中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

勉強時間の作り方



今回は基本に立ち返って受験に向けての勉強時間の捻出方法について色々と考えてみたいと思います。

 

1.そもそもどれだけの時間が必要なのか

 

まずは基本的なお話です。そもそも中学受験のための勉強にはどれだけの時間が必要なのでしょうか?

実はこうした質問を受ける事はとても多くあります。質問されれば、一般的にはこのようにお答えしています。

週に20時間位でしょう

週に20時間ということは7で割り算すれば3時間弱ということになります。これだけ聞くと大した時間数に聞こえないかもしれませんが、現実には皆さん塾に通われますよね。6年生にもなると週3回4回あるいは週5回拘束の塾と言うものまであります。一般的にいって週3回塾に拘束されていると考えましょう。平日の週3日とします塾に行ってる曜日には正直言って家庭学習はゼロと言えるでしょう。小学校から帰って軽食を食べて急いで塾に駆けつける。塾から帰ってくれば軽い夕飯を食べてお風呂に入って寝るのがやっとです。まあ寝る前に漢字や計算ドリルなど少しはやる方もいるかもしれません。しかし、睡眠時間を削ってまでの学習は本末転倒の話ですので、塾のある日には家庭学習はできないと思ったほうが良いでしょう。そうすると7日のうち3日が取られてしまいますので、残りは週4日です。仮に平日に3時間ずつ6時間勉強したとして残りの週末の2日で14時間、つまり1日7時間勉強しなくていけません。

子供の集中力や小学校の宿題をこなす時間等を考えると、この週20時間の受験勉強時間と言うのはおそらくギリギリのラインだと考えます。そして多くの生徒たちが受験勉強以外にも他の習い事をしています。1番多いのが英語でしょうか。水泳やバレー、あるいはピアノといった習い事を続けている子も多くいます。そう考えると、この週20時間と言う受験のための勉強時間確保は、もしかして実現が難しい時間数なのかもしれません。

結論から申し上げると、受験勉強に必要な時間、合格のために必要な時間は人によって異なる。あまりにもありきたりな結論で恐縮ですが、これが答えです。


もう少し正確に説明しますと人それぞれに可能な限りの時間を受験勉強に当てるということを意味しています。もし週に25時間費やせるなら25時間費やしてください。もし10時間しか捻出できないのなら、その10時間で可能な勉強をさせてください。一般的に何時間が必要ということを気にするよりは、自分の子供にとって本人にとってどれだけの時間を費やすことができるのか、これを算出するところから始めてほしいのです。当然優先順位というものがあると思います。ピアノだけを絶対に最後まで続けたいそ子さんもいるでしょう。あるいはバレーや作家を続けたお子さんも当然いるでしょう。そちらを優先するのであるならば、それ以外の時間を全て受験勉強に振り向ける必要があります。簡単に言ってしまうと、余分な時間、無駄な時間をいかに削るのか、それが勉強時間確保の基本だと思います。

 

2.タイマーを用意する。

 

勉強時間を作るために最初に用意するものはタイマーです。それから大きな壁時計も必要です。壁時計はよく学校の教室の壁にかかってるようなものをイメージしてください。遠くからでも一目で時間が見て取れる大きな針の見やすい時計のことです。できれば電波時計が良いと思います。不正確な時計ほどイライラさせられるものはありませんからね。この大きな壁時計を子供が勉強する環境の目立つところにかけてください。もし子供部屋とリビングでと二箇所で勉強する子供なら2箇所に設置してください。さらにタイマーを用意します。このタイマーは学習用タイマーといったものも市販されているようですが、普通のキッチンタイマーで充分です。100分以上の時間はこれで測定しません。子供の勉強時間はせいぜい60分が限界ですので、60分測れるタイマーならばもうそれで十分だと思います。できれば文字盤の大きいものが使いやすいと思います。

 

3.時間割を作る

 

1週間の学習時間割をきれいに作り上げることが理想です。学校から帰ってきて、あるいは土曜日日曜日のように1日中家庭学習に使える時間がある場合、一体何時間受験勉強に費やすことができるのかをまず考えます。そしてそれを60分単位30分単位で細かく表にします。この表の中に算国理社の4科目をうめていくのです。塾の教材の復習時間も必要かもしれません。入試問題を解く時間も確保しなくてはいけません。それら全てをこの時間割の中に盛り込んでいきます。こうして1週間の時間割ができたらばは、それを淡々と実行に移すことが理想です。

理想と申し上げたのは、これが現実的では無いからです。過去何人もの生徒にこのような時間割の作成をさせましたが、うまくいった生徒というのはほとんどいませんでした。もちろん最初のうちは時間割通りに進めようと頑張るのですね。ですが、だんだんそれが乱れていきます。そしていつの間にか終わらないテキスト、終わらない教科が山積みになっていく。これが通例でした。つまりこの時間割作戦は最初から無理があると考えた方が良いでしょう。しかしあくまでも理想としては時間割が想定されている。そういうつもりで、まずは基本の時間割を作って欲しいのです。ポイントが1つあります。4科目をまんべんなく散りばめることです。 1日1教科だけを勉強する、そうしたやり方はなるべく避けましょう。最低でも2科目時間を取ります。週末ならば4科目をまんべんなく1日の中にばらまくようにして設定してください。子供の脳というのは1科目をずっとやり続けると、途中で集中力がどんどん下がっていくものです。途中で科目が切り替わることによって脳のスイッチが切り替わるように新鮮な気持ちで新たな教科に取り組むことができます。

