中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

塾無し中学受験のメリットとデメリット その3 デメリットと実践編

前回までの記事で、塾無し中学受験が可能かどうか、そしてそのメリットについて書きました。
 
今回はデメリットとやり方について考察します。

塾無し中学受験のデメリット

 

◆親が勉強しなくてはならない

 もちろん勉強が大好きな方なら、これはデメリットどころかメリットですね。
しかし我が子の指導をしようというなら、得意な教科だけを勉強するわけにはいきません。算数・国語・理科・社会、4科目をきちんと系統だてて親がまず学ぶ必要があるのです。
 
「まず皆さんが中学入試問題を解くことから始めましょう!」
 
これは保護者会や講演会で私がよく言ってきた言葉です。
私がこう言った瞬間、会場の空気がサアッと目に見えるほどに引いていくのが常でした。
 
みなさん、そんなに勉強がお嫌いなのでしょうか?
それなのに、子供に向かって「勉強しなさい!」と言うのでしょうか?
 
これは別に塾に通わせていても必要なことだと私は思います。
せっかくの中学受験ですから、親も楽しむ(?)のもよいのではないでしょうか。
 
私が知っているご家庭では、父親が算数・理科、母親が国語・社会と担当教科を分担し、それぞれの勉強をしたそうです。
 
うまい作戦だと思います。
 
 

◆正しい解き方・教え方がわからない

 塾のプロにまかせることに比べれば、愚直な解き方であったり回り道の学習になることは確かです。効率的でもないでしょう。
 しかし、塾の教師だって、皆が皆ベテランとはかぎりません。常に最適な指導をしているとはいえないのです。たいして研修らしい研修を受けていないような学生アルバイト講師が偉そうに教壇にたって授業をしている塾など数多あります。そんな講師に比べれば、生徒(=我が子)のことを熟知している親が教えるほうがだいぶマシだとは思いませんか?
 しかも、今は参考書類がとても充実しています。少し書店を回るだけで、算数の特殊算のわかりやすい考え方をレクチャーしている本などたくさん手に入ります。
 
◆カリキュラム・予定管理が大変
 本気で緻密なカリキュラムを構築するのは大変です。私も過去に1度やりましたが、もう二度とやりたくないですね。カリキュラムを作るというのは、それに対応したテキストを全部作るということですので。
 しかし、ご家庭でカリキュラムを組み立てるときにテキストを全部作るわけではありません。そんなに緻密な完成度も必要はありません。
 よさそうな参考書を買ってきて、目次を利用して学年・月ごとに分けるだけで事足ります。子供の進捗状況に合わせてこまめな修正を加えていけばよいのですから。
 一応の目安としては、6年の夏前に全て終わるようにするとよいでしょう。その後は過去問演習が必要ですので。
 
◆親の休日が無くなる
 土・日・祝日、正月休み・お盆休み・ゴールデンウィーク、こうした休みは、すべて子供の学習を見るのに使う必要があります。
 
 これはもう、あきらめるしかありません。
 
 さらに、仕事から帰って疲れている時間でも、子どもの質問に向き合う必要もあるでしょう。
 自分の子供のためであってもこうした犠牲は払いたくない、そう考えるなら、この記事のすべては読む必要はなかったですね。
 
◆両親とも働いていたら無理
 
別に無理とは思いませんが、大変なのは確かでしょう。
 
 親が休みの日=子供の学習に向き合える日と、親が仕事の日=子供だけが自習する日 の2種類を明確に分け、子供ときちんと話し合ってメリハリつけて学習するしかないと思います。
 普段の自学自習でたまった疑問・質問を週末に解消する、そういう流れになりますね。
 
◆競争原理が働かない
 
 やはり子供というものは、競わせることで大きな力を発揮します。個別指導塾より集団指導塾のほうが合格実績が高いのもここに理由があります。
 
残念ながら、自宅学習ではこの競争原理が全く働きません。
 
これは大きなデメリットです。
 
◆入学後に塾友がいない
 別に塾には友達を作りに行くわけではありませんが、塾友というのは独特な関係だと聞きます。一緒に試練を潜り抜けた戦友のようなものでしょうか?
 
