中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

家庭学習のみで英語を学ぶ方法

 幼稚園から小学校まで、英会話教室や英語塾に行かずに家庭学習のみで英語を学ぶ方法について考えよう

 

 すでにお子様が英語教室に通って英語の学習をすすめている方や、英検の級を持っている方ご両親のどちらか(あるいは両方)が英語の達人の方、あるいは無尽蔵に教育費が出てくる打ち出の小槌をお持ちの方は、この後の記事は読む必要はありません

 

この記事は、以下のような方のために書いています。

 

(1)中学受験をする

(2)近所に評判のよい英語教室はない

(3)英語嫌いになることだけは避けたい

(4)父親も母親も日常的に英語を使う環境でなく、学生時代の英語は忘却の彼方である

 

これらがあてはまるなら、以下の記事は参考になると思います。

 

 

中学受験をする

 

これは、いったい英語を何のために学ばせるのか?

という問いと直結します。

英語の早期教育がさかんです。

巷では、

「0歳から英語に触れることで発音が良くなる」

「3歳~4歳が学習の黄金期」

「10歳が英語学習の臨界期。」

こういった情報があふれています。

どの情報も、多様な研究の裏付けがありそうで、「とにかく早く始めなきゃ!」と子を持つ親は焦ります。

でも、ちょっと待ってください。

お子さんは、どの国で教育を受ける予定ですか?

たしかに、わが子がnative speakerになることは素敵です。

将来にも役立つことは確実です。

 しかし、そのための環境を日本国内で整えることは困難です。

 1日の大半の時間を英語漬けにするためには、 International school に入れるくらいしか方法はありませんが、その場合は日本の中学校の受験資格がほとんどの学校でなくなります

開成中学募集要項

これは開成中学の2023年の募集要項の一部です。

(2)は帰国生の条件(ただし帰国生入試制度はない)ですが、応募資格の(1)をご覧ください。
 
・・・小学校またはこれに準ずる学校を卒業見込みの男子。ただし、「これに準ずる学校」とは、学校教育法第1条に定める学校のことです。
 
いわゆる「1条校」に限定されているのですね。
 

 1条校とは?

学校教育法の第1条は以下のとおりです。
第一条 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。

ほとんどのInternational school1条校ではありません

したがって、中学受験の応募資格を満たしません

ただし、ごく1部の中学校では、国内のInternational school生徒にも、海外帰国生扱いとしての受験を認める場合があるようです。

その場合でも、お子さんが受験する〇年後にもそうした特例が適用される保証はありません。

 

 身につけさせたい英語力のレベル

 

 最近は英語を受験科目とする中学校も増えてきましたが、そうした学校を受験するための学習についてはここでは触れません。

 そうした学校のほとんどが、「高い英語力を持つ生徒を集める」のが目的ではなく、「4科目の学習が不十分な生徒でも欲しい」学校だからです。

 

中学受験を前提とした英語学習を考えると、中学校で本格的な英語学習が始まったときのadvantageをつくることを目的とすることになるでしょう。

 

そう考えると、身につけさせたい英語力のレベルはこのようになるでしょう。

◆中学3年間(せめて中学1年間)で学ぶ内容程度の先取り

◆基本的な会話能力

中学受験は過酷な挑戦です。

時間との戦いといってもいい。

その中で、英語を学ぶのなら、ある程度の割り切りは必要です。

 

 近所に評判の良い英語教室はない

前述したように、中学受験の学習は時間との戦いです。でも、もし自宅近所に評判の良い英語教室があれば、通わせることは検討に値します。

こうした英語教室は、広告を出さなくともクチコミだけで生徒が集まるので、探すのは大変です。親同士の情報ネットワークで探すしかないと思います。

 

 英会話教室の是非

 CMで見かけるような、大手の英会話教室なら、近所にあるかもしれません。しかしそうした英会話教室の小学生のカリキュラムは、楽しませることを主眼としているようですね。

英語の唄やゲームは楽しいですね。クリスマスやハロウィン等のイベントも盛り上がることでしょう。

確かに英語嫌いにはならないでしょうし、多少の英会話能力は身につくかもしれません。

しかし、上位の私立中学に進学して本格的な英語学習がはじまると、数か月でなくなってしまう程度のadvantageしか得られないとしたら、あまりに時間(費用)対効果が薄いと思います。

