(2024.1/10に加筆したのは、3.未来の選択肢をどうとらえるのか、の部分です)
前回の記事の続きです。
1.志望校を迷いすぎないことも大切
さて、学校を選ぶさいに気になる点は様々です。
偏差値・大学進学実績・設備・教育内容などなど。
それに加えて子供の成績が上下するので、そのたびに親の気持ちは乱れに乱れ、ついには「どこでもご縁があった学校で」という諦観の境地に達することでしょう。
しかし悟りにいたらぬわれら凡人のこと、周囲から学校の噂など入ればまた迷い、模試の結果で一喜一憂し永遠ループから抜け出せなくなります。
こんな都市伝説のような話があります。
入試本番、大雪のため交通機関はひどいことになり、試験時間をずらす学校がいくつも出ていた。第一志望のA中学の受験を終えてから、最後まで受験を迷っていたB中学の試験が午後に変更されたことを知ったある受験生、そのままB中学へ直行し、奇跡のダブル合格を果たしたとか。
あまりにもできすぎた話なので、たぶん fictionだと思います。
しかし、入試当日の朝に、複数の学校の受験票を手にして、どちらの学校を受験すべきか、どちらの学校へ向かう電車に乗るべきか、ホームで迷った親子を実際に何人か知っています。迷うにもほどがあると思います。
徹底的に考え抜いた受験パターンを厳守するのが鉄則なのです。
2.立地が重要
まずは立地。
この物理的な課題を熟考しましょう。
学校の近くに引っ越すという奥の手を使える人は、どうぞ使っていただき、以下の文は読む必要はありません。
山脇なら赤坂4丁目、麻布なら元麻布2丁目、JGなら千代田区1番町。住めるものなら住んでみたいですね。
一般的には、学校までのアクセスは一度進学が決まってしまえば、自分たちでコントロールできない課題です。
子供が毎日6年間通学する負担は大きい!
しかも偏差値上位の学校ほど荷物が重いものです。
家庭学習用の教科書類に加えて、塾のテキストまで。通学カバンの重さと偏差値で散布図をつくれば相関関係が明らかになりそうです。
ドアtoドアで1時間。
一般にそう言われていますが、近いにこしたことはありません。
東北の震災以降、交通機関が全滅しても帰りつける距離を重視する家庭も増えました。学校側から、緊急時のお迎えを要請されることも考慮しましょう。
上りと下りのどちらに学校があるかによっても状況は変わります。
また、家庭学習の時間の確保も考慮すべき重要なポイントです。
私の家の近所に、高校受験をした娘さんがいました。進学したのは県を二つまたいだ所にある大学付属高校。人気校です。
しかし遠かった。
自宅から駅まで15分、そこから高校最寄り駅まで2時間15分、さらにバスで15分。ロスタイムを考えると、往復で6時間近くの時間をかけて通学していたのでしょう。
夜明け前の真っ暗な道を歩いている娘さんをよく見かけましたが、あれでは部活動もままならなかったはずです。3年間耐えれば大学にそのまま上がれるご褒美が待っているとしても、その頑張りは大変なものです。
本人が納得していれば他人がとやかくいう問題ではないとはいうものの、この往復6時間が2時間なら、毎日4時間は何かに使える時間があったことは間違いありません。
なぜこの学校を受験し進学したのかはわかりません。
通われていた塾の合格実績稼ぎに利用されたのでなければよいのですが。
残念なことに、一部の塾には、合格実績を稼ぐために、進学するつもりもない学校の受験を無理強いされるケースもあるとききます。
中学受験でいえば、首都圏の生徒が関西の灘中を受けるようなケースですね。ある塾では参加費無料の灘ツアーを開催して新幹線やホテルまで手配してくださるそうです。もちろん受験料も塾持ちです。
首都圏中学入試本番が2月1日、その2週間前に関西まで遠征(しかも灘中の入試は2日間あります)して本番入試に悪影響がなければいいけど、と他人事ながら心配してしまいます。
立地として、閑静な住宅街にある学校を好まれる方も多いですね。もちろん学校周囲の環境は大切です。しかし、全ての学校が緑豊かな環境に立地しているわけもなく、都心の学校ほどその条件は難しくなります。
