※この記事の初出は2023.10.04です。2024.09.23に加筆修正・UPDATEしました)
私の家には、ホワイトボードが何枚か壁に設置してあります。
必ずしも、仕事専用というわけではありません。
私の家を訪れた知人たちは、「やっぱり先生なんだね。」と笑っていました。
今日は、このホワイトボードが勉強に役立つというお話をしたいと思います。
ホワイトボードの日常における活用法
(1)掲示板の役割
ちょっとしたメモやプリントを一時的に掲示するのに実に便利です。
電話をしながらメモをしたり、忘れたくない予定を大書したり。何せ部屋の壁ですから、否応も無く目に入るところがポイントです。年末年始のゴミ収集日なんてものも書くのにちょうどよいですね。
家のトイレに設置してあるボードには、子供が小さい頃には、歴史年表が貼ってあったり日本地図が貼ってあったりしました。元素周期律表が貼られていたこともあります。さすがに毎回数分ずつぼんやりと眺めていると、私まで周期律表がすっかり頭に入ってしまいましたね。
リビングルームのホワイトボードは、子どもが幼い頃は、落書きが占めていました。
こんなかんじです。子供の頭の中ってよくわかりません。
ちなみに、夜中に酒を飲みながら子供の落書きに豚の丸焼きを書き足したのは私です。
やがて、英語を学ぶようになると、こんな絵が描かれていましたね。
これで、道案内をするから質問してくれ、というわけです。
私:Could you tell me where the library is?
子:Sure, walk along this street, and at the next traffic light, turn left. The library is next to the church.
これはおもしろいなあ、と私は気に入っていたのですが、子供はすぐ飽きたらしく消されてしまいましたね。
(2)双方向の情報伝達の役割
ボードに何か書くのは私だけではありません。家族が、質問内容を書いたり、伝達事項を書き込んでいます。
ボードが双方向の情報伝達ツールとしての役割を果たすのですね。
とくにご両親が仕事をされていたり、兄弟の習い事の送迎等で忙しく、ともに過ごす時間が短いご家庭だと実に役立つと思います。
ホワイトボードの勉強への活用法
さあ、いよいよ本題です。
ホワイトボードが学習にどのように役立つのか紹介します。
(1)思考の整理に役立つ・・・数学の場合
生徒が言っていたのです。
「図形の問題は、ノートにちまちまと書いて考えるより、ホワイトボードに大きく書いて、少し離れたところから眺めたほうが解法を思いつきやすいんだよね」
あっ、なるほど!
それを聞いて、思い出しましたね。
私が学生時代にアルバイトで中学生に数学を教えていた頃のことです。
予習段階ではスラスラと解けていたはずの図形の証明問題が、いざ黒板に図を書いて説明をはじめると、なぜか途中で詰まってしまう、ということがあったのですね。今にして思えば単なる予習不足なのですが。
そういう時には、解説の途中で教室の一番後ろまで行って、離れたところから自分が黒板に書いた図を眺めると、すぐに解法が見えてくるのです。
なんというか、全体を客観的な視点で見ることができるのが良いのです。
学生の頃に学校の授業中、黒板をみながら講義を受けていたのは、実はとても効率的な学習だったのかもしれない、と今になって思います。
これが、ICTが発達した現在でも、いまだに黒板・ホワイトボードが教室からなくならない理由の一つなのでしょう。
(2)思考の整理に役立つ・・・国語の場合
消すことが簡単なボードは、書くことのハードルを下げてくれます。
思いつき程度のメモでも、気軽に書くことで、思考の整理に役立ちます。
例えば、読書感想文を書く場合を考えてみましょう。
本を読んだ後、「さあ、感想文を書きなさい。」と言われて、すぐにスラスラと鉛筆を走らせることのできる子はいません。
原稿用紙を前にしてうなっているだけです。
「まずは、簡単なメモでいいから、書いてごらん。」
こう声かけをしたところで、簡単なメモ書きの習慣がない子どもたちにとって、紙に何かを書くというのは、「きちんと書かないといけない」行為なのです。
だから、書き出せない。
そこで、ホワイトボードを使います。
「登場人物は誰がいた?」
