※2024.3.17加筆修正
いったいどの塾がいいのだろう?
中学受験を考えはじめたとき、最初に悩むのがこれです。
まわりのママ友に尋ねても、バラバラなアドバイスしかかえってきません。
「やっぱり個別指導がいちばんよ。集団指導塾では丁寧に見てもらえないから。」
「サピックスはやめとくべきね。成績が下の生徒はお客様あつかいだから。」
「やはりサピックス一択でしょ。4年生からでは入れてもらえないらしいから、うちは1年生からいれたの。」
「早稲アカがおすすめ。すごく指導が熱心なの。」
「日能研で特待生をねらうのが一番ね。」
「公立中高一貫校を受けるならENAしかないでしょ」
「うちは公文をずっと続けるつもり」
まあ、みなさん言いたい放題です。
でも、それは当然なのです。
子どもの中学受験経験者の母親(&父親)といえども、その経験値は「たった一人」の子供の中学受験経験でしかありません。兄弟がいたとしても、せいぜい2人程度の経験値です。自分の子供が通った塾で受験がうまくいけばそこを薦めるでしょうし、うまくいかなければ否定的になりますよね。また、塾を途中で変えた場合は、前の塾を悪く言い、移った塾をほめるのが普通です。
つまり、中学受験経験者の口コミは一人の保護者の感想にすぎず(率直な感想ではありますが)、我が子の塾選びの指標とはならないということです。
そこで、ネット情報を調べます。
すると、「塾の比較」をしているサイトがいくつも出てきます。
しかし、どういう立場の人がどういう目的で情報をUPしているのかによって、その意見は様々です。なかには「よく研究しているな」と思われる情報もありますが、「適当な嘘を並べているだけ」のサイトも多数あるのです。また、私なら絶対にお勧めしないであろう、業界内の評判が良くない塾を「おすすめベスト3」などと紹介しているサイトすらみかけます。おそらくはステマなのでしょうね。
これらの玉石混交のネット情報を参考にして塾選びをするのは難しすぎます。
私なら、どの塾からも距離を置いたニュートラルな立場からアドバイスできるのですが、そのアドバイスが「あなたのお子さん」に最適なアドバイスかどうかはわかりません。お子さんの状況がわからないと最適なアドバイスはできないですから。
そこで、誰にとっても役立つ「中学受験の塾選び」のやり方をお教えします。
1.家から一番近い大手の集団指導塾を選ぶ
これです。
拍子抜けするようなアドバイスで恐縮ですが、これが多くの人にとって最適なアドバイスなのです。理由をご説明します。
(1)家から近いことのメリット
中学受験は、時間との戦いです。小学生の持ち時間は限られています。小学校に通いながら、学校の宿題もこなしながら、学校行事も参加しながら、睡眠時間も確保しながら、残りの隙間時間を工夫して受験勉強をしなくてはなりません。塾までの往復時間が短ければ短いほど、学習時間が確保できるのです。
〇〇塾の△△教室の合格実績が高いから
〇〇塾の△△先生の評判がいいから
そんな理由で電車やバスを乗り継いで遠くの塾に通うのは無駄なことですね。
時間がいかに重要か、それは6年生の秋になれば身に染みてわかることです。
何年生から塾通いをスタートさせるかはご家庭によってさまざまだと思います。昔は小4からといわれていましたが、今はもっと早まっているようですね。いずれにしても、3年間、あるいは6年間にもわたって塾に通うわけです。もちろん小学校にも通いながら、です。無駄な移動時間は1分でも少ないほうがいいにきまっています。また、小学校の後に塾に通うとなると、夕食の時間がとれなくなってしまいます。6年生ともなれば9時くらいまでは塾に拘束されているでしょう。それから家に帰って夕食、となってしまうと、成長期の体調管理に支障が生じます。
塾での指導は小学校が終わってからであり、おおむね5時前後からスタートします。そのため、我々教師は午後から夜にかけてが仕事時間であり(いわゆる夜の商売です)、早起きが苦手です。学校が長期休みの講習時だけ、朝からの授業となり、必死で目覚ましをかけて仕事に向かうものです。ある講習の終了時に、生徒にこう声かけをしたことがあります。
「今日はお疲れさま。明日も朝から授業だから、早く帰って早く寝るんだぞ。」
すると、生徒がいいました。
「先生。僕たち、毎日学校に早起きして行ってるんだよ。いつもとかわんないよ。」
そうだった。この子たちは、普段は学校に朝から行き、そのあと塾で夜まで勉強してるんだった。
小学生時代にしか無いキラキラした夏休みも、学校帰りの寄り道も、そうしたこと全てを犠牲にして受験勉強に打ち込んでいる生徒たちを思うと、絶対に志望校進学に導くぞ、と決意を新たにしたものです。
話を戻します。
受験勉強は、無駄な時間をどれだけ削ぎ落すかがポイントとなります。まずは自宅から最も近い塾がベストとお考え下さい。
時間を制するものは受験を制す ですね。
(2)大手集団指導塾のメリット
塾に期待するものとは何でしょう?
