いつも歴史ばかりなので、今回は世界地理の板書を紹介します。
第一回目として、まずは基本的な地形と気候を扱います。
1.板書
世界地理の第一回の板書は、30行にまとめます。
1.時差
・緯線・緯度・・・南北・・0~90度
・罫線・経度・・・東西・0~180度
・本初子午線・・・グリニッジ
・日本標準時子午線・・・明石(兵庫) 東経135度
2.世界地図
①メルカトル図法・・・航海図
②正距方位図法・・・航空図
③モルワイデ図法・・・分布図
3.気候帯
・熱帯・乾燥帯・温帯・亜寒帯(冷帯)・寒帯
4.おもな地形
○大陸・・・ユーラシア・アフリカ・南北アメリカ・オーストラリア・南極
○大洋:太平洋・大西洋・インド洋
○海…アラビア海・紅海・地中海・黒海・オホーツク海・カリブ海・北海・バルト海・東シナ海
○山脈…ヒマラヤ山脈・アルプス山脈・ロッキー山脈・アンデス山脈
○川…ナイル川・アマゾン川・ミシシッピ川・黄河・長江
○他…スエズ運河・パナマ運河・サハラ砂漠・アラビア半島・ペルシア湾
2.時差について
これは中学入試頻出項目です。
Q:ロンドンが1/1 午前11時のとき、日本は何日の何時ですか?
とシンプルに時差計算をさせる問題もありますし、少しひねった問題としては、
Q:太郎君はニューヨークに住んでいる花子さんに電話をしようと思っています。花子さんは平日は学校から4時に帰ってきて、夜9時に寝ることにしています。土日は出かけて家にはいないことが多いです。太郎君は日本の何曜日の何時から何時の間に電話をするとよいでしょう?
こんな問題が考えられるでしょう。また、飛行機にのって移動するパターンもあります。
Q:羽田空港を月曜の19時の便でホノルルへ向かいます。飛行機に乗っているのは8時間として、ホノルルに到着するのは何曜日の何時ですか?
一度時差計算に慣れてしまえば簡単な問題ですね。
※注意!
生徒たちは理科で地球の自転について学んでいて、1時間で15度、4分で1度自転すると知っています。また、緯度が異なる場所の南中時刻の問題も習っています。そこで、こう質問してみると答が割れるのですね。
Q:東京は東経139度です。ロンドンが月曜の11時(24時制)のとき、東京は何曜日の何時ですか?
A1:月曜20時
A2:月曜02時
A3:月曜20時16分
A4:月曜01時44分
A5:月曜19時44分
シンプルに日本標準時子午線の東経135度から、ロンドンと日本の時差は9時間、そして日本がロンドンより東にあるので先に11時を迎える。その時点から9時間経ったのだから日本は月曜の20時、と考えればよいだけです。
A2の解答は地球が逆転しています。こう答える生徒は1割はいますね。また、A3は考えすぎです。
「139度だから、139×4=556分。それで556÷60=9あまり16、つまり9時間と16分だから、11時にそれを足して、答は20時16分だ!」
お疲れ様です。
さらにA4はその考え方の地球逆回転バージョンですね。よくわからないのがA5の答です。おそらくは、明石とロンドンの時差が9時間だから20時とそこまでは合っていたのに、明石と東京の緯度の差が4度だから16分の時差があると考え、それを足すか引くかよくわからなくなって引いてみた、そんなところでしょうか。
さらに月曜を日曜にしたり火曜にしたりする生徒が必ずいます。なんとなく日本とイギリスだから1日くらいずれていると思ったのでしょうか。
この手の問題が出てくると必ず間違える生徒がいるので、黒板に説明のための大きな円を描くのがすっかり上手くなってしまいました。
2.世界地図の図法について
これも入試頻出で、間違える生徒が多い項目です。いや、間違える生徒が多いからよく出題されるのですね。おそらくは、中学生も理解していない生徒が多くて中学校の社会科の先生をイラつかせているのでしょう。だから出題する。
小学生は(中学生も)立体と平面の変換が苦手です。正距方位図法のゆがんだ地形から、本来の地形を読み取ることができないのですね。また、メルカトル図法も曲者です。彼らが一番見慣れた地図ですので、面積も形も高緯度ほど不正確なメルカトル図法の欠点がそのまま感覚としてしみ込んでしまっているのです。だから等角航路と大圏航路の違いが理解できない。メルカトル図法で赤道以外の地点の最短距離が直線にならないことが理解できないのです。また、「東京から真東にある都市を地図から選びなさい」とメルカトル図法の地図が示されていると、ラスベガスあたりを選んでしまう。まあ地図ではまっすぐ右にありますから。緯度が同じくらいですし。