 さらに最近ではSNSが普及していますので、「〇〇塾〇〇年卒業生LINE」といったものがすぐできて、一緒に遊びに行ったり、互いの学園祭を訪問し合ったりと交流が続くそうですね。
 
 大学生の子供を持つ年代の知人(ご自身も中学受験経験者)に聞いたところ、中高の友人は当然として、ご自身が中学受験をしたときの塾の友人とは未だに仲がよいそう。「価値観が似ているから」安心できるとおっしゃっていました。
 
 別に塾は友人を作りにいくところではないとは言うものの、大手塾出身だと、中学校に進学した段階ですでに知人・友人が同じ学校にいますので、最初のうちはメリットとなるかもしれませんね。
 

塾無し中学受験のやり方

(1)教材

 一番手っ取り早いのは、🔗四谷大塚の「予習シリーズ」を入手し、そのカリキュラムにしたがって学習することです。
 
 四谷大塚は1950年代からある老舗の塾で(私も大昔に通っていました)、中学受験を切り開いたパイオニアのような塾です。ナガセに買収された後の行く末が気になるところですが、教材には定評があります。
 自宅学習→日曜テスト を基本とする塾ですので、予習シリーズは自宅自習用に作られた教材です。
 四谷大塚のHPから買えるこの教材は、メイン教材の予習シリーズにサブ教材の問題集やドリルを足しても1年分が3万円ほどで入手できると思います。
 週単位のカリキュラムが定まっていますので、何も考えずにそれに従って学習すればよいのです。
 
プロ目線で見ればいろいろ注文を付けたくもなりますが、一般に入手可能な教材としては、これ一択でしょう。
 
ただしそれなりに進度も早いので、基本の繰り返しを重視する方には向きません。中堅以上の学校(難易度)を目指す方には向いています。
 
SAPIXの教材には手を出すな!
 ここの教材は非売品だそうで、メルカリやヤフオク等で高値で取引されているようですね。後で売るために子供に書き込みをさせないとか、フリクションペンを使って書き込みをさせ、アイロンをかけて消去するとか、いろいろ聞きました。テキストにはバリバリと書き込みをするのが勉強だと思っている私には信じがたい話です。そんな教材は高値で買う気が起きないという心理的な問題もありますが、私が言いたいのはそこではありません。この塾のテキストはあまりにも不親切なのです。解答はあるようですが、解説はほぼないか、不親切です。つまり、素人が手を出してはいけない教材です。
 

(2)模擬試験

塾無し自宅学習では、立ち位置を確認するための模擬試験の受験が欠かせません。
 
模擬試験ですので、なるべく大勢の受験生が受ける試験でないと意味がありません。
そうすると、以下の3つにしぼられます。
 
 
たとえ四谷大塚の予習シリーズをメイン教材として学習していても、四谷大塚のテストだけを受けることはあまり賛成できません。
四谷大塚には四谷大塚の癖というものがあり、テストが子供の実力をきちんと反映しているとはいえないからです。
3つの塾のテストを織り交ぜながら受けることをお勧めします。(早稲田アカデミー四谷大塚の準拠塾です)
 
3年生まではテストはあまり意味がありません。4年生以降に受けてください。
模試を受験するにあたっては、いくつか注意すべきことがあります。
 
◆入塾の勧誘は断る
 塾によっては、そこの模試を受けた成績優秀者への入塾勧誘がしつこいと聞きます。まあ相手も商売ですので仕方がないのかもしれませんが。ここはきっぱりと「入塾の意志は全くありません!」と断るほうがお互いのためだと思います。
あくまでも私の主観にすぎませんが、勧誘のしつこさ順はこんなかんじかな?
 
W>>>>N>Y>>>>S
 
Sのあっさり具合は特筆できます。受付の女性と思われる方から「入室基準をクリアしています。入塾の意志はありますか?」とだけ、事務的に電話が1回入るそうです。それを断ると、その後は一切連絡はこないと聞きました。他塾の粘り強い勧誘、「授業料は免除するのでぜひきてください!」といったものに慣れていたあるお母さまが「Sは冷たい!」と憤慨されていましたが、それは違うような。
 