しかし、べつに騒がしい都会の真ん中であってもさほど問題ではないです。周囲より学校の中のほうが騒がしいものですから。
とはいえ、朝まで飲んでいた若者や道端で泥酔している中年をよけながら繁華街を通り抜け通学するのは避けたいですね。
一度(何度でも)、子供の通学時間(往きと帰り)に、志望校まで行ってみることをお勧めします。
通学経路や所要時間の確認もできますし、通学路の環境や電車の混雑具合も確認できます。
最近たまに聞くのが、「学校の帰りに鉄緑会(東大実績がうりものの中高一貫校生用塾)に行きやすいから」という基準です。
本末転倒です。
この中高一貫生用の塾については別の記事とします。
3.未来の選択肢をどうとらえるのか
今、手元にちょうどあったサピックスの偏差値表を見ています。
2月1日以降の受験日で、偏差値60以上の学校に別学・共学(進学校)・大学付属校、それぞれどれくらいあるのでしょうか?
男子校・・・開成・麻布・駒場東邦・武蔵・聖光学院・栄光学園・筑波大駒場・海城・早稲田・
女子校・・・桜蔭・女子学院・豊島岡
※広尾学園のような午後入試の学校はカウントしていません。入試を細分化して1回あたりの定員を絞って実施される午後入試は、偏差値が異常に高く算出されるからです。
これだけ見てみると、上位(偏差値表上の)校には別学が多いことがわかります。
これには理由が2つあります。
そもそも成績上位層は、大学入試で国立・医学部を目指す生徒が多いため、大学付属校を志向する生徒が少ないのです。もう一つには、このレベルの受験生が志望する学校で共学進学校は事実上渋谷渋谷の1択だからです。(渋谷幕張もありますが、距離的に志望しない生徒も多い)
さて、偏差値50台の学校ではどうでしょうか?
男子校・・・早稲田中・本郷・逗子開成・サレジオ学院・芝・本郷・攻玉社・巣鴨・桐朋・鎌倉学園・浅野・都市大付属・城北・世田谷学園・
女子校・・・雙葉・洗足学園・吉祥女子・フェリス・鴎友学園・学習院女子・白百合・横浜共立・お茶の水女子大付属・浦和明の星・頌栄・東洋英和
大学付属・・・早稲田実業・中大横浜・明大明治・青山学院・東京農大・法政二・慶應普通部・早大学院・明大中野・立教池袋
ざっとこんなところでしょうか。
このゾーンですと、共学進学校は、公立中高一貫校を覗けば、事実上広尾学園系の一択です。大学付属の中には、進学校色の強い学校もありますが、気にせずリストアップしました。学習院女子も学習院大学への推薦枠が多いですが、こちらも気にしていません。あくまでも偏差値表をざっと眺めてリストアップしただけです。
偏差値40代から下になると、別学から共学化した学校が散見されますが、上位校のほとんどが別学なのですね。
こうしてみると、巷間ネット掲示板で議論されているような、「今や共学の時代、別学は古い」といったような共学推しの論調は、つまるところ渋谷系と広尾系を推しているということがわかります。
また、大学付属人気というのも、上位層のものではなさそうです。大学付属校最難関の慶應・早稲田についても、上位層なら大学入試で容易に合格できる(実際には容易ではありません)と判断するのでしょう。
さらに、大学付属を選ぶということは、12歳時点である程度子供の未来を確定することになります。確固たるビジョンがなければ、選びにくい選択肢ということでしょう。
「せっかく開成中に進学したのに、6年後に早稲田大学だったら、最初から早稲田実業にでもしておけばよかったのに」といった声を聴くことがあります。開成と早稲田実業のところに、他の学校名を入れたバージョンもありますね。「せっかく駒東に進学したのに、6年後に中央大学だったら・・・」
実にくだらない。
まったく私立中高6年間の教育というものをわかっていないのでしょう。
中高一貫校に進学する目的は、6年後の大学進学にあるのではありません。6年間の学びと出会いそのものに替え難い価値があるのですから。
4.共学or別学、どちらを選ぶべきなのか?
