夏が近づくこの時期に、多くの塾では保護者会や面談が実施されますね。
「夏休み対策保護者会」
「志望校決定面談」
こうしたタイトルでしょうか。
今回は、こうした保護者会や面談の注意ポイントをまとめます。せっかく貴重な時間を費やして行くわけですので、少しでも効果的にすすめたいですからね。
1.保護者会の内容
私とて、すべての塾の保護者会の内容を知りませんが、だいたいの話の内容は想像がつきます。私自身毎年保護者に語っていた立場ですので。
塾側からすれば、この保護者会の目的は以下のとおりです。
(1)夏期講習のアピール
ほぼ全ての塾で夏期講習は別建ての費用体系です。しかも高い!
6年生にもなると、15万~30万ていどは覚悟する必要があるのです。当然、夏期講習を受講しない生徒も出てきます。
「そんなに高いなんて」
「家で苦手分野を復習させたい」
「過去問をやらせたいから」
「他塾の夏期講習に参加するから」
いずれにしても、塾にとっては死活問題です。とくに、最後の理由は怖いですね。そのまま他塾に生徒を取られてしまうかもしれません。そうでなくても、合格実績を盗まれる(塾側からの発想)リスクが高いです。
そこで、「夏が天王山!」「夏期講習がこれだけ重要!」と保護者に訴える必要があるのですね。
心ある塾なら、塾の都合はあまり前に出さないようにする良識が働きます。夏が重要なのは事実ですし、夏期講習も綿密なプログラムを組んで実施しますので、成績向上にプラスに決まっています。自宅で一人で学習するよりはるかに効率的なのは確かなのです。そこをきちんと説明してくれるのなら、保護者としても納得できるはずです。
しかし、残念ながら全ての塾が良心的というわけでもありません。
「夏期講習を受講しない選択肢はない!」とばかりに受講を強要したり、ひどい場合は「夏期講習を受講しないと志望校に×××だ!」と脅してきたり。
私に言わせれば、こんな塾は信頼できません。速やかに転塾すべきだと思います。
塾だって商売ですから、多少の強引さは必要でしょうが、あくまでも「生徒をお預かりして合格に導く」という本分を忘れてほしくはないものですね。
(2)保護者の不安を解消
受験までのカウントダウンが始まっています。ママ友ネットワークにも、今年の受験結果についての情報などたくさん流れています。模試も何回か受験しました。志望校合格可能性の数字がちらつきます。
それなのに、わが子のお尻に火が付かないのです。気持ちは焦るばかりです。
そうした保護者の不安を解消することはとても大切ですね。
現在の生徒たちの様子、例年の子どもたちの状況について、そして今後の学習について。プロの観点から冷静な話をしてもらえば、親としても無駄に焦らなくてもすむというものです。
ここで注意したいのはこうした教師です。
「夏は〇〇をやっておいてください。」「家で〇〇を進めてください。」
家であれをやれ、これをやれと指示を出すばかりで、塾でどこまですすめてくれるのかが不明瞭なのですね。
指示を出すだけなら簡単です。それをどう生徒にやらせるのか、そこがプロの腕の見せ所なのですが。
(3)具体的な学習方法の提示
長い夏休みに、どのように塾で勉強するのか、家庭では何をどこまでやらせればよいのか。そのあたりを明確に提示してほしいですよね。もちろんこうした話が本来メインのテーマなのです。
2.個人面談の進み方
多くの塾では、この時期に6年生の保護者と個別面談を実施します。主目的は志望校の相談にあります。
ここで、個別面談の様子を少しご紹介します。
私:「担当のpeterです。よろしくお願いします。最近のお子さんのご様子はいかがでしょうか?」
母:「いちおう毎日机に向かってはいますが、集中できていないのです。まだ自分が受験生だという自覚が内容で困っています。」
※面談の冒頭は、ご家庭の様子をうかがうことから始めます。塾での様子は把握していますが、家庭内の様子は把握できませんので。
私:「小学生にとっては、半年以上先のことは、いわば遠い未来のことなのです。今から受験生としての自覚をもって学習できる生徒は少ないのです。」
母:「いったいいつになったら自分から積極的に取り組んでくれるのでしょうか」
私:「夏に過去問演習に取り組んでもらいます。そこで、入試問題が解けないという現実に直面し、やっと焦りだす、そうした生徒が大半ですね。」
※まだまだ言われるがままに勉強している生徒が大半です。志望校の過去問に取り組み、自分の実力を目の当たりにすることで、ようやく「こればまずいかも!」という焦り=自覚が芽生えるものですね。
私:「志望校については提出いただいた学校以外に、ご検討された学校はございませんか?」
※面談実施前に、志望校について調査するのは通例です。たぶんどの塾でも同じでしょう。しかし、提出してもらった志望校を鵜呑みにするわけにもいかないのです。
