中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

反抗期の子どもを理解する!親子関係を改善するための具体的アプローチ

前回、こんな記事を書きました。

peter-lws.hateblo.jp

すると、こう言われてしまったのです。

「結局のところ、Peter先生は優秀な生徒のことしか知らないんでしょ」

本当の反抗期は、そんな生易しいものではないというのですね。確かに、私が身近に接した親子からうかがう反抗期は、原因も対処法もわかりやすいものでした。

 

そこで、もうすこし反抗期について紹介してみたいと思います。

※何人かのケースを紹介しています。実話ですが、個人情報保護の観点から当人が読んでも自分の事と分からぬレベルまで設定を書き換えていることはご了承ください。

化粧にはまった娘

A子は、小学生低学年のうちから、ファッション・おしゃれに異常な興味を示す子でした。中学受験用の塾からは早々に離脱し、地元の公立中学に進学します。中学1年生の今では、化粧の腕前は上がり、アイラインなど見事に描くそうです。ばっちりとメイクを決めて出かけようとする娘を見た父親と母親のもらした言葉はこれでした。

「今から夜のお仕事ですか?」

基本的なベース化粧品だけは母親が買い与えているそうですが、その他の化粧品は小遣いで買っているとか。

それならいっそのこと将来の仕事として美容部員を目指したらどうかと提案したところ、「馬っ鹿じゃないの?」と返されたそうです。どうやら、美容部員という仕事を見下しているようでした。

 

この話を聞いた私の感想は、「親がいけない」でした。

 たとえ小遣いだとしても、結局のところ、娘にせっせと化粧品を買い与えているわけですから。そしてそれを許容している。もしかして「美しく化けた娘」が自慢なのかな? とすら思ってしまいます。

さらに、親に対する言葉遣いが許せません。もっとも私が怒ったところで仕方がないですね。

さらに言うと、私は化粧をしている中高生が嫌いです。

今時そんなことをいうと、「昭和!」と馬鹿にされてしまいますが、嫌いなものはしかたがない。中高生のうちは、化粧よりも他にもっとやるべきことがあると思うのですが、もう通用しない価値観なのでしょう。

そういえば、偏差値N-58の神奈川で人気の大学付属校の最寄り駅を訪れたときのことを思い出しました。その学校の女子中学生が向こうから大勢歩いてきます。道幅いっぱいに広がって歩いてくる彼女たちは、スマホを鏡変わりに化粧に余念がないのでした。

「みっともない」

ところで、「みっともない」の語源は、「見たくもなし」です。「見たくもなし」→「見たうもなし」→「見とうもなし」→「みっともない」と変化したのです。

似合いもしない化粧を人前で平気でしている中学生、まさに「見たくもなし」ですね。

その姿を見てしまっていらい、自分の生徒にはどうもこの学校を薦めたくなくなりました。いい学校だと思っていたのですが、大学付属校あるあるです。

さて、前述のA子ですが、母親から相談された私のアドバイスは、「塾に入れる」ことでした。文科省の調査によると、公立中学生の通塾率は7割を超えています。つまり、勉強そっちのけで化粧にうつつを抜かすA子はすでに少数派なのです。

学校の内申点を上げ、必ず訪れる高校入試に備えるためにも、すぐにでも塾に入れることをおすすめしました。やがてA子本人が、何が自分にとって、さらに自分の将来にとって大切なのかの優先順位に気付くべきですね。現在はおそらく周囲の声など何も響かない状態だと思われます。塾に入っても、もしかして気づかないかもしれませんが、それも含めてA子の未来ですので。

 

ゲームにはまっているB子

 小学生のときからゲームにはまっている子でした。

家族が寝静まった深夜でも、ゲームをやっていたそうです。

小学校の同級生に、札付きのワルの男の子がいたそうです。小学生で札付きのワル?と思いますが、家庭環境も複雑で、全て父親が異なる4人兄弟の一人で、何かあるとカッターナイフを持ち出して暴れる子だとか。たしかにワルですね。さすがに学校でも有名で、「とにかくあの子に関わってはならない」と話題になっていたそうですが、実はB子が深夜に一緒にオンラインゲームをやっている相手がこの男の子だったそうです。

B子は、中学受験をして、何とか私立中高一貫校に進学しました。もっとも受験倍率は1.0倍を切っている、つまり定員割れをしている学校です。ただし、アットホームな良い学校だそうですから、B子にはぴったりの学校に進学したのですね。

そこで勉強を真面目にやってくれればまだしも、生活スタイルは変わりません。相変わらずゲーム中心の日々で、親の言うことなど聞く耳は持たないそうです。

「いつかゲームから卒業する時が来ますよね?」というのが私の受けた相談でした。

「そうですね、いずれゲームよりもリアルの興味のほうが優先する時が来ますよ」と言ってほしいのはわかります。しかし、私には言えません。

放っておいてもゲームから自然に卒業する子どもも何人も見てきましたが、例外なく勉強を熱心にやっている子ばかりでした。ゲームに費やす時間が無駄であることに自ら気づいたのですね。残念ながらB子は、勉強を全くしていません。それに、電車に乗っていても、いい年してスマホの画面に顔をうずめるようにしてゲームに夢中な大人など大勢いますよね。つまり、放っておいても自然にゲームから卒業することは期待できないのです。

