中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

中学受験のための四大模試の選び方とは?

中学受験のためには、塾が実施している模試を定期的に受ける必要があります。

もちろん今お通いの塾があれば、そこの模試を受ければよいのですが、他の塾の模試も気になるところですよね。

今回は、四大模試とよばれる模試と、その選び方について書いてみます。

なお、6年生のテストのみに絞って書いています。

1.四大模試とは?

(1)四谷大塚

ここはもともとがテスト会として発足した塾ですので、毎週日曜に行われるテストが基本ですが、このテストは内部の会員しか受けられません。外部生でも受けられる公開テストにはこのようなものがあります。

  1.合不合判定テスト

四谷大塚のHPの宣伝を鵜呑みにすると、『40年以上の長い歴史を持つ首都圏随一の合否判定テスト(2021年受験者数のべ89,350名)で、過去の膨大な出題データと最新の入試問題の出題傾向の分析によって精選された出題と、長年にわたって蓄積された各種データを基にお届けする豊富な資料で、高い評価と高い信頼を得ています。』だそうです。

◆圧倒的な信頼を誇る正確な合格判定!

◆同じ志望校のライバルの成績と比較した貴重なデータを提示!

◆志望中学校がテスト会場!

タブレット・パソコンで、ていねいでわかりやすい解説授業が受講できる!

◆全国主要中学校の合格判定が可能!

とありました。

4月から12月まで、6年生で6回のテストが実施されます。

受験料は1回5280円となっていました。

 この「合不合判定テスト」は、かつては難関校の判定には欠かせないテストとして多くの受験生を集めたものです。あのSAPIXですら、全生徒に受験を義務付けていたと聞きます。
 しかし、問題点を2点ほど指摘しておきます。

◆出題傾向に癖がある・・・いわゆる「四谷大塚流」とでもいいたくなる、独特の癖があります。そのため日頃から四谷大塚(あるいは提携塾)に通って日曜テストを受けている生徒が有利です。つまり判定精度が下がります。

SAPIXの生徒が受けない・・・難関校の合格実績をあれだけ出しているSAPIXの生徒は受けません。自前のテストを受けているからです。つまり、難関校の合否判定データの精度が期待できません。

 

  2.公立中高一貫校対策実力判定テスト

6年生の秋に二回あります。四谷大塚は公立中高一貫校対策に強味を持つ塾ではないので、あえてこのテストを受ける必要はないと思います。会員の生徒にとっては有効です。

 

  3.学校別判定テスト

最難関校の名前を冠したテストです。「開成」とか「桜蔭」とか。しかし、前述したようにSAPIXの生徒が受けていないと判定の意味はありません。そこを目指すのなら、素直にサピックスの模試を受けるべきでしょう。

ただし、1回でも多く、「本番さながらの形式」のテストを受けたいと考えるなら、良いと思います。

 

  4.公開組分けテスト

四谷大塚の会員の生徒と同じテストを受けます。お子さんが、四谷大塚ならどのあたりのポジションなのかが確認できます。他の塾から転塾を考えていたり、あるいはあまりに小さな塾に通っていて模試が無い場合には有効だと思います。

 

(2)日能研

テストの種類が多く、ネーミングも似通っているため、とてもわかりづらいですね。

1.合格判定テスト

2.合格力実践テスト

3.志望校判定テスト

4.志望校選定テスト

5.実力判定テスト

6.合格力完成テスト ファイナル256

 

とくに3と4は紛らわしい。どうやら4の志望校選定テストというのは、志望校選びの手助けとなるように、これくらいの成績の生徒はこんな併願校でしたよ、と教えてくれるテストのようですね。1の「合格力判定テスト」が、四谷大塚の「合不合判定テスト」に相当するテストでしょうか。

6年生になると、毎月どれかのテストがあり、9月以降は月に2・3本、そして12月には5本ものテストがある、そういうしつらえのようです。

 そんなに癖のあるテストではありませんので、よく言えば無難、悪くいえば特徴が薄い、そんなかんじでしょうか。問題の難易度は少し低いかな。これはそのまま日能研のかかえている生徒層を反映しています。中堅校の受験を考えているなら悪くないと思います。

※当ブログ中では、中堅校・下位校・難関校・最難関校といった用語を使っています。難関校はまだしも、中堅校や下位校という言葉は本当は使いたくありません。どんな学校にもそれぞれの魅力があり、そこを目指して努力している生徒がおり、満足して通っている生徒がいます。当たり前のことです。そうした学校に対して「中堅」だの「下位」だのという冠をつけるのは失礼極まりない話です。ただ、どうしても受験の世界は「偏差値」による序列というものが存在します。そこを避けて通るわけにもいきません。そこで仕方なくこうした表現を使っています。あくまでも「偏差値上」の下位という意味で、学校としての魅力とは無関係な表現ですのでご了承ください。

 

(3)SAPIX

こちらは「合格力判定サピックスオープン」と「学校別サピックスオープン」の2本立てとシンプルです。

  1.合格力判定サピックスオープン

これが、四谷大塚の「合不合判定テスト」に対抗してはじめたテストのようですね。年に4回あります。

HPの宣伝では、

①見やすい・わかりやすい成績開示!
②中学校会場にて本番さながらに腕試し!
サピックス生と競う!志望校への道
④志望校判定シミュレーションで自由に何校でも判定が可能!
サピックスの豊富なデータを提供!
となっていました。