「一番好きな登場人物は誰?」
「主人公の嫌なところを全部あげてみよう」
こんな声かけをしてみると、ためらいなくマーカーを走らせてくれます。
あとは書き散らかされたボードをみながら、文章化をしていけばいいのです。
すぐに消せるから何をどう書いてもいい
ホワイトボードが思考の整理に役立つというのはこういうことですね。
(3)勉強を教えるのに役立つ
子どもに勉強を教えるとき、みなさんはどのようにしているでしょうか。
子どもの隣に座り、テキストに書き込みをしたり、ノートを使うかたが大半でしょう。
私も、A4のコピー用紙の束を、すぐに手の届くところにおいて、使っていました。
しかし、どうもそのスタイルでは調子がでないのです。
初めのうちは、職業病だと思っていました。
黒板の前に立っていないと授業のノリが出ないのではないかと。
しかし、やがてそうではないことに気が付いたのです。
子どもの隣に座って教えると、子どもの顔・表情が見えません。
自分が説明している内容を、どの程度吸収しているのかが把握しづらいのです。
しかし、黒板の前に立っての普段の授業では、生徒は黒板&私の方を見ています。
この状態で授業を行うと、生徒の理解度がよくわかるのです。
その理解度に応じて、フレキシブルに説明内容を変化させることができます。
黒板授業が、古典的でありながら今日でも生き残っている最大の理由がこれです。
そういえば、個別指導塾にも2つのスタイルがあることに気づきました。
狭いブースに机があり、教師と生徒が並んで座っている。
これが一般的なスタイルです。
しかし、塾によっては、ミニ教室のようなところもあるのですね。
ホワイトボードの前に教師が立ち、1つだけ設置された机に生徒が一人。まさにミニ教室です。
スペース効率を考えると、明らかにマイナスです。
しかしこのスタイルをとっているということは、もしかして塾が「対面指導の利点」に気づいているのかもしれません。
黒板か、ホワイトボードか
家に設置するにあたり、実は、これは相当迷いました。
個人的には黒板が大好きです。最初は黒板を設置する予定でした。
チョークの黒板に当たる音が好きだということのほかに、チョークは重ね書きが自由にできるので、勢いをつけての板書にとても適しているのです。
その点、ホワイトボードのマーカーは重ね書きに適しません。
黒で描いた図の上から他の色を使うと、他の色のペン先に黒がしみ込んでしまうのです。
それでも、私が黒板をあきらめた理由は2つあります。
(1)チョークの粉が部屋を汚す
(2)部屋の印象が暗くなる
きわめて単純な理由ですね。
なるべく大きなボードを置きたかったので、黒板の設置は諦めました。
(ここは学校じゃない!という家人の声に負けたことも理由です)
おすすめのホワイトボードの種類
(1)材質
ホーロー製の一択です。
ホワイトボードの材質としては、スチール製とホーロー製に分けられます。その他に、アルミ製やプラスチックのもの、さらには壁に貼るシート状のもの、マグネットタイプまで多様です。
しかしここは、ホーロー製を強く推奨します。
他の材質のものは、価格も安く、重さも軽いのですが、耐久性がありません。
すぐに表面が汚れてきて、元にはもどらないのです。
その点、ホーロー製は、白さが長続き(半永久的とも思えるほど)します。
ただし、価格は他のものに比べ、2倍以上すると思います。
壁掛け式の90×60サイズのものを少し検索してみると、
プラス、ナカバヤシといった文具メーカーのもので5500円ほどですが、これらはホーロー製ではありません。アルミニウムのフレームにスチール鋼板を白く塗装した表面となっています。実は、ほとんどのオフィスで使われているホワイトボードがこのタイプです。経年変化として表面に細かい傷がつくことで、やがて汚くなってきます。それを気にしない方ならよいのでしょう。
さらにネットを見ていると、3000円程度のものもありますね。これらは芯材が段ボールのものが多いと思います。平滑性に欠けますのでご注意ください。
ニトリでは、90×60㎝のサイズのホワイトボードが1490円という衝撃的な価格で売られていました。
これは安い! と思ってとびつくと後悔するかもしれません。私は後悔しました。
買ったときからすでに表面に皺がよっています。
ホワイトボードに皺!?