 

正直いって、私にできるアドバイスはありません。

ゲームというのは麻薬と同じです。優秀な大人たちが、人々を虜にするために全力で、しかも巨額の資金を投じて作っているのです。個人の力で抜け出すことは難しい(たぶん無理)でしょう。一番最初に、小学生低学年のうちに手を打てればよかったのかもしれませんが、こうした子は友達の家にいってでもゲームに手を染めたでしょう。

 もうこれは、B子の人格として受け入れる他ないと思います。自分の人生の時間の一部(大部分)をゲームに捧げる人間という人格です。幸いにして仲間は大勢います。少数派の悲哀を味わうことはないでしょう。やがて社会に出ると、自由にできる時間は一気に無くなりますので、自然にバランスがとれることを期待するしかなさそうです。

 

※今気がつきました。電車の中でゲームに夢中な大人たちって、もうその時間しかゲームに費やすことができないのかもしれませんね。つまりB子の将来の姿です。そう考えると哀れな姿です。

※もう一つ、しょうもないニュースがありましたね。宮城県大河原町町議会議員が本会議中にスマホでゲームをしていたことが報じられていました。議会見学中の小学生に目撃されて発覚したそうです。この議員、議長も務めたこともあるベテランの73歳で、やっていたゲームは「ツムツム」だとか。

「ツムツム」というゲームがそこまで中毒性の高いゲームなのかは、ゲーム自体をやらない私にはよくわかりませんが、73歳にもなって分別がつかなくなるほどの魔力はあったのでしょう。

 

半分家出状態のC子

エキセントリックな子ではありました。親の言うことを素直に受け入れることなどなかったのです。例えば、小学校から帰ってきても、親の存在など無視してそのまま自室にこもります。「ただいまくらい言いなさい!」といっても無視されて怒った父親が、娘の部屋のドアをこじあけて娘を引きずり出そうとしたところ、割れんばかりの大声で、「助けて! 殺される!」と叫ぶのです。

C子は中学受験はして、カトリックの女子校に進学しました。しかし、そんなC子に厳格なカトリック教育が合うはずもありません。学校から浮いた存在になってしまったのは予想がつきますね。やがて、彼女にもボーイフレンドができました。そして、C子は家にほとんど帰らなくなってきたのです。最初のうちは、門限を守らぬC子を叱る親、という図式でした。世間でよく見かける光景ですね。ただし、C子は、家から閉め出されると、そのままボーイフレンド(一人暮らしの大学生)のところに行くだけです。それは、何をしても叱られる家よりも、居心地は良いのでしょう。

この状態で相談されても、私にもどうすればよいのかわかりません。お年頃の男女の恋愛に口をだしたところで、何の意味も効果もありませんし。

C子の場合は、明らかに未成年ですので、「未成年者誘拐罪」が成立すると思われます。ただし、親が、娘がボーイフレンドのところに泊まることを看過していてはダメですね。親の同意があったとみなされてしまいますので。1回目の家出の際に、警察にきちんと告訴すべきだったと思います。腫れ物に触るように親の腰が完全に引けていることを、C子に見透かされていたのでしょう。

私にできるアドバイスは、「子どもだけは作らない」ことを約束させることだけでした。もちろん、当人たちに「今すぐ子どもが欲しい」という希望があるかもしれませんが、現実的に18歳未満で子どもを作ることは茨の道過ぎます。残念ながら、一時の恋愛感情で渡っていけるほど世の中は甘くはありませんので。

C子は承認欲求が強い子だったのだろうとは思います。意味もなく親に反発する子のほとんどがそうですね。だからといって、親にできることはほとんどありません。C子にはC子の人生があると認めた上で、親子関係を再構築していくしかないのでしょう。

 

アメリカには反抗期はない?

たまに聞く話です。

私が直接確認したわけではないのですが、たしかに日本の反抗期とは様相が違うような気がします。

思春期特有の大人への反発などは世界共通でしょうが、どうもそれに対する親の対応に差があるような。

また、高校卒業と同時に実家を出ますからね。

早い段階から自立することが前提ですので、反抗すべき相手がいないだけかもしれません。

 

受け入れる勇気

 きびしい結論ですが、これしかありません。

親なら誰しもが、わが子に対して「こういう風に育ってほしい」という夢を持っています。そんなに大仰な夢ではなくとも、「人の気持ちがわかる子」「世間に迷惑をかけることにならないように」「自分自身で将来の道を見出せるように」「健康で優しい子であれば」などと思いますよね。

しかし、その思いが、もしかして子どもの重荷になっているのかもしれません。

本来なら、親の思いを「重荷」と感じる子どものほうが間違っているとは思うのですが、それも一種の「決めつけ」なのでしょう。

 

理想的な子などいない

これを前提として出発します。

今目の前にいる子の姿をそっくりそのまま受け入れる。

そうしないと、親のほうにストレスがたまります。

犯罪に走るようなケースは論外ですが、親は親、子は子、そう割り切ってしまうしか方法はないのでしょう。

ほとんどの場合は、子どもがある程度の年齢になれば、反抗期は卒業し、親子関係は良好になります。早い子なら高校生、遅い子でも社会人になったあたりで。

それまで親は親の生活をエンジョイしながら気長に待つ。

これが今の私にできる唯一のアドバイスです。