そろそろ受験勉強に本腰を入れなくては、とあせっている現5年生向けの記事です。
今から20か月で、社会科を武器にする作戦を考えましょう。
題して、「社会科マスター20か月大作戦」です。
1.地理分野がある程度仕上がっている場合
社会科の学習は、地理からスタートします。
塾によってカリキュラムの進捗は異なれど、5年生の夏休み前後には地理分野の学習は一通り終わるはずです。
夏前のこの時期でしたら、おそらくやっている学習は地理分野の復習内容のはずです。
4年生から1年かけて学んできた分野を、角度を変えて学び直すのですね。
◆地形・地名
◆気候・風土
◆貿易
◆交通
◆環境
◆都市問題
地理で必要とされる分野はこのようになっています。
このうち、都市問題については6年生になっていないと理解できないものがたくさんあるので、5年生で扱うのは時期尚早です。
また、環境問題については、基本的な公害の知識や地球温暖化程度なら5年生で学べますが、再生可能エネルギーの普及が進まない理由を記述させるようなもんだいは、まだ早いですね。
5年のこの時期なら、地形・地名・気候・風土・第一次産業・第二次産業あたりの知識が一通り網羅されて頭に入っていれば上出来といえるでしょう。
たとえばそうして縦割りに学んできた知識を、今度は横割り、つまり地方別にまとめ直して定着と確認をはかる、おそらくそんな学習をしている段階だと思います。
そうした生徒に対しては、これから出てくるであろいう貿易・交通・環境問題が重要であるとアドバイスしましょう。
中学入試で再頻出の分野だからです。
夏前の最後のテスト結果をみてみましょう。
もしそのテストで、地理分野に穴が無いことが確認できたら、つまり満点がとれるのなら、夏休みからは歴史の学習を解禁します。
歴史を一通り学ぶのに必要な時間は、1回の学習時間を60分とすると、20回~30回くらいです。例えば江戸時代については、
①幕府のなりたちとしくみ
②江戸三大改革
③農業と経済の発達
⑤幕府の滅亡
と、最低でも5回は費やします。
本当は、ここに鎖国政策とその影響なども入れたいところなので、6回分くらいは欲しいですね。
江戸時代だけでもこれくらいの時間は必要ですので、日本史全体を概観するだけでも。、20回~30回程度の授業時間が必要なのはおわかりいただけるでしょう。
夏休み中に、鎌倉~室町時代くらいまですすめておくと、その後のカリキュラムが楽になるのです。
2.地理が十分に仕上がっていない場合
私の経験上、4年生のときに真剣に社会科に取り組んでいなかった生徒に見られる傾向です。
一通り地理の学習は済んでいるはずなのに、記憶が曖昧であったり、相互の知識が連携していなかったりという状態なのですね。
例えば、1993年の記録的な冷夏→凶作についての知識と、米の輸入自由化についての知識と、さらに世界の米貿易についての知識、さらにはアメリカの大農法によるコメ作りとそれが日本に与える影響、こうした知識が重層的に理解できていないのです。
そうした生徒の夏の過ごし方は簡単です。
もう一度地理の総復習を行うのです。
といっても、今更工業都市の一覧表や、農産物の都道府県順位の表などを覚えなおす気力はないと思います。そうした蓄積が無かったことが現状を招いていますので。
おすすめは、夏休みは地理分野の問題演習に費やすことです。
間違えた問題・たまたま合っていただけの問題、そうした部分に知識の穴が浮き彫りになっています。それを覚えていくのです。
イメージとしては、英単語リストを丸暗記するのではなく、英文を読みながらそこに出てきた単語を覚えていくようなかんじでしょうか。
この場合、歴史の学習はまだ手をつけてはいけません。
歴史はおもしろいですからね。
この段階で歴史に手をだすと、おそらくは地理が後回しになります。後に回したところで、今後系統だった学習をする時間的余裕などないのです。
3.地理が全く手つかずの場合
少なくともこのブログをお読みいただいているような方にはあてはまらないとは思います。地理の学習=社会科の学習が手つかずなのですね。
海外からの帰国子女であったり、転居等の事情により急遽中学受験を考え始めたといったケースでしょうか。
この場合は、とれる作戦は以下の2つです。
◆社会科を捨てる
首都圏で少なくとも3・4年生から受験勉強に取り組んできた子どもたちと比べると、すでに1年以上の差がついているのです。この差を今から埋めることは不可能です。
もう社会科はきっぱりと捨てて、算国の2科目入試、あるいは算国英の3科目入試に切り替えるという作戦があります。
ただし、こうした変則的な入試科目を実施する学校は、入試制度・科目をコロコロと変えている学校が多くみられます。お子さんが受験を迎えるときには、社会科を含む4科目入試に切り替わっているリスクは常にあります。
