中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

中高一貫校、塾いらずって本当なのか?

せっかく中学受験をして中高一貫校に進学したのに、大学受験をめざしてまた塾通い、うんざりする人も多いでしょう。

塾によっては中学受験の合格発表のその足で申し込みに行かなければならないところ(例えば鉄緑会)もあるといいます。

しかし、中高一貫校の中には、塾いらずを標榜しているところもありますね。

今回はそのあたりについて考察してみます。

1.通塾率

中高一貫校生の通塾率、とても気になりますね。

文部科学省の調査によると、私立中学校の通塾率は約54%だそうです。

またベネッセによると、通塾率は約40%だそうですね。

実は中高一貫校の通塾率については、きちんとした統計データなどありません。学校によっては生徒に調査をして把握しているところもありますが、もちろん公表などしていません。また、生徒が正直に答えているのかどうかもわかりません。学校によってはそもそもそんな調査などしないところも多数あります。上位校にその傾向が強いですね。

さらに、「塾」の定義もしづらいところです。

・主要教科(三科目・五科目)を全て教える

・英語(あるいは数学)に特化した単科塾

・海外留学準備の英語塾

・個人指導・家庭教師

こういったところを利用している生徒全てが「通塾」していると数えると数字は大きくなると思います。

私の感触でも、半分かそれ以下といった感じだと思います。

 

2.塾いらずを標榜する学校

 学校によっては、塾不要をアピールしている学校もありますね。HPや入学案内に載せるような話ではありませんので、学校説明会のおりに教務主任がそうお話している、そんなレベルです。また、親のクチコミ情報で「〇〇中高は皆塾にいかなくても学校が面倒をみてくれるらしい」と聞く場合もあるでしょう。

もう何がいいたいかおわかりでしょうか?

どの学校が塾が不要で、どの学校が塾が必須なのかなんて、すべて曖昧な噂レベルでしか情報が存在しないのです。

また、2024年東大入試で3桁の合格者を出して話題になった神奈川の聖光学院。「塾に行く必要がない」「塾無しで東大に合格できる」「予備校専門講師をしのぐ実力の教師陣」といった情報が飛び交っています。

今年聖光から大学に進学した教え子に聞いてみました。

「今年は聖光の東大合格実績はすごかったね。」

「はあ。」

「みんな塾に行っていないって噂だけど本当?」

「いや、けっこう通ってる奴多いっすよ。」

現実はそんなものです。

 

学校が「大学受験予備校化」していくことに私は賛同できないのですが、それでも厳しい現実というものがあります。そうした学校を求める声があることも十分に理解できます。

そこで、どのような学校が「塾に行く必要がない」学校か、多少なりとも目安らしきものをあげておきます。

 (1)自習室が充実している

例えば洗足学園のHPにはこうあります。

「SKYLIGHT READING ROOM」は、授業日は最終下校時間以降21時まで、日曜や祝日などの休業日にも8時から17時まで、高校3年生と卒業生は自由に自習で利用することができます。

卒業生まで使用できるとはなかなかですね。

また、穎明館のHPにはこうありました。

放課後学習支援システム「EMK未来サポート」がスタートしました。
無窮館(図書館)内に新たに「EMK未来館」として、専用の自習室が4つ、合計180のブースが整備されました。(自習室A33、自習室B61、自習室C79、完全個別指導用ブース7)夏季講習期間中である本日は9時から17時まで開館し、専門スタッフ7名で対応しています。通常授業期間中は平日16時から19時、土曜日は13時から18時で利用可能です。中学1、2年生は原則全員登録、3年生、高校生は希望者登録です。

学校帰りに外部の図書館の自習室を利用していた私からすれば、羨ましい限りです。
私の教え子で私立女子校から東大に進学した生徒が、高校生時代には自習室を利用するためだけに某予備校に籍を置いていたといっていました。そうした生徒にとっては、学校に充実した自習室環境があることはメリットだと思います。

 (2)講習がある

学校内で無料あるいは格安で講習を実施する学校もあります。なかには予備校と提携して学内で予備校の授業が受けられる学校まであるのです。

例えば神奈川の桐光学園では、平日・土曜日の放課後に加えて、夏期講習も実施されており、年間600を超える講座から生徒は自由にとることができるといいます。

そういえば、都立高校でも、塾・予備校講師を動員した補習授業がスタートしたそうですね。そんな話をきくと、学校の先生方はプライドがないのかな? とそこが不思議です。

 

 (3)進路指導室が機能している

 学校見学をした際にぜひチェックしたいのが進路指導室です。広い部屋が確保され、壁一面の書架に大量の学校情報が自由に閲覧できるようになっていて、複数の指導担当の先生が待機している。こんな環境なら、あえて予備校の情報を頼る必要はありません。



3.本来はどの学校も「塾いらず」のはず

とくに上位校(入学偏差値&大学実績)に関しては、どの学校も塾など不要です。学習進度は十分早く、遅くとも高2には高校範囲は終了しています。あとは自分で過去問を勉強し、わからないところは教師に質問すればいいのです。高いレベルの生徒を指導している先生は、当然質問にも答えられます。

では、なぜ皆塾に行くのか?

〇周りが皆行くのでつられて行きたくなった

〇周りが皆行き始めるので不安にかられた

〇親が塾に行かせたがる

だいたいこの3つが理由でしょう。中高生くらいの時期は、周囲に流されやすい時期でもあります。周囲の友人たちが塾・予備校に行き始めると、自分も行きたくなる、あるいは行かなくてはいけない気になる、そんなものです。そして親に「塾に行きたい」といえば、喜んでお金を出してくれることでしょう。以前は、男子校の生徒が女子と知り合う目的で塾に行く、などというケースもあったようですが、昨今の男子は草食系ばかりですからねえ。

3番目の理由は、少し残念な理由でもあります。中高生ともなれば自分の意志で判断すべきだからです。「親に言われたから」塾に行くようでは自立は遠いですね。

子どもが自分自身で勉強をコントロールし、本当に必要だと自分で判断したときだけ塾に行く、そうした本来の姿であってほしいと思います。

 

中高一貫校生の塾選びについてはこちらで記事にしました。

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