中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

中学受験でよくある質問とその答え:親が知っておくべき基礎知識 その1

今回は、中学受験について親が知っておくべき基礎知識をQ&Aスタイルでまとめてみます。

※できるだけニュートラルかつフラットな視点を心がけました。私の30年以上におよぶ経験に基づく本音のアドバイスです。

Q:年収1000万以上ないと中学受験してはいけないの?

いきなり生臭いお話で恐縮です。

しかし、避けては通れない話題です。

この1000万円という金額は、文部科学省の学習費調査に基づいています。

中学校 年収比較

一目瞭然ですね。

私立中学のご家庭の過半数が年収1000万円以上となっています。

公立中学のデータは、一般的な子育て世帯の年収分布を示しています。

しかし、よく見てみると、1/4のご家庭が、年収600万円未満であることがわかります。400万円未満のご家庭もいますが、これはかなりレアなケースだと考えてよいでしょう。

 ◆子どもが優秀で、塾も中学校も特待生

 ◆祖父母の支援

この2つが考えられます。

また、現在住宅ローンを抱えているのか、会社の社宅の有無、子どもの人数、こうした条件も重なりますので、一概には年収の条件を設定はできません。

簡単にいうと、年収800万円を一つの目安と考えるとよいと思います。

もちろん、これを下回ると中学受験できないとか、上回れば安心とかいうことではありません。

実は、子育て世代と思われる40代前半の平均年収は540万円ていどです。40代前半で年収800万円以上の割合は2.9%です。

もう少し細かくみてみます。

夫婦ともに42歳で12歳の受験学年の子どもがいるとします。

42歳の平均年収は、男性が573万円、女性が405万円となっています。合わせると978万円です。(このデータは転職サイトから引用しました。)

世帯年収を考えれば、多くのご家庭が私立中学進学者平均に該当するのではないでしょうか。

 

Q:塾には何年生から入れればいいの?

各塾は宣伝に必死です。

塾に入れるのは早ければ早いほどよいのでは? と焦ります。

また、塾によっては、定員にすぐ達するため、低学年のうちに入塾して席を確保しなくてはならない、そんなところもあります。

一旦冷静になりましょう。

塾には4年生から通えば十分です。

入試に向けてのカリキュラムは、どの塾でも4年生からスタートさせるからです。

それ以前の学年の塾通いの目的はこんなところです。

 〇早くから塾に通うことに慣れる

 〇家にいても勉強しないのでとりあえず塾に通わせる

 〇家で親が勉強を見てあげられない

逆にいうと、家で低学年の学習計画を立てられるなら、とくに早くから塾に通う必要などないということになります。

定員がある塾もありますが、もし4年生のときにその塾に入れなくても、他にいくらでも良い塾はあります。

焦る必要はないのです。

 

Q:集団指導塾と個別指導塾、どっちがいい?

 最近は、個別指導塾もずいぶん増えました。集団指導塾よりも勢いを感じるくらいです。

しかし、この「勢いを感じる」という印象には理由があります。

 ◆教室展開費用が安いので面の展開が可能

 ◆教師のぼろが出にくいので、大量出店が可能

 ◆集団指導塾の合格実績に乗っかれる

辛口ですいません。

もちろん良心的な個別指導塾もたくさんあるとは思います。

実は、塾の世界でもっとも大変なのは以下の2点なのです。

 ◆教室に適した物件の確保

 ◆優秀な教師の確保

塾は、教室と教師さえいればできる開業障壁の低い業態です。

逆にいえば、この2つが確保できなければ塾は開けません。

そして、駅前の好立地に教室を開くのには多額の費用が必要です。また、学生であれ社会人であれ、優秀な教師を雇うには多額の費用が必要です。

求人サイトを見てみました。

某集団指導塾は、学生非常勤アルバイト講師の時給は3000円~となっています。

某個別指導塾は、1600円~となっています。

どちらにより優秀な学生が応募してくるかは容易に想像がつきますね。

特別な事情が無い限り、集団指導塾を検討すべし。

これが私の結論です。

 

こちらにも同様のテーマで書いています。

peter-lws.hateblo.jp

 

Q:どの集団指導塾にすればいい?

