中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中高一貫校】言われてしまった恐怖の言葉「高校は他の学校をお考えになったほうが」

教え子だった中高一貫校の中3になる生徒の親から聞いた話です。

学校の面談で言われてしまったそうです。

「高校は、他の学校をお考えになったほうがよろしいと思います。」

恐怖のお言葉です。

今回は、中高一貫校生が高校に上がれない場合について考察します。

そもそも高校にそのまま上がらない場合とは?

 

せっかく頑張って中学受験して進学した中高一貫校です。それを高校に上がらずに出る理由というのはいったいどんなものなのでしょう?

 

1.出席日数が足りない場合

2.成績不振

3.素行不良

4.学校になじめない

5.他に魅力的な高校がある

 

1.出席日数が足りない場合

 中学校では、極端な話、出席日数がゼロ日でも卒業はできます。

しかし、高校ではそうはいきません。

高校の出席日数の取り決めは学校によって様々ですが、一般には2/3から3/4程度となっているようです。

仮に年間出席日数が200日の学校だとして、50日~67日休んでしまうとOUT!と考えましょう。

中学校で半分程度しか出席していなかったり、午後からしか授業に参加できていなかった、そうした生徒の場合、学校としてもそのまま高校に上げることに問題があると判断するしかありません。

なぜなら、そうした生徒が高校1年になった瞬間に生まれ変わったようにきちんと学校に通うとは想定できないからです。

 

2.成績不振

 これには2パターンあります。

学校サイドで、「これ以下の成績の子は高校に上げない」という基準を設けている場合と、「基準は設けていないが、あまりに成績不振だと高校の勉強についていけないことは明らかなので引導を渡す」場合です。

定期試験の結果を見れば予想はつきますし、ほとんどの場合は、担任から呼び出されての面談などが事前に、それも何度もあると思います。

そうした学校からのメッセージを正しく受け止められず、

「まあ高校生になれば何とかなるものでしょ?」などと甘く考えてはいけませんん。

 

3.素行不良

 これは、本人そしてご家庭の問題です。

もちろん学校によって、何を「素行不良」と判断するのかは様々です。しかし「このままこの生徒を高校に上げるわけにはいかない」と判断されてしまった場合です。

うてる手は何もありません。

ご家庭でじっくりと現状、そし将来について話し合う他ないでしょう。

場合によっては、高校進学の是非も含めて幅広い想定が必要だと思います。

 

4.学校になじめない

 入念に下調べをし、何度も学校に足を運び、そして受験をして進学した学校だとしても、実際に入学した後に「なじめない」場合もあるでしょう。

学校の体質・方針が我慢できない

同級生たちに我慢できない

教師が信頼できない

→もうこれ以上この学校には通いたくない

そう考えてしまったのなら、高校進学を機に、高校を移るという場合もあると思います。

 

5.他に魅力的な学校がある

 例えば、高校からアメリカのボーディングスクールに行ってしまう生徒もいます。あるいは、進学校から大学付属校に移る生徒もいます。場合によっては、将来の進路に直結した高校に移ることもあるでしょう。専門高校や高専、音大付属高校などでしょうか。

 

いつ頃言われてしまうのか?

 

〇中3の前半(夏前まで)に、担任教師から言われる。

 ある意味親切な学校・先生だと思います。もし他の高校に出るのなら、そのための準備が必要だからです。学校見学・訪問・説明会参加・高校への相談・受験準備、どれをとっても時間が必要です。せめて夏期講習くらいは高校受験の塾に通う必要があるでしょう。

そうした時間の余裕を考えると、そして「この生徒はたぶん無理じゃないかな」と判断を下す時期としては、中3になった前半ということになるのだと思います。

〇高校生になる直前に担当教師から言われる

これはひどいですね。何の準備もできません。12月に言われたとか、高校への出願締切2週間前だったとか、そうした話もあるようです。

もしかしてぎりぎりまで学校も何とかしようと考えてくださったのかもしれませんが。

 

〇中2になる頃にはすでに言われた

よほど成績不振(出席日数不足)が目立ったのでしょう。

先生方も多くの生徒を見てきていますので、「この生徒はこのままでは中3になっても改善がみこめない。」と判断し、中2になるあたりから厳しいお話をしてくださるのだと思います。

これを、奮起を促すために厳しめのお話をしているだけ、と甘く考えてはいけません。

先生としても、こんなに言いにくいことをわざわざお話しになっているのです。それ相応の理由があると考えましょう。

「今のままでは高校に上がれない可能性があります。上がれたとしても学習についていけないかもしれません。」

もし中2のうちにこう言われてしまったとしたら、

「だから必死に勉強してくださいね。」

というメッセージではないと考えましょう。

正しいメッセージはこれです。

「現状の成績推移や授業の様子を見る限り、高校に上がれる基準を満たさないことはほぼ確実である。であるなら、今のうちにそのことを伝えて、高校受験の準備をさせてあげるべきだ。」

 

どうすればいい?

