みなさんは、「NHK for School」という動画をご存じですか?
その名のとおり、NHK作成の、学校の学習に直結した動画のアーカイブです。
学校の授業中に視聴することを想定して作られています。
これが、実にいい!
やはり地理の学習は実際に映像を見ることがとても有効です。日本中連れまわすわけにはいきませんので、この動画を活用しない手はありません。
前回に続いて、地理の学習をおもしろくするアイデアについて考えてみましょう。
1.番組一覧
(1)ズームジャパン
Eテレで毎週放送されていたものです。1本10分程度の番組として構成されています。そのまま見せても面白いと思います。
・世界の中の日本
・野菜が一年中食べられるわけ
・米作りのさかんな地域
・新鮮な魚を食べられるワケ
・育てる漁業
・これからの食料生産
・くらしを支える工業製品
・自動車工業のいま
・情報をいかす運輸業
・情報をいかす販売業
・放送局の仕事
・森林とわたしたちのくらし
・自然災害を防ぐ
ざっと見ただけでも、こんなタイトルの番組が並んでいます。
私がもしこの番組で授業を行うなら、こういう構成とすると思います。
〇講義・・・基本知識を教える
→〇視聴
→〇振り返り
→〇定着
番組としては子どもがおもしろく思うような構成になっていますので、ただ見せるだけでも喜んで見ることと思います。しかし、それでは学習につながりません。前後にきちんとした講義・問題提起・振り返り・定着、そうした過程とセットにすると効果的だと思います。
2.動画クリップリスト
学校の先生が利用しやすいように、細かくジャンル分けされた1分~3分程度の動画クリップがあります。私が使うなら、こちらです。贅肉(タレントの会話等)が省かれていて、映像だけを使えますので効率的です。
(1)日本の国土
〇我が国の国土
・世界の大洋と海洋
・日本の領土・領海・領空
・日本の東西南北の端はどこ?
・与那国島
・択捉島
・南鳥島
・沖ノ鳥島
〇国土の地形
・日本の地形
・日本の火山
〇地形条件から見たくらし(低地)
・輪中~低い土地のくらし
・輪中を守るしくみ
・輪中の現在のくらし
〇地形条件から見たくらし(高地)
・長野県のレタスづくり
〇国土の気候
・日本の気候の変化
・雨温図
〇気象条件から見たくらし(あたたかい土地)
・沖縄の家の工夫
・沖縄のさとうきびづくり
・気候をいかした沖縄の農産物
・沖縄の自然や文化をいかした観光
・沖縄の文化を守る取り組み
〇気候条件から見たくらし(寒い土地)
・十勝平野の輪作
・北海道の家の工夫
国土関連だけでもこれだけのラインナップがあります。例えば東西南北の端についても、私たちが実際に足を運べるのは与那国島だけですからね。与那国だって、行く人はほとんどいないと思います。(実は私は行ったことがあります。なかなかおもしろ島で、生徒にはよく語るネタとなっています)
(2)産業
産業についても豊富な映像が使えますね。例えばこんなものです。
・世界の中の日本
・野菜が一年中食べられるわけ
・米作りのさかんな地域
・新鮮な魚を食べられるワケ
・育てる漁業
・これからの食料生産
・くらしを支える工業製品
・自動車工業のいま
・情報をいかす運輸業
・情報をいかす販売業
・放送局の仕事
・森林とわたしたちのくらし
・自然災害を防ぐ
先日は、日本の集約農業を考えさせる目的で、アメリカの大農法を取り上げたのですが、生徒がふだん使っている教材にはあまり詳しくは説明がありません。取り上げたかったのはセンターピボット農法です。
アメリカのグレートプレーンズやエジプト、オーストラリア等で見られます。地下水を自動的に円形の畑にスプリンクラーで灌漑する仕組みですが、特徴的な円形の畑の航空写真を見たことがある方もいらっしゃるでしょう。
半径が400mですので、ざっと50haくらいの面積を無人で運用できます。日本の平均耕地面積が農家一戸あたり3haほどですから、比較にはなりません。大農法とよばれている北海道でもせいぜい十数ヘクタールです。
現在では少々時代遅れの農法のようですが、この規模感、ぜひ生徒たちにも見せたいですね。こういうときに便利なのがこの映像アーカイブなのです。
さらに6年生にもなると、集約農業で単位面積当たりの収穫高を上げているはずの日本の農業が、実はそれほどでもない事実を扱います。アメリカやエジプトに負けているのですね。集約農業=狭い耕地に多くの人手・手間・肥料を用いて多くの収穫を上げる農業、こう習ってきた生徒たちの常識が覆ります。
いったいどういうことなのか?
そこで、アメリカの水田の種まきの映像を見せます。
日本では、苗代で育てた苗を田植えで水田に植え替えます。しかし映像では、飛行機から広い湖(実は水田)に種モミがばらまかれる様子が見られます。当然きれいに一列に育つ日本の水田のようなわけにはいきません。いったいこれでうまくいくのか? そもそも日本ではなぜ田植えを行っているのか?
映像一つから様々な議論につなげる授業が展開できるのです。