 

とある大手の英会話教室で見かけた光景です。

教室前には、お迎えにきたお母さまが大勢集まっていました。

やがて先生(native)と子供たちが出てきます。先生はお母さま方に今日の学習内容や家庭学習の課題等を英語で説明していました。

ただ、集まったお母さま方の大半が、先生の話を理解できていない様子なのははたから見ても明らかでした。

教室に丸投げしてわが子の英語力を高めようというのは、虫の良すぎる話だと実感した次第です。

 

 通信教育教材はどうだろうか

幼児からの通信英語教材として有名なものに、ディズニー英語システムというものがあります。

生徒にも何人か、幼少期に手を出したという方がいました。

しかし、すぐに飽きてしまい、大半の教材が手つかずとなってしまったそうです。

約10年間使えるという教材のフルパッケージが約100万円!

実にもったいない話です。

メルカリやヤフオクなどをのぞいてみてください。

大量に出品されています。それも「大半未開封」などと宣伝付きで。

これが何を意味するかは明らかですね。

完璧に消化できればとても優れた教材なのでしょうが、これに限らず、通信教育教材は継続が困難であることを考える必要があります。

その他、虎のキャラクターで有名な通信教材をはじめとしていくつもの教材がありますが、どれも内容が幼稚すぎるという声が聞こえてきますね。

 

 英語アプリorWebサイトの英語

上手に活用すれば有効と思われるものもあります。

ただし、子供にPC(含むタブレット)を自由に使わせることは問題です。もし使うなら、親のPCを親監視を前提でつかわせるべきでしょう。

 

 オンライン英会話

 多様な種類がありますね。私も試してみたことはありますが、すでに英語がある程度話せる大人にとってはなかなかに有効だと思います。

 しかし、英語初習者の子供に対応したプログラムはほぼ期待できません。

 また、講師の多くが英米以外(フィリピンが大多数。その他東欧や中東が少し。)で、質も発音もそれなりのレベルです。大人なら、多様な国の人と話せる勉強ととらえられますが、子供には不適でしょう。

 

英語嫌いにはしたくない

みなさんは英語は得意(好き)でしょうか?

生徒や卒業生にリサーチしてみると、英語が苦手(=嫌い)な生徒は、おもに以下の2種類でした。

1.英語未習の状態で始まった中学校の早い英語学習スピードについていけなかった

2.幼少期から文法・単語の詰め込み学習をさせられた

う1については、多くの私立中学校の学習スピードはとても速いです。しかも、最難関の中学合格の勉強をしながら、英検2級以上の非帰国生なんて言う生徒がぞろぞろいます。私がある程度の英語学習の先取りを主張する根拠はここにあります。

 2については、文法や単語の知識は必須ですが、その詰め込みをやりすぎると、確実に英語嫌いとなります。とくに受験塾が開いている英語教室は要注意かもしれません。

 

 英検について

英検については、賛否両論聞きますね。

あんなものは日本でしか通用しない。国際標準のテストであるTOEFL やIELTS に劣る、などという正論も聞きますが、小学生が受けやすい試験としては、現状英検が独占状態であると思います。

しかし、早い段階で英検の級をとることは重要とは思えません。

子供が級を上げることをモチベーションとしているならともかく、親の満足感が目的にならないようにすることが肝要です。

 

私立中学の英語の先生方に、このことについてじっくりとお話を伺う機会がありました。

結論からいうと、「高3までに準1級をとっておけばよい」というものでした。

 

小学生までは、中学受験に焦点をしぼり、その他のテストは不要であるというのが私の結論です。

 

市販の英語教材の活用

 

 自宅学習が可能

 音源が付属

 幼稚すぎない

私がこの3点を満たす教材を探しまわって、「これなら!」と思える教材を見つけましたので、紹介します。

 

 Oxford Reading TreeORT)

オクスフォード大学出版局が出版する、イギリスの幼稚園~小学低学年の国語教材です。

www.oupjapan.co.jp

日本でも、質の高い多読教材として非常に有名です。

この教材の特徴としては、10段階の細かいレベル分け、そのレベルごとに24冊ほどある量

ということでしょう。

ORTテキスト3

 