反対に、Wの粘り強さもまた特筆ものです。
以前私が指導していたとても優秀な生徒が、1度だけWの模試を受けた(正確にはYの模試を準拠塾であるWの教室に申し込んで受けた)ことがあったのですが、入試直前の時期の勧誘は、それは熱心だったそうです。その生徒一人のために、自宅もよりの教室にトップ講師をそろえて個別指導を無料同然の金額でやります、という勧誘だったそうです。目的は言うまでもありません。塾の合格実績稼ぎのためですね。業界の片隅に身を置く私からしてみれば唾棄すべきやり方なのですが、「無料で教えてもらえてラッキー!」と思えるメンタリティの方なら問題ないのでしょうね。
 

◆無料のテストに価値はない
代表的なのが、四谷大塚が実施している「全国統一小学生テスト」です。
四谷大塚が、全国規模で実施するこのテストは、無料なうえに、優秀者30名がアメリカに無料招待だそう。なんて太っ腹な。
無料と褒美に惹かれて受ける子も多いです。
 
しかし、時間の無駄です。
 
中学受験は全国規模ではありません。首都圏と関西圏がメインです。
全国の小学生の中での立ち位置を知っても意味がありません。また、無料に惹かれて受ける小学生の層と中学受験の層とは一致しません。
 
しかも、タダほど怖いものはありません。
 
いったいどれくらいの経費をかけているのでしょうか。
 
年2回、1回あたり15万人が受験するとHPにありました。
テストの作成・実施・運営・採点等には多額のコストがかかります。多くの塾では3000円~5000円程度の受験料となっていますが、内情をあかせば、それでも赤字です。仮に5000円が実費だったと仮定して、5000円×15000人×2回=1.5億円! それに加えてアメリカ30名ご招待! さらにテレビCMまで!
 
塾という営利企業が、これほどまでに巨額の費用をかけて無料テストを実施する目的を考えてみましょう。
 
私なら怖くて子供に受けさせられません。
 
同じ四谷大塚なら、「合不合判定テスト」といったテストなら、きちんとした有料のテストですので、そちらを受けましょう。
 
◆首都圏模試だけ受験生の層が異なる
首都圏模試センターというところが実施している「首都圏模試」というものがあります。小6段階の模試の規模(受験人数)で比較すると、
四谷大塚>首都圏模試>日能研SAPIX というかんじでしょうか。
 
もともとがテスト会で、全国の準拠塾の生徒がこぞって受験する四谷大塚のテストが多いのは当然として(2万人以上)、首都圏模試もなかなかの人数を集めていますね。
 
普通なら受験人数が多いほうが模試としての判定精度があがるのでお勧めしたいところなのですが、こちらの首都圏模試は、上位校をねらう生徒はまず受けません。首都圏模試の偏差値表がHPにありますので、そこで偏差値50前後の学校を志望されている場合のみ受験は有効です。
 
模試のデータを活用するためには、自分の志望校が各模試データでいくつくらいのところにあるのかをチェックするとよいでしょう。偏差値50くらいがその模試の受験者層のコアの層と考えられますので、そういうデータが出ている模試を受けるのが基本となります。
 

(3)学習環境

いわゆるリビングルーム学習も悪くはないのですが、効率はあがりません。かといって子供専用部屋に一人で籠らせてもだめでしょう。
 
どこかに、デスクを2台並べておけるスペースはないでしょうか? 書斎でも寝室でも、なんなら廊下の片隅でも。
デスクはそんなに大きなものでなくて結構です。
そしてそのデスク脇に、なるべく大きなホワイトボードを設置してください。
このホワイトボードのメリットや選び方についてはこの記事で説明してあります。
ここが、自宅内塾となるのです。こんなかんじでしょうか。
 
机配置01

 

机配置02

 

ちょっとホワイトボードが大きすぎましたね。実際には新聞見開き大(90cm×60cm)程度の大きさであれば十分です。
 
ホワイトボードに近い席が親の席となります。生徒(子供)の質問に対応したり、間違えた漢字を大きく書いたりと、大活躍するのです。
 

(4)志望校の決め方

塾無し中学受験で最大の問題は、どのようにして子供の実力を把握し、志望校を決めるか? という点にあります。
整理すると、以下の2種類の情報が重要です。
 
◆子供の学力
◆学校情報
 
子どもの学力には、模試データに表れるものと、日頃の学習姿勢や問題の解け方等から見られる潜在的な能力や傾向があります。
模試データは外部模試を多く受ければ誰でも把握することは簡単です。しかし、「偏差値は〇〇だが、この傾向の問題に強いから、△△中学より□□中学のほうが合格可能性が高い」だとか、「偏差値は届いているが、〇〇中学には向かない」といった、塾講師の長年の経験に裏付けられた判断が、素人である親にはできないのですね。
 
