前回の記事↓に書ききれなかったので、今回は模試についての続きです。
無料のテストの種類について
無料のテストについて書いてみます。
様々な塾が無料のテストを実施しています。ちょっと調べてみただけでも、こんなに出てきました。
1.駿台・浜学園
・学力診断オープンテスト(小1~小5)
・灘中日本一模擬入試(小4~小6)
・公開学力テスト(小6のみ無料)
・開成中オープン模試(小6)
・桜蔭中オープン模試(小6)
2.日能研プラネット ユリウス
・全国公立中高一貫校チャレンジテスト(小5~小6)
・日能研全国テスト(小2~小6)
・未来をつくる学びテスト
・日能研リーグオープンテスト(小3~小6)
3.早稲田アカデミー
・春のチャレンジテスト(小1~小3)
・小学生未来診断テスト(小5~小6)
・NN志望校別コース志望校別オープン模試(小6)
・LOGOS Test of EIGO,SANAU,KOKUGO-帰国生実力判定テスト(小4~小6)
・慶應湘南藤沢帰国生オープン模試
・キッズチャレンジテスト(小1・小2)
・渋谷幕張中帰国生オープン模試(小6)
・開成ジュニアオープン模試(小5)
・桜蔭ジュニアオープン模試(小5)
・小4トップレベル模試(小4)
・洗足中・頌栄中帰国生オープン模試(小6)
・渋谷渋谷中帰国生オープン模試(小6)
・公立中高一貫校オープン模試(小6)
・公立中高一貫校ジュニアオープン模試(小5)
・・全国統一小学生テスト(年長~小6)
・ワセアカチャレンジテスト(年長~小2)
・NN入試本番体験講座開成中オープン模試ファイナル(小6)
・NN入試本番体験講座駒場東邦中オープン模試ファイナル(小6)
・NN入試本番体験講座雙葉中オープン模試ファイナル(小6)
・筑駒中オープン模試
・適性検査対応力判定模試(小4)
・灘中オープン模試(小6)
・学校別ジュニアオープン模試(小5)
・小3冬期学力診断テスト(小3)
・小2基礎力診断テスト(小2)
4.TOMAS
・最難関模試(小1~小4)
・開成そっくり模試(小6)
・桜蔭そっくり模試(小6)
・麻布そっくり模試(小6)
・女子学院そっくり模試(小6)
・慶應中等部そっくり模試(小6・自宅)
・早稲田実業そっくり模試(小6・自宅)
・駒東オープン(小6)
・鴎友オープン(小6)
5.Z会エクタス
・試行(思考)力・l記述力診断テスト(小2~小3)
・筑駒実力確認テスト(小6)
・筑駒・男子御三家攻略法&挑戦力診断テスト(小4)
・桜蔭・豊島岡攻略法&挑戦力診断テスト(小4・オンライン)
6.四谷大塚
・開成・桜蔭本番レベルテスト(小6)
・学校別対策コース選抜テスト(小6)
・全国統一小学生テスト(年長~小6)
・リトルスクールオープンテスト(年長~小3)
7.栄光リンクスタディ
・難関中学受験診断テスト(小5・オンライン)
8.栄光ゼミナール
・難関中学受験チャレンジテスト(小2~小4)
・桜蔭・女子学院診断テスト(小3~小5)
・中学入試スタートテスト(小3)
9.市進学院
・公立中高一貫校適性検査模試チャレンジテスト(小4~小6)
・全国学びの比較テスト(小4~小6)
・伸びる力診断テスト(年長~小5)
・夏の学力診断テスト(小2~小6)
10.馬淵教室
・灘中合否判定テスト(小6)
・最難関トライアル(小6)
・灘中トライアル(小6)
すいません、いろいろな資料を引っ張り出して調べていたのですが、まだまだ調べ切れていません。一部抜粋として載せました。その他の塾(ジーニアス、エルカミノ等)もやっているようですが、小規模塾までとりあげているときりがないので割愛しています。
また、同じ名称のテストでも、時期によって実施学年が異なっていたり、有料であったりもしますので、受験をする方は直接塾のHP等で確認してください。あくまでも参考程度にご覧いただければ。
そういえば、SAPIXの名前がありませんね。調べてはみたのですが、どうやら無料テストはやっていないようです。これは塾としての見解(姑息な手段で生徒を集めない/正当なサービスには正当な対価等)なのか、あるいは単にケチなのか、それはわかりません。
それにしても、調べながら驚きました。こんなにも多くの塾がたくさんのテストを無料実施しているのですね。とくに早稲田アカデミーの充実ぶりは目を惹きます。
11.全国統一小学生テスト
四谷大塚が実施している大規模なテストです。HPにはこうありました。