もちろん正解はアルゼンチンのブエノスアイレスです。ここで、「あれ、日本の真裏にある国はチリだったよな。ってことは・・・」と考えることができる生徒もいます。
3.気候帯について
ドイツのケッペンの気候区分はこうなっています。
〇熱帯(A)
・熱帯雨林気候(Af)・・・インドネシア・アマゾン川流域など
・熱帯モンスーン気候(Am)・・・インドシナ半島・アフリカ西部など
・サバナ気候(Aw)・・・アフリカ・インド・オーストラリア北部
〇乾燥帯(B)
・砂漠気候(BW)・・・アフリカ北部・アラビア半島・中央アジア等
・ステップ気候(BS)・・・中央アジア・オーストラリア等
〇温帯(C)
・西岸海洋性気候(Cfb)・・・ヨーロッパ・ニュージーランド等
・温暖冬季少雨気候(Cw)・・・東南アジア・中国内陸部など
・地中海性気候(Cs)
〇冷帯/亜寒帯(D)
・冷帯湿潤気候(Df)・・・カナダ・ロシア等
・冷帯冬季少雨気候(Dw)・・・ロシア東部
・高地地中海性気候(Ds)
〇寒帯(E)
・ツンドラ気候(ET)・・・カナダ・ロシアの高緯度
・氷雪気候(EF)・・・南極・グリーンランド
〇高山気候(H)・・・ケッペン分類外
中学入試では、基本的な5区分ーー熱帯・乾燥帯・温帯・寒帯(冷帯)・寒帯だけを覚えておけば事足りました。よく出るのが、地図中から乾燥帯を選ぶ問題です。ところが、最近は地中海性気候やステップ気候、サバナ気候まで見かけるようになったのです。ああ、またしても「悪い癖」ですね。以前の記事でも書きましたが、どこかの中学で「中学生で初めて学ぶ知識」を出題すると、他の学校でも出すようになる、という現象があるのです。これを私は「悪い癖」と名付けました。このケッペンの気候区分だって、高校入試に向けた中学生が学ぶ地理の学校教科書では、5分類しか出てきません。明らかに大学入試の知識です。しかし中高一貫校の社会科の先生は中学生だけを教えているわけではありませんので、中学生に普通に教えています。それはよいのです。一貫校ですから、むしろ望ましい。でも中学入試に出題するのはやめてほしいものです。といくら私が騒いだところでどうにもなりませんね。
だからといってこんな細かい区分は教えたくないので、私は5分類と地中海性気候だけ教えることにしています。
4.主な地形について
これは教えようとしたらきりがない知識です。本来は中学校で学ぶ知識ですから。ここでは必要最低限、常識として知っておくべき地名だけに絞ります。たとえば、「スウェーデンがNATOに加盟することで、バルト海のほとんどをNATO加盟国が囲むことになった」というニュースを見て、「バルト海?」では困ります。
世界地理としては、さらに世界各国について学ばなければなりません。やはり本来は中学の分野ですが、普通に中学入試に出ていますので、常識として知っておくべき国とその特色について教えます。これについては次回ご説明します。
5.おまけ・・・略地図の書き方
簡単な略地図の書き方を知っていると、ノートの整理が格段に向上します。
日本地図はとくに練習などしなくてもそれらしい略地図が書けるものですが、世界地図はバランスがなかなかとりづらいと思います。
下は私が板書で愛用している略地図です。東南アジアやヨーロッパを簡略化しすぎていますが、これくらいの略地図が書ければ授業の説明はだいたい間に合います。これ以上詳しい地図は、地図帳を使いますので。
これをスラスラ板書すると、生徒からは賞賛の声がもれます。
ちなみに、板書ではさらに簡略化した下の略地図もよく書いています。
これを使うときは、世界地理の学習のときではありません。日本史や世界史の授業の際に使います。例えば、ペリーが日本に来航したときのルートであるとか、日露戦争のバルチック艦隊のルートであるとか、コロンブスやバスコダガマのルートであるとか、とにかくざっくりとした位置関係だけがつかめれば良いときですね。これなら5秒で一筆書きできますので。ただしこれを黒板に書くと、生徒からは失笑が漏れます。