中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】多摩の名門校 桐朋学園中学・高校について 自由な校風は本当か

今回は、桐朋中学・高校についてとりあげてみます。

例によって私個人の主観に基づく感想ですので、その点はご了承ください。

1.桐朋という学校

場所は国立です。

国立といえば一橋大学ですね。駅の南口を出て、まっすぐに伸びる並木道を進みます。広い大学通りには、左右にイチョウと桜が植えられていて、春の桜の季節、新緑、そして秋の紅葉と、四季折々の姿で楽しませてくれます。桐朋は、一橋大学を通り越したあたりに位置しています。徒歩15分と少々遠いですが、この道をバスに乗ってしまってはもったいない、ぜひのんびりと(通学時はのんびりする余裕がないとしても)歩いてほしいと思います。この通学路を6年間通うことを考えると、それだけで桐朋に進学したくなりますね。同様の感想を、吉祥寺の成蹊中高でもいだいたことがあります。

都心にある学校は、どうしても校地の確保が難しく、また通学路の環境も良いとはいえないところが多くあります。具体的な学校名をあげることはしませんが、ターミナル駅の繁華街(飲み屋街)を通りぬける学校や、交通量の多い街道沿いを歩く学校などありますね。その点、桐朋は素敵です。

www.toho.ed.jp

戦前の1941年に前身となる学校が山下汽船創業家の寄付により作られましたが、桐朋としてのスタートは1947年ですので、戦後すぐにできた学校と考えてよいでしょう。もっと歴史のある学校だと思っていたので、これは意外でした。まあ、それでも80年近くの歴史があるのですが。

教育目標は3つあげられています。

◆自主的態度を養う

◆他人を敬愛する

◆勤労を愛好する

今時流行の、グローバル化も、国際人育成も、世界に羽ばたくエリート養成もありません。地に足が付いている印象で、保守的な私からすると好ましいのですが、今時のご家庭にはピンとこないのかもしれません。

原口大助校長先生のメッセージにはこうあります。

「・・・そこにいれば子どもが勝手に育つような場所をきちんと用意しておくこと・・・授業をはじめ、生徒への働きかけにいっそうの工夫を凝らし、さまざまな仕掛けを施すことで、桐朋という環境のさらなる充実に力を注ぎ、「自律的な学習者」へと導いてまいります。」

とても大切なことですね。

飾らないメッセージでよいと思うのですが、やはり今時のご家庭には響かないのかもしれません。(繰り返しますが、私はこうした方針は好きです)

 

桐朋といえば、昔から自由な校風で知られています。

麻布や武蔵とも異なる自由、いわば規律ある自由とでもいうべき校風です。

自由な校風の学校を探しているご家庭には、港区の麻布、練馬区の武蔵、そして国立市桐朋を、お住まいのエリアに応じてお勧めすることが多かったですね。

男子校には、2系統あったと思います。規律正しい管理教育型(巣鴨・海城・攻玉社世田谷学園等)と、自主独立型(麻布・武蔵・桐朋)です。

戦前の軍人養成系の学校は、どうしても規律型になりますね。桐朋もその系譜なのですが、戦後はだいぶ自由な学校となりました。

実は、どの男子校も「生徒の自主性にまかせて」いると標榜していますが、実際にまかせている学校は少数です。まかせているようにみせていても、実は教師がコントロールする学校がほとんどですね。

桐朋は希少な「自由」な校風の学校といえるでしょう。

このあたりの見極め方として、私は学園祭(文化祭)に行くことをお勧めしています。

生徒主体の運営なのか、先生方(学校)の目が行き届いているのか。

全体に悪ふざけの匂いがする、まるで大学の学園祭のようでいて、ところどころに生徒の知性が光っている、そして校内には先生方の姿がほとんど見えない、そうした学園祭を行っている学校は、本当に自由な学校なのだと思います。

反対に、学園祭を、学校の良さを外部にアピールする場として、統制のとれた展示がならび、要所要所に先生の姿を見かける、そうした学校は、やはり管理教育型なのだと思います。

