そろそろ夏期講習の申し込み用紙が塾から配られたのではないでしょうか?
塾によっては、当たり前のように講習代を引き落とす場合もあるかもしれません。
巷では、転塾に最適な時期は夏休み、などという声も聞こえてきます。
はたして、このままSAPIXに通っていてもよいのでしょうか?
なぜSAPIXからの転塾ばかり話題になるのだろうか?
これが不思議ですね。
塾は山のようにあり、そこからの転塾を検討するご家庭など数多あります。それなのに、なぜサピックスだけが、「このままサピックスを継続していていいのだろうか?」というquestionの対象となるのでしょう?
それは、やはりSAPIXが特殊かつ目立つ塾だからといえるでしょう。
合格実績が凄すぎる
やはりこれですね。
塾選びの際に最も気になる=目立つものといえば、その塾の合格実績です。
それを見ると、SAPIXの実績が異常なまでに図抜けているのです。
麻布:182
開成:262
慶應普通部:113
駒場東邦:183
聖光:228
筑駒:98
早稲田:206
桜蔭:189
女子学院:131
豊島岡:296
慶應中等部:124
渋谷渋谷:229
渋谷幕張:383
HPからいくつかの学校をピックアップしてみましたが、まあ見事というか凄すぎる実績です。
業界内では、SAPIXの合格実績は虚飾のないことで知られていますので、この数字は実数とみていいでしょう。
こうした数字は、やっかみを生み出します。
「最難関校を目指すのでなければ、SAPIXにいる意味はない」、そうした風説が流布しやすい下地があるということでしょう。
家庭学習がハードである
どの塾に通おうと、中学受験の勉強の主体は家庭学習です。
でも、これがつらいのです。
つらいのは、子どもというより親のほうです。
勉強のスケジューリングはもちろん、学習内容の把握まで家庭の負担となります。
この負担度合いが、どうやらサピックスは他塾よりもハードらしいのですね。
いっそ「すべて塾におまかせください!」というおまかせ塾に変えたらどうだろうか?
ふとそう考えてしまうのも無理ないといえるでしょう。
いくら勉強しても上に上がれない
もともとSAPIXの生徒層は優秀な生徒で構成されています。
その集団の中で、普通に努力しているだけではなかなか上に上がれないのですね。
たとえその集団の中で上のポジションに行けなかったとしても、集団そのものが上に動いていれば、結果として学力が上がっていたことになるのですが、なかなかそこまで冷静に分析できないのです。このままSAPIXに居続けることで、どんどん自己肯定感がなくなってくるのが嫌になってきます。
他塾が狙っている
残念なことに、SAPIXの優秀層を自分の塾に取りこもうと虎視眈々と狙っている塾はたくさんあります。そうした姑息な塾は、あらゆる手段で転塾させようとします。
「SAPIXで下のクラスはお客様。ろくな教師に担当してもらえない」
「うちの塾なら特待生制度があります」
「〇〇中特訓コースがあるのはうちだけ。SAPIXにはないですよ」
「SAPIXは冷たい塾ですね。面談もなければ質問にも答えてもらえないですよ」
「SAPIX上位の生徒は皆個別指導にも通っているのですよ」
以下省略しますが、だいたいこのような論調です。
もしかしてネット掲示板等にこうした塾が意図的に流布しているのでは?と疑いたくなるくらい、同じ論調ばかりです。
今自分の塾に通ってくれている生徒を大切にするより、他塾から優秀層を引き抜くことに力を入れる塾を私は軽蔑します。
そんなものは教育機関を名乗る資格はありません。
情けないことに、大手とよばれるような塾にもこうした塾は多数存在するのです。
いずれにしても、SAPIXが注目されやすい塾なのは間違いないですね。
ほんとうに転塾の必要があるのだろうか?
転塾の二文字が浮かび始めた、ということは、今通っているSAPIXに何かの不満があるということですね。
〇成績がおもわしくない
前述したように、もともと優秀層が多く集まるSAPIXにおいて成績=順位を上げるのは大変です。普通に言われたとおりに宿題をこなしているだけでは難しいのです。
ここでは、偏差値・順位を気にするのをいったん止めましょう。
気にするべきなのは得点率です。
どれだけ得点できているのか=落としているのか。
この得点率を上げることに注力してほしいのです。
〇授業に不満がある
塾の教師は玉石混交です。SAPIXといえども例外ではありません。相性というものもあります。
授業中に全てを理解できるのが理想ですが、なかなかそうもいかないものです。
とくに集団指導のSAPIXでは、全ての生徒が納得・満足いく授業を実施することは不可能です。下に合わせた授業では上が飽きて退屈します。上に照準を合わせた授業では下がついていけません。
転塾を考えるということは、おそらくは「授業で理解させてもらえていない」不満だと推察します。
個別指導のような、とことんわかるまで付き合ってくれるスタイルの塾が魅力的に思えてしまうのもやむを得ないでしょう。
〇教師の対応に不満がある
SAPIXはクールな塾だと言われています。何がクールなのか聞いてみると、塾から電話が全くかかってこないというのですね。毎週・毎月のように教師が電話をかけてくるような塾とは真逆です。
面談の機会も限られているといいます。
それならこちらから電話をかけたり面談を依頼すれば良さそうなものなのですが、何となく敷居が高いそうです。
うちの子みたいな出来ない子の相談にはきちんと対応してくれないのでは?
