中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

中学生の子どもが赤点をとってきた! どうすればいい?

せっかく子どもが憧れの中学校に合格し、楽しく通学していたのに、定期試験で赤点をとってきた!

どうしたらいい?

こんなご相談をうけました。

中学受験をする子どもたちは、みな優秀です。小学校では勉強で無敵っだった子ばかりです。そして進学した中学校。ところが、周囲はみな自分より優秀な生徒ばかり(のような気がする)なのですね。自己肯定感が打ち砕かれてしまいます。そして定期試験で初めて味わう「赤点」「追試」という屈辱。親御さんがうろたえるのも無理はありません。

今回は、私立中高一貫校に通う生徒にありがちな、学校の学習を軽視した結果おきることと、そのリカバリー方法について考察します。

(今回のテーマは私には語る資格が十分にあります。かつて私もたどった道ですので)

1.時期により「赤点」の重みは異なる

 言うまでもありませんが、どの時期での赤点かによって、その重みは大きく異なります。いくつかに分けてみます。

 (1)中1前半の赤点

 これはまずいです。中1の前半の学習は、中学受験の貯金が十分にある中での学習です。いくら私立といえども、この時期はそんなに「ぶっ飛んだ」カリキュラム学習をしていません。しかも、中学受験でしっかりとついた学習習慣がまだそんなには抜けきっていない時期です。同級生と遊びに行くにしても、まだそんなに親しくはなっていませんので、遊びも限定的ですし、第一中1が遊ぶ内容など可愛いものです。

それなのに赤点

考えられる原因は以下の3点です。

 ◆そもそも合格してはいけないレベルの学校だった

 そういう場合もあります。塾や家庭の努力により、奇跡的に合格してしまったのですね。もちろんそのこと自体は悪いことのはずはありません。誇るべき成果です。ただし、周囲の同級生に比べて明らかに学力差があり、そのことを十分には自覚していなかった、そういうケースです。

 ◆中学受験の合格で子供が手を離れたと親が勘違いした

「中学生になったら自分の力で勉強するようになる」

「中学生になってまで親が手取り足取り勉強を見るのはおかしい」

「学校に丸投げしておけば大丈夫」

全て誤解です。誤解でなければ理想論です。

たしかに中学受験は子供を大きく成長させました。しかし今まで塾・親のコントロール下での学習しか経験してこなかった子供が、いきなり自立した学習を要求されたところでできるはずがありません。

本来なら、中1の後半にむけて、徐々に独り立ちをはかるべきだったのです。

いきなり親が子供を放任してしまえば、それは成績だって低迷して当たり前です。

 ◆中学受験の合格で、もう遊んでいいと子供が勘違いした

中学生になったら、もう勉強から解放される、そう子供に勘違いさせながら受験を乗り切りませんでしたか? 

中学に入ると、スマホタブレットPCを買ってもらいました。友達もみなゲームに夢中です。学校帰りにアニメイトに友達と行くこともあります。この前は先輩と一緒にカラオケに行きました。今度の試験休みにはディズニーランドに行く約束をしています。いくら遊んでいても、親はもう小言をほとんど言いません。

これでは成績は低迷して当たり前ですね。

 (2)中1後半の赤点

 中1前半には簡単に思えた授業が、急に難しくなってきました。宿題も多くなっています。進度も早まりました。まず英語がわからなくなってきています。帰国子女の友人は英語が得意です。海外に行ったこともない自分は仕方がない、そんな言い訳をしているうちに、本当に落ちこぼれてきました。数学も何だかよくわかりません。算数的な解き方で答えを書くと、×になるのです。幾何の証明問題も面倒くさいです。世界史はあちこち時代が飛ぶので頭がごちゃごちゃになってしまいました。理科も難しい実験やレポートが多くて時間ばかりかかるわりには成績に結びつきません。何とかしなくちゃと思っていたけれど、夏休みは思いっきり毎日遊んでしまった。

 中1の後半になると、学校も本気の加速モードに入ります。ここで振り落とされはじめる生徒は大勢いるのです。

でも、この段階の赤点はリカバリーはそんなに難しくはありません。とりあえず夏までは何とかついていけてたわけですので、今一度家庭学習を見直し、しっかりと時間を確保するだけで、少しずつ復活が可能な時期です。ただし遊びの時間はすべて削ってください。

 (3)中2の赤点

 これは、いつも赤点なのか、それとも珍しく赤点をとってしまったのかによって状況は異なります。珍しく1教科だけ赤点となったなら、まずは学校の先生に相談してみましょう。もし赤点が珍しくないのなら、それは落ちこぼれたことを意味しています。赤点クセとでもいいましょうか、本人が慣れてしまったのですね。実は高校に上がれない予備軍はこの中にいます。

 (4)中3の赤点

 本気でまずいです。学校によっては、高校へあげてくれません。留年をさせる学校もあります。もうこれは親が学校に相談に行くべき状況です。正直にわが子の現状をうかがい、恥をしのんで対策を尋ねるほかありません。もしかして転校を勧められるかもしれません。

 

2.どうしたらいいのか?

