以前の記事で、転塾のメリット・デメリット、そして転塾のタイミングについて書きました。peter-lws.hateblo.jp
転塾のタイミングは「夏前である」と書いています。
その夏が近づいてきました。
今一度、転塾すべきかどうか考えてみましょう。
1.不満を持ったままの通塾は不幸である
昨今、途中で転塾する生徒が少なくなってきた印象があります。データなどありませんので、あくまでも私の個人的な印象です。
しかし、その原因は何となくわかります。
〇塾に通い始める時期が早まっている
四谷大塚が誕生したのが1950年代です。その後1970年代には難関校トップ塾の地位を確立しました。その当時の四谷大塚の入塾タイミングは、小学4年生の3学期でした。つまり5年生にあがる直前です。そこから2年間の学習で、中学受験に臨んでいたのですね。当時はまだまだ中学受験は一部の優秀な生徒のものでしたので、2年間でも間に合ったのでしょう。
しかし、その四谷大塚の牙城を切り崩そうと、多くの塾が工夫を凝らし始めます。最も手っ取り早いのが、入塾時期の前倒しです。先に生徒を確保しようという作戦ですね。
気が付けば、3年生からの塾通いなど当たり前、小学1年生になる前から塾の席を確保する、そんな状況になっています。
例えば、1年生から塾に通いはじめたとしましょう。しかし、高学年になるにつれて、「この塾でいいのだろうか?」と思い始めます。いろいろと不満も出てきました。しかし、子どもはすっかり塾になじんでいます。友達もたくさんいいます。今更転塾は考えづらくなっています。第一、子ども本人が嫌がります。
結局のところ、同じ塾に最後まで通うことになるのです。
〇塾も生徒の囲い込みに必死である
塾も商売ですからね。せっかく通っている生徒に抜けられたら困ります。あの手この手で引き止めに力を注ぎます。
〇ネットにクチコミ情報が溢れている
日本におけるSNSの草分けのMixiがスタートしたのがちょうど20年前です。進学塾enaがインターエデュを始めたのもそのあたりですね。
転塾を考えはじめてネットでこうしたクチコミ情報を集め始めると、それはまあネガティブ情報が溢れています。そもそも、わざわざ掲示板に情報を書き込むためには、こうした負のエネルギーが必要なのでしょうね。結局のところ転塾する気がなくなる、というわけです。
〇塾の差がなくなってきた
特色のある個性的な塾が減ってきました。塾の先生の強烈な個性に惹かれて生徒が集まるような塾は、結局のところ淘汰されてしまったのです。
また、塾はお互いに競争関係にありますので、敵の良いところは取り入れます。
結果として、どの塾でも大差ないのであれば、転塾の必要もまた無いということになります。
しかし、塾に不信・不満を抱きながらの通塾は不幸だと思います。
とくに担当教師・教室長、そういった「最後に頼る」べき教師と信頼関係が構築できていないと、6年生後半の志望校選択や追い込み学習が困難になってしまうのです。
今一度、「本当にこの塾・先生を信頼できるのか?」と考え直してもよいと思います。
2.どんな塾(教師)が信頼できないか?
こればっかりは、ご家庭がどんな塾・教師を欲しているのかによって変わりますので、何ともいえませんね。
ここでは、「私ならこんな塾・教師は信頼できない」と考える要素をいくつか挙げてみます。
※あくまでも私個人の感触ですのでご容赦ください。
◆正直さに欠ける
何回か受けた模試の結果が、志望校に全く届いていなかったとしましょう。そこで塾の先生に相談したところ、「だいじょうぶです。このままいきましょう!」と言われました。励ましてくれているのかもしれませんが、本当に正直な判断なのか疑問ですね。
成績や授業態度、さらに合格の見込みについて、耳に痛い話でもきちんと正直に話してくれる先生でないと信頼できません。
◆営業の匂いがする
塾だって商売ですから、営業と無縁ではいられません。とはいえ、一人の教師として生徒に向き合ったときは、営業のことなど頭から消えていなくてはいけません。
やたらにオプション講座を勧めるような教師は嫌ですね。
◆やたらに受験をすすめてくる
たとえば神奈川の奥に住んでいるのに、1月の渋谷幕張や市川の受験をすすめてきたり、関西の灘の受験をすすめてきたり。進学の意志もない学校の受験(それも難関校の受験)をすすめてくる先生は信頼できません。塾の合格実績稼ぎなのが明らかだからです。
◆生徒の顔と名前を憶えていない
週1回1コマ程度の遭遇ですと、なかなか生徒の顔と名前が覚えられないのは無理ありません。しかし、さすがに1年も通っているのに、まだ認識できないのは問題です。今やどの塾も1クラスの人数は絞っていますので。
◆断定的な物言いが目立つ
「絶対大丈夫/無理」そんな断定的な物言いが目立つ先生は信頼できませんね。とくに合否に関しては「絶対」などということはあり得ないのですから。
◆特定の学校との関係性を強調する
比較的小規模な地元密着型の塾、個人塾に見られる傾向です。「〇〇中学の進路指導の先生はよく知っていますので」「△△中学の入試担当は知り合いです」「××中学の数学の先生の性格からすれば、来年はこんな問題が出ますね」
そんな話を聞くと、何か中学校と特別な関係性があるかのように錯覚しますよね?
これはただの「錯覚」です。
意図的に錯覚させようとしているのか、あるいは自分自身も錯覚であることに気が付いていないのか。
いずれにしても信頼できません。
私も仕事柄、いろいろな学校の先生方とお会いする機会があります。しかし、あくまでも「職業上の関係」、いや「関係」ですらない関係です。学校の指導方針や生徒の様子など直接うかがう貴重な機会ですが、こちらから提供できる情報などありませんので、あくまでも「一方通行」の情報収集となります。こうした一方通行の情報の流れの場合には、「人間関係」など構築できるはずもないのです。
◆授業力がない
教室をコントロールできなかったり、入試問題が解けなかったり。信じられないですが、そうした塾の教師は多数存在します。とくに致命的なのは「間違った知識」を教える教師ですね。信じられないでしょうけれど、本当にそうした教師はいるのです。しかも珍しくありません。
さすがに授業を教室の後ろでチェックするわけにはいかないですが、配られる解答、採点、そうしたところで「ミス・間違い」が多い場合、速やかに転塾すべきでしょう。
3.転塾の注意
(1)何度も転塾しない
何度も何度も転塾を繰り返すのはおすすめできません。学習の継続性が途切れすぎるので効率が悪いのです。どの塾にしたところで、なんらかの不満はあると思います。その中で、許容できる不満と許容できない不満を切り分けましょう。
(2)特待生制度の是非
塾によっては、優秀な生徒を「特待生」として入室金免除・授業料免除を提案してくるところがありますね。しかし、私はそうした塾を基本的には信頼していません。お金でつらないと優秀な生徒が集まらない塾だとしか思えないからです。正当なサービスには正当な対価がともなう、これが私の考えです。
(3)信頼しないと信頼されない
「塾なんか利用するところ」
「お金を払ってるのだから要求するのは当然」
「塾はサービス業」
すべて間違っていません。
しかし、最終的に互いの信頼は生まれません。
信頼がないところには「最適な指導」は生じません。