最も、多くの塾では、ここまで経験値の高いベテランが揃ってはいません。ある大手塾では、進路指導は教師ではなく受付事務職員が模試データだけを見て行うそうです。
 
子どもの学力については、模試データと過去問の得点率という目に見える情報で把握するしかないでしょう。
 
学校情報については、とにかく学校に足を運んでください。
自分の目で確かめるのが一番なのです。
むしろ、塾からの内部情報的な情報に惑わされないほうが良い学校選びができると思います。
また、偏差値データだけにこだわらないように注意しましょう。
複数回入試・午後入試等を実施し、一度の募集人員を少なくすることで、表面的な合格偏差値など簡単に操作されてしまうのですから。(最近そうした学校をよく見かけますね。)
 
受験校の選び方については、以下の記事で詳しく説明しています。
 
また、学校説明会で注目すべきポイントについては、この記事をごらんください。
 
ところで、塾といえども、入試や学校についての極秘情報など持ってはいません。
学校によっては、塾関係者のみを対象とした説明会や入試問題分析会のようなものを開催していますが、そこで話される内容には、とくに目新しい情報などありません。
長年のお付き合いが続くと、それなりに中学校の先生方と面識もできますが、外部にもらしてはいけないような情報など学校の先生方が口にするはずもありません。
塾に頼らずとも、学校の情報はきちんと入手可能ですので心配無用です。
 

(5)塾無し中学受験スタートのタイミングは?

さて、これについては、2通りの考え方があります。
① いつスタートするのがベストなのか?
② 今からでも間に合うものなのか?
 
よく考えれば、この2つの視点は同じことですね。
 
もしベストのタイミングが小1だとして、子供が4年生なら、「もう間に合わないのか?」という疑問が生じるというわけです。
 
これについては、はっきりとしたタイミングがあります。
 
小学4年春です。
 
正確には、小4になる直前、小3の最後の春休み がベストのタイミングです。
それには根拠があります。
 
私には、中学入試に向けての教科学習のカリキュラムをゼロから組み上げた経験があります。
それには、テキストやテストをゼロから作り上げるという気の遠くなるような作業が伴います。
朝早くに教室に出かけ、夕方まで作業。夕方から夜まで授業をして授業後に作業。終電のない時刻に帰宅し、また早起き。休日は2か月に1日程度。日曜も祝日も正月もお盆も同様の生活が数年続きました。よく過労死しなかったものと思います。
今となっては思い出したくもない過去です。
 
さて、私の愚痴はどうでもいいですね。
 
まず、最終目標のXデーを確定します。6年生の2月1日です。(神奈川・東京の入試解禁日ですね。この日に主要校の入試が集中します。)
そこに向けての過去問演習の量を考えます。そのスタートは、6年生の夏休みです。
そして、そこに向けて、4教科の学習のカリキュラムを考えます。
あまりにも先取りをしすぎるカリキュラムは消化不良をまねきます。
ただでさえ、中学入試は高校入試レベルの学習を強制するものなのです。生徒の脳の発達を考慮しながらカリキュラムを組みます。
そうすると、4年生の春、というのがギリギリのタイミングとなるのです。
たとえば3年生からスタートしようとしても、生徒の脳が受け入れられませんし、5年生からのスタートでは間に合わないのです。
 
1~3年生の間は、準備段階として、学習習慣をつけること、読書週間をつけること、語彙を豊かにすること、興味の幅を広げることなどに重点を置きます。
 
4年の春から中学受験に向けての本格的な家庭学習を始めましょう。

ここまで読んでいただいて、「絶対ムリ!」となっても大丈夫です。
それなら素直にプロ(私のような?)に頼めばよいのです。どのタイミングからでも、通塾に切り替えることは可能ですから。
 
塾の選び方についてはたくさん書いています。「塾選び」のカテゴリーをぜひご覧ください。