いよいよ戦国時代についてまとめます。
戦国時代は人気です。よくドラマや映画にもなっています。
ちょっと数えてみると、NHK大河ドラマで扱う時代として、1962~2023までの全63本中の26本が戦国時代を扱ったものでした。
子供たちも大好きで、戦国大名に妙に詳しい男子生徒など目を輝かせて授業を楽しみにしています。
でも、そこが要注意です。
残念ながら、中学入試や高校入試という観点からすると、戦国大名などほんの数名しか扱わないのです。多くの合戦についても、ほんとうに必要なのはわずかです。
この時代では何を学ぶべきなのか。
いつもの板書案を見ながら考えてみましょう。
1.板書案
今回の板書も、そうとうシンプルにまとめました。
ご覧いただければわかるように、戦国大名など一人も登場しません。
というより、戦国時代については「応仁の乱」を書いただけです。むしろ前回の室町時代の続きとして、文化と産業について多くの字数を割いています。
理由は簡単、入試によくでるからです。
もう生徒のがっかりする顔が目に浮かぶようですね。
武田信玄や今川義元、伊達政宗あたりは、わざわざ板書せずとも、常識として皆知っていますので、割愛しました。それでも少しは口頭でお話はしてあげます。
2.応仁の乱
数年前に異例のベストセラーとなった、中公新書の「応仁の乱」(呉座勇一)はお読みになったでしょうか。学術書にしては異例のベストセラーで、50万部も売れたそうです。
本のキャッチコピーの「地味すぎる大乱」とは言い得て妙で、ただただグダグダの大乱として知られています。
ここで生徒に説明するのは6点のみです。
〇足利義政の後継争い→細川VS山名・・・幕府の権威失墜
〇京都の荒廃・・・汝や知る 都は野辺の 夕ひばり あがるをみても 落つる涙は
〇祇園祭のその後の復活・・・町衆
〇公家文化の地方への波及
〇西陣織
大乱のきっかけは説明しますが、経過はざっくりとカットします。細川と山名のどちらが西軍でどちらが東軍かなどどうでもよい知識です。(一度だけ入試問題で見かけたことがありますが、くだらない問題です。)
入試でよく出題されるのは、西陣織と祇園祭ですね。記述問題としては、文化の地方への波及も出されます。生徒には、守護大名が戦国大名へと変化する過程を理解してほしいと思います。
2.一揆の多発
ここは重要です。
農民が苦しかったのは、律令の頃からの話です。
でも、その頃の農民が、集団で一揆をおこしたなど聞いたことがありません。
ただ「逃亡」するくらいしか手段はありませんでした。
では、なぜ戦国時代には、一揆が多発したのか。
農村の変化に焦点をあてて、じっくりと考えさせるテーマです。
また、三大一揆ともいうべき一揆については、正誤問題等でもよく出題されています。
◆正長の土一揆
◆山城の国一揆
◆加賀の一向一揆
それぞれの原因も経過も結果も異なる一揆ですが、それを混同して覚えてしまうといけませんね。
ところで「土一揆」の読みですが、つちいっき・どいっき、どちらでも構わないようですね。つちいっきのほうが少しだけ主流かな?
ここで、一揆の厄介さ(施政者にとって)をしっかり理解すると、後の秀吉による刀狩りがよく理解できるようになるのです。
3.産業の発達
厳密にいうと、戦国時代というよりは室町時代の項目ですが、量の調整のためにここに入れてみました。
二毛作が鎌倉時代には西日本で、室町時代には全国に広がったことなど、中学校の先生の大好物のテーマなのでしょうね。実によく出題されています。
最近の入試傾向としては、派手な政治上の戦いや人物よりも、農村や経済の変化に焦点をあてた出題が多くなっています。丁寧に学んでいきましょう。
4.北山文化と東山文化
これも室町時代の項目ですが、ここで扱いましょう。
これは、ほんとうに良く出題されますね。シンプルな出題としては、義満・義政・北山・東山・金閣・銀閣を混ぜた正誤問題をよく見かけます。
生徒には、「つまらない引っかけ問題だから、間違えるとみっともないぞ」と声をかけるレベルです。
ちょっとひねったものとしては、金閣や銀閣の位置を京の略地図中から選ぶというもの。「北山」「東山」の意味を考えればわかります。
そして一番大切なのは、禅宗の影響をうけた文化の発展です。いわゆる「日本風の文化」がここで成立したと考えることもできますね。
余談ですが、教材やテストをつくる際には、寺社仏閣仏像の写真も必要です。そこで使用許諾をとるのですが、金閣や銀閣は使用料が高いのです。「志納金」とよばれるお金をお寺に払わなくてはなりません。もちろん自分で撮影した写真も営利目的の無断使用はNGです。檀家の少ない「観光寺院」の財政難をうかがわせる話ですね。こうした寺院の拝観料が高いのにも理由があるのです。
5.茶道について
千利休の茶道(茶の湯)は入試頻出です。といっても、名前を漢字で答えさせる問題ばかりです。
しかし、せっかくの機会ですので、千利休の目指した茶の境地「わび茶」について授業では説明します。もちろん、生徒は全く理解できません。それはそうですよね。何が悲しくて正座で足を痺れさせながら、たいして美味しくもない干菓子をつまみ、苦いばかりのお茶をすすらなければならないのか。小学生に理解しろというほうが無理です。私だって初めて茶会に連れていかれたのは小学生のときでしたが、ただただつらい時間でした。それでも日本の文化理解の第一歩、基礎教養としてはある程度知っておく必要があると思うのです。
「いいか、みんな目をつぶって想像してみてほしい。今君たちは日本庭園の中に立っている。一角に土壁の小さな建物がある。あれが茶室だ。入ってみようか。腰をかがめなくては入れない狭い入口をくぐって中に入ると、畳が2枚分の広さしかない。それでも和紙が貼られた窓越しにそとの明かりがやわらかく差し込んでいて、狭さはあまり感じない。床の間には竹の筒に椿が1輪、何気なく活けてある。部屋の隅に小さな炉が切ってあり、炭の上に据えられた茶釜のお湯のわくかすかな音が聞こえる。時折、鹿威しの音が鋭く響くが、かえって静けさが強調されるようだ。やがて主が、ゆっくりとした所作でたててくれた抹茶を一口すすると・・・・。」
こんな風に語ってみたところで、みんなポカンとしているばかりですね。本当は生け花についても語りたいところですが、もちろん語りません。梅の水くぐりの話などしても無駄ですから。