全国統一テストは
学力を測るだけではなく
学力を伸ばすためのテストです。
日本の将来を担う全国の小学生・中学生・高校生を 無料招待 します。
全国2600会場、受験者総数一回あたり15万人という、日本最大の公開テストです。
すごいですね。これを全て無料!で実施しているのです。いったいどんなメリットがあって、私企業にすぎぬ塾がやっているのか、どうしても考えざるを得ません。
2006年にナガセ(東進ハイスクール)の傘下に入ったときからスタートしたと思います。もう18年もやっているのですね。
無料に惹かれて、あるいは成績優秀者の商品(ipad)や、さらにアメリカ旅行を目指して受験する小学生も多そうです。
しかし、中学受験のための指標としてなら、受験はお勧めしません。
中学受験は全国規模ではありません。首都圏と関西・中京等の一部地域のみで行われているのです。全国の小学生の中でのポジションを知ったところで、受験のためにはあまり意味をなさないのです。
2.無料テスト実施の目的
テスト作成や模試運営に携わった経験から言わせていただくと、信じられません。
テストの作成には、多大な労力とコストと能力と時間が必要なのです。まず、入試問題レベルの作問ができる先生というものが非常に少ない。何年も塾で教えているプロであっても、作問能力は別物です。経験が長ければ作れるというものではないのです。さらに、国語の文章や理科・社会の写真・図表等、著作権問題をクリアするのが大変です。著作権管理団体や、場合によっては写真家・作家・寺社・企業等に直接交渉するのですが、専門的な知識が必要な仕事ですし、多額のコストがかかります。そして点検も大変です。複数の教師が、何段階にもわたって校正しますが、それでもミスが出てしまうのですから。
実感としては、年間10本作れ、といわれたら私生活が崩壊しますね。授業を全くやらずに取り組めば可能かもしれませんが、そんな生活嫌です。授業がやりたくてこの仕事をしているのですから。あるいは適当にごまかせば(盗用・改題等)可能でしょうけれど、やはりそんな仕事はしたくありません。
だから、これだけの本数のテストを無料で実施しているというのが俄かには信じられないのです。
さて、営利企業である塾が、無料で何かをやるというのには目的があります。
(1)生徒募集につなげる
(2)データを集める
(3)合格実績を稼ぐ
この3つですね。
(1)生徒募集につなげる
これはわかりやすいですね。おもに低学年で実施される無料テストは、これが目的と考えて間違いないでしょう。無料テストに惹かれて集まってきた生徒・保護者に、その後の入塾を勧誘する目的です。その勧誘法は2パターンです。
◆たいへん優秀なのでぜひ入塾してください。
◆このままでは算数(or国語・理科・社会)が大変なことになります。今すぐ入塾すべきです。
まあ、塾も商売ですから、生徒集めに注力するのは当然です。まして少子化の昨今、過当競争の中でどの塾も必死なのですね。
なかには、小6までをも無料テストで獲得しようと必死な塾も見受けられます。よほど生徒数が減ってきているのかな?などと勘ぐってしまいます。
ただし、この生徒獲得を目的とした無料テストの中には、「優秀な生徒だけ」の獲得を目的としたテストも見受けられますね。例えば、開成や桜蔭などの学校名を冠していたり、最難関中対策に特化したようなテストがそれです。しかも低学年のうちからこうしたテストを無料で実施しているのは、とにかく優秀な生徒を青田買いしたい、という意欲の表れなんでしょう。授業料免除の特待生制度がある塾はそれが目的ですね。
(2)データを集める
これについては、このままでは受験生が少なすぎてテストデータが構築できない(偏差値すら計算できない)場合に、とにかく無料で受験生を集めようとするテストだと推測します。あるいは、四谷大塚の全国統一小学生テストのように、ひたすら大規模に実施することで、全国の小学生の学力データを蓄積していくようなテストもそうでしょう。
(3)合格実績を稼ぐ
さて私が問題視するのはこのケースです。その塾からの合格者は少ないのに、最難関校の学校名を冠としたテストを、しかも6年生の時期に実施しているのは、あきらかに「優秀な生徒の合格実績を何とか手に入れる」目的だと思われます。「全国学習塾協会」なる組織によると、合格実績としてカウントしていい生徒の基準はいちおうこうなっています。
