中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

帰国生入試の真実:偏差値に表れない実態と対処法とは?

帰国生入試を受ける生徒の実際の実力はどうなのか


帰国生入試を考えるとき、みなさんを悩ませる最大の問題があります。

それは、

偏差値データが役に立たない

ということです。

詳しくお話する前に、偏差値についてまとめましょう。

 

1.偏差値とは?


 そもそも偏差値というものは、「あるテストを受験した母集団の中での受験者本人の相対的な位置」を示すものですね。

 偏差値を計算するためには、標準偏差を出さなければなりません。

 この標準偏差というものは、分散の平方根ですが、ざっくりいうと平均からのばらつき度合と考えてもよいでしょう。

 どんなデータにも「外れ値」というものがあり、偏差値・標準偏差に大きな影響を及ぼします。テストにおいては、極端に高得点の生徒(あるいはその逆)が全体のデータを狂わすわけですね。

 しかし、母集団が1000人くらい集まると、「外れ値」の影響が薄くなり、おおむねデータが正規分布となります。

 

 ちなみに、正規分布とは、データの平均値・最頻値・中央値が一致していて、そこを中心に左右対称となっている分布です。

正規分布曲線

 このように正規分布するようなデータでは、平均点が偏差値50になりますね。

 

こうしてみるとわかるように、母集団が少ないと偏差値が意味をなさないのです。

 

 JOBAという海外帰国生専門塾が実施している「海外・帰国子女センター試験」は、帰国生模試としては最大規模らしい(とHPでうたっている)のですが、それでも200名程度の受験生しかいないようなので、偏差値・順位ともにあてにはなりません。

 

偏差値と学校選びについては、以下の記事に詳しく書きました。

peter-lws.hateblo.jp

 

2.試験科目が複雑すぎる


国内一般入試なら、算数・国語・理科・社会の4科目でほぼ統一されているので、対策もたてやすく順位も出やすいのですが、何せ帰国生入試の受験教科はあまりにもバラバラです。

 

算数・国語・理科・社会の主要教科に加え、適性検査・英語・英語作文・日本語作文・スピーチ・レポート・面接などの中から、各学校が工夫をこらして試験を設定しているため、状況は複雑化しています。

帰国入試試験科目一覧

とくに帰国生の場合は、理科と社会を捨てて算数・国語・英語の対策にしぼっている生徒が多いため、同じような学校に多くの帰国生が集中することとなり、難易度を押し上げてしまいます。


3.考慮すべきは、国内一般受験生との比較

〇男子校

 まずは、この表をご覧ください。私が過去に指導した複数名の生徒の、帰国生入試の合否結果と、一般入試の合格校の一部をまとめてみたものです。

受験結果 男子校

一番左には、帰国生入試の受験結果を示しました。
例えば、聖光の帰国生入試で合格した生徒が、一般入試で開成や駒東に合格していた、というデータです。

 注目していただきたいのは、聖光帰国生入試で不合格だった生徒のその他の合格校です。

 聖光がありますね。これは一般入試での合格です。つまり、帰国生入試で聖光に不合格だったにもかかわらず、一般入試でリベンジを果たしているということです。

 同様に、海城中についても、帰国生入試で海城に不合格だったにもかかわらず、一般入試では合格していますし、麻布や駒東にもきちんと合格しています。

 ここからわかるのは、帰国生入試の受験生のレベルの高さです。

 一般入試で麻布・駒東にきちんと合格できるレベルなのに、海城の帰国生入試では合格できなかったという事実が、帰国生入試の難しさを物語っていますね。


〇女子校

 女子校でも、男子校と同様の傾向がみられます。

帰国入試結果 女子校

 大妻中野に帰国生入試で不合格だった生徒が、一般入試できちんと合格をしていますね。

 女学館については、指導していた生徒は帰国生入試で合格してしまったので、不合格者のその後のデータはとれませんでした。それでも、東洋英和や頌栄女子といった人気校にも一般入試で結果を出しました。

 ところで、もう一つ気になることがあります。

 表の学校の一般入試での偏差値を見てください。

3大塾が出している偏差値を日能研=N、四谷大塚=Y、SAPIX=S と表記するのが一般的らしいのでそれに従います。(早稲田アカデミー四谷大塚の提携塾です)

大妻中野・・・N-43 Y-47 S-32
女子学院・・・N-67 Y-70 S-61

 おわかりでしょうか。

 女子学院に合格した生徒は、SAPIXなら偏差値61、四谷大塚なら70の実力をもっていたと考えることができます。

そんな生徒が、それより25以上、30近く偏差値の低い学校である大妻中野を受験しているわけですので、いくら帰国生入試といえども確実に合格がみこめる受験だったといえます。

一般入試における併願校の組み立て方は、通常ですとこのように考えます。

第一志望・・・女子学院(N-67 Y-70 S-61
第二志望・・・豊島岡 (N-67  Y-70  S-61)
第三志望・・・鴎友学園(N-61  Y-62  S-52)
第四志望・・・頌栄女子(N-58  Y-62  S-49)
第五志望・・・香蘭(  N-57  Y-58  S-47)
※偏差値は、2/1偏差値(豊島岡のみ2/2)のものを出しています。

 第一志望の学校の偏差値より、マイナス5以内のところに第二・第三志望の学校があり、マイナス10で押さえようという戦略です。

 もちろん偏差値だけで受験校を選ぶわけではありませんので、あくまでもこれは一例です。

 つまり、一般入試の場合なら本来大妻中野を受験するはずもない受験生が、帰国生入試を受験しているといえるでしょう。

 一般入試においては、大妻中野の受験生と女子学院の受験生の層は重なりません。

 これは、帰国生入試特有の現象です。

※誤解なきように言っておくと、大妻中野もとても良い学校です。説明会でもそう感じましたし、教え子からの情報でもそう思いました。

 

〇共学校

 共学校の結果をごらんください。

帰国入試結果 共学校

 広尾学園や渋谷渋谷といった、帰国生に大人気の学校ですが、帰国生入試で不合格でも、一般入試で合格した生徒がいますね。

 また、一般入試で麻布・桜蔭といったトップ校に合格できるレベルの生徒が、帰国生入試で渋谷渋谷や広尾学園を受験していることもわかります。

 広尾学園には申し訳ないですが、帰国生の特権(?)を活かして、12月中に合格を押さえ、さらに1月の渋谷渋谷の合格もとり、さらにその後2月1日に麻布や桜蔭にチャレンジしていく(そうして合格していく)、そういう流れだと思います。

 

結論

 一般入試で合格できるレベルの力をつけることを目標とする

 以上のことから、帰国生入試といえども、同じ学校の一般入試で合格できるレベルかそれ以上の力をつけることが必要だと結論づけられます。

 もはや帰国生というだけでは、入試においてAdvantageが期待できないのです。

 

 ライバルは、海外にだけいるわけでもありません。

 

 早めに帰国して、日本の塾でがつがつと4科目の勉強をしていながら、帰国生入試の枠にも参入してくる、そうした「隠れ帰国生」のような猛者たちとの競争に勝つことが必要なのです。

 

 

★渋谷渋谷の帰国生入試作文対策について書いています。ぜひお読みください。

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