上述したように赤点にも原因があります。それを特定して対策を立てる必要があります。

 (1)学校のレベルが高すぎて子供には無理だった

 これを認めるのは親子ともどもつらいですね。まだはっきりと学校から引導を渡されるほうが諦めがつきますが、そこまでビジネスライクな学校は少数派です。高校卒業まで在籍させてくれる場合が多いでしょう。しかし大学受験は厳しいですね。

 最難関とされる中高一貫校の大学実績を見てみてください。全ての合格校を一覧で公表している高校のものをです。すると、東大〇〇名、医学部〇〇名といった華々しい実績に隠れるようにして、聞いたこともない大学や専門学校へ進学している生徒が必ずいます。もちろんそこが本人の目指した志望校なら他人がとやかく言う筋合いではないのですが、そうとはなかなか思えません。卒業はできたけれど、はたしてその中高はその子に合っていた学校だったのかどうか、考えてしまいますね。

 中3にもなって赤点→追試の常連になってしまっていた場合、はっきりとわが子の学力が学校の水準に達していないことを理解しましょう。その上で作戦を立てるのです。

◆作戦1・・・高校入試のための勉強からはじめる

 おそらくは、高校入試にも苦戦するレベルです。公立中学に行って塾に通っていた小学生時代の同級生にも劣る学力です。そのことをはっきりと自覚し、プライドを捨てて、高校入試に合格する(レベルに達する)ことを目標として学習を再構築するのです。地元の公立中学生対象の受験塾に通うのもいいですね。近所だと恥ずかしいのなら、数駅離れた塾を選びましょう。

 この場合は、学校で習っていることとは比べ物にならないほどベーシックな内容を勉強しますので、赤点→追試の負のループからは抜け出せません。したがって、あらかじめ学校の先生に相談・報告しておくほうがよいでしょう。まさか学校の勉強を捨てたと言うわけにはいきせんので、「基礎的な内容から徹底的に勉強させることにした」とでも言えばいいと思います。おそらくは学校の先生も持て余していた生徒のはずなので、応援してくださるはずです。

 学校の授業はたぶん理解できないでしょうけれど、まさか寝るわけにもいきません。先生のおっしゃった100のうち1つだけでも理解することを目標にします。そして理社のような知識教科は、必死に集中しましょう。今日習ったことをその場で半分だけでも覚えて帰る意気込みで授業に臨んでください。

ただし家庭学習は、学校で進めている高度な内容はすっぱりと捨て、基礎的な内容の習得に徹底的にこだわります。

◆作戦2・・・英語と数学だけにしぼる

 緊急避難的な作戦です。他教科は捨て、英語と数学だけに絞って勉強するのです。おそらく落ちこぼれた原因はこの2科目にあります。

 しかし、自分一人の力では何ともならないでしょう。そこで塾を探します。作戦1同様、高校入試を目指した塾くらいがレベル的にはちょうどよいか、あるいはそれでも難しすぎるくらいだと思います。個別指導や家庭教師も良いのですが、こうした「できない」生徒を「できる」ように指導するのは難しいのです。よほどのプロを探さないといけません。中途半端な教師を頼るくらいなら、親が一緒になって勉強するほうがましかもしれません。子供は嫌がるでしょうけれど、そんなことを言っている場合ではありませんので。

◆作戦3・・・英会話取得に特化する

 4技能の取得が大学入試の必須条件です。しかし、現状の日本社会では、会話能力が高く評価されがちな状況にあるのも事実です。まずは英会話能力取得に特化してみましょう。学校の英語の点数は上がりませんが、少なくとも「僕は英会話は得意だ」という自己肯定感が得られます。少し欲が出てきたところで、英検かTOEICの高スコアを目指しましょう。 英検の準1級が目標です。ここまでとると、大学入試に有利に働きます。TOIECのスコアなら、ビジネス社会で評価されますので、将来就職したときに海外赴任のチャンスが巡ってくるかもしれません。

このあたりでTOEFLの高スコアも欲しいところですね。難易度が高いので次のステージだと思いますが、ここで高スコアがきちんととれるようになると、海外の大学への進学も視野に入ります。おそらく周囲の級友たちは、共通テストについて話題にしたり国立大学や医学部を目指しているでしょうけれど、別の道を歩むことになります。

