中学受験のプロ peterの日記

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【中学受験】何かと気になる、三田国際学園は、本当に国際的な学校か

今回は三田国際学園について書いてみましょう。

この学校を持ち上げる意図も貶める意図もありません。率直な私の感想を書いてみるだけです。完全に主観ですし、事実の正確さも保障できないことはご了承ください。

1.成り立ち

学校公式HPによれば、学園の沿革はこのようになっています。

 

1902(明治35)戸板関子により戸板裁縫学校が創立

1904(明治37)三田四国町へ移転(現在 学校法人戸板学園 本部の所在地)

1916(大正5)三田高等女学校を創設

1937(昭和12)三田高等女学校から戸板高等女学校に改称

1947(昭和22)新制度により戸板中学校を発足

1948(昭和23)新制度により戸板女子高等学校を発足

1993(平成5)世田谷区用賀へ校舎を移転

2015(平成27)「三田国際学園中学校」「三田国際学園高等学校」と改称し、共学化をスタート

 

🔗https://www.mita-is.ed.jp/

 

実は、私は三田国際になる前の、戸板女子中高時代の校長先生とお話をしたことがあります。私の教え子でこの学校に進学した生徒も志望した生徒もいなかったもので、ノーマークの学校でした。そうした時には、持ち出す話題がなくて困ってしまうものですよね。その頃私は用賀の歯医者に通っていたので、駅周辺で戸板の生徒をよく見かけたのですね。そこで、「駅でよくお見掛けする戸板の生徒さんは皆さん真面目そうですね。」とまあ、リップサービスといってしまえばそうですが、そんなようなことを言ったのです。そうすると、校長先生が両手をワイパーのように目の前で横に振りながら、「いやいや、そんなことは。」と全否定なさったのを覚えています。

もちろん謙遜されただけだと思います。謙遜にしてはオーバーアクションだったのが気になりますが。

それからほどなくして、三田国際学園へと生まれ変わったのは、私には意外ではありませんでした。

 

2.大橋清貫氏について

ご存じのように、三田国際学園の理事長は大橋清貫氏です。

この方は、「学校再建のプロ」ともいうべき人物です。

もともとは塾の経営者でしたが、広尾学園の成功をうけて、有名になったのです。

1981年:進学塾俊英館を設立
2005年:学校法人順心女子学園理事長に就任
2007年:学校法人順心広尾学園広尾学園中学校・高等学校)に改称して理事長・学園長に就任
2013年:戸板学園教育監修理事に就任
2015年:戸板中学校・戸板女子高等学校を三田国際学園中学校・高等学校に改称・共学化。学園長に就任

2023年: 学校法人星美学園サレジアン国際学園中学校・高等学校の学園長に就任

 

分かりやすくまとめると、

2007 順心女子学園→広尾学園(共学化)

2015 戸板女子中高→三田国際学園(共学化)

2023 星美学園(女子)→サレジアン国際学園中高(共学化)

ということで、生徒募集に苦戦していた女子校の共学化→人気校化→偏差値上昇 に3回も成功した人物ということになります。

3回目が成功かどうかはまだわかりませんが。

 

広尾学園についてはこの記事をどうぞ。

peter-lws.hateblo.jp

三田国際も、開校初年度から、大橋氏の手腕に期待して人気が高かったことを覚えています。

 

3.偏差値について

 三田国際の入試制度は非常に複雑です。募集人員も1回の入試につき5名~30名程度の入試が、帰国生入試を含めると延16回分にも細分化されています。

どうも大橋氏がからむと入試が複雑化するというのは、私の個人的感想です。

2月1日午前の普通入試の偏差値を見てみましょう。

手元にあった6年前のサピックス偏差値表によると、男女とも30未満となっています。サピックスで30未満になっているのは、受験生が少なすぎて算出できていないことを意味しています。

しかし、今年の偏差値表を見てみると、男女とも47となっています。

男子校で47付近の他の学校を見てみると、巣鴨攻玉社桐朋といった学校があります。女子では東洋英和です。

さすがというべきか、入試難易度がここまで高まりました。募集定員が25名だとしても大したものです。

日能研の偏差値表では、58と、中大横浜と同等です。

 

4.大学実績について

 6年前の偏差値でいえば、S-30,N-45 ですので、今年の大学実績はこの生徒達が6年間三田国際で過ごして出した実績ということになります。

〇国公立:22名(含東大2名)

〇早稲田:40名

慶應:37名

となっています。現在の偏差値水準でいえば、目立つ実績であるとはいえませんが、6年前の偏差値水準で考えるとなかなかといえるのではないでしょうか。

過去4年間の推移を見てみると、

東大・・・0→0→0→2

早大・・・2→16→24→40

慶大・・・5→15→19→37

となっていますので、確実に大学実績は伸びています。

また、海外大学にも実績を出しているようです。

もっともHPには、有力海外大学だけでも160名合格となっていて驚いたのですが、よく見ると、「2021年~2024年までの過去4年分のうち、一部抜粋。*は編入を含む」とありました。なんだ、びっくりした。

