語彙力はその人間の教養を表す
語彙力って大切ですよね。
語彙がとぼしいと、文章が理解できなかったり、自分の言いたいことが言えなかったりします。また、相手に「教養がないな」と思われてしまうかもしれません。
まさに語彙力はその人間の教養を示します。これには多くの方が賛同してくれると思います。
では、いったいどれくらいの語彙力があればよいのか?
これは難しいですね。
(1)必要な語彙数
一般に、成人男性が理解できる語彙としては4~5万語といわれているようですが、調査によってその語彙数はさまざまです。そもそも語彙(単語)の測定方法が曖昧です。
国語辞典の収録語彙数をみてみましょう。
小学生向けの国語辞典でも3万数千語程度は収録されています。中学生用の国語辞典で収録語彙数が5万語程度です。大人用になると、私の好きな新明解国語辞典では8万語弱、あまり好きではない(重いしおもしろくない)ですが広辞苑は24万語となっています。
そこで、ざっくりとですが、5万語を一つの目安としましょう。
この5万語をどうやって身に着けるのか、ということを考えます。
(2)辞書を使って語彙を身につける
さすがに、辞書の1ページから順に丸暗記していくのは非現実的ですよね。
ここは王道ですが、本を読んだり会話をしていたりして、知らない単語にぶつかったらすかさず辞書を調べて覚えていく、というやり方しかないでしょう。
しかし、これにも問題があります。
あまりにも面倒くさいのです。
面倒くさいことは、すぐに飽きてしまいます。長続きしないのですね。
そこで、こんな会話が繰り広げられることになります。
「お母さん、〇〇ってどういう意味?」
「辞書を引いて調べなさい。」
数分後。
「太郎、〇〇ってどういう意味?」
「わかんない。」
「調べたでしょ!」
「だって、載ってなかったよ。」
「嘘いうんじゃありません! ちょっと辞書をかしなさい。ほら、ここに出てるでしょ、ここに!」
「ほんとだ。」
数日後。
「お母さん、〇〇ってどういう意味?」
「この間調べたでしょ!」
「そうだっけ?」
こんなループが延々続くと、さすがのお母さんの堪忍袋の緒も擦り切れそうです。
さらに辞書の選定も注意が必要です。しっかりした大人用の辞書でないと、調べても載っていないことがあるのです。一度でもそうした経験をしてしまうと、「辞書を引いても無駄、どうせ載っていない」という固定観念が植え付けられてしまいます。もともと辞書を引きたくないのですから、自分への言い訳としても好都合ですね。
かといって、広辞苑レベルの辞書を子供に与えても読めません。
さらに、みなさんの書棚を見てみてください。学生時代に使っていた辞書がまだありませんか?そして、その辞書は、どれくらいボロボロになっていますか?
私の書棚にも各種辞書が収まっています。中には学生時代から持っているものも。しかし、あまり開いた形跡がないものも多いですね。
つまり、私自身も、辞書引きが面倒くさかった人間なんです。
生徒に、「辞書を引け」とえらそうに語る資格はありません。
(3)読書量を増やす
そこで、王道中の王道ですが、読書量を増やしましょう。
子どもの日本語力で楽に読めるものではなく、歯ごたえのある本を読むのです。
もちろんわからない単語が頻出します。
何度も何度も親に聞いたり、怒られて辞書をひいたり、そんな読書になります。
でも、これがいい。
確実に語彙力はUPします。
どんな本を読むべきかについては以下の記事でで詳しく考察しています。
大人との会話量を増やす
今回の記事で私が最も言いたいのは、これです。
今の子供たちは、昔とくらべてずいぶん社会が狭くなっています。
核家族化がすすみ、年寄との同居が少なくなりました。
親戚の数も減り、そもそも親戚づきあいも希薄になってきています。
近所づきあいも減っています。
近所の商店街で買い物の手伝いをする子も見かけません。
つまり、親以外の大人と会話する量が圧倒的に少なくなっているのです。
子どもたちが日ごろ接する大人といえば、学校の先生と塾の先生と親、この3者くらいですね。
学校の先生も塾の教師も、1対多で子供たちと接していますので、会話量という点では多くを期待できません。また、教師は子供に理解できる語彙で話す、いわゆるティチャートークが習性となっていますので、そこでの会話は子供の語彙を増やす方向には向かいません。
となると、親しかいないのです。
子どもとの会話量を増やしましょう。
そして、大人同士の会話と同様のレベルで話をしましょう。
子どもが話す場合でも、稚拙な話から意味をくみ取らずに、他人にわかるような話し方を指導しましょう。
とても重要なことだと思います。
電子辞書は役に立つ
さきほど、辞書引き学習は王道だが面倒くさい、と書きました。
しかし、今は電子辞書の時代です。
昔ながらの紙の辞書とくらべると弱点も多々ありますが、長所がまさります。
〇軽い
〇複数辞書の横断検索ができる
〇気軽に使いやすい
少々高価ではありますが、しっかりとした電子辞書を一つ与えてみませんか?