 

4.現実にはどうなるのか

 

実際の生徒の様子を総合してみると、現実にはこのような形で学習が進みます。

まず学校から帰っての学習スタート時間あるいは週末休みの日に朝起きてからの学習スタート時間、これは確定して厳守してください。例えば5時から取り組む。あるいは朝7時半から勉強に取り組む。そのように決定したらこれは必ず守らなければいけません。ここを乱してしまうと、おそらく全てが崩壊していくのです。例えば夕方5時から勉強を始めたとしましょう。そこでタイマーを60分にセットしスタートさせます。例えばそこで算数の勉強を始めたとしましょう。ここで教材選びにこだわる必要はありません。

年生にもなるとどの教材をどのような順番でやっても、必ずそれが力になるものです。

まずは目の前にある問題集プリント、あるいはテストの解き直し、いずれにしても算数の勉強しなければならないものを取り出して始めましょう。タイマーが鳴りました。もう60分経ったのです。子供はまだ一生懸命問題を解いています。ここで通常ならあと5分後10分延長して、解かせ切りたいと考えますよね。これを遮るのがタイマーの役割なのです。ここでの延長認めてしまうと、おそらくその日は算数だけで終わってしまうことになりかねません。なぜなら、やらねばならない量は、子供の学習時間をはるかに超えたものだからです。つまり終わるわけがないのです。ですからタイマーと言う武器を使って強制的に時間の制約をはめることで、勉強終了させなくてはいけません。嫌がる子供から算数を取り上げ、次は他の教科、例えば理科に取り組みましょう。やはりタイムは60分にセットします。こうして例えば5時から7時までの2時間で算数と理科をやりました。7時から8時までは食事と学校の宿題などを簡単に片付ける時間に当てられます。9時に寝るお子さんならば8時から9時までの1時間もう少しだけ勉強ができます。そこで今度は国語でもやってみましょうか。やはりタイマーを設定し、時間になったら必ず鉛筆を置かせてください。こうしてこの日3時間の充実した勉強が実施できたことになります。もちろん途中で打ち切っていますので、どれも未完了であり、何か気持ち悪い感触が残ると思います。これは一体いつやればいいのかというと、次の日の学習に回しましょう。次はこの終わり切らなかった部分から始めれば良いのです。

週末も同じようなスタイルで進めます。ただ、入試問題練習が入った場合には、もちろん60分で区切るということにはなりません。試験時間が50分あるいは30分といった学校が多くありますので、その試験時間に合わせてタイマーを設定してください。

お分かりいただけたでしょうか。

勉強時間の作り方の最大のコツというのは、このように異なる教科で隙間なく時間を埋め尽くすことに他なりません。

とにかく無駄な時間を潰し、常に鉛筆を動かし考えている問題を解いている。そういうスタイルを作りたいのです。そしてその時に1科目だけをやっていると言うことを避けるために、タイマーをうまく活用して勉強切り替えていきます。ここではどの科目をどの順番でやらせるのか、どの教材をやらせるのか、どれから解いたら効率的なのかといったような内容の効率化はとりあえず無視しましょう。目の前のテーブルいっぱいに並んだ料理を食べていくときに、どの順番で食べれば効率よく栄養が吸収できるのか、そんなことを考えるよりも、目の前にあるお皿をとって、口に入れることの方がはるかに重要だと思うのです。そんなイメージでひたすら勉強し咀嚼し続ける。これが入試に向けた勉強時間の作り方の基本となります。

 

5.塾をやめてみる

いきなり過激な提案で恐縮です。

しかし、業界の人間の私が言うのもおかしいですが、塾は時間の無駄が多いのです。そもそも通塾時間がかかります。こちらの都合ではなく塾の都合で時間が決められており、そこにも無駄が生じます。また、居残り補習など熱心にやられたら最悪です。自宅学習のペースが崩れます。

いっそのこと塾を辞めてみるというのも一つの選択肢です。そこまで踏み切れないとしても、塾を変えることも考慮すべきだと思います。勉強時間を捻出するためには、そこまで考えることも必要なのです。

 

6.息抜きの時間は必要か

 

正直なところ私は家庭学習において息抜きの時間は不要だと思っています。これは子供が勉強から逃げ出す言い訳、親が子供の様子を見るに見かねての甘い誘惑に他ならないと思っています。極論すれば小学校の昼間の時間がまさに息抜きの時間に相当すると思います。多くの友達と話し、校庭で走り回り体育の時間もあれば、給食の時間もある、まさに午前から午後の時間が息抜きで埋め尽くされてるようなものですよね。その後の家庭学習は、みっちりとわき目も振らず、勉強させても、子供の精神が破壊されるなどと言う事は決して起こりません。

私の知ってるご家庭では、学習時間をコンパクトに設定し、かなり密度の濃い勉強やらせるスタイルをとられていました。そのかわり寝る前の30分間は何をしても良い好きな時間に当てたそうです。本を読んだり、テレビとアニメを見たり、そうした楽しみのために子供は頑張ったと聞きました。そうしたやり方なら息抜きと言うよりは、ご褒美タイムとして効果が上がるやり方だと思います。ただしゲームだけはやめてください。頭が休まりませんので逆効果です。

 

勉強時間についてはこちらの記事でも書いています。

peter-lws.hateblo.jp