中学受験のプロ peterの日記

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【中学受験】社会科知識暗記法入門 これで社会科は得意教科になる

みなさんは、社会科の知識の暗記は得意でしょうか?

「得意だよ!」

そう言える人は幸せですね。おそらく暗記で苦労などしたことがないのでしょう。

世の中には、見た映像をそのまま記憶できる「映像記憶」の能力を持つ人が3万人に1人ほどいるそうですが、実に羨ましい話です。

多くの受験生は、暗記に苦労していることでしょう。

この記事では、私が編み出した(というほど大仰ではなく、ごく一般的です)二つの記憶法について説明します。

名付けて、超高速暗記法反芻記憶法です。

1.中学受験における社会科の役割

受験において、社会科という教科は、「保険」をかける教科です。

算数でどうしても解けない問題が出ることもあるでしょう。国語で意味のつかめない文章にぶつかることもあるでしょう。

ただ、社会科だけは、コンスタントに得点がみこめます。

ほとんどの学校の社会の入試問題は、満点が可能です。

ぜひ社会を得点源にしてください。

社会科の学習については、2つの異なる意見があります。

①社会科は暗記科目だ。暗記さえすれば何とでもなる

②社会科は暗記科目ではない。背景や流れを理解することが重要だ。

もちろんどちらも正しく、そしてどちらも間違っています。

生徒が学ぶ順番としては、①→②となります。

「歴史の細かい年代だけ覚えても意味がない。まずは全体の流れを理解することが重要だ!」

「地名だけ覚えていても、それが何の役に立つ?」

などと言う人もいますが、それはです。

思考力というものは、正しい知識の土台の上に築かれるものです。知識なき思考は、ただの個人的感想のレベルといえるでしょう。

 

 学習の順序としては、以下のように意識してください。

①大枠となる基本知識を取得する。

地理の学習であれば、都道府県や国の位置からはじまり、主要な地形を覚える。歴史においては、基本的な年代を日本史ならまず100個ピックアップして覚えましょう。

②次に、背景や流れに関して学びます。

①で頭の中に、大まかな地図や「歴史のものさし」ができていますので、それらの相互関係を考えていくことで、知識が有機的につながっていくのです。

③最後に、頭の中の枠組みに細かい知識で肉付けしていきます。

ジグソーパズルのピースをはめるように、適切な場所に知識のピースがはまっていくことで、詳細な絵柄が徐々に姿を現すことでしょう。

 

2.なぜ人は忘れてしまうのか?

 暗記の具体的な方法に入る前に、「なぜ人は忘れてしまうのか?」を考えてみます。

私たちは、日々周囲の事象や環境について、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚などの情報として頭の中にインプットしていきます。

 

例えば、昨日の夕飯は何を食べたか、覚えていますか? 

別に食べながら覚えるつもりではなかったのに、昨日の夕飯のメニューは頭の中にしっかりと残っていますね。お母さんの作ってくれたとても美味しい夕飯の記憶です。

 

でも、その情報も、数日たつと、徐々に消えていき、おそらくは1週間もすれば、思い出すことがほとんどできなくなっているはずです。

 

このように、日々インプットされる大量の情報も、次々と消えていき、その中からごく一部の情報だけが、消えずに頭の中に残っていきます。

 

もしすべての情報が消えなかったらどうでしょう。

重要な情報もどうでもよい情報も、全てが頭の中に残っていたら大変ですよね。この、脳の自然な働きを、いかに「騙すか」というのが、暗記のコツとなります。

 

 いったい、どういう情報が、消えずに残っているでしょうか。

①とても(自分にとって)重要な情報
②とても衝撃的だった情報
③何度も繰り返された情報


①は、例えば自分や家族の名前、住所などです。忘れてしまったら大問題です! 
ただ、歴史の年代をこの①の情報にするのは、歴史の専門家でもなければ難しいですね。

②は、例えば、シンゴジラが上陸したとか、ケネディが暗殺されたとか、そういう衝撃的な情報でしょうか。

ためしに、お父さんかお母さんに、「2011年3月11日に何してた?」と聞いてみてください。
おそらくは鮮明に覚えているはずです。
ただし、これも年代暗記には応用できません。
これに類するやり方として、面白かったり興味深かったりすることは忘れにくいということを利用してもよいですが、100以上もの歴史年代を面白く覚えるのは困難です。いわゆる「語呂合わせ」はそうしたやり方ですが、「イイクニ作ろう鎌倉幕府」「ナクヨうぐいす平安京」くらいならともかく、100以上もの年代についてはなかなか無理があります。

そこで、おすすめするのが③の残し方です。おもしろかろうがつまらなかろうが、好きだろうが嫌いだろうが、ともかく何度も繰り返すことで無理やりにでも頭に情報を残してしまおう!というやり方ですね。そして、これには重要なコツがいくつかあります。

 


3.暗記のコツ その1 「超高速暗記法」


【1】忘れることを前提にする

「忘れないようにしっかり覚える!」口でいうのは簡単ですが、実行は不可能ですね。

 多くの暗記法は、この点で間違っています。

映像記憶能力でももっていないかぎり、絶対忘れないようにしっかりと一度で覚えてしまうことなんて不可能です。

いいんです、忘れても。

忘れたら、また覚え直せばいいだけです。そのためには、覚え直すことが苦にならない楽な覚え方でいきましょう。

 

