中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】5年生の夏からはじめる、社会科マスター20か月大作戦 公民編

前回の記事の続きです。

peter-lws.hateblo.jp

1.公民分野について

 6年生の最後に学ぶ分野は公民分野ですね。

この分野の特徴は以下の4つです。

◆小学生には理解が難しい

◆本来は中学生の範囲

◆社会問題と密接にかかわる

◆よく出題される

 (1)小学生には理解が難しい

例えば、「公共の福祉」についてお子さんにわかりやすく説明できますか? あるいは「社会権」についてはどうでしょう?「生存権」「平和的生存権」の違いについてはどうでしょうか。

 大人でも正確に把握し、的確な説明をするのが難しい項目がたくさん出てきます。これが公民分野の学習の難しさです。

 しかも、こうした知識が相互に関連しあっているからやっかいです。憲法を学ばないと三権分立はわからない、三権分立を理解しないと憲法がわからない、基本的人権を理解するためには憲法の理解が欠かせないけれど、といった具合に、一つ一つの項目を分けて学ぶのが難しいのです。

 (2)本来は中学生の範囲

 中学では、地理・歴史・公民をこの順で学びます。公民が出てくるのは中3になってからです。ちょうど中3で学ぶ内容が、そのまま中学入試社会の公民分野と考えていいでしょう。つまり、本来は15歳で学ぶべき内容を12歳で学習するのですから、それだけでも難しいことはわかると思います。

 (3)社会問題と密接にかかわる

 公民分野は、現在進行形の社会問題と密接にかかわっています。

水俣病訴訟

〇マイクロプラスチック問題

再生可能エネルギーについて

原発の問題

〇沖縄米軍基地問題

少子高齢化

アメリカ大統領選挙

〇個人情報保護とマイナンバーカードの問題

憲法改正論議

自衛隊の問題

リニア中央新幹線静岡県

〇過疎化と住民サービス低下について

〇公的扶助の問題点

もう数えだすときりがないくらいですね。

これらは全て公民の関わる問題です。

憲法の精神や平和主義、基本的人権についての知識、地方自治の問題点など、じゅうぶんな理解が必要になってくるのです。

 

 (4)よく出題される

 公民分野は入試頻出です。

その理由として以下があげられるでしょう。

〇入試問題は、点数が散らばらないと成立しません。全員が満点、あるいは0点では困りますし、全員が50点でもまずいですね。

そうすると、問題を作成する立場としては、誰もが解けるであろう基本問題と、難しい問題をまぜて出題します。この「難しい問題」としては、公民分野がうってつけなのです。つまり、差別化できる分野といえるでしょう。

〇中学生でも苦手な分野です。日ごろ中学生を教えている中学校の先生方としては、せめてこれくらいは小学生でも知っておいてほしいなあ、という思いでいることは容易に想像つきますね。だから出題するのです。

〇本人の好奇心が必須な分野です。やはり小学生といえども、社会問題に関心を持っていてほしい。そういう考えから出題されていると思います。

 

2.世界地理と国際社会

 本来世界地理は中学生の学習範囲です。

しかし、今や中学入試にも世界地理の知識が普通に出題されています。

たとえばロシアによるウクライナ侵攻。

これによって小麦価格が急騰しました。

ウクライナには「チェルノーゼム」とよばれる肥沃な黒土が広がっていることが常識となっていくのです。

 

3.公民分野の学習にかける時間は短い

 カリキュラムとしては、地理と歴史の学習が終わってから公民にとりかかります。

多くの塾では6年生になってからでしょう。

長くても4か月といったところです。

この短期間で、これだけ広くて深い内容をマスターするのは無理です。

それなのに入試頻出なのでやっかいなのです。

ここで提案します。

今から(5年生の夏頃から)、ご家庭で少しずつすすめませんか?

といっても、何も憲法を教えろとか三権分立を覚えろとかいう話ではありません。

日々のニュースを素材として、お子さんにわかりやすく説明してほしいのです。

例えば、アメリカの大統領選びが始まっていますね。そんなニュースを話題にしながら、アメリカの大統領の選び方について説明してほしいのです。

もしかして近々選挙があるかもしれません。これも説明のチャンスです。

 

教え子の一人に、お小遣いをドル建てでもらっていた生徒がいました。この子は、為替相場に詳しかったですね。しかも、その原因となる事象についてもアンテナを張っていました。

そこまで極端ではないとしても、日々のご家庭の何気ない会話の蓄積が、公民分野の学習には必須だと思っています。

 

4.新聞をとる

 最近、新聞をとるご家庭が減りました。

たぶんお仕事をされていれば、日経新聞は職場(あるいは通勤)で読むので、家ではとる必要がないのかもしれません。

ネットのニュースでも事足りるということなのかもしれません。

 

しかし、ヤフーニュースでは子どもの学びに役立ちません。

ぜひとも「紙の新聞」をとってください。

もちろんこの新聞は大人用です。大人がそのページをめくりながら、子どもにあれこれ説明するときのネタとして活用してほしいのです。

 

※こども用の新聞は(あまり)役立たない

各新聞社から小学生向けの新聞が出ていますね。

朝日小学生新聞(日刊)

毎日小学生新聞(日刊)

〇読売KODOMO新聞(週刊)

〇中日こどもウイークリー(週刊)

実際に手に取っていただければわかるのですが、どれも「易しすぎる」のです。

漫画やファッションの記事はいりません。新聞なのですから。

しかも、朝日と毎日のものは、半分を広告が占めています。

きちんとニュースを載せてほしいですよね。

あえていえば、読売と中日のもののほうがおすすめです。

ただし、小5までですね。

小6ともなれば、大人用の新聞が読めますので。