 

どうもこうも、他の高校を検討するしかないでしょう。

なぜなら、改善の余地がある段階ではこのようなお話は出てこないからです。

こういわれてしまった以上、高校受験に切り替えるほかありません。

もちろん高校進学しないという選択肢も存在します。

高校受験する場合

 内申は期待できませんので、都県立高校は考えられません。私立高校受験の一択です。それにしても、私立高校としてもリスクはとりたくありません。せっかく中高一貫校に通っていたのに、あえてそこを飛び出して自分の高校を受験する生徒はどんな生徒なのか考えてしまいますね。

そうした考えを吹き飛ばすような圧倒的な高成績で合格するか、あるいはどんな生徒でもwelcomeの高校を選ぶか。

なかには親身に相談にのってくださり、受け入れを検討してくださる高校もあると思います。

いずれにしても、今お通いの中学校の支援はほぼ期待できませんし、周囲の環境も受験には不向きなのは覚悟しましょう。

 

実はお薦めなのは、中学を退学し、地元の公立中学に編入することです。

全員が高校受験する環境のほうが勉強しやすいのは当然です。

しかも、自宅から近い。時間は大きなメリットです。

ただし、プライドは捨てなくてはなりません。

「あれ、君はたしか私立〇〇中学に受験して進学したんだよね。どうしてうちにきたの?」とかつての小学校の同級生たちから好奇の目がそそがれます。

 

どうしてもそれは耐え難いのであれば、せめて塾は「高校受験専門塾」にしっかりと通いましょう。もう自分が「中学受験成功組」であることや「私立中学に通っている」ことなど忘れてください。

ただの高校受験生です。

それならそれだけに邁進しなくてはなりません。

 

高校受験はせず、通信制高校あるいは高卒認定を目指す場合

 実は簡単に見えて最も茨の道です。

そもそも中学校での学習ができなかったのです。

さらにモチベーションを維持するのが難しく、自らを律する必要のある通信制高校等で勉強に取り組めるものなのでしょうか?

文部科学省によると、全日制高校の中退率は1.3%に対し、通信制高校の中退率は5.6%となっています。中退率は3倍を超えるのです。

しかし、別の調査を見ると、卒業率は全日制高校とそん色ないというデータもあります。また、卒業率は30%だという意見も見かけました。

どうやら、「在籍卒業率」という考え方がわかりづらいのですね。在籍卒業率というのは、現在在籍している生徒に対して何人が今年卒業したかの割合です。

高校生が3学年として、途中退学者がいないと仮定すると、この割合が1/3,つまり33%であれば、全員卒業していると考えることができます。

やはり文部科学省のデータから計算すると、2019年の数字としては、卒業生が60691人で在籍者数が206948人、在籍卒業率が29.3%となりました。ちなみに全日制高校の場合は32.9%です。前述の「卒業率は30%だ」という意見はこの数字を誤解したのでしょうね。

しかし、この数字は分母、つまり在籍生徒数にからくりがあります。

通信制高校の場合、全日制とは大きく異なり、在籍している年齢層が幅広く、また卒業まで3年間より多くかけている生徒が多数いるのです。また、途中退学者が多いと、この数字も高めに変化します。

ということで、入学者数と卒業生数で比べてみました。毎年およそ8万人程度が入学し、卒業しているのが6万人程度ですので、卒業率は75%となります。

もしかしてこれが実態に一番近い数値なのかもしれません。

通信制高校は毎年生徒数が増えています。以上の考察は、生徒数が変わらないことを前提としていますので不正確なことはお断りしておきます。

 

もう一つの数字を文部科学省の報告書から拾いました。

卒業後の進路です。

大学進学率は、通信制高校は17.6%です。

全日制高校の56.5%とはずいぶん開きがあります。

 

よく、通信制高校から東大に、といった話もききますが、それはレアなケースです。

勉強の意欲も能力も非常に高かったのに、何等かの事情により「高校へ通学できなかった」生徒の場合だからです。

 それでも、こうした選択肢が増えているのは実にありがたいですね。

じっくりと検討しましょう。

 

大逆転だって夢ではない

 

人生、何が幸いするかなんてわかりません。

もしかして別の高校に通ったほうが、大学入試でうまくいくかもしれません。

大学付属高校に進学できれば、大学入試を回避でき充実した高校生活が送れるかもしれません。

そのまま我慢しなかったことでストレスのない高校生活を送れるかもしれません。

将来の目標を見つけることができるかもしれません。

 

前向きに考えましょう。