★ネジが利く壁・柱にとりつけなくてはいけません。ほとんどの住宅の壁は石膏ボードでできています。石膏ボードはネジが利きませんので取り付けられません。石膏ボードの裏側の間柱(下地)を探してそこに留める必要があります。地震等の落下防止には十分に配慮してください。
コクヨでは、軽量タイプというのもあります。
582㎜×879㎜で定価は11200円ですが、アマゾンでは7715円(2024.9.23現在)となっていました。これは重量は2.7㎏だそうです。
お子さんが勉強する間の3年程度の使用と考えるならこれでもいいかもしれません。
使い心地については、私は使ったことがないのでわかりませんが、「コクヨ」ですし、オフィスで一般的なものと同じ品質と考えると、そんなに悪くないのかもしれません。
(2)サイズ
あまり小さいものは役立ちません。サイズとしては、横90㎝×縦60㎝のものをお勧めします。家庭用として普通に売られているものとしては、これが最大サイズだと思います。新聞見開きサイズが、およそ横81㎝×縦55㎝くらいなので、それより少しだけ大きなサイズということになりますね。
上で紹介したコクヨの軽量タイプをみると、一つ下のサイズは606×460mm、さらにその下は457×311mmとなっていました。
もちろん小さくなれば安く軽くなります。
一般には、
120×90㎝
90×60㎝
60×45㎝
45×30㎝
といったラインナップになっているようですね。
手ごろさを優先して60×45程度で手を打ちたくなるかもしれません。
写真のものは90×60㎝サイズのものですが、60×45㎝のものとはこれだけの差があります。
小さいホワイトボードだと、細いペンでちまちまと書くことになるので、せっかくの「客観的に見ることで思考を整理する」という効果があがりません。
壁の大きさに左右されますが、ここはぜひともなるべく大きなものを選んでください。
大は小を兼ねます。
写真で紹介しているボードは、60㎝×90㎝のもので、これくらいの文字数は余裕で書けますので十分なサイズといえるでしょう。
これ以上大きくなると、法人需要となり、個人では購入できないものが多くなります。また、買えるとしても、一般家庭の購入には特別な配送料がかかります。
90㎝×180㎝のサイズになると、書き込める内容が一気に増えますが、部屋が完全に教室化してしまいます。
(3)脚付きという選択
「どうしても壁に穴を開けたくない」という方もいると思います。
その場合は、「脚付き」のホワイトボードも選択肢となりますね。よくオフィスの会議室にあるやつです。
コクヨからは、L字型の脚付きホーローホワイトボード(120×90㎝)がアマゾンで61710円(2024.9.23現在)となっていました。足がT字ではなくL字ですので、自立はしません。壁によりかかるスタイルです。でもその方が安定しますし、スペース効率も良いのが利点です。
しかし、さすがに高いですね。しかもでかい!
これは完全に法人需要だと思います。
もう少し探すと、ニトリで幅99センチメートル(縦不明。たぶん90㎝くらい)の脚付きが20790円(2024.9.23現在)でありました。
オフィスで使ったことがある方はおわかりかと思いますが、脚付きタイプは、書くときに盤面が揺れて書きにくいという弱点があります。しかし、壁に固定できないのなら、こちらを選ぶしかないでしょう。
最も、部屋を自由に移動できるというメリットはありますね。
(4)粉受けは必須
ホワイトボード下の、マーカー等を置くアルミの部分を粉受けといいます。
黒板に比べればチョークの粉がとびちる心配がないホワイトボードですが、実はマーカーの消しカスが発生します。
元はインクのカスですので、床や手をよごします。
粉受けがない、掲示板のようなタイプを見た目重視で選んでしまうと、後悔します。
おすすめのマーカー・イレイザー
ホワイトボードを買うと、マーカー2本とイレイザーが付属しているのが普通です。
使い物にはなりません。まあおまけ程度です。
また、百均に行くと、数色入りで百円、といった安いマーカーもありますが、勧められません。
すぐにインクがなくなります。
私がたどりついた結論は、これです。
パイロットの「ボードマスター」です。
◆カラーバリエーションが豊富(5色)
◆芯の太さが数種類ある(おすすめは中細字)
◆替芯・替インクがある
インクの替えがある製品は他にもありますが、替芯まであるのはこれだけです。
マーカーの芯は、すぐにつぶれて太くなってきます。
このマーカーはその点優れています。
細いペンもあります。磁石付きです。もちろん替え芯・替えインクがあります。ペンシルグリップで書くときに書きやすいのですが、手の平をボード面につけるので、真っ黒になりますね。
他にも、こんなものもあります。
ぺんてるの製品で、特筆すべきはノック式という点です。
いちいちキャップをはずさなくても良い!
