勉強にノートは必須です。
しかし、ノートの使い方を意識している生徒・保護者は少ないように思います。なんとなく塾の教師に言われるままに黒板を書き写す、宿題の問題を解く、そういう使い方をしている方が大半でしょう。
ところが、このノートの使い方次第で「頭が良くなる」らしいのですね!?
本当でしょうか?
ちょっとネットで検索しただけで、たくさんのノウハウ本がヒットします。
「東大合格生が小学生だったときのノート ノートが書きたくなる6つの約束」
「中学受験 必勝ノート術 カリスマ家庭教師のワザを親子で実践!」
「「思考」が整う 東大ノート。」
「頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?」
「頭の悪い人でもゼロからわかる! 頭がよくなる方法見るだけノート」
まだまだありました。
凄い!
そんな「デスノート」ならぬ「魔法のノート」が存在するとは!
ということで、今回はノートについて考えてみることにしましょう。
※実は、私はここで検索したようなノウハウ本を1冊も読んでいません。したがってこれらの本の内容についてはわかりませんのでご了承ください。でも、こんなにたくさん出版されているということは、需要があるということなのでしょう。
1.板書を書き写すノート
(1)ノートの種類
◆B5横罫
このノートを教科ごとに用意するだけです。
本当はA4のほうが国際標準ですし、書くスペースが広くて使い勝手が良いのですが、残念ながら日本の学校ではB版が主流であり、また塾・学校の机のサイズもそれに対応してます。つまり狭いのです。B5のノートを用意するしかないですね。
とくにブランドや紙質にこだわる必要はありません。
罫線の幅には、A罫とB罫の2種類があります。A罫が7㎜、B罫が6㎜です。少しでも幅が広いほうが使いやすいので、迷わずA罫を選んでください。他にも規格はいくつかあるようですが、あまりみかけません。
個人的なお薦めは、「ナカバヤシ スイング ロジカルノート」です。
罫線の間に破線で薄く罫線がひかれているので、方眼紙のように図も書きやすいですし、英語の筆記も綺麗に縦横が揃います。なにより名前がいい!「ロジカル」ですからね。私の主催するLogical Writing School の公式ノートにしたいくらいです。
実のところ他の会社からも同様のコンセプトのノートはいろいろ発売されていますので、お好きなものをお使いください。
算数の場合には図を描きやすいので方眼ノートを推奨する先生も多いですね。そこは逆らう必要はありません。もし指示がないのであれば、私なら普通の横罫のノートをすすめます。作図のときに方眼の升目にとらわれるのがうっとうしいことと、中学生になると方眼ノートは使わなくなるからです。
◆升目ノート
国語の場合は縦書きで文字数を数える必要があるので、専用のノートが便利です。中学生にもなれば普通の横罫のノートを縦使いし、別途原稿用紙・レポート用紙を使うスタイルになりますが、小学生のうちは升目ノートのほうが使いやすいでしょう。
◆ジャポニカ学習帳
小学生の定番のノートシリーズですね。科目ごとに使いやすい工夫が満載です。
しかし、これは明らかに「初めてノートを使う低学年」用のノートです。高学年でこれを塾で開いている生徒を見たことがありません。
◆ルーズリーフ
昔は、「ルーズリーフを使う学生は成績が上がらない」などと言われたものです。そういえば私も学生時代の一時期に使っていました。成績があがらなかったのはそれが原因か! もちろんそんな訳はありません。
きれいなノート整理が好きな学生には人気ですが、小学生の受験勉強には不適です。なにせ整理整頓ができない子ばかりですので、必ずバラバラ&行方不明になります。
結局のところ、普通の中綴じノート、それも安いもので十分です。
ノートは無駄に贅沢に使う
これがノートを使うときの鉄則ですので。
(2)ノートに縦線を引くべきか?
