中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

今さら聞けない 中学受験超入門04 小学校の勉強はできるのです

子どもが小学校に上がるころは、そのまま地元の公立中学でいいと思っていた。うちは中学受験なんてとてもとても。でも、周囲からの噂を聞くと、どうもそれではいけないらしい。そこで中学受験を考えはじめたのだけれど。

こうした段階でご相談を受けることもあります。今回はそうしたご相談についてまとめてみます。

1.小学校の勉強はできるのです

 そうおっしゃる方も多いですね。これは素晴らしいことです。小学生なんですから、小学校の学習が基本です。いくら塾で優秀でも、模擬試験で高得点でも、小学校の学習をおろそかにしてはいけませんよね。

ただし、この「小学校の勉強はできる」の中身がポイントです。

 (1)カラーテストは満点しかとったことがない

 すばらしいですね。小学校のカラーテストは、授業で習ったことを、習った直後に確認するスタイルのテストです。授業さえきちんと聞いていれば誰でも満点がとれるように作られています。しかし子供はつまらぬミスをするものです。どんなに簡単なテストでも、常に満点をとるというのは意外と難しいのです。この事実からは以下のことがわかります。

 〇小学校の授業をきちんと聞いていた

 〇小学校の簡単なテストといえども集中できている

ただし、これしかわかりません。中学受験に必要な学力と小学校の学習内容は別物ですので、このことをもって「中学受験でも通用する」学力があるとはいえないのです。

 (2)カラーテストは80点くらいはとっている

 100点満点の80点というのは、普通なら高得点なのですが、カラーテストは85点が平均となるように作られています。80点ということは、すでに平均以下となっていることを意味します。授業をきちんと聞いていないか、聞いても理解できないか、テストに集中できないか、授業で学んだことをすぐに忘れているのか、ペーパーテストがとことん苦手か、そうした理由が考えられるでしょう。まれに、学校の勉強を馬鹿にしすぎて真面目にカラーテストに取り組んでいない場合もあります。いずれにしても、このまま公立中学に進学しても、幸先のよいスタートが切れない可能性があります。今すぐに、親が勉強をしっかりとサポートすべきだと思います。書店に行けば、小学生用のドリル・問題集などたくさんありますので、さっそくとりくみましょう。さらに、公立中学進学を前提とした塾を検討したほうがよいかもしれません。数学や英語の先取り学習をし、学習習慣をつけ、テスト形式に慣れる、そうした効果が見込めます。

 (3)担任の先生からお墨付きの優秀さである

 小学校では成績での序列化はありませんので、通常ならお子さんの学校におけるポジションはわかりません。とはいうものの、日ごろの授業の様子や発言、提出課題のクオリティ等で自然とわかってくるものです。もし担任の先生から「学年でもトップレベルです」などとほめていただけているのなら、おそらくはそのとおりなのだと思います。もちろん通う小学校が異なれば生徒の学力も異なります。しかし、たとえ中学受験をする子が少なく、塾に通う子がほとんどいないような地域の小学校にも、優秀な生徒というのはいます。その一人であるなら、本当に優秀なお子さんなのでしょう。地元の公立中学でトップを目指すのもよいですし、中学受験をするのもよいですね。

 (4)外部のコンクールの常連である

 小学校は、いろいろなコンクールへの参加を積極的にすすめていますね。地元の区・市や役所が主催のもの、企業が主催のもの、非営利団体が主催のものなどいろいろです。ジャンルも、絵画・ポスターコンクールもあれば、自由研究や作文・読書感想文などさまざまです。このうち、自由研究・作文・読書感想文等で入賞や最優秀賞をとれるレベルなら、その実力は本物です。そうしたコンクールの中学生部門の入賞者の在籍中学校名をみてください。ずらりと有名私立(国立)中学がならんでいます。つまりそういうことなのです。おそらくは小学生時代からこうしたコンクールの入賞常連者が、そのまま私立(国立)中学に進学しているのですね。塾の4科目が高得点な子は、それ以外でも実力の片りんを見せるのだなあと思います。

