最近、中学受験なのに、一般入試なのに、英語入試を導入する学校が増えてきました。
増加した原因や学校の目的については一度記事にしています。
今回は、より具体的に試験内容について検証します。
英検の級を要求する学校
実に多いです。実質上、英語の資格のスタンダードといえるでしょう。
英検の級によって「みなし得点」を与えるケースが多いですね。
ただし、それだけで英語試験免除の学校もあれば、英語試験に加えて英検級で加点してくれる学校もあります。また、英語以外の試験(算国等)を受験した生徒のみ英検級を必要とする学校もあります。
いくつか例をあげます。
◆郁文館
試験科目は英語1科目入試です。それに加えて英検取得者には加点があります。3級の場合なら受験者平均点の10%の得点が、準2級以上なら受験者平均の15%の得点が、それぞれ加点されます。
◆工学院大学附属
英語・算数・国語の3科目から2科目を選択します。インターナショナルクラスを希望する場合には英検準2級以上のレベルが必要です。もし英語を試験科目に選ばない場合には、英検2級以上の合格証の提出が必要です。
◆啓明学園中
算・国・英の3科目で実施し、得点が高かった2科目の合計で合否が決まる。ただし、英検4級以上取得していると加点。
英語特化型入試もあり。その場合には英検準2級以上に加点がある。
◆駒込中学校(英語入試)
算・国・英の入試だが、英検準2級以上は100点換算として英語試験免除
◆芝国際(国際ADVANCED志望)
算・国・英の入試だが、英検あるいはその他の語学検定の証明書を提出した場合得点が保障される。英検2級で80点、英検準1級以上で100点。
◆豊島岡女子学園中(算数・英語資格入試)
試験科目は算数のみ。英語にかんしては、英検級のみなし得点を採用。
準1級以上:100点、2級:90点、準2級:80点or70点、3級:50点
ペーパーテストや英検以外の英語力を要求する学校
英語のペーパーテスト以外にも、面接・インタビュー等を要求する学校もあります。
◆聖セシリア女子中(英語表現入試)
〇英語面接・・・英語による自己紹介、英文暗唱、質疑応答
〇身体表現・・・英語劇の一部を演じる。英単語をジェスチャー・ダンスで表現
このほか、自己アピールやトークセッションを英語でやらせたり、ネイティブ教員による面接が実施されるところは多数あります。
英検以外の資格試験は?
資格試験として一部(とても少ない)の学校で認められている試験はいくつかあります。
例えば桐蔭中等教育を見てみます。
英検3級以上程度の英語資格を持つもの。
英検・ケンブリッジ英検・GTEC・IELTS・TOEFL・TOEIC
このようになっています。
文部科学省による、『大学入試英語成績提供システム参加要件を満たしていることが確認された資格・検定試験』とほぼ同じですね。
ちなみに大学入試における文部科学省公認資格は以下のとおりです。
◆Cambridge Assessment English(ケンブリッジ大学英語検定機構)
ケンブリッジ英語検定
◆Educational Testing Service
TOEFL iBT
◆IDP:IELTS Australia
International English Language Testing System(IELTS)(アカデミック・モジュール)
◆一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会
TOEIC®Listening & Reading TestおよびTOEIC®Speaking & Writing Tests
◆株式会社ベネッセコーポレーション
GTEC
◆公益財団法人日本英語検定協会
Test of English for Academic Purposes(TEAP)
Test of English for Academic Purposes Computer Based Test(TEAP CBT)
実用英語技能検定(英検)
◆ブリティッシュ・カウンシル
International English Language Testing System(IELTS)(アカデミック・モジュール)
大学入試においては、それぞれの資格の有利ポイント・不利ポイント(取得のしやすさ、汎用性、お得感)がありますが、ここでは述べません。中学受験ですので。
ここはシンプルに英検を取得しておくべきでしょうね。
英検については、「あんなもの日本国内でしか通用しないローカル資格だ」と批判する方もいますが、今話題にしているのは「日本国内の中学受験」ですので。
英語入試を実施or英検級を要求する学校の特徴
◆入試制度が複雑である
・英語インタビュー型
・英語資格入試
・グローバルアスリート入試
・ポテンシャル入試
・英語インタラクティブ入試
・英語コミュニケーション入試
・多文化共生入試
・有資格者1科入試
・英語表現力入試
・プレミアム入試
・セレクト入試
・WILL入試
・国際進学入試
・まなび力エキスパート入試
・Super English入試
・未来発見入試
・ラーナー型入試
英語を課す入試の一部を紹介しました。