◆作戦4・・・転校する

 最後の手です。

 せっかく進学した学校を辞めるのには勇気が必要です。今さら受け入れてくれる高校があるのかもわかりません。でも、このままいくと、確実に大学入試は失敗します。私立高校で、定員が少なく、面倒見が良く、荒れてはいない、そうした高校を探しましょう。もしかして大学実績をこれから出そうと必死になっている学校なら、とことん勉強につきあってくれるかもしれません。ブランドやネームバリューに対する拘りは捨ててください。知人から「せっかく良い学校だったのにもったいない」と言われても動じてはいけません。「その高校、聞いたこともないわね」と言われても無視してください。高校3年間をどう過ごすか、決断の時だと思います。

 (2)遊び過ぎてしまった

おそらくは、きちんと学校の課題をこなしていれば、そう遅れをとることはなかったのです。学校のレベルも本人に合っていました。ただ、遊び過ぎてしまったのですね。

 これは、親子で十分な話し合いが必要です。今、何が必要で何が必要でないのか。

シンプルに学習時間の確保が必要です。以下の作戦をとりましょう。

◆作戦1・・・学校帰りの寄り道・週末の外出を禁ずる

 まずここからでしょう。学校帰りの寄り道は、ある意味私立中高生であることの醍醐味ですね。電車での通学ですので、ターミナル駅でちょっと途中下車するだけで楽しく遊べます。

 しかし、これが時間を無駄に消費するのです。

学校からは直帰する。そうして学習時間を捻出することは大切です。

また、週末に友達と誘い合わせて遊びに行ってはいませんか? これも禁止です。当たり前です、今は他に優先すべき課題があるのですから。おそらくクラスメイトの中には、学校からまっすぐに帰宅し、週末も遊びに出かけず、高成績をキープしている子が必ずいるはずです。そうした生活スタイルを見習いましょう。

◆作戦2・・・部活を辞める

 これは禁断の奥の手です。部活は中高生活を彩るとても大切なものです。そこで一生の友人ができるかもしれません。青春といえば部活ですね。

しかし、その時間が今は惜しい。事態はそこまで深刻であることを自覚すべきでしょう。

◆作戦3・・・スマホを取り上げる

遊びに気が向いている子ほどスマホを活用しています。これは事実です。

もちろん学校からの連絡や重要な調べものにも使っているでしょう。しかし、部活の連絡や友達同士の連絡から、いつのまにか遊びの連絡や会話、さらにはyoutubeSNSへと、活用できるのがスマホです。いわば、勉学と遊びの境界線が曖昧になるのがスマホの特質なのですね。期間限定でもいいかもしれません。一度スマホを取り上げて、時間の有効活用について自覚させましょう。

 (3)習い事・塾が忙しすぎる

塾を3つ掛け持ちしながら、ピアノとバレを続けている、そんな生徒をよく見かけます。おそらくは週7日間の全てが何等かのイベントで埋め尽くされていると思います。

 効率よく勉強ができる子ならそれでもいいのです。しかし、そうでない普通の子がこれをやると、学校の勉強にしわ寄せが必ずいきます。

今いちど、最優先事項は何か、家族で話し合いましょう。答えは簡単ですね。学校の勉強です。一度、習い事や塾を全て止めてみましょう。半年間、学校の勉強に没頭しましょう。それでもなお赤点ループから抜け出せないとしたら、それはもう学校のレベルに全くついていけてないことを意味します。

 

3.赤点をとる前に

 学校の勉強についていけなくなる時というのは、いきなり訪れるわけではありません。本人も周囲も気が付かない間に、少しずつじわじわと進んでいくものです。遊びすぎていたわけでもない、宿題をさぼっていたのでもない。授業も一所懸命聞いていた。試験前には必死で勉強した。それでも、気が付いたら得点できなくなり、赤点→追試組の常連となってしまった。そんな風に事態は進行します。そうなる前に手を打てれば、事態の打開のやりようはあったはずです。

 〇最近宿題が終わらなくなってきた

 〇小テストの問題で解けないものが増えた

 〇授業の進度が早すぎると感じることが多くなった

 〇授業中に先生から当てられることが怖くなってきた

 〇ゲーム(or YouTube or 漫画 )に費やす時間が長くなってきた

 〇相談しやすい先生がいない

こうした兆候が見られるようになってはいませんか?

ゲーム等に費やす時間が増えているのは、現実逃避しているのです。また、相談しやすい先生がいないのは、勉強が得意でないから先生との距離感が遠くなっているのです。

中学生にもなって自分で何とかしろ! と言いたいところですが、自分では何ともならないからこうした事態となっています。親の出番だと思います。