 (5)四谷大塚の全国統一小学生テストで良い成績だった

ありますね、四谷大塚が開催している無料の全国テストが。毎回15万人!もの受験生を集めるそうです。このテストは、中学受験生の大半が受けません。塾も推奨しません。もちろん中には無料に魅かれて受ける子、賞品のipad欲しさに受ける子、トロフィハンターの子などが受ける場合もありますが、中学受験の実力を測るテストではないので、時間の無駄なのです。とはいえ、最優秀者のご褒美である「アメリカIvyLeague視察」にまで行くレベルだとすると凄いと思います。さすがにそこまでのレベルでないとしても、何にせよテストで高得点なのは良いことです。一度、受験塾主催の三大模試(サピックス四谷大塚の受験用・日能研)の受験をおすすめします。

2.中学受験の現実・・・小学校との乖離

 これはもう、現実として受け止めるほかありません。

小学校の学習内容をいくらパーフェクトにマスターしたところで、中学受験には歯が立ちません。

そもそも学習の目的が異なります。

おおざっぱに言うと、中学受験の学習レベルは高校受験のレベルと同じくらいだと思っていいでしょう。実は難関校になると、高校受験レベルよりも高度な内容が求められています。

 だいぶ昔の話で恐縮です。

そのころ、私が指導していた生徒に、とても優秀な小6と中3がいたのですね。はたしてどっちが優秀なのか? と素朴な疑問がわいたので、さっそく同じテストを2人にやらせてみました。といっても、中学生のテストでは小学生はできないものがありますので(数学の証明や関数、社会では世界史・世界地理)、そこはハンデということで、中学入試の問題からセレクトしました。結果は予想通りというか、予想以上の結果でした。国語だけはかろうじて中3生が面目を保ちましたが、その他3科目では小6生の圧勝だったのです。

そんなレベルの勉強を日々するのですから、小学校の学習と乖離するのはやむを得ないのです。

3.小学生なのにそこまで勉強して大丈夫なのか?

当然の疑問ですね。しかし答えは簡単です。

大丈夫です。

そもそも勉強に制約を加えることに意味はありません。せっかく好奇心も旺盛で、頭も柔軟でどんどん新しいことを吸収できる年代です。思いっきり勉強させてあげたいと思います。

サッカー・野球・水泳といったスポーツ、バレエ・ピアノといった芸術系の習い事の場合は、とことん小学生を追い込んで上を目指させることが推奨され賞賛されるのに、どうして勉強だけは「小学生のうちから勉強をあんなにやらせるなんて」と否定的な文脈で扱われるのか理解できません。とことん勉強し上を目指す、素晴らしいと思います。

4.公立中学校ではだめなのか?

 もちろんダメなわけはありません。中学受験熱が高い都心エリアでも、全員が中受をするわけでもないですね。都区部の平均でも40%程度ではないでしょうか。まして地方にいけば公立中学→公立高校が王道です。

ただし、現実は認識する必要があります。たまたまネットで見かけた情報なので真偽のほどは不明ですが、分数の計算もできない中1の子どもが、公立中学校で真ん中より上の順位だという書き込みを見ました。

さすがに分数もできない生徒が真ん中より上ということはないだろうと思って、高校受験が専門の旧知の塾の先生に聞いてみると、「まあそんなものですよ」だそうです。分数の概念が理解できずに、数学の最初からつまずく生徒が多いのだとか。たしかに、「分数・苦手・中学生」で検索をかけてみると、中学生対象の塾の宣伝が大量にヒットします。供給があるということは、需要があるということなのでしょう。そういえば、「分数ができない大学生―21世紀の日本が危ない」という衝撃的なタイトルの本が話題になったのは、もう20年以上前の話でした。

 ここで私が言いたいのは、大学生でも分数がわからないのだから中学生でできないのは当然だ、ということではありません。小学生でできて当然の分数がわからぬまま中学生になった同級生に囲まれての学習は困難な道のりだということが言いたかったのです。

 

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