実に多様というか、これでもかというくらいに様々な入試が行われています。
最期の「ラーナー型入試」が謎なのですが、学校HPによると、
ラーナー型入試の名前の由来は、「学び続けるLEARNER」から来ています。「学び続けるLEARNER」とは、あらゆることを自分ごととして捉え、自分を律しながら、そして愉しみながら行動できる人のことです。同時に、他人の意見に耳を傾け、他人と協働しながら、批判的な思考力を持って新たな価値を創り出し、社会に貢献するよう尽力できる人のことです。
すいません、私は理解力が乏しいもので、さっぱりとわかりません。
◆コースが細分化されている
・グローバル・リーディングコース
・国際コース
・インターナショナルAdvancedクラス
・LA&Sクラス
・国際ADVANCED
・インターナショナルサイエンスクラス
いろいろなコース設定をとる学校が多いですね。
◆偏差値が高くない
豊島岡女子は2025年から導入されます。
慶應湘南藤沢は、算数・国語・英語の3科目入試か、あるいは普通の4科目入試を選択します。慶應湘南藤沢については、なぜか違和感をあまり感じません。何となくそういう学校だと思っていますので。
ただ、豊島岡については、「天下の?豊島岡までこんな試験をやるのか!」と驚きました。
イメージとしては、堅実な教育を行う進学校だったからです。
私の考え
ここから先は、完全に私個人の考え、というより感想にすぎません。
読み流すか、あるいはいっそ読まないほうがよいかもしれません。
30年以上中学受験生の指導をしてきました。
喜びの涙も、悲しみの涙も、悔しさの涙も多数みてきました。
中学受験は、わずか12歳の子どもがぶつかるには、あまりにも過酷な試練なのです。
それでも、私が中学受験指導を続けてきたのには理由があります。
◆より良い中高生活につながる学びである
中学受験のための教科学習は、たんに中学入試を突破するためだけのものではありません。ここで学んだ4科目の知識や理解が、中学生の学習に直結していて、さらに大きな観点にたてば、大人になるのに大切な基礎教養を形作るものでもあるのです。
極論してしまえば、たとえ受験をしなかったとしても役立つ学びだと信じています。
◆入試は公平である
入試である以上、合格・不合格が分かれます。そこを納得するためには、試験が公平であることは絶対条件です。
小学校受験・中学受験・高校受験・大学受験
すべての入試の中で、中学受験だけが唯一公平な競争の場であると思います。
行動観察・内申・推薦・自己アピール、こうした「不透明」な要素が無いからです。
合格も不合格も、生徒の努力の結果である。
これが担保されていないと、子どもたちに受験させたくはありません。
だから私は、面接や作文のように客観的評価が不可能な、不透明な入試が嫌いです。
英語入試の大半は、この2つが無視されています。
英語1教科、あるいはせいぜい英・算・国の3科目だけで合否が決まる入試では、他の教科の学習が無視されています。
どうみても、「英語以外はどうでもよい」思惑が透けています。
そのことが、小学生の学びに良い影響をもたらすとは到底思えないのです。
また、あまりにも帰国生(隠れ帰国生を含む)に有利すぎます。
普通に日本で小学生生活を送っていて、たとえ英語学習を頑張ったとしても、小6で英検準1級に到達するのは困難(まず無理)すぎます。
4科目の学習をきちんと頑張った上で、プラスアルファとして英語学習に力を入れたとしても、英検3級に到達できれば、大したものだと思うのです。
しかし、残念ながら英語入試を行う学校の大半では、英検3級では戦えません。
たとえば豊島岡女子の来年の英語入試において、英検準1級所持者は100点が加算されますが、英検3級では50点しかもらえません。300点満点のテストで最初から50点のdisadvantageがあったのでは、たとえ算数が満点だったとしても合格できません。
「生まれ育ち」に左右される入試制度があってはならないと思います。
(本来の帰国生入試の趣旨は、まさにこの「生まれ育ち」による不利を救済することが目的でした。たまたま海外で育った子を救済する目的だったはずです。だいぶゆがんできているとはいえ、この目的で実施される「帰国生入試」は意義があると思っています。)
以上の理由から、私は中学受験の入試に英語を導入することには賛成できないのです。
(まあ私の賛否など世論に何の影響も及ぼしませんが)
もしどうしても英語入試を実施するのなら、こうした試験にしないとテストの公平は保てないと思います。
◆5科目入試・・・算・国・理・社・英
◆英語はペーパーテストのみ
◆英語試験のレベルは英検5~4級程度
◆学校オリジナルの出題
英語が試験科目にあるからといって、他の科目を間引きすることは許せません。すべて大切な学びです。
英語のレベルについては、英検4級でも中学生の中級レベルです。一般的な公立中学生は英検5級からチャレンジを始めます。
中学校は「教育機関」です。
最初から教える必要のない生徒を集めることが目的ではないはずです。
ただでさえ過酷な学習をしている受験生の負担を安易に増やす方向には、賛成できるはずもないのです。