中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】6年生になる前にやっておくことはたくさんあった 地球儀を買って!

今回は、まだ6年生になっていない方へのメッセージです。

5年生までに、できれば4年生のうちに、理想的には3年生で、ぜひやっておいてほしいことをリストアップしていきたいと思います。

今回は、第1弾として、地理感覚のお話をしましょう。

 

生徒からの質問

 

6年生の夏に、一人の生徒が質問にやってきました。

 

生徒:先生、質問していいかな?

私:もちろん! 何かな?

生徒:社会の質問なんだけど。

私:先生はどの教科でも大丈夫だよ。社会の何がわからないのかな?

 

この段階で、私が予想していた質問は3つでした。

アメリカ大統領選挙について

北朝鮮問題について

イスラエルパレスチナ問題について

この3つは連日のようにニュースになっています。

どれも重要で、難しい問題です。歴史というより地政学の問題ですね。このような問題については、親に聞いても納得できる(=理解できる)説明がしてもらえないことが多く、生徒の頭は?マークだらけになるものなのです。

あとは、オリンピック関連もニュースをにぎわせていると要注意です。正直いって、オリンピック関連は入試にさほど重要な知識ではありません。まあ、過去のオリンピックの歴史にからめて、歴史の問題が出題される程度です。

この生徒の質問はどれかな?

 

生徒:あのさあ、これが世界地図とするね。

ノートにゆがんだ〇(といううより雲?)を書きました。この生徒の頭の中の世界地図ってこれなのか? 嫌な予感が走ります。

生徒:それで、東ってこっちじゃん。

ノートに書いた世界地図(=ゆがんだ〇=雲)に右向きの矢印を1つ書き加えました。

生徒:それなのに、どうしてこのへんだと東はこっちなの?

ノートの別の場所に、左向きの←を書きました。

私の頭の中は?マークでいっぱいになります。

何だ? いったい何を聞かれているんだ?

私:このへんって、今いるこの町ってことか?

生徒:だから、このへんの地図だよ。どうしてこっち(左向きの←)、左が東なの?

みなさんには、意味がわかりましたか?

私にもさっぱりわかりません。それでも、説明を試みるしかないでしょう。

私:いいか。とりあえず社会科では右・左という言葉は忘れてくれ。上を北、下を南、そしてこちらを東、その反対を西と決めたんだ。これは、こういうルールを決めたということだ。そして、地図は普通北を上にするルールも決めた。そうでない場合は東西南北を示す方位記号を入れるんだね。

生徒は全く納得も理解もしていない顔でこちらを見上げるばかりです。とりあえず強引に「そういうルールにしたのだから、そのまま覚えるしかない」と説明をして生徒を帰しました。

 

いったいこの生徒は何に疑問を抱いていたのだろう?

私も30年におよぶ指導経験があります。生徒が疑問に思うところなど熟知しています。生徒がどのようなところに躓くのかもわかります。

その私をもってしても、この生徒の疑問は理解できないのです。

しばらく考えていて、はっと気づきました。

もしかして。

 

もしかしてこの生徒は、地図の見方をはじめて学んだとき(普通は4年の最初)に、「地図では右が東」と習ったのかもしれません。

それで、それをそのまま頭に入れて今日まで過ごしてきたのでしょう。

社会科で扱う地図のほぼ全ては北が上になるように書かれています。だから、今日までその思いこみで何とかなってきたのでしょう。

それが、たまたま目にした「このへんの地図」では、北が下になるように描かれていたわけです。そうすると東は左方向になります。

「あれ? 東は右でしょ。なんでこの地図は左が東なの?」

それで質問に来た。

憶測ですが、おそらく正解でしょう。

つまりこの生徒は、地図を学ぶ最初の段階で誤った知識を教わってしまい、それを修正する機会もないまま6年生の夏を迎えたのです。

この生徒の責任ではありません。

悪いのは、最初に地理を教えた教師です。

まあ、普通なら、その後に学ぶうちに、正しい地図の概念が自然に身につくものですが。東西南北については理科でも天体の運行の単元でいくらでも扱いますからね。理科で扱う概念は、社会科よりよほど難解です。断言できますが、この生徒は理科のその単元も全くわかってはいないでしょう。

 

それにしても、右・左という概念が、自分がどちらを向いているかによって変わる指標だということなど、教わるようなレベルの知識ではないですよね。誤解を修正できなかったこの生徒ももちろん悪いのです。

平安京の右京・左京もわからないでしょうね。この生徒の頭の中では、「右=東」ですから。

 

初期学習の大切さ

 

この1件により、私も少々考えさせられました。

6年生の夏になって、右・左と東・西には関連性は何もないことを初めて知るようでは、さすがに入試に間に合いません。

学習の初期段階、せめて4年生、できれば3年生のうちに、納得・理解させておくべきだったのです。

 

初期学習は大切です。

 

そこで間違った概念・考え方・知識が入ってしまうと、修正する機会がないまま受験を迎えることもありうるからです。

 

そこで、みなさんに質問です。

みなさんの家には、地球儀はありますか?