ノートの左3~4㎝のところに縦線を1本引く。
このように指示する先生はとても多いですね。この線の左側には日付・問題番号・項目番号などを書くスペースとするわけです。
最初からこの線が印刷したるノートもよくみかけます。
この縦線は無用だと私は思っています。
そもそもノートの使用目的が違うのです。
(3)板書ノートの使用目的
板書をノートに書き写す意味は、後から復習するためであると皆さん思いますよね。
実は違うのです。
そのノートの使用方法は、中学生以上の学習スタイルです。
小学生に板書をノートに書き写させる目的は以下の4点です。
◆大切な情報を伝達する目的
◆記憶させる目的
◆ノートに書く習慣をつける目的
◆親への報告書としての目的
そもそも小学生の板書ノートは汚いです。何が書いてあるのか、後から読み返そうと思っても本人ですら判読できない、そんなことは普通です。
しかも書くのが遅い! 1文字ずつ、ひどいときにはへんとつくりをバラバラに写し取ったりしています。遅いわけです。
これを、単語ごと、文節ごとに一瞬記憶させ、それをノートに手を使って書き取らせることで、記憶の第一歩とするのです。
また、授業で解く問題・話す内容は、すべてがテキストにあることばかりではありません。テキストには載せていないが入試には出る内容はたくさんあるのです。それを教師は授業中に板書します。そこはノートに書かないとだめでしょう。さらに学習に必須のノートを使う習慣も身に付きます。
最後の親への報告書としての目的というのは、塾側からの発想です。テキストもノートも真っ白なままだと、「うちの子はちゃんと勉強してきたのかしら?」「そもそも塾に行ったのかしら?」と不安になりますよね。ノートを見れば、すくなくとも授業に参加し何らかの勉強をしてきたことはわかります。
あとから見返して勉強する目的で板書を写し取ろうとすると時間がかかります。ノートをきれいにつくることが目的化してしまうのですね。これは経験則ですが、筆箱にカラフルなペンをたくさん入れている生徒ほど成績が・・・なのです。
あるとき異常に板書を写しとるのが遅い生徒がいました。じっくりと観察してみると、このような書き方をしていました。
・黒板に書かれた内容を丁寧にきれいな字で書く
・重要そうだと思った単語は空欄にして、横のページに赤字で答を書く
・4色のペンを使い分け、教師が話したこともそこに色ペンで書き込む
もう売り物になりそうなレベルの板書ノートでした。とくに、板書を写し取りながら自分で穴埋め問題も同時に作るのはすごいです。
しかし、残念なことにこのような板書ノートづくりには非常に手間と時間がかかります。もう他の生徒がとっくに写し終わり、私の講義を集中して聞いているのに、この生徒はひたすらノートづくりに精を出していました。
こんなまとめノートは自分で作らなくても、テキストに同じ内容がもっときれいな字(活字)で書かれていますし、ワークドリルのようなものもいくらでも市販されています。
私は板書には一色しか使いませんし、生徒にも〇付けをするとき以外は色ペンを使わせません。板書ノートづくりに時間を費やしてほしくないからです。それより講義に集中してほしいのです。
だから、ノートに縦線を引く必要はありません。なるべく早く(かつきちんと漢字で)写し取ることを優先します。
※教師側から見た板書の目的についてはこちらに書きました。ぜひお読みください。
2.家庭学習用のノート
とくに算数ですね。家で大量の問題を解く際にノートが必要となるのは。
これには縦線が必要です。
後から見返す目的ではなく、採点担当者(親or教師)が見やすいからです。生徒のごちゃごちゃとした字から問題番号を探すのは大変です。せめてそこだけでもわかりやすくしておいてほしいのです。
3.授業メモ用のノート
入試問題演習が始まる6年生になると、板書写し取り用のノートの他に、授業メモ用のノートが必要になります。
これは普通のB5ノートでもよいのですが、それより少し小ぶりな、A5くらいのものが使いやすい思います。
このノートの使いかたに決まりはありません。
授業中に教師が答え合わせをしているとき、新しい知識・あいまいだった知識がでてきたらすかさずメモするためのノートです。
いつでも机上に出しておいて素早くメモをする。そのためにサイズが少し小さいほうが使いやすいのです。ただし、あまりにも小さな本当のメモ帳は不適です。
4.実はノートなんてどう書いてもいい
いろいろ書いてきましたが、実はノートなんてどう書いてもいいと思っています。
ノートが上手に書かれていることと成績にさほどの相関関係はありません。むしろ優秀な男子児童のノートほど判読不可能であったりするものです。
ノートの書き方にこだわるより、ノートに書く目的をはっきりと認識することのほうがはるかに重要です。