こればかりは、

 〇住んでいる駅

 〇考えている学校

 〇お子さんの成績

 〇お子さんの性格

以上4点がわからない限り、答えようもありません。

例えば、SAPIXに合う子と日能研に合う子、栄光ゼミナールに合う子は異なるのです。

同じ学校の偏差値で比べてみると、それぞれ10くらいの差が開いています。つまり生徒層が異なるのです。

そこでこう考えましょう。

いくつかの塾の模試を受けてみましょう。

そして、お子さんの偏差値が50前後だったら、現時点ではその塾がレベル的に適正な塾であると考えます。

ただし、志望校のレベルも考慮しなくてはいけません。

塾の偏差値表で、志望校の偏差値が50代となっていれば、一番厚い母集団がそのレベルの中学校を受験するという判断ができます。その場合、教師の指導スキルが高いことが期待できます。

 

個人的には、自前のオリジナル教材・カリキュラムを作れる塾をお勧めします。

教材づくりには多額の費用と多大なマンパワーが必要です。

そのレベルの教師が社内に多数いることが期待できるからです。

SAPIX日能研四谷大塚

以上3塾です。

※もちろんその他の塾がダメだと言っているのではありません。自前の教材が作れなくても、授業力を磨くとか、プリントを充実させるとか、いろいろやり方はあると思いますので。

 

集団指導塾の選び方はこちらに詳しく書きました。

peter-lws.hateblo.jp

 

Q:中学校への通学時間はどれくらいまでOK?

1時間以内です。

自宅~駅、駅~駅、駅~学校 の徒歩が計15分、電車が計45分。

バランスは多少前後するとしても、1時間というのが限界です。

片道1時間としても、往復で2時間かります。

仮に朝6時起床、夜23時就寝として、起きている時間は15時間しかありません。そのうちの2時間ということは、13%以上です。これ以上の時間を無為な移動に費やすのは損失です。

教え子の何人かは、合格とともに学校近くに引っ越しました。

これは極端な例としても、子どもが毎日6年間通う負担をしっかり考えましょう。

また、災害時の対応も考慮する必要があります。

例えば、自由が丘駅から徒歩15分のところに住んでいて、渋谷幕張中に通うことを考えてみます。

家~自由が丘 15分

自由が丘~大井町~新木場~海浜幕張(乗換2回) 73分

海浜幕張駅~学校 10分

これだけで1時間38分です。

電車の待ち時間等のロスタイムを考慮すると、1時間45分はみておかないといけないでしょうね。

往復で3時間30分。これが6年間毎日です。

例え渋谷幕張がどんなに素晴らしい学校だとしても、これでは通学虐待?です。

 

Q:進学校と大学付属で迷っている

 大学入試制度が変わってきています。

おそらく多くの親が大学受験した当時とは全く異なると言ってもいいでしょう。それにともなって、大学のランキング(ヒエラルキー)も様変わりしています。

一般には、今のGMARCHが昔の早慶レベルだと言われていますね。

つまり、大学に(よい大学に)入りにくくなっているのです。

そうすると、迷いますね。

進学校ではなく、大学付属に今のうちに入っておくべきなのじゃないか?

今だったら、偏差値的には余裕をもって学習院・明治・青学・立教・中央・法政の付属に進学できそうです。ここで頑張って、もっと上の偏差値帯の進学校に進んでも、大学入試で結局GMARCHに収まるくらいなら。

また、世間から嫌な声も聞こえてきます。

「無理して難関進学校に行っても、結局大学入試でGMARCHになるんだったら、無理しないで中学から入っておいたほうがお得だわ。」

これに対しては、このように考えましょう。

今から6年後の大学受験の合否を考えることは無駄である。

仮に6年後に、進学校からGMARCHレベルへの進学となったとしても、6年間の体験は得難い。

その大学付属の「大学」が妥協の産物であってはならない。

つまり、6年後の〇〇大学への進学を夢見ての大学付属校の選択なら大賛成ですが、妥協しての学校選びには賛成できません。

大学付属と進学校を迷っている時点で問題である。

これがアドバイスです。

今一度、ご家庭で徹底的に話し合うべきですね。