◆実力以上の学校しか書かれていない・・・子どもの実力を把握していないのか、受験の現実を知らないのか。あるいは、低いレベルの学校を書くことに抵抗があるのかもしれません。
◆実力以下の学校しか書かれていない・・・公立中進学を絶対避けたい理由があるのか、とくに上位校を目指しているわけではないのか。あるいは、上位校を書くのが恥ずかしいと思っているのかもしれません。
◆1~2校しか書かれていない・・・ほんとうにその学校しか受けるつもりがないのかわかりません。もしかして他の学校の情報が無いのかもしれません。
◆別学・共学・大学付属・進学校が書かれている・・・ご家庭の方針が読めませんね。もしかして家族の意見がバラバラなのかもしれません。
私:「単刀直入にお伺いします。これ以下の学校だったら受験せずに地元の公立中学のほうがいい、そうお考えのレベルはありますか?」
※ご家庭によっては、何が何でも私立中と考えていない方もいます。とくに男子の場合は、これ以下の学校なら高校受験に切り替える、というはっきりとしたラインをお持ちの方も多いですね。ここを確認しないことには、志望校についてのお話はできませんので。
母:「実はA中学が本人の希望ですが、子どもの成績ではとても届かないと思うのです。そこで、B中学に下げようと思うのですが、どうなんでしょうか?」
私:「過去のデータを見ると、夏前のこの段階でお子さんと同じくらいの成績だった生徒でA中学に合格した生徒は50%ほどでした。B中学の場合は65%です。したがって、単純に考えればB中学のほうが合格可能性は高いということになりますが、ほんとうにそれでよろしいのですか? B中学に変えたところで、1/3の生徒は不合格になっているのです。本当に本人が行きたい、ご両親が行かせたい、その学校がB中学になったのなら良いのですが、単純に偏差値だけを見て決めるべきではないと思います。」
※こうしたご相談は多いですね。いや、大半といってもいいでしょう。
しかし、行きたい学校だから頑張れるのであって、安直に偏差値表だけを見て志望校を下げるのはおすすめできません。少なくとも10月くらいまでは頑張ってみるべきだと思うのです。
3.面談を無駄にしないために
限られた時間(30分~1時間)を無駄にしないためにも、ぜひご準備いただきたいことがあります。
(1)夫婦の意志統一
たまに(よく)あるのが、母親と父親で考えている学校が異なる場合ですね。
父親・・・麻布か筑駒。とくに麻布の校風が気に入った。
母親・・・駒東。麻布だとわが子の行く末が不安。面倒見の良い学校希望。
こんなケースです。
父親・・・開成・栄光・筑駒希望。下げても海城まで。それ以下なら高校受験させる。
母親・・・せっかく頑張ってきたので、何としても私立に入れたい。世田谷学園と攻玉社も見に行っている。
こうしたケースもありますね。
この状態で面談に来られても、有益なアドバイスはできかねます。また、ご夫婦でいらっしゃって、私の面前で論争を始められても困ります。少なくとも、第一志望・第二志望あたりはよく話し合っておいていただきたいと思います。
(2)子どもの意志確認
志望校決定は親の役割なのは間違いないですが、子ども本人の意思を無視するわけにはいきません。共学・別学・大学付属・進学校、せめてこのあたりは子どもと十分話しあっておくべきですね。
(3)特別なリクエスト
例えば、剣道が強い学校について聞かれたことがあります。面談の際に初めて知ったのですが、その生徒(女子でした)は幼少期より剣道に打ち込んでいたのだそうです。そこで、剣道が強い学校について聞かれたのですが、さすがの私でもそんな情報は持っていません。事前に聞いていれば調べることもできますが、表面的な情報しか得られませんので、私に聞かれても無駄だと思うのです。
同様の相談で、「学校の拘束時間が短いところ」という質問もありました。聞いたところによると、チェスの世界で相当頑張っているとのことでした。しかし、チェスが強い学校を求めているのではないのです。学校レベルでは話にならないということで、チェスに打ち込む時間を確保できる学校、そうしたリクエストでした。
このご相談も困りましたね。私なりに思い当たる学校についてお話はしましたが。しかし、結局のところ、この生徒は中学に進学してすぐにチェスを辞めたそうです。
(4)データ分析は無用
お子さんの成績や学校の出題傾向を緻密に分析してくる方もいらっしゃいますね。しかし、こうした分析は無用です。こちらはプロですので、そのあたりはおまかせいただきたいのです。例えば体調不良で病院に行く場合、症状から考えられる病名や、その治療法まで分析して医者に話す患者はいませんよね。