今回は、中学受験をしない子に対する、学習のアドバイスです。
1.中学受験は必須ではない
商売がら、生徒はもちろん、私の周囲は中学受験肯定派ばかりです。もちろん中学受験のための勉強の重要性を説くのは私の仕事の一部です。
だからどうしても考え方が偏るのもしかたありません。
しかし、都内においてすら、過半数は公立中学に進学します。
公立中学進学を前提とした小学生の勉強について考察します。
2.大事なのは学習習慣
中学受験生とそうでない小学生の最大の差がこれです。
学習習慣が違うのです。
「学校の宿題はちゃんとやっています。」
そうおっしゃる方もいますね。
厳しい言い方をしてしまうと、それは「勉強」ではなく「義務を果たしている」にすぎません。小学生ですから、学校の課題をきちんとこなすのは当たり前です。また、その課題も、全ての生徒ができる質・量となっています。
つまり、負荷がかからないのです。
負荷がかからないトレーニングは何の効果もうみません。
きちんと負荷のかかる勉強に一定の時間を費やすことが日常であったかどうか、これが大きな差となってきます。
ずいぶん昔の話ですが、高校受験のための塾で中1を担当したときのことです。教室に入って生徒を見渡したとき、どの子が中学受験経験者(結果が思わしくなくて高校受験に向かおうとする子)なのか、どの子がそうでないのかが、一目でわかりました。
席についてこちらを見る姿勢から異なっていたことを覚えています。
3.時間の使い方の大切さ
自宅近くの公園で見かける光景です。
小学6年生の子どもたちが数名、集まって遊んでいるのですね。
遊ぶといっても、今時の子ですので、ボール遊びや鬼ごっこというわけではありません。ベンチのまわりに集まって、皆無言でゲームをしているのです。そろそろ薄暗くなる時間でも夢中です。小学生は遊ぶのが仕事、と考えれば、別に目くじらたてる話ではありません。まあゲームの是非というものはありますが。
しかし、その時間、同級生で中学受験をする子たちは、塾で必死に勉強に取り組んでいます。
ご家庭の方針が、勉強<<ゲーム ということなら何もいうことはありません。
しかし、そうでないなら、小学生といえども時間の大切さは自覚すべきだと思うのです。
例えば、毎日1時間。必死に勉強に取り組む時間を設けませんか?
4.何をやればよい?
(1)英語
誰でもお分かりのとおり、最重要教科は英語です。
小学校でも英語が教科に入っていますが、あれだけでは全く負荷がかかりません。
量も質も足りないのです。
英語は蓄積が物を言う教科です。どんな子でも、一定の時間を費やせば、一定の効果があがる、そうした性質のある教科です。
中1に入ってから本格的に学び始めるのでは全く間に合いません。
少なくとも、中学入学段階で、中1のテキストは終了しているくらいのスピード感は必要でしょう。
英検の級でいえば、4級レベルでしょうか。
5級・・・中1レベル 単語数=600語
4級・・・中2レベル 単語数=1300語
3級・・・中3レベル 単語数=2600語
これはあくまでもざっくりとした目安にすぎませんが、5級から4級になるくらいのレベルで中学に進学すると、英語に関しては何もしてこなかった生徒に対してアドバンテージを感じることができると思います。
「自分は英語ができる」という自己肯定感から入る中学校生活、理想ですよね。
もっとも、その程度のレベルなら、1番ということではありません。英語圏からの帰国子女は例外としても、普通に国内で幼少時より英語を学んでいて、すでに中学入学時点で2級である、そんな生徒もいるでしょうから。
ただし、焦りすぎるのは禁物です。
とくに英検を受験しはじめると、とにかく級を上げることだけが目標になってしまいがちなのですが、目標は、あくまでも「足腰の強い英語の基礎力」を「中学入学時点で身に着けている」ことにあること忘れてはいけません。
(2)理科・社会
次に重要なのは、理科と社会です。
実は、中学受験の理科・社会は、中学校で学ぶ範囲が出題範囲なのです。
そのため、中学受験勉強をしてきた子たちは、中学校で学ぶ理社はすでにマスターしています。
しかも、内容や知識量は、中学受験レベルのほうが高いのです。
公立中学に進学すると、3種類の生徒がいるといっていいでしょう。
①小学校の学習しかやってこなかった生徒
②高校受験を見据えて塾等で学習を積み重ねてきた生徒
③中学受験に失敗し、高校受験でリベンジを誓った生徒
人数でいえば、①が多数派かと思いますが、③の生徒たちの存在を忘れてはいけません。
彼らの理社のレベルを考えると、中学校で幸先良いスタートを切るためには、理社をきちんと勉強することがとても大切になってくるのです。
教材としては、中学生用のものがそのまま使えます。
(3)数学はいいのか?
小学生で学ぶ算数と中学生で学ぶ数学は別物です。
算数で鍛えた生徒はスムーズに数学に移行できるのは確かですし、数学を学ぶのに算数的な思考は役立つのも事実です。
しかし、中学校の数学を得意にする目的で算数に力を入れるのは無駄が多い学習法です。
もしやるのなら、数学を始めるべきなのですが、ここにも問題があります。
小学生には数学の抽象的な世界観が理解できないのです。
そのあたりまで考えて指導できる指導者はほとんどいません。
中途半端に数学の先取りをして、結果として数学が嫌いになるくらいなら、いっそ手を付けないほうがましなくらいだと思います。
しかし、もし優れた指導者に習うことができるのなら、その限りではありません。
(4)国語はいいのか?
国語は重要な教科です。
にもかかわらず、軽視されがちな教科です。
中学生の準備として、小学生が国語に取り組むのはなかなか困難だと思います。
学習成果が見えづらいですし、よい教材も見当たりません。
そこでおすすめなのは以下の2つです。
◆漢字・熟語・語彙・慣用表現等の知識の強化
日本語を操るのに基本中の基本です。中学受験生は相当なレベルまでここを反復トレーニングしています。ここはきちんと勉強しましょう。
教材としては、中学受験のものがそのまま利用できます。SAPIXのものなど、なかなか難易度が高くておすすめです。
◆読書
せっかく中学受験をしないことで使える時間があるのですから、それを読書に振り向けましょう。
もちろん、ここで読むべきなのは、きちんと負荷のかかる本、つまり簡単には読み流せないレベルのものにしてください。
この読書については、小学生のころに習慣化できるかどうかが、後に大きな意味をもつようになります。
「読めといわれたから読む」から、「読みたいから読む」へいかに移行できるか。
つまり、「読めといわれたから読んでみたら、意外に面白かったから、また読むきになってきた」という状況に小学生の間に持ち込みたいのですね。
ただし、だからといって、おもしろさだけを目的として中身が無い本を読ませることは避けましょう。それなら漫画やゲームのほうがはるかに優れていますので、負けてしまうのです。