ORTテキスト2

 

ORTテキスト1

レベル1+、2,3の写真を載せましたが、この量でレベル9までの10段階があり、その他にも姉妹教材があります。

ただし、一冊のボリュームは非常に薄いですし、とてもわかりやすいので、十分理解は可能です。

また、別売りにはなりますが音源がありますので、必ず用意しましょう。

この音源は、英語・米語の切り替えが可能となっています。

 

 ところで、多読を売りにする英語教室の中には、このシリーズを全冊揃えて、自由に生徒に貸し出すことを売りにしているところがありますが、おそらくは著作権法に抵触します。

 

 Smart English

Smart English

これは、e futureという韓国の会社が開発した、ELT(English Language Teaching)の教材です。

 

学校で英語教師が英語のみを使って指導するための教材で、e futureのHPには、

 「スマートに英語を教えるならSmart English! Student Book(フラッシュカード付き)、Workbook、 Teacher's Manual(テスト付き)、教師用 Flashcards から成る6レベル構成のシリーズです。オンラインサポートやデジタルコンテンツも利用可能な若い学習者向けのこのコースブックには、あなたが英語を教える上で必要なものが全て揃っています!」

だそうです。

 

Student BookWorkbookの2種類だけを用意すればよいと思います。

Smart English テキスト

表紙は一緒ですが、左がStudent Bookで、右がWorkbookです。これがレベルごとにあります。

この教材をお勧めする理由は以下の6点です。

 

◆日本語が介在せず、英語で英語が学べる

◆音源CDが付属

◆子供が喜ぶビジュアル

◆子供の興味を惹く内容

◆4技能がバランスよく含まれている

◆これだけで完結できる

 

音源CDはもちろんのこと、切り取り式単語カードまで付属していますので、これだけで他の教材を用意しなくてすみます。

Smart English 内容

 

Smart English 単語カード

 

 その他ELT/ESL教材は丸善等で多数チェックしましたが、1冊で完結できるのはこれだけでした。

 小1から始めたとして、1年で1冊ずつ、じっくりと2周ずつしながら6年間学ぶペースですすめるとよいと思います。

 ただし、必ず指導者が必要な教材です。もちろん専門家がのぞましいですが、音源を付属CDにまかせれば、十分に親の指導で学ぶことが可能です。

 

 NHKの英語

古くから定番ですね。

テレビ・ラジオに多様な種類の講座を展開しています。

見たところ、テレビのものは幼稚な(あるいは面白さにふりすぎて内容が薄い)気がしますので、ラジオの講座がよいでしょう。

「小学生の基礎英語」というコンテンツもありますが、ここは定番の「中学生の基礎英語」をお勧めします。

内容・レベルともにバランスがよいですね。しかも、昔とは全く違い、生徒の興味を惹くようなシチュエーション・会話が満載です。

多くの私立中学校が、生徒に基礎英語の学習を課しているのもうなずけます。

 

ただし、中学生が対象ですので、幼稚園や低学年で始めるのには無理があります。

他の方法で英語に少し慣れた小学高学年でとりくむのがお勧めです。

 

 効果は?

 私の指示にしたがって、これらの教材で自宅学習に取り組んだあるご家庭の生徒は、最難関中学に進学した後、英語が得意教科になっているそうです。ちなみにこの生徒は日本で生まれ育った子で海外経験はありません。

「クラスには帰国生の子もアメリカ人とのハーフの子もいるけれど、自分が一番点数が高い!」と自慢されました。

自己申告につき真偽の程は定かではありませんが、自己肯定感から入る英語学習、いいですね。


例外として

例外してこんなケースもあります。

とにかく勉強が苦手&嫌いな生徒がいました。それでも英語だけは英語塾に通っていたそうです。本人も英語だけは嫌がらずにやるということでした。実はこうした子供もよく見かけます。英語は、ある程度までのレベルなら、頭の会店とか思考力というより、地道な努力と費やしてきた時間に比例して身につく性質があるのですね。そこでこの生徒は英語力を評価してくれる中学校にめでたく進学しました。四科目の学習をほとんどしてこないで中学生に進学して大丈夫何だろうかという気もしますが、それはおせっかいというものでしょう。学校も生徒もウィンウィンの関係ということなのだと思います。