「受験直前の6か月間のうち、継続的に3か月を超える期間、当該学習塾に在籍し、通常の学習指導を受けた者とし、かつ、受講時間数が30時間を超える場合」
緩いですね。
30時間といえば、半日の冬期講習を5日くらい受ければたちまちクリアします。12月になってまでも無料模試を実施している塾というのは、これを狙っているのでしょう。その指導が本当に役立つのなら良いのですが、順調に仕上がってきた生徒を受験直前に変にいじってほしくないというのが教師としての本音です。こうした形でしか合格実績を集められないような塾にまともな指導ができるとは思えませんので。
ちなみに、全国学習塾協会に加盟している塾は多くはありません。加盟塾一覧を見ていると、中小塾が中心で、大手塾がちらほら見受けられる程度です。東京の会員リストには、45の塾がありましたが、そのうち中学受験で大手とよべる塾はわずか3つ程度で、その他は私でも名前を聞いたこともない塾名が並んでいました。
しかも、業界内で合格者数水増しの黒い噂がある塾の名前が載っているのにはあきれてしまいます。
しかし、こうした基準(あくまでも自主基準にすぎませんが)を守っている塾はまだましだといえます。中には、1回無料テストを受けただけの生徒に、電話1本で合格実績のカウントを依頼するようなさもしい根性の塾もありますので。
3.それでも無料テストを受けるなら
もうおわかりのように、私は無料テストというものを信頼していません。企業の思惑に踊らされるのが嫌だからです。個人情報も提供したくありません。模試を受けるなら、きちんと対価を支払って受けるべきだと思っています。それだって、5000円程度の受験料だと、赤字だと思います。
したがって、無料のテストを受けるのは以下のような状況に限られると思います。
1.とにかく1円もお金は使いたくない
教育をコスパで語るのは間違っていると思いますが、実際には塾にもテストにもお金はたくさんかかります。そこで、無料テストを上手に利用することで、少しでも費用を節約したい、そうした考えなら、それも良いでしょう。
2.まだ中学受験をするかどうかわからないので、ちょっとだけお試しで受けるだけ
こういう受け方をする方も多いと思います。ちょうど良いタイミングで受けたいテストがたまたま無料だった、ということですかね。本格的に受験に参戦してから有料のテストに切り替える、そういうことなのでしょう。
3.塾選びの参考にしたい
通塾を考えている塾のテストを受けることで、教室の雰囲気、他の生徒の様子、さらに通塾生のレベルがわかる、そういう考えですね。
4.子供の個人情報を抜かれることに抵抗感はない
1度でもテストを受ければ、住所・氏名・性別・年齢・在籍小学校・志望校・成績、これらの情報を塾に引き渡すことになります。低学年で1回だけテストを受けた塾から、6年生の2月のはじめに受験校・合格校を聞き出そうとする電話もかかってきます。そうしたことに抵抗感が無いのなら、それも良いでしょう。
5.塾の執拗な勧誘をはねのける鋼の意志がある
塾によっては執拗に入塾を勧誘されます。まあ当然ですよね、それが目的だからこその無料テストなのですから。この勧誘を気にされないのなら、それも良いでしょう。
個人的には、4が一番気になります。今の時代は、どこからどうやって子供の個人情報が洩れていくのかわかりません。リスクは最小にしたほうがよいと思うのです。
ところで、知人のお母さまから聞いた話です。ある動物園に幼稚園くらいの子供を連れていったのだそうですね。そうしたら、スタンプラリーをやっていたそうで、入口で台紙を渡されたそうです。スタンプを全部集めると、オリジナルグッズがもらえるのです。本当はお母さまはやらせたくありませんでした。なぜならそのスタンプラリーは「ベネッセ」がやっていたからです。しかし当然子供はやりたがりますよね。しかたなくやったところ、ゴール地点では「個人情報」と引き換えにオリジナルグッズをもらえました。つまらない文房具だったとか。ここで、住所等を書かないとグッズがもらえない仕組みです。本当は書きたくなかったのですが、ここまできて子供が諦めるはずもなく、住所などを嫌々書いてきたそうです。
さて、その後このご家庭には毎月のようにベネッセの通信教育の案内が届くようになりました。そのままゴミ箱に直行させればすむ話ではあるのですが、子供の個人情報が今後どこにどのような形で流れていくのか不安だとおっしゃっていましたね。
企業もいろんな知恵を絞るのですね。
子供の情報を守るのも一苦労です。