中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

教師あるある:教え子との偶然の再会

長年この仕事をしていますと、元教え子がいろいろなところにいるものです。たまたま仕事上のお付き合いで知り合った人が実は教え子だったとか、あるいは向こうから積極的に名刺を持って訪ねてくる場合もあります。また、連絡は取りあってはいませんが、政治家になった者や芸能の道に進んだ者も。アナウンサーとなって元気な姿をテレビで見かける者もいます。

外でばったりと出会って声をかけてくる者もたまにいます。制服姿で電車内で声をかけてくれるような場合はわかりやすいのですが、成人したあとに出会っても思い出すのには苦労します。私の記憶力が弱いのかとも思うのですが、知人の教師に聞くと皆同様のことを言っていますね。

教え子本人以外にも、保護者の方と遭遇することも多いです。こちらはさらに難易度が上がります。お子さんの話を聞いて、やっと思い出すのです。ある時は、ショッピングモールでお母さまに声をかけられ、しばらく立ち話をしていました。お子さんは子役として活躍しているそうで、あとでネットを検索したら、たしかに面影はありましたね。

1.文化祭での出来事

先日、とある私立中高一貫校の文化祭に行ってきました。

文化祭にはだいぶ足が遠のいていたのですが、コロナ明けで通常開催となった今年は、いろんな学校がにぎわっていたようですね。管弦楽部に入っている教え子のたっての願いとあって、久々に足を運んでみたのです。中高生のオーケストラなど大したレベルではないだろうと思っていたら、なかなか聞かせるオーケストラで、とても感動してしまいました。大学への進学実績も相当なレベルの学校ですので、皆勉強で忙しいはず。塾に通っている生徒も多いことでしょう。楽器の練習をする暇などないだろうに、限られた時間の中で皆頑張ったのですね。とても素晴らしかったのです。中高生が体のサイズより大きそうなコントラバスを必死に弾いているのを見ると、なんだか涙がにじんできそうになりました。最近涙もろいのです。

さて、久々のオーケストラに満足して学校内をぶらぶらしていると、「先生!」と呼び止められました。まあ、どの学校に行っても教え子がいますので、そのこと自体は驚くことではありません。振り返ると、小学生のお子さんを連れたお母さまでした。

「松平(仮名)です! よかった、先生にお会いしたかったのです!」

どの教え子のお母様かな? 

「ああ、きっと誰かに会うだろうとは思っていたのですが。」

「あのときは本当にお世話になりました。」

「今日はどうしてこちらに?」

「母校に子どもを連れてきたのです。」

こうして話をしながら、私の頭はフル回転しています。松平、松平・・・・。たしかにその名前の生徒を何人か指導したことはあるのですが、いったいいつ頃の話なのか、皆目思い出せないのです。一緒に連れてこられている子が小学4・5年生のようなので、教えていた上の子が高校生としてもそんなに昔のことではないはずなのですが。母校ということは、母子2代でこの学校なのか。

こちらが必死で思い出そうとしているのにはおかまいなく、お母さまの話は続きます。

「上の子は今度6年生で、受験なんですよ。あの時一緒だった〇〇から先生のことを聞いて。」

(上の子が6年生? ということは、3人兄弟か?)

「そうですか。ところで、上のお子さんは今何年生になりますかね?」

「・・・。それで、△△君とは今でも連絡しあっていて。」

「もう何年になりますかね。お子さんはお元気ですか。」

「・・・。」

どうにも会話がかみ合わないのですね。そんな会話を交わしていて、やっと気が付きました。

あっ! このお母さん本人が、教え子だった!

いやあ、何年たったのでしょうかね、面影ゼロですから、思い出せないのも無理はありません。

中高生の教え子や、そのお母さまにばったり出会うことまでは想定内でしたが、まさか教え子本人が親となって登場することまでは想定外でした。

今後、ますますこうしたハプニングが多くなるのでしょう。

やっぱり文化祭に行くのは控えたほうがよさそうです。