中高生になっても役に立ちます。
紙の辞書も捨てがたい
もちろん紙の辞書には紙の辞書にしかできないことがあります。それは、「一つの言葉を調べていると、その周辺の語句が目に入ってくる」という点ですね。
たまたま手元にあった「例解新国語辞典(三省堂)」を開いてみました。
ところでこの辞書は、おすすめできます。中学生用という位置づけですが、小学生でも中学受験をする高学年なら使えると思います。小学生用の辞書は、収録語彙数が少なすぎて、「小学校の教科書レベル」の学習にしか役立たない場合も多いのです。内容的には高校生でも使えそうですね。
例えば、「手が回る」をひいてみましょう。そうすると、「手」が使われた表現がズラリと並んでいる中に「①必要な処置や世話が十分になされる。打消しの形でつかうことが多い。(用例)いそがしくて、そこまで手が回らない ②犯罪の捜査や犯人の探索がその近くにまでおよぶ。」とありました。
この程度の説明が理解できない学年では使えませんが、小6なら大丈夫でしょう。
さて、そこに出ている「手」を用いた表現はこのようになっています。
手が空く・手が後ろに回る・手がかかる・手が切れる・手が込む・手がすく・・・・といった具合に、60以上並んでいます。紙の辞書を使う醍醐味がこれですね。調べたい語句以外にいろいろな語句に好奇心を広げることができるのです。
番外編 百科事典について
子供のころ、私の家には百科事典がありました。平凡社の全30巻以上ものだったと思います。私はこれを開くのが大好きな子供でして、色々なページを開いては読みふけったものです。何かを調べるというより、読み物として愛読していたのを覚えています。
しかし、さすがに今時この百科事典を買うのには勇気が必要ですね。お値段も30万円です。置く場所もお金も必要な代物ですね。しかも、最後の改訂が2007年となっています。もう過去の遺物なのでしょうか。
他に適当なものはないかと探すと、『総合百科事典ポプラディア第三版』 全18巻(本編16巻、索引1巻、学習資料集1巻)というものがありました。こちらは現役感のある百科事典で、学校の図書室にそろっているのをよく見かけます。2021年改訂ですので、まだまだ更新し続けているようです。しかし、こちらも12万円となかなかのお値段です。しかも明らかに子供用の装丁なので、中高生になったら手に取らなくなることが十分に予想されます。
そこで私がおすすめなのは、「新世紀ビジュアル大辞典(学習研究社)」です。
こちらも最後の改訂が2004年ですから、ざっと20年前で情報の更新は終わっています。しかし、この辞典をお勧めする理由はこれだけあります。
〇1冊で完結している(広辞苑くらいのサイズ感です)
〇基本は国語辞典で、それに12000点もの写真・カラーイラストが収録されている
〇収録語数は約10万語
〇横組み
〇1万円
広辞苑を百科事典替わりに使う方も多いですが、縦組みより横組みのほうが圧倒的に見やすいですね。また、写真・イラストが楽しいです。例えば「アイヌ」をひけば、アイヌの衣装や道具・家屋の写真が出ていたり、「かんざし」をひけば江戸時代のかんざしの種類が10種類ほども写真で出ていたり、といった具合です。「カンガルー」のところには、スナイロカンガルー・アカカンガルー・ハイイロカンガルー・キノボリカンガルー・ネズミカンガルーのイラストがありました。たぶん今後の人生で役立つことのない知識です。でも、それが楽しい。前述した百科事典の楽しみが、こちらでも味わえるのですね。
改訂が終わっているのが残念ですが、国語辞典と思えば古さは気になりません。とてもおすすめできます。
※残念ながら絶版です。古本で手に入れるしかありません。