最初は歓喜して飛びついたのですが、芯が太目で細かい字や図に適さないことと、インク切れが早いのが残念です。
替インクも、ボードマスターよりも割高で、芯の交換もできません。
また、色も3色しかありません。
セミナー用としては使いやすいと思います。ただし、ボードマスターより消しにくいような気がしますね。
※これは気のせいではありませんでした。これで書くと次に紹介するイレイザーでは全く消えません。ボードが汚くなるだけです。写真は、イレーザーで何度かこすった跡です。なんとか黒は消えましたが青と赤、とくに赤が消えません。汚い赤色がボードに広がります。都度アルコールで拭かなくてはならないので引退させました。まとめ買いした予備インクがもったいないことになりましたね。ぺんてるともあろうものがどうした?
また、ぺんてるには他にも「ノックル」という製品があります。
名前で期待しましたが、これはノック式ではありません。
色のバリエーションが6色!もあり、芯の太さも選べますが、芯の交換はできません。
イレーザーはこれ一択です。
コクヨの「メクリーナ」という商品です。
大・小の2種類あります。
60㎝×90㎝のボードなら、小が使いやすいでしょう。
横から見るとバウムクーヘンのように見える部分が、1枚ずつめくれるようになっています。汚れてきたら1枚めくると、新しい面が顔を出すというしかけです。
これを考えた人は天才です。
ホワイトボードイレーザーの最大の問題点、消す面がすぐに汚れて、かえってボードが汚くなる、を見事に解消しました。
しかも、このバウムクーヘンの部分だけ替えが売られていて交換可能です。
最近はダイソーでも同様のタイプを見かけます。私は使ったことはないですが、もしかして同様の消し心地ならいいですね。
これは、コクヨの「yokuki-L」という商品です。
「ヨクキエール」というネーミングが何とも言えませんね。
消す面は、超微細繊維のリストバンドのようになっていて、外して消す面を回すことができます回せば3回くらいは新しい面が出せる構造です。また中にマーカーの予備インクと芯が収納できたりもします。
また、消す面をそのままマグネットでボードにつけることができます。
リストバンド?も別売りされています。
汚れたら洗濯もできます。
なかなか工夫されたマーカーだとは思います。消し心地も悪くはない。
結局のところ、ボード・マーカー・イレーザーの相性なのだと思います。
普通のスチール板面のボードなら、あまり強くこするタイプのイレーザーでは表面が傷つきますし、ホーロー板面なら、何も気にせずガシガシと消すタイプがフィットします。
ホワイトボードの手入れ方法
ホーローのものなら、手入れに気を遣う必要はありません。表面硬度が非常に硬いですので、布で水拭きするだけですぐにきれいになります。
ホーローのモース硬度は5.5くらいです。スチールのホワイトボードだと3くらいですね。ちなみにモース硬度の目安はこうなっています。
人の爪:2.5.
10円玉:3.5.
木工用の釘:4.5.
ガラス:5.
ナイフの刃:5.5.
銅鉄のヤスリ:7.5.
ダイヤモンド:10
さすがにホワイトボードをヤスリやダイヤモンドでこする人はいないでしょうから、普通に紙や布でこすってもびくともしません。
お勧めは、アルコールで拭くことです。
コロナ対策として買ったアルコールスプレーがありませんか?
あれをティッシュペーパーに吹きかけて拭くと、元通りの純白に戻ります。
こんな使い方も
私の推奨にしたがって自宅にホワイトボードを設置したあるご家庭。
このご家庭では、お子さんがその日塾で学んできた内容を、さっそくお母さまを生徒役にして、得意そうに講義してくれるそうです。
何てすばらしいお母さまでしょう。
実は、人に教えることほど理解を定着させるのに役立つ方法はありません。
教師は皆このことを知っています。
生徒役のお母さまに教えるとき、その子は、どうやったら理解が遅い(演技をしている)母親に理解させられるか、習ったことを反芻しながら考えます。
時間も根気も必要な方法を実践されているお母さまに感服しました。
また、ホワイトボードはプロジェクターのスクリーン替わりにもなります。ただし、表面が艶々していますので、角度を工夫しないといけません。
※プロジェクタースクリーン兼用のホワイトボードも売られています。反射が抑えられていてスクリーンとしては使いやすいですが、ホワイトボードとしての使い心地は今ひとつです。私は、ホワイトボードをスクリーン替わりに使うときには、プロジェクター専用の布スクリーンを表面に貼って投影しています。やはり異なる目的のものを兼用するのには限界があるということですね。