まあこのテストの価値は、③だけですかね。難関校を目指す生徒にとっては一番気になるところでしょう。

 

  2.学校別サピックスオープン

開成・桜蔭・筑駒・麻布等の学校別の模試です。おそらく他塾の生徒にとって最も気になるテストではないでしょうか。

HPに面白いデータを見つけました。学校別サピックスオープンの受験者数が左、実際の入試の受験者数が右です。

開成・・・1071/1193人
麻布・・・792/880人
駒東・・・645/586人
桜蔭・・・557/607人
女子学院・・・645/657
雙葉・・・370/355

つまり、実際の入試受験者のほとんどがサピックスのテストを受けている、というデータだそうです。

おお、さすが! と一瞬思ったのですが、よくよく見てみると、ひとりの生徒が午前・午後と受けられるので、たとえば午前に開成、午後に駒東と受験できるのですね。それならこんなデータになるでしょう。それでも、難関校を狙う生徒が多く受けることには変わりありませんが。

 

さて、最近のSAPIXの模試を見ていると、少々気になる点があります。問題の難易度が高すぎるのです。実際の入試問題よりも難しいと感じます。「こんな知識は出ないだろう」「この算数はマニアックすぎやしないか?」と思わせる問題が散見されます。一般にテストというものは、平均点が60点(100点満点で)を目標に作問するのが普通です。それでもなかなか意図通りにはいかないものですが。SAPIXのテストは科目によっては平均点が半分以下といったものも見受けられます。これが意図したものなのか、それとも作問に失敗したからなのかまではわかりません。

そこで、SAPIXのテストを受験した場合は、得点率ではなくて偏差値・順位を重視するべきだとアドバイスします。得点率を見てショックを受けて私のところに駆け込み相談に来た生徒にいつもするアドバイスです。

(4)首都圏模試

ここは、塾ではありません。「首都圏模試センター」というテスト専業の会社がやっています。

このテストの特徴は2つです。

  1.受験人数が多い

受験人数を比べると、

四谷大塚>首都圏模試>日能研>>>SAPIXといったかんじでしょうか。

四谷大塚は全国の塾を「YTネット」としてテストを通じて繋いでいますので人数が多いのはうなずけますが、首都圏模試もなかなかの規模です。まあ四谷大塚日能研・首都圏模試の3つの模試は規模は同等と考えてもよいでしょう。

  2.受験生層のレベルが高くはない

日能研四谷大塚の偏差値表でいうと、真ん中から下に書かれた学校を志望する生徒が大半です。

〇今までは公立中学進学のつもりだったが、子供が急に中学受験をしたいと言い始めたので、とりあえず受けてみる

〇偏差値では語れない魅力的な学校を見つけたので、そこを目指している

〇何が何でも上を目指して勉強をさせる家庭方針ではない

〇普段は四谷大塚(or日能研)のテストを受けているが、いつも成績が振るわず(偏差値30程度)本人のやる気がなくなってきた。自信をつけさせたい。

 こうしたご家庭に向いたテストだと思います。いわゆる「町塾」の生徒が多く受けているようですね。

 

(5)早稲田アカデミー

番外編としてとりあげます。

ここは四谷大塚の提携塾ですので、テストは四谷大塚と同じです。

ただし、独自のテストとして、「小学生未来診断テスト」とか「志望校別オープン模試」「筑駒中オープン模試」「豊島岡オープン模試」といったネーミングのテストが、毎月のように実施されています。

しかも、公立中高一貫校模試の一部と、早稲田系判定模試を除くと、全て無料です。

そのことがこれらのテストの目的を物語っています。

テストにお金をかけたくない方ならよいかもしれません。

私が親ならわが子には絶対に受けさせないでしょう。

 

2.四大模試の比較

それぞれの模試が、どういった位置取りなのかをまとめてみました。

模試比較

表の見方はこうです。

それぞれの塾が出している偏差値表で50のところにある学校は、他の塾ではいくつになっているかをまとめました。50のところに学校がないものについては49か51の学校を載せています。また、工学院については、四谷大塚SAPIXの偏差値表では目を皿のようにしても見当たりませんでした。

偏差値は、「80%合格偏差値」です。

例えば、首都圏模試の表では50となっている日大三中が、日能研では40、四谷大塚では39,SAPIXでは31となっています。逆に、日能研では50となっている桐蔭が、四谷大塚では49、SAPIXでは42、首都圏模試では61となっています。

 

一目瞭然ですね。SAPIX四谷大塚日能研では約10の開きが、そして首都圏模試はさらに10の開きがあります。日能研四谷大塚は受験生のレベルがほぼ同じ、SAPIXはそれよりだいぶ上位層が受け、首都圏模試はだいぶ異なる層が受けていることがわかります。

模試のデータは、偏差値50位の層が受ける学校の判定精度が高くなります。お子さんの受験校に合った模試を選ぶことが重要です。もし芝を受験するなら首都圏模試のデータは意味をなしませんし、神奈川学園を志望するならSAPIXではなく首都圏模試を受けるべきでしょう。