中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

受験校選びの成功法則!偏差値と得点力の見極め方

今回は、受験校選びについて、得点力や偏差値から見ていきたいと思います。

 

1.偏差値の正しい捉え方

 偏差値について。

受験する学校(中学校)を考える際に、真っ先に気になるのが偏差値です。

試験を重ねるにつれ、「希望」から「現実」の厳しさがのしかかってくるものです。

 まず、よく聞く「持ち偏差値」と「学校の偏差値」という言い方について整理しましょう。

1.持ち偏差値

 これは、自分が複数回受験した模試の偏差値の平均値をとればよいでしょう。

ただし、4・5年生の偏差値はあてになりません。6年後半のデータで算出することと、「希望的観測」に左右されないことが肝心です。

親心として、つい一番良かったときの偏差値をわが子の「持ち偏差値」と考えがちですが、入試本番では、やはり本人の弱点が露呈しがちなものです。

 また、母集団の違う塾の数値は比較できないのは当然として、同じ塾のテストであっても、その都度分布は異なるので、幅のある目安程度の意味しか持たないことにも留意してください。

2.学校の偏差値

 とある塾において、その塾から某学校を受験した結果について、合格者と不合格者を偏差値ごとにまとめてグラフ化してみます。

ここで生徒の偏差値は、6年後半の数回の模擬テストの4科目偏差値の平均をとる場合が多いです。

このようなグラフが得られると、偏差値がxであった生徒が100名受験したとして、80名が合格し、20名が不合格だったこのxの値が「80%偏差値」ということになり、不合格者のグラフと合格者のグラフの交点が50%ラインとなります。

 このようにして得られた偏差値を受験日ごとにまとめたデータが、様々な塾から発信されています。

 算定方法から明らかなように、以下の点に注意する必要があります。

 

 A:塾によって数値は異なる

  当たり前のことですが、そもそもの基準となる偏差値が塾によって異なっています。

同じ塾であっても、テストの種類(とくに受験者層)が異なれば、当然偏差値も変わってきます。

 B:塾によってデータが信頼できる学校とそうでない学校がある

  少なくとも数百名単位で同じ塾から同じ学校を受験していないと、信頼できるデータは得られません。

自分の志望校に多くの合格者を出している塾のデータを見るべきですが、当然その塾の模試を複数回受けておく必要がああります。

 

  C:出題傾向によってデータの精度が下がる

  合否データがきれいな正規分布曲線を描けばよいですが、出題傾向によってはグラフが乱れて80%ラインの算定が難しい場合もあります。

例えば筑波大付属駒場の場合は、人気も難易度もトップといって良い学校なのですが入試問題の難易度は必ずしもそれに準じてはいません。

つまり筑駒受験生のレベルの生徒たちともなると得点差がつきにくく、1点のミスが致命傷となるような入試になっているのです。

こうした場合、受験生の偏差値がいくら高くなっても合格可能性が50%くらいにとどまるようなケースが存在します。

 

 D:複数回入試や午後入試の存在

 午後入試がはじまったのはいつからだったでしょうか。おぼろげな記憶では広尾学園が最初だと思っていたのですが、広尾学園ができたのが2009年なので、それより少し前から始まっていたような気もします。記憶が曖昧ですいません。これではいけないと思って少し調べてみたのですが、1995年の日本橋女学館(今は開智日本橋に変わりました)が最初であるとか、2002年の高輪中が最初であるとか、諸説が入り乱れていて真相がよくわかりませんでした。いずれにしても、受験生(それも優秀な受験生)集めに苦戦している学校の繰り出す「飛び道具」的な受験制度だったには違いありません。受験生が本気で全力集中して試験に臨むと、午後にもう1校受ける気力も体力も残らないものですから、私も積極的に勧めませんでした。それが今や150校近くが実施するまでになりましたね。

 この午後入試や、それを含む複数回入試が一般化したことで、データがおかしなことになってしまいました。

わずか10名程度の定員枠の入試に、偏差値が高い生徒が大量に受験をするようになってしまえば、まともなデータなどとれるはずもありません。

また、学校によっては、定員をしぼった入試を複数回行うことで、偏差値のつり上げをはかっている可能性もあります。

 E:学校のコース細分化の影響

 「東大〇〇」「アドバンスト」「〇〇サイエンス」等、同じ学校とは思えぬほどコースを細分化している学校も多くあります。それぞれが別個の入試であったり、あるいはスライド合格が可能であったりと、入試の複雑化が受験生を悩ませるのです。

 F:新傾向入試の流行

  適性検査型入試にはじまり、プレゼン入試・自己推薦入試・作文のみ・面接のみ等、入試の形態も多様化しています。これらの入試の場合、偏差値というデータがほとんど意味をなしません。

 

偏差値は参考程度で。

これが結論です。では、志望校選定において何を基準とすべきなのでしょうか。

 

2.得点力がとても重要

 以前教えていた生徒の話をします。

 その生徒が目指していたのは、東京でも難易度が5本の指に入る学校でした。

多くの受験生が第一志望として目指すのですが、実際に受験にまで至る(つまりそこまでの実力がつく)ことも難しい、そういう学校です。

 5年生まで順調とも思えた成績だったのですが、6年生になってから崩れました。

模擬試験を何度受けても合格可能性が40%にとどまっているのです。

ついには、最後の12月初めのテストで20%をマークしました。

第二志望にしていた学校の合格可能性も40%まで下がってしまっています。

普通ならこの段階で受験校変更となります。

ほとんどの塾でもそういう指導が入るでしょう。

それでも第一志望を諦めさせるのは教師としては避けたいと私は考えていました。

そこで参考にしたのが、過去問の得点率のデータです。

夏から始めた過去問演習も12月時点で70校近くとなっていました。

受験校の過去問はもちろんのこと、良質な入試問題を選んで、男子校・女子校を問わず様々な学校の過去問を解かせていました。

 この過去問の得点率を500点満点に換算し、その時点から過去10回分の移動平均をとっていました。そのグラフがこれです。

 

得点率グラフ

 9月に上昇するかと思われた値は350の7割の壁に跳ね返され、最低の314をマークしたのは12/25でした。

 この時点で、プロとしての判断を下します。

 生徒の保護者に受験校変更の要を告げ、保護者は前泊用に予約していた第一志望校近くのホテルの予約をキャンセルしました。

 幸いにして、受験を考えていたその他の学校については、どの学校も生徒・保護者共々とても気に入っており、たとえどの学校に進学することになったとしても、満足のいく進学となるはずでした。

 

 変化の兆しは1月になってから表れました。

 得点率は上昇を続け、1/10に7割の壁を突破したのです。

 これはいけるぞ!

 上昇トレンドを捉えた私は、第一志望校の受験を勧め、保護者は急遽書類等を準備して出願し、ホテルも再び予約しました。

 得点率はその後一時的に下がるかと思われましたが、また上昇に転じ、そのまま入試本番を迎えることとなったのです。

 受験結果は見事合格!

 1月校も受験していなかった生徒は、第一志望校と、第一志望校の発表前に受験した第二志望の学校と、この2校だけの受験→合格という、実に親孝行な受験で終了しました。

 もちろん、合格をした第二志望の学校にはすぐに辞退の連絡をしたことはいうまでもありません。その学校も人気校であり、補欠の繰り上がりを待つ生徒が多数いるはずですので。

その後聞くところによると、中学校でも勉強に真摯に取り組み、好成績をおさめているとのこと。

改めて思うのです。

塾が算出する合格可能性や偏差値は、あくまでも1つのデータに過ぎません。

 

丁寧に生徒の得点力を把握していくこともまた、受験校選びにはとても重要なのです。