共学か別学か。どうしたらよいのでしょう。結論は出ないですね。
見ていると、これについては、親が中学受験経験者かどうかで意見が分かれるような気がします。
実は、親世代が中学受験した時代には、首都圏に共学の進学校は数えるほどしかありませんでした。
千葉に渋谷幕張が開校したのは1983年、渋谷教育学園渋谷の開校は1996年です。
それ以前というと神奈川の桐蔭学園くらいでしょうか。あとは国立の筑波大附属(1978以前は教育大附属)と学芸大附属がありましたが。
したがって、当時首都圏で中学受験した方々の進学先は、共学なら大学附属、あとは別学がほとんどということになるのです。
人はどうしても自分の経験から逃れられませんので、親が中学受験経験者ですと、進学校であれば、別学を基準に考えることが多くなるのもわかります。
渋谷系の学校、まして広尾系の学校など聞いたこともないので、選択肢にあげづらいことは考えられますね。
ただ、私が今まで相談をうけた方には、「絶対別学でなくてはならない」「共学しかありえない」という強烈な共学推し・別学推しの声はありませんでした。だいたいの方は、「子供は共学がいいと言っているけれど」と言いながら、受験の組みたてのなかに別学も入っている、そんなかんじですね。
あるいは、「自分は大学附属で楽しかったが、息子にはもっと勉強して大学受験をさせたいので進学校にすすませたい」といったものくらいでしょうか。
子ども本人の希望として、とくに女子生徒には、別学より共学を好む子が一定割合いますね。
普段から女子よりも男子と遊ぶことが多いようなタイプの子たちです。
それでも、志望校を見ると、共学と別学がバランスよく配置されているケースがほとんどです。
実際に進学した子供たちからも、「共学だから〇〇だ。」「別学だから〇〇だ。」という声はほとんどあがってこないものです。皆自分の学校について楽しそうに語ってくれるのが普通です。
別学だと男女の付き合い方を学べず大人になってから苦労するという意見も世間にはあるようですが、実にくだらない意見です。
学校は男女の付き合い方を学びに行くところではありませんので。
だいぶ前の話になりますが、同じ小学校に通っていた4人の教え子が、大学生になったから会いたいと連絡してきたことがあります。
会いたい=飯おごれ、ということなのはわかりきっていますので、財布を厚めにして出かけました。
4人は、麻布→文1,鴎友→文3,駒東→理1、桜蔭→理3,ということで、東大のキャンパスで遭遇してやってきたのですね。
それにしても皆優秀だったのだなあ、とあらためて感慨深いものがありましたが、小学校を卒業してそれぞれ別の学校に進学したのに、それなりに繋がっているのが自分のころとは違うと感じます。SNSが当たり前の時代に、別学or共学という議論はあまり意味がないのでしょう。子供たちの付き合いのフィールドは、もはや学校の枠を大きく超えて広がっているのです。
共学・別学にこだわる学校選びよりも、子供が行きたい学校・親がすすめたい学校を考えて、それがたまたま共学/別学だったというほうが、学校選びの自由度が高まると思うのです。
ところで、この記事を書きながら、学校のHPで開校年を確認していたところ、渋谷渋谷のHPには沿革という項目がみつけられませんでした。前身の渋谷女子高校の時代はなかったことにされているのですね。過去よりも未来指向ということなのでしょう、きっと。
もしや、と思って広尾学園のHPを確認したところ、前身の順心女子学園のことはきちんと書かれていました。また、三田国際のHPにも、前身の戸板女子のことが載っています。良かった。
「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目となる」
ワイツゼッカーの言葉を引用するのは性格が悪すぎますかね?