考えている中学校の合格偏差値が、どれくらいの数値となっているかによって模試データを使い分ける必要がありますね。
もし志望校が例にあげた駒場東邦中やフェリス中であった場合は、首都圏模試データは参考にならないということになります。
(2)SAPIX 中学受験ガイド
◆1900円(税別)
◆総ページ数・・・774ページ(含目次)
◆カラー
◆SAPIXの偏差値表附属
◆巻頭の特集ページは、中学受験ドキュメント(グラビア)、、合格体験記、中学受験の基礎解説、注目校、来年度入試の展望、出題傾向と学習法ージあり
◆本編は、1校あたり見開き2ページで紹介
◆とりあげられた学校数はこうなっています。関西や地方の学校まで収録があります。
東京 私立125校
神奈川 私立42校
他の首都圏 私立39校
関西 私立38校
その他地域 私立 15校
国公立 20校
※本編では、部活動や学校行事などの紹介にスペースが割かれています。
(3)四谷大塚 中学入試案内
◆2000円(税別)
◆総ページ数・・・742ページ(含目次)
◆カラー
◆四谷大塚の偏差値表附属(ただし字が細かい!)
◆学校マップ付録
◆難関23校だけ巻頭特集でさらに2ページおまけページがついていて、3年間の内部テストのデータが載っている
◆巻末に大学実績や偏差値推移等の資料が77ページ
◆本編は、1校あたり見開き2ページで紹介(ただし後半は1校1ページ)
◆とりあげられた学校数はこうなっています。都県ごとにはなっていません。
最難関 23校 (※4ページでの紹介)
私立共学校 95校
私立男子校 29校
私立女子校 58校
国公立校 38校
私立共学その2 71校(※1ページでの紹介)
地方校 47校
※1校あたりカラー見開き2ページで見やすい構成。
難関23校だけ巻頭特集でさらに2ページおまけページがついていて、3年間の内部テストのデータが載っており四谷大塚に通塾しているなら便利だと思われます。併願パターンも参考になるでしょう。
(4)朝日新聞出版 AERA進学MOOK カンペキ中学受験
◆1900円(税別)
◆総ページ数・・・397ページ(含目次)
◆白黒
◆首都圏模試センターの難易度表附属(一般的な入試日別の表ではなくとても見づらい)
◆学校路線図マップ収録
◆巻頭に志望校選びの情報が10ページあり
◆本編は、1校あたり1ページで紹介
◆とりあげられた学校数はこうなっています。都県ごとにはなっていません。
東京 90校
神奈川 56校
千葉 31校
茨城 6校
栃木 3校
国立 12校(※1ページの半分のスペースで紹介)
公立 23校
※1校あたり1ページ、白黒。男女共学まぜたアイウエオ順の構成でとても見づらい。
偏差値データは四谷大塚と首都圏模試の数値が併記されています。
(5)日能研 中学受験 日能研の学校案内
◆2000円(税別)
◆総ページ数・・・269ページ
◆白黒
◆巻末に、データ編152ページ、学校ごとの略地図55ページ附属
◆日能研偏差値表付録
◆巻頭に学校比較特集
◆とりあげられた学校数
私立男子校 43校
私立女子校 87校
私立共学校 166校
国立 12校
公立 25校
※1校あたり白黒1/2ページで情報量は少なすぎます。
データがまとまったページだけ、日能研通塾生には役立つかもしれません。
2.結論 おすすめ学校案内は?
(この表の×印は、学校の情報ページに載っていないという意味)
私のおすすめ順は以下のとおりです。
1.SAPIX
2.四谷大塚
3.声の教育社
4.日能研
結論・・・SAPIXのものが一番使いやすい
入試傾向や併願パターン・偏差値データは載っていませんが、そもそも学校案内を開くのは、学校選びの第一歩、小学低学年の頃だと思います。
その段階では、入試傾向や併願パターンより、教育内容や部活動の情報が見たいはずですね。
四谷大塚のものも悪くはないですが、四谷大塚の会員でなければSAPIX版ではなくこちらを選ぶ理由はとくになさそうです。
どちらもカラーで見やすさはほぼ同様です。
声の教育社版を選ぶのは、SAPIX版や四谷大塚版に載っていない学校を調べるときでしょう。とくに首都圏模試受験生には良いと思います。
日能研版は、学校情報ページは役に立ちませんが、情報一覧表ページは充実しています。ページをめくりながら憧れの学校を選んでいくという使い方ではなく、データを一覧したい人向けです。
どちらかというと保護者ではなく塾関係者向けの構成だと思います。
アエラ版は選ぶ理由はない。
同じ2000円を出すなら、もっと分厚く情報も多いSAPIX版・四谷大塚版・声の教育社版を選ぶべきでしょう。
3.購入時期
6月頃、一斉に書店に並ぶので、そのタイミングで買いましょう
それ以前に書店に並んでいるのは、1年情報が古いので要注意です。
きちんと出版年月日を確認することが大切です。
春頃であれば、いらなくなった本をBOOK-OFFなどで処分する人も多そうです。最新データにこだわらないのであれば、そこで安いものを買うのも賢いかもしれません。
ただし、学校名の変更・共学化等の動きが激しい学校についてはHP等で情報をアップデートする必要があります。
4.学校案内のどの部分に注目すべきか
(1)先入観を捨てる
学校案内を開くのは、中学受験を考え始める小学校低学年の頃でしょう。
まずは、先入観を捨て、順に各学校のページをめくってみてください。
名前を聞いたことのない学校がたくさんあるはずです。
有名校=子供に合った学校 ではありません。
今まで気づかなかった学校にも、子供にぴったりの学校が見つかる可能性はあります。
(2)生徒数に注目
学年が若いほど学年の生徒数が少ない学校は要注意です。
年々入学者が減っていることを意味するからです。
生徒数減少には理由があります。
やがて定員割れ→閉校 といったケースも考えられるのです。
また、学年が若いほど生徒数が多い学校も気をつけてください。
最近人気が出てた学校である場合と、学年が上がるにつれて辞める生徒が多い場合と、二つの可能性が考えられるからです。
(3)進学先の大学
その学校の生徒のレベルを見るには最も手っ取り早い目安です。
塾が出している「80%偏差値」は、その学校の人気度を反映してはいますが、内部の生徒のレベルを直接示しているわけではありません。
学校の生徒の学力レベルは、如実に大学の進学実績に反映されるのです。
(4)部活動や行事の紹介
この段階では、中学校への憧れを持ちたいです。
子供と一緒になって、各学校の部活動や学校行事を見ていくのはとても楽しいものです。
修学旅行先がシンガポールだなんて、子供はワクワクすることでしょう。
学校案内は入口に過ぎない
このような学校案内は、学校選びの入口にすぎません。
気になる学校が見つかったら、ぜひとも直接足を運んでみてください。
校舎や生徒の様子、先生方の熱意等、文字やデータには現れない学校の魅力を見つけてみましょう。