またもう一つのリスクとしては、中学生になってから学校の授業についていけない可能性があることです。
4科目入試をメインとして、算数のみの1科目入試や英語入試などを取り入れている学校はたくさんあります。しかし、あくまでもメインの受験生は4科目入試です。つまり、進学した生徒の大半は普通に受験勉強として社会科を学んできているのです。
学校の授業はとうぜんそうした生徒を対象としたレベル・進度となります。ここで完全に落ちこぼれてしまうリスクも計算しなくてはならないでしょう。
◆地理の学習は最低限とする
ほかの受験生が4年生から(場合によっては3年生から)営々と積み上げてきた知識をいまから完璧にすることはあきらめます。
入試という1点に絞った場合、やはり産業の知識が最重要なのです。それも、網羅型の産業の知識というよりは、入試に直結した産業の知識ですね。
いわば、「傾斜学習方式」とでも呼ぶべきスタイルの学習をしましょう。
タイムリミットは夏が終わるまでのせいぜ3か月程度しかありませんので、この3か月でできるだけのことをするしかないのです。
4.歴史学習について
ところで、歴史学習に費やせる日数は8か月くらいです。5年生の9月からはじめて6年の4月までといったかんじですね。
ここで作戦は二つにわかれます。
①じっくりと丁寧に歴史をすすめて8か月で1周する。
本来はこちらを推奨します。一つ一つの時代を丁寧に理解させていくやり方です。ただし、問題もあります。それは、現代史にさしかかった頃には、古代・中世史など忘れ果てているという問題です。また、丁寧にすすめることで生徒が飽きてくるという問題もあります。産業の発達や文化史など、子どもが興味をもてない内容も扱いますので。
②8か月で2週する
もう一つのやり方は、8か月で歴史学習を2週するというやり方です。
歴史学習については、まず政治史だけを最後まで進めるというやり方がわかりやすいですね。
本当は経済や産業史についても平行して進めたいのですが、まずは政治史だけ。
こうして頭の中に強引に歴史のものさしを作るようにするのが目的です。
このものさしを完成させるためには、年代暗記が欠かせません。
中学受験に必要な歴史年代の知識は100個程度です。この年代暗記は同時にすすめましょう。
実際の入試では、全国水平社・関東大震災・治安維持法・大逆事件、これらの並べ替え問題などが普通に出ますので。
このやり方の利点としては、知識の暗記に適している点があげられます。1周目で覚えられなかった項目を2週目で補えますので。
問題点としては、理解が不十分になることがあげられます。江戸時代滅亡のあたりなど、本来なら世界史の流れと関連付けてじっくりと考えさせたいところなのですが、その時間がとれないからです。歴史の表面だけをとらえた学習になりがちです。
ただし、中学入試だけを考えるなら、それで十分戦えることも事実です。
※歴史漫画について
私自身がこうした「啓蒙」を目的とした漫画が好きではないもので、歴史漫画については否定的です。何種類か読んではみましたが、特段面白いとも思いませんでした。歴史が好きな私ですらこれですからね。これを全巻読み通す根気があるのなら、別に漫画でなくても取り組める能力があると思います。そもそも、漫画を読むだけで歴史をマスターしようというのは安直すぎますね。
あっても邪魔にはならないが、そんなには役立たない。その程度の暇つぶしの漫画として考えるとよいでしょう。
◆歴史人物を整理するというアプローチ法
歴史は人間がつくります。
つまり、歴史人物を整理し理解することで、より深く歴史が理解できるようになるのは間違いありません。
本当にやってみたい歴史教育はこれですね。
しかし、非現実的なアプローチでもあります。なぜなら、歴史は勝者によってつくられるからです。勝者がいれば敗者もいます。人物に焦点をあてるなら、どうしても両者をとりあげなくてはいけません。また、表舞台には登場しなかった人物というのも重要です。
例えば、有加一乃末陪という女性がいます。藤原経清と結婚し、奥州藤原氏の祖である藤原清衡を産んだという重要人物です。しかも生涯がドラマティックです。
前九年の役(1062)で夫の経清と兄弟の安倍貞任も殺されます。しかし彼女は敵方の清原武貞のもとに、幼い息子の清衡を連れて嫁ぐのですね。清衡は武貞の養子となって清原氏のもとで育つのです。
これを語らずして、奥州藤原氏は語れないと思うのですが、そんな授業をやっていたら時間がどれだけあっても足りません。
残念です。
公民分野については、項をあらためて書きたいと思います。