 

もしなければ、さっそく1つ入手してください。

どんなものでもかまいませんが、あまりに幼稚なものは避けましょう。

また、ビーチボール型のものも、面白いのですが、お薦めできません。

 

今、どんな地球儀が売られているのか検索してみると、こんなものを見つけました。

 

レイメイ藤井 地球儀 先生おすすめ小学生の地球儀 20cm

レイメイ藤井 地球儀 全回転 土地被覆タイプ 30cm

レイメイ藤井 地球儀 リビング地球儀 全回転 25cm球

帝国書院 地球儀N26-5R(行政・全方位回転)

くもん出版 知らない国がすぐに見つかる くもんの地球儀

 

他にもたくさんの種類が見つかりました。

大きさとしては、直径20㎝~30㎝、価格としては、4000円~20000円くらいと幅があります。

 

どうしても大人目線としては、大きくて詳しいもの、詳細な地形が描かれてあるものに惹かれますね。雰囲気がいいですから。

でも、小学生が扱うなら、国名と都市名くらいが大きな文字で書かれてあるもののほうが使いやすいと思います。

5000円~10000円の間、20~25㎝球、このあたりが手頃だと思います。

例えば、上にあげたレイメイ藤井の20㎝球のものは、アマゾンでみると5000円を切った価格で入手できるようです。

 

地球儀は飾りにするのではなく、子どもが気軽にくるくると眺めるために使うものですから、そんなに高級なものは不要です。

大きな書店等に行くと、地球儀がいくつか売られていますので、実際に見て大きさを確かめることをお勧めします。意外に大きいですから。

 

※注意

 最近見かけるのが「しゃべる地球儀」です。タッチペンで地球儀をタッチするとそこの国名を読み上げてくれるのですね。

無駄です。そんな機能はいりません。同様に、中から光るようになっているものとか、月球儀つき、天球儀つき、こうしたものも不要です。

また、「全回転タイプ」というのは、通常の北極と南極を貫く回転軸意外に、もう一つの回転軸が備わっていて、普通だと見づらい南半球の国も見やすく工夫してあるものです。これも、見た目は格好いいのですが、あまりお勧めできません。まずはオーソドックスな地球の姿=北極が上のほうで地軸が少し傾いている、これに馴染むことが大切だと思います。

 

地球儀を使った学習法

 

「学習法」と大げさに書きましたが、単に眺めるだけです。

そのまま放っておいても興味をもっていつも眺めてくれる子どもなら苦労はありませんね。そうした子どもは最初から地理が得意になる資質がある子だと思います。なかなかそうはいかないでしょう。

そこで、親の出番です。

◆いつも子どもがいる場所(=リビング)の手の届くところに置いておく

 地球儀は、予想以上に存在感があります。

これは、レイメイ藤井の20㎝のものです。

比較のために、例解国語辞典・シロクマ版(三省堂)を横に置いてみました。

ところで、この国語辞典はお薦めです。

はっきり言って、小学生用の国語辞典は使い物になりません。

収録語彙数が少なすぎて、わからない言葉を調べようとして開いても載っていないことが多すぎるのです。

一度でも「あ、載ってないや」という経験をしてしまうと、次から辞書を引いて調べようという気持ちがなくなります。

この「例解国語辞典」は、6万語と、中学生になってからの学習にも役立つ語彙数です。(シロクマ版を選んだのは、単にかわいいからです)

peter-lws.hateblo.jp

閑話休題、地球儀学習のやり方でしたね。

◆国名クイズで盛り上がる

これが一番効果的でしょう。世界の国を地球儀で探させるのですね。探し当てるまでの時間を親子で競うのもよいと思います。

◆時差についてクイズを出す

経度についての理解が深まります。こうしたことをやっておくことで、6年生になってからの入試問題演習で、時差計算を逆に間違える(地球を逆回転させる)こともなくなります。

◆テレビで出てきた国名をたずねる

ウクライナってどのあたり?」

エクアドルってどこなの?」

これはクイズではありません。親が何も知らない演技をして、子どもに教えてもらうのです。子どもというものは、教えることが大好きです。ここぞとばかりに、地球儀をくるくるさせて、「ほら、お母さん、ここだよ」と教えてくれるでしょう。

◆やがては、地理の学習につなげたいが、慌てなくてよい

最初のうちは「学習」を意識する必要はありません。とにかく地球儀というものに馴染んでほしいのです。

やがては、メルカトル図法の欠点の話や方位・方角についての理解につなげていきますが、あせる必要はないでしょう。