それを以下に紹介します。

【2】書かない

 楽に覚えるためには、書いてはだめです。

書くと時間がかかって面倒くさいですからね。大人の中には、「何度も書いて覚えろ!」という人もいますが、漢字のように手を動かすことが重要ならともかく、単なる知識を何度書いても無意味です。

書かなければ頭に入っていかないのは、頭の固くなった大人のやり方です。小中学生までであれば、まだまだ頭脳が柔軟です。

口で、言葉だけで覚えていきましょう。

一度言葉で覚えた後に、漢字に置き換えていくとよいですね。

 

【3】声を出す

 書かない暗記法は、声を出す暗記法ということです。

年代暗記なら、「大化の改新 645年」「白村江の戦い 663年」と、事件と年代を声に出して読み上げながら覚えてください。

なるべく、はっきりと大きな声で読み上げてください。

生徒にありがちな、信じられないような語句の読み間違いもここで防ぐことができます。

もちろん、間違った読みを覚えこまないように。

 

【4】しつこく繰り返す

 忘れても忘れても何度でも繰り返す。暗記はこれしかありません。

暗記の極意というから、何か魔法のようなやり方を期待されていたとしたら申し訳ありません。そんな方法はありません。

大昔から実践されていたとおり、何度も繰り返す、これしかないのです。

ただし前述したように、繰り返しが苦痛になってはいけません。気軽に何度も繰り返すためにも、声に出して読み上げる暗記を推奨しています。

 

【5】スピードが最重要!

 この暗記だけは、じっくりと時間をかけてはいけません。

なるべく短時間で、なるべくたくさん繰り返すことが大切です。

例えば、歴史年代を150個書くテストなら、5分で全問正解するスピード感が必要です。

 

 

【6】1対1対応で

 一つの年代に一つの事件、のように二つの知識をワンセットで暗記しましょう。

英単語の暗記を思い出してみてください。

一つの単語に複数の日本語の意味があるような単語は、なにか覚えにくかったという記憶はありませんか? 

まずはシンプルに1対1対応で知識のセットをたくさん覚えることが大切です。

 

【7】順番に

 誰しも単語カードを作成したことがあると思います。

私も学生時代にはリングに束ねた単語カードを何度も何度もめくって覚えたものです。

この方法はどこでも気軽に暗記に取り組めるという利点もあるのですが、丸暗記で基礎知識を構築しようとすると、どうにもスピード感に欠けるという弱点もあるのです。

どちらかというと、全てを完璧に覚える暗記法だと思います。

まずは一覧表を作り、それを順番にすべて丸暗記するやり方にチャレンジしてみてください。

 

4.暗記のコツ その2 「反芻記憶法」


反芻とは、牛やヤギが草を消化するやり方です。

反芻する牛

一度胃の中に入った草を、もう一度口に戻してすりつぶすことを「反芻」といい、牛は1日の1/3くらいの時間、ずうっと口を動かしています。その間に唾液が分泌し、胃の中の微生物の働きを助けて消化しやすくします。

消化しにくい草から栄養を吸収する工夫なのですね。

社会科の知識の中にも、消化しにくい食物のように、なんとも頭に入りにくい知識というものがあります。

歴史年代や地名のような知識は、疑問を抱くことなく丸暗記していけばよいので、前述した高速暗記法でバリバリと暗記していけばよいと思います。

ところが、少し難し目の知識になると、いっこうに頭に入っていかないものです。

みなさんはそんな経験はありませんか?

例えば、GNP、GDPはどうでしょう?

言葉としては、GNP=国民総生産、GDP=国内総生産 ということですが、その内容もすぐに出てきますか?

また、GNIはどうでしょう?

こうした、頭に入りにくい知識は、とくに公民分野の知識に多いと思います。

こうした知識についてはこのように覚えていきます。

(1)まずは、語句として暗記する

(2)その語句が載っているテキストをよく読む

(3)その語句が載っている資料集をよく見る

(4)他人に質問してもらう

(5)その語句を使った短文作成をしてみる

(6)他人に説明してみる

(7)資料集やテキストを読む

 

これらを、しつこいくらいに何度も何度も繰り返します。

そうすることで、これらの知識は栄養として吸収、つまり使える知識へと変化していくのです。

繰り返すということでは、「超高速暗記法」と同じですが、スピードを重視する「超高速暗記法」とはことなり、この反芻記憶法ではスピードは求めません

ゆっくりでかまいませんので、ヤギになったつもり?で、ずっと口を動かし続けてください。

 

5.知識は論理記述に重要


不思議なもので、一同こうした暗記のやり方になじむと、様々な知識を覚えることが苦にならなくなっていくようです。

頭の中に暗記の回路ができるようなイメージでしょうか。そして知識が充実してくることで、記述の内容もまた充実してくるのです。

必要な知識がきちんと書かれているのに文章力に欠ける記述答案と、文章は流暢に書かれているが知識が間違っている記述答案では、どちらが評価されるかは明らかです。

 

知識が貧弱なくせに文章だけが流暢な答案が一番嫌われる答案だといえます。

(そういえば生成AIが作る文章がその典型的なものですね)

 

もちろん、知識も文章力も兼ね備わった答案が一番ですが。