そう考えると、桐朋の学園祭は完全に前者ですね。

しかしながら、保護者の希望も大きく変化しています。

自主独立の学校は、自由放任ととらえられ、それよりきちんと管理して大学合格まで導いてくれる学校が好まれるようになったのです。

 

2.大学実績

 正直なところ、桐朋の大学実績は低迷しています。

東大の2002年からの実績を列挙します。

32-44-43-29-32-24-32-22-21-32-25-23-22-13-20-8-13-11-7-9-11-9-12

今年は12名でしたね。

2桁出ているから立派ではあるのですが、昔日の面影はありません。

また、すぐ近くの一橋大学も気になりますよね。桐朋に進学したということは、桐朋に通いやすいところに住んでいるわけですので、一橋大学にそのまま進学したいという生徒も多そうです。

過去10年の数字を並べてみます。

8-18-20-16-9-9-8-14-8-4

となっています。2024年は4名の合格でした。

桐朋のHPにきちんと2015年のからの大学実績の詳細が載っていますので、その他の学校についてはご確認ください。

いくら、大学進学だけが中高選びの基準ではないとはいえ、やはり気になる部分だと思います。

その理由について、巷間ではこのようなことが言われています。

 

◆自由放任すぎたため

鉄緑会の指定校から外れたため

◆大学のための塾に通いにくいため

◆学校の授業のレベルが高くないため

◆生徒が遊びすぎたため

◆近隣の選択肢が増えたため

◆いじめ自殺問題があったため

◆進路指導が丁寧ではないため

 

あくまでも噂レベルの話です。学校の授業のレベルなど、主観にしかすぎませんので検証不可能です。

ただし、前述したように自主独立(自由放任)を標榜する学校が昨今あまり好まれていないことは私も感じるところです。面倒見の良いとされる学校が人気ですね。

また、選択肢が増えたことも事実です。

2008年には明大明治が調布に移転しましたし、国分寺には早稲田実業があります。早実は2002年に共学化して以来、女子の人気校にもなりました。また、小金井には中大附属もあります。

さらに国立には都立国立高校もあります。2024年の東大実績は17名、一橋は19名でした。2023年は東大が10名、一橋は22名です。

国立高校とあまりかわらない(あるいは国立高校のほうが少し良い)大学実績なら、無理して中学受験で桐朋を選ぶ必要はない、そう考えるご家庭があっても不思議はありません。(本当は都立高校と私立中高一貫校は比較すべきでないのですが)

 

3.中学入試

HPにはこうあります。

今年度の応募者数は、第1回が375名、第2回が640名で、のべ1015名でした。また、両回出願者は247名でした。昨年度が、第1回が380名、第2回が597名、のべ977名で、両回出願者は234名でありましたので、第1回はほぼ変わらず、第2回は大きく増加した形となりました。桐朋に魅力を感じ、入りたいと思ってくださった方が多くいらしたことを大変喜ばしく感じつつも、頂戴したありがたい評価にきちんとお応えしていけるよう、今後もより充実した桐朋教育の実践を目指して参りたいと思います。

また、過去3年間の募集状況・合格者平均点等が掲示されています。

情報公開としては、ごく普通です。

また、HPのつくりも、オーソドックスなものです。

私は、学校はもっと情報公開に積極的になるべきだと思っています。

少なくとも、その学校を志望しようとする受験生に向けては、積極的に情報発信してほしいのです。巷には塾や雑誌やブログ等、中学に関する情報はあふれています。しかし、どれが信憑性が高い情報なのか、業界の人間でもなければ判断はつかないと思います。その点、学校が公式HPで公表する情報は唯一といってもよいほど信頼性の高いものです。したがって、学校がどこまで受験生に情報を公開しているのか、そこを見ると学校の姿勢というものが垣間見えてくると思うのです。

その観点からは、桐朋のHPはオーソドックスすぎて、まだまだ受験生の方を向いていないような気がします。せめて、過去の入試問題・解答くらいは公開してほしいと思います。

また、学校説明会も年に6回、校内見学会が11月に1回となっています。これは、必要最低限だと思います。

 

せっかく良いところがたくさんある学校なのですから、もっと積極的に情報公開しないのはもったいないと思うのです。