そんな疑念(ひがみ)が生まれるのでしょう。
別にSAPIXでなくても、およそ教師という職業を選んだ者に、「この生徒は優秀だから」「この生徒は出来ないから」といった差別感覚は皆無です。頼られれば嬉しいのが教師の本能です。どしどし塾に電話すればいいのに、と私は思いますが、その電話がしづらいのでは仕方がないかもしれませんね。
〇人間関係に不満がある
これは塾の責任とはいいがたい部分です。同じ教室に通う他の生徒・保護者との問題です。
もともと通っている保護者どうしがつながりにくいのがSAPIXの特徴の一つです。おそらく同じ小学校でもなければ、つながる機会は皆無でしょう。
他の塾もとくにつながりやすいはずもないのですが、保護者会や面談などが頻繁だと、どうしても親が顔を合わせる機会が増えますので。
そんなSAPIXで人間関係に不満があるとすれば、同じクラス・教室のほかの生徒との相性でしょうね。
塾はべつに友人をつくりに行くところでないので、そんなものどうでもよいと思います。まあ中にはいじめ体質の子というのがいるのも確かですので、気になるのなら、転塾を考えるより前に教室に相談すればよいだけですね。
〇将来が不安である
ここでいう「将来」とは、受験学年、そして受験そのものを意味します。
このまま通い続けて、本当にいいのか? 希望校に合格できるのか? ちゃんと希望校まで導いてくれるのか? そうした不安が生じるのです。
あるいは、「うちの子の志望校では、きちんと指導してもらえないのでは?」と考えてしまうのかもしれません。
「大丈夫です。私どもにお任せくだされば、必ず合格させてみせます!」
そう言ってほしいのでしょう。
でも、そんなことを言う塾・教師があったとすれば、最も信頼できない塾であることは間違いありません。
出来る事・出来ないこと、可能なこと・不可能なこと、そうしたことをきちんと話すことが塾・教師の誠意だと思います。
SAPIXは熱血系・勢い(だけ)系の塾ではないですからね。保護者の不安な気持ちをなだめるだけのリップサービスは無さそうです。
このままSAPIXではいけないケースとは?
家庭で親が子どもを見ることができない
これは、何も親が勉強を教えるということではありません。
子どもが、何をどれくらい勉強しているのか。
何が得意で何が不得意なのか。
弱点や強味は何なのか。
そうしたことに、無関心であるご家庭。あるいは、父親も母親も忙しくて、子どもの様子を見るどころか、日常のコミュニケーションもままならない家庭。
そうしたご家庭には、はっきり言ってSAPIXは向きません。
この塾は、家庭は家庭の役割をきちんとこなすことを求める塾だからです。
「子どもの勉強は全てアウトソーシングしてお金で解決したい」
そうお考えなら、今すぐそのような塾に転塾すべきでしょう。
集団指導塾の一部には、週7日通えるところもあると思います。
あるいは、個別指導塾と家庭教師の組み合わせになるでしょうか。
ただし、費用は青天井となります。
SAPIXの偏差値表で30以下の学校が志望校である
この場合は、あきらかにSAPIXの教材・授業はオーバークオリティです。
もちろんSAPIXにもそうしたレベル・志望校の生徒は多数在籍していて、そうしたクラスではその子たちに合った授業が行われているはずです。
しかし、全てのレベルの生徒に合わせた教材までは用意されていないでしょう。
模試のデータ精度も気になります。
いっそのこと、同じ志望校の生徒が多数在籍している=教師もそれらの学校情報を豊富に持っている、そうした塾への転塾も視野に入れたほうがよいかもしれません。
ただし、成績が上がったように見える=安心、ということではありませんのでご注意ください。転塾しても学力は向上しません。より効率が良くなるということなのです。
特殊な受験指導を必要としている
帰国生入試と公立中高一貫校の受験の場合ですね。
公立中高一貫校のみを受験するのなら、例えばenaのほうがよいでしょう。しかし、私立と公立中高一貫校の両方を受験するのなら、必ずしも転塾の必要はないと思います。
帰国生入試は特殊なものが多いですね。
帰国生入試しか受験しないのなら、転塾は検討に値します。ただし、帰国生入試を専門に扱っている塾といえども、大きくは期待できません。4科目の教科指導がお粗末な場合が多いからです。
帰国生入試の本当のライバルは、5年生くらいで本帰国してSAPXIでバリバリと4教科の学習をしながら英語は独自に鍛えている、そうした生徒たちなのですね。
受験予定の学校が、英語と作文のみ、あるいは英語面接と算国のみ、そうした入試制度なら転塾は有効かもしれません。
※帰国生入試の実態については以下の記事をごらんください。
転塾をする前に
今回の記事は、SAPIXのところに別の塾名をいれてもほとんど成り立つような話でした。
もし転塾をお考えなら、転塾する前に以下をお考えになってみてください。
☑ 成績が低迷している原因は塾にあるのか?
☑ 塾の指示を守って勉強しているのか?
☑ 家庭学習時間は十分なのか?
☑ 通っている塾は大手なのか?
☑ 大手塾の模試は受けてみたのか?
☑ 担当教師・室長には相談したのか?
なんだかんだいっても、大手の塾の指導は安定しています。教材の信頼性も高いです。イメージとしてはスーパーマーケットのようなものです。必要な食材は一通り手にはいり、食材の当たりはずれも少ない、そんなイメージでしょうか。もちろん、イトーヨーカドーなのか、イオンなのか、成城石井なのかによって扱う食材の種類は異なるでしょう。
ここで要注意なのは、小さな塾です。個人経営塾や小規模塾は、個性が強い(癖が強い)ところが多いのです。塾を信じて通っていたために、6年生になって取り返しのつかない事態を招く、そんな例を実際に見てきました。一度大手の模試を受けてみることをおすすめします。
担当教師や室長への相談も大切です。
そこで納得できなければ、転塾を真剣に検討すべきでしょう。