中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

古墳を見て歴史の勉強をしよう(2024.3.17加筆修正)

※2024.3.17加筆修正

 

歴史の学習がはじまるころ、誰しもが考えることがあります。

子どもを古墳やお寺に連れていこう。

正しくもあり正しくもない考えです。

今日はそのあたりについて少し書きたいと思います。

 

1.高松塚古墳

まず、この写真をご覧ください。

高松塚古墳

かの有名な、高松塚古墳です。7世紀末~8世紀初のものとされ、古墳時代の末期のもので、被葬者は特定されていません。

高松塚古墳といえば、1972年の発見当時、極彩色の壁画が残っていたことから大きく話題となりました。「飛鳥美人」などとよばれていましたね。

保存に失敗し、2007年には修復のために石材ごと壁画は取り外されたことも話題となりました。

さて、数年前に私が久々に訪れたときには、社会科見学の小学生らしいグループがいただけで、訪れる人も多くありませんでした。そもそも車を駐める場所も畑の中の空き地に数台分、といったかんじです。

何の予備知識もない小学生がこれを見て、はたしてどんな感想をいだくのでしょう?

ただのつまらない土の小山、そうとしか見えないでしょうね。

もし行くのなら、歴史的な遺跡とそれを後世に伝える意義について考えさせてください。

 

2.石舞台古墳

では、こちらの古墳はどうでしょうか?

石舞台古墳

言わずと知れた、石舞台古墳です。

蘇我馬子の墓ともいわれている古墳ですが、ごらんのとおり盛土が失われ、石室がむき出した姿は異様です。むき出しになった巨石を間近で見ると、古墳作りに費やされた労力とそれを動かした権力の強さが感じ取れるでしょう。石室の内部に入って巨石の質量を体感できるというのがいいですよね。こちらは人気のようで、駐車場も整備され、近くにはレストランなどもあり、ゆっくりと古墳散歩を楽しむことができるようになっています。

 

さて、高松塚古墳石舞台古墳も国営飛鳥歴史公園として整備された一角にあります。

もし子供を連れて行くのであれば、古墳時代飛鳥時代の学習を終えてからでなければ意味はありません。

私が石舞台古墳に行ったときにも、先生に引率された小学生のグループが何組もいましたが、石室内部に入った子供は壁に声が反響するのが面白くて奇声を発しているだけでしたし、石室の外の隙間から中の同級生に大声で呼びかける子供もおり、もうカオスです。かれらは古墳見学から何も学ばないことは間違いないですね。

 

このほか、飛鳥には飛鳥寺キトラ古墳などがありますが、飛鳥寺は江戸時代の建築で、創建当時のものは礎石くらいしか残っていませんし、キトラ古墳もそんなにおもしろくはないので、省略してもよいと思います。
また、巨石群も有名ですが、歴史の学習という観点からは省きましょう。
 
明日香は、見て回るのに歩くのには無理があります。自転車をレンタルするという手もありますが、坂も多いです。車を使うのが一番だと思います。
 

3.さきたま古墳群

sakitama-muse.spec.ed.jp

実は古墳の旅として一番のおすすめは、埼玉県のさきたま古墳群です。

行田駅からばバスでしかアクセスできませんのでなかなかに行きにくいのですが、車なら東北道か関越でさほど遠くはありません。日帰り古墳旅ができます。有名な稲荷山古墳はもちろん、出土した鉄剣(国宝)も展示されています。また上まで登れる古墳もあり、古代気分?が満喫できます。

1968年には稲荷山古墳から鉄剣が出土していたのですが、錆で覆われ、文字の存在が明らかになったのは10年後のx線検査のときでした。その文字の解読から、大和政権の勢力が埼玉まで届いていたこと、そして今まで読めなかった熊本県の江田船山古墳の鉄剣の文字も解読でき、そこまで勢力範囲であったことが証拠づけられたのです。二つの鉄剣に刻まれていた文字に「ワカタケル大王」があり、これが日本書紀雄略天皇、そして宋書倭国伝の倭王「武」であることがわかりました。こうして日本の古墳、日本書紀、中国の歴史書がつながったのです。歴史好きにはワクワクする話なのですが、私がいくら熱をこめて語っても生徒の反応は今ひとつなのが残念です。ぜひ稲荷山古墳には足を運んでほしいと思います。

ところで、行田市を訪れたら、「行田で生産量が全国一のものといえば?」というクイズをぜひ出してみてください。

答は「足袋」ですね。

享保年間には生産されていたそうですが、戦前には全国の8割の生産量を誇りました。和装文化が廃れつつある今、「足袋」を知らない生徒も増えています。

www.gyoda-tabi.com

4.近所の古墳

奈良や埼玉まで足を延ばす時間がなくても、お住まいが、湾岸埋め立て地でなければ、実は近所にも古墳はけっこうあるものです。区役所・市役所に行くと、「〇〇市歴史マップ」といったようなパンフレットが置かれていませんか?

www.city.setagaya.lg.jp

例えばこれは世田谷区のHPで見つけた「野毛大塚古墳」という、なかなか立派な古墳です。場所は等々力渓谷のすぐ横、環八から第三京浜に乗る入口あたりですね。

www.city.yokohama.lg.jp

こちらは横浜市のHPで紹介されている、「稲荷前古墳群」です。埼玉県の稲荷山古墳とは関係ありません。ここには10基もの古墳が集まっています。

港区には、都内最大の古墳があります。前長112mもあります。

visit-minato-city.tokyo

こんなに立派なものではなくても、意外と近所の歩いていける範囲にも古墳はあるものです。

もちろんそれは有名でもなければ立派でもないかもしれませんが、「こんな近所にも古墳があったんだ。」「いったい誰の墓なんだろう?」「そのころこのあたりはどんな土地だったのかな?」と興味は広がります。
まずはそこから、というのが正解だと思います。