(1)カリキュラム
(2)教材
(3)情報
(4)指導スキル
(5)ライバル
この5つになります。
カリキュラムを組み、教材を作成するのは、大手塾でなければ不可能です。膨大なマンパワーと費用が必要となるからです。また、情報についても、生徒の立ち位置を正確に把握するためには母集団の大きさが重要ですし、学校情報も大手塾は豊富に持っています。生徒数が多ければ同じレベルの生徒と切磋琢磨できる環境も期待できますし、多くの受験生の指導経験が教師の指導スキルを向上させます。
そこで、自宅最寄りの大手集団指導塾の教室というのが、最適解となるわけです。
候補をいくつかにしぼったら、あとは直接教室を訪れましょう。
そこでの注意はたった3つです。
2.塾選びで注意するポイント
(1)がつがつした塾は避ける
これが大切ですね。
どの塾にしても、一人でも多くの生徒が欲しい、これは当たり前です。
とはいうものの、あまりにもセールストークが過ぎる塾はやめましょう。
「今なら入塾金を無料にします。」
「今なら一か月の無料体験授業が受けられます。」
「まずは無料のテストを受けてください。(それで受けた後、)すばらしい成績です!特待生になりました!」
そもそもお金で生徒を釣ろうとしている段階で、その塾は信頼できません。教育にはお金がかかります。より良い教育にはそれなりのコストが発生します。それが「タダ」だったり「半額」になる時点で、疑ってかかるべきでしょう。TVショッピングじゃないのですから。
「定員枠があと少しです。今すぐ入らないともう埋まってしまいます。」
これも良く聞きますね。もちろん一部の人気塾の中には、低学年のうちから定員が埋まってしまい募集停止というところもあるのは知っています。教室の確保も難しいですが、何より教師の確保が困難です。生徒が集まったからといって、ほいほいと教師を増やすことはできないですからね。
とはいえ、「今すぐ入らないと・・・」と不安を煽る塾はろくな塾ではありません。やはり止めておきましょう。他にもいくらでも塾はありますので。
「うちにまかせてくれれば、かならず志望校に受からせます!」
「家庭では何もしなくて結構です。すべて面倒を見ます!」
「毎日塾に来させてください!」
この「おまかせ」系の塾も曲者です。関西の塾には多いスタイルですが、首都圏でも見かけることがあります。何が問題かというと、「本当にお任せできるのか」どうかが不明なのです。その言葉を信じて「お任せ」してしまった結果、実は任せてはいけない塾であったら悲劇以外の何物でもありません。そもそも学習には、定着や弱点補強など、塾に任せずに自分で頑張らねばならない部分がたくさんあります。あまりに拘束時間が長い塾ですと、その大切な時間が捻出できなくなるのです。
これらのような塾は、やめておいたほうが賢明ですね。子供の教育を任せるのですから、信頼が大切だと思うのです。
(2)塾の合格実績は要注意である
各塾が公表している中学校の合格実績を足し算すると、その学校が公表している合格人数をはるかに上回る。よく聞く話ですね。
私の知る限り、合格実績に対する塾のスタンスは以下の3通りです。
A:実際に指導していた生徒の合格実績を正直に公表している
B:たいして指導してもいない他塾の生徒の合格実績をかき集めて公表している
C:複数の提携塾の合格実績を互いに合算し合って水増ししている
どの塾がどのパターンなのかは、業界では常識として知られていますが、ここで具体的な塾名を出すことはいたしません。
こうしたスタンスというものは、塾の規模とは無関係です。何となく、中小塾はAのパターンで、大手塾はB・Cのパターンが多いような気がしますが、全く違います。
なかにはHPで堂々と「ここに掲載した合格実績は通年指導した生徒のみであり、テスト生や特別講習性を含みません。」などといった、大嘘を掲載している塾もあるのが現状なのです。
その塾がどのパターンなのかわからなければ、塾が公表している合格実績は「参考程度」ととらえておいたほうがよさそうです。
(3)ネット掲示板情報は見ない
「inter edu」を筆頭に、塾・学校・受験に関連した情報がネットにはあふれています。私もたまにしかのぞきませんが、まああきれるほどに「嘘」の情報で埋め尽くされているのです。書き込む人が無知なのか、意図的なのかはわかりませんが。
まあ善意の書き込みがあったとしても、「わが子は〇〇塾で合格できた、だからお勧め」となるか、あるいは「わが子は△△塾に通わせたけどあそこは最低!」(たぶん不合格だったのでしょう)となるか、どちらかに偏り参考にはなりません。
そもそもわが子の入試が終わっているのにいつまでも掲示板に張り付いている人たちなので、お察しがつくというものです。
それなのに、掲示板に質問や相談を書き込む人がいるのが信じられません。
賢明なみなさんには、ネット掲示板は一切見ないことをお勧めする次第です。
塾選びのアドバイスは他の記事でもたくさん書いています。