個人的には、このような複数年度合算の実績公表は好きではありません。あきらかにミスリードを誘っているからです。

 

5.ロケーション

 田園都市線の用賀駅から徒歩5分となっています。ただし、歩道が相当狭く、2か所の信号を必ず通過しなくてはならないので、朝・夕の通学・帰宅時には生徒で大渋滞します。5分は無理ですね。

用賀駅は駅ビルに少々の飲食店などがあり、周辺にもスーパーやファストフード等が見られる、住みやすそうな町ですね。学校周辺も落ち着いた住宅街です。

校地は1.9万㎢ほどです。麻布や駒東が2万㎢ですので、それより少しだけ狭いのかな。共学校のほうが広い傾向にあり、例えば明大明治は4万㎢ですが、生徒数からすれば十分な校地といえるでしょう。緑も多い印象です。

 

6.わかりづらいクラス編成

2021年までは、三田国際のコース編成は、

〇本科

〇インターナショナル

〇メディカルサイエンステクノロジー

の3種類でした。

「インターナショナル」が帰国生、「メディカルサイエンステクノロジー」が医学部進学を意識したコース、そして一般の国内生が「本科」ということで、これはこれでわかりやすいものでした。

ところが、2022年から、コースが再編されます。

◆インターナショナルサイエンスクラス(ISC)

◆インターナショナルクラス(IC)

の2種類となったのです。さらに中2からはこれらに加えて

◆メディカルサイエンステクノロジークラス(MSTC)

を設けられました。

私の理解では、インターナショナルクラス(IC)が英語ネイティブの生徒達で、インターナショナルサイエンスクラス(ISC)が帰国生と国内一般生のミックスということだと思います。

インターナショナルサイエンスクラス(ISC)でも、英語レベル別の3コース編成として、中・上位クラスはオールイングリッシュの英語の授業となっています。まあ今時の英語の授業では常識ですのでこれは普通です。

印象としては、英語ネイティブスピーカーの帰国生、ノンネイティブの帰国生、さらに帰国生枠ではないが英語が得意な国内生、こうした生徒を積極的に受け入れるという方針のように思えます。インターナショナルサイエンスクラス(ISC) には英国算の3科目入試があり、さらに英検2級以上の生徒は英語の試験が免除となっているのがその証拠です。

こうして学内に英語が普通に飛び交う環境になると、一般国内生にも良い刺激となり、全体としての英語力が向上することを狙っているのでしょう。多くの学校で同様の手法がとられていますね。

これがうまく機能すると、今後海外大学への進学者が増えることが期待されます。

 

7.生徒の様子・校風、そして今後

私が知っている生徒の様子だけからの感想にすぎませんが、子どもっぽい生徒が多いような印象を持っています。あくまでも印象です。

この「子どもっぽい」という言い方だとネガティブですが、「子どもらしい」といえば悪い評価ではありません。

学校・先生の指示を意図的に破ったり無茶をしたりする生徒は少なそうです。教育面も生活面も学校におまかせして安心したい、そうした生徒・ご家庭には向いていると思います。

こうした新興校(10年に満たない)の場合、校風や生徒の様子を評価するのは難しいものです。まだまだ確立していないからです。卒業生が自分の子弟を進学させる、それくらいの年数が経たないと「校風」について語ることはできません。

校風が確立していないかわりに、変化のスピードが速い学校です。

三田国際では、そのコンピテンシーとして「共創」「問題解決能力」「リーダーシップ」「コミュニケーション」「社会参画」「革新性」「異文化理解」「創造性」「責任感」「探究心」「率先」「生産性」を掲げる。さらに、この12のコンピテンシーを実現する力として、「考える力」「英語」「サイエンスリテラシー」「コミュニケーション」「ICTリテラシー」という5つのスキルの獲得を挙げる。

これは東洋経済の記事からの引用ですが、わかりますでしょうか?

Competencyは能力・資格・適性という意味ですが、カタカナ表記の「コンピテンシー」は、企業人事の現場で「高い成果を出す個人の能力や行動特性」という意味でつかわれていますね。

また、教育の3つのキーワードとして、“THINK & ACT” “INTERNATIONAL” “SCIENCE”があげられています。

個人的には、学校教育において、カタカナ語・英語をちりばめた方針を見ると警戒したくなるのですが、ここはどうなんでしょう?

本気で「12のコンピテンシー」を実現できるのか、見栄えの良いスローガンで終わってしまうのか、その判断はもう少し保留したいと思います。

こうした方針を堅持し発展させることで、唯一無二の「三田国際ならではの教育」を実現できるのか、それとも「やっぱり東大の合格者数が大切」という、いわば旧弊な価値観に流されて大学予備校化していくのか、今後に注目したいです。

 

とりあえず、高2のハワイ研修は羨ましい。