中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

塾無し中学受験のメリットとデメリット その2 メリット編

前回の記事の続きです。

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塾に行かずに中学受験できるのか?

結論からいえば、可能です
しかし、当然ながらメリットとデメリットがあります。そこを詳しく説明します。

塾無し中学受験のメリット

◆お金の節約になる
いきなり下世話な話で恐縮です。
しかし避けては通れない話題です。
中学受験の塾通いにはお金がかかります。
金額は、塾によって、あるいは通い方によってさまざまです。
手元の資料やHP等でいくつかの塾の費用を調べてみたのですが、非常にわかりにくいですね。基本料金は安くとも、オプション講座的なものが多数用意されている塾では、総計がどれくらいになるのか不明です。
さらに個別指導塾の中には、料金表すらないところもあるそうです。
入塾希望者と面談をしながら相手の懐具合を探って金額を決めるとか。恐ろしい。
 
※よく塾比較サイトのようなところで塾の料金の比較がありますが、実際にかかった金額ではなく基本料金表を載せているだけの場合が多いので要注意です。
 
その中でも明朗会計と思われるSAPIXの料金を卒業生にうかがってみると、このようになっていました。
1年 25万円
2年 30万円
3年 35万円
4年 60万円
5年 75万円
6年 140万円  ※金額はすべて概算です(その方も正確に記録していたわけではないので)
※金額は授業料(含特別講習)だけです。そのほかに高学年になって受ける公開模擬試験が別料金とのこと。テキスト代等はすべて含まれていて、オプション講座のようなものはないそうです。その他数冊の参考図書(地図帳・資料集等)が必要ですが、おおむねこの金額だと保護者からうかがいました。
 
ううむ、さすがに6年生は高いですね。普段の授業料だけだと月6万円くらいだが、夏期講習や日曜日の特訓授業が高いそうです。
これで合計は365万円となります。
 
ダイヤモンドオンラインの記事によれば、中学受験の塾費用が約250万円とありましたので、やはりSAPIXは高級塾なのでしょうか? と思って記事をよく見てみると、小4~小6の3年間とありました。SAPIXの4~6年の3年間の授業料はおよそ275万円ですので、なんとなく相場が見えてきます。
 
さて、もし塾に行かなければ、模試や教材費はかかるとしても、300万円ほどは節約できることになります。
このお金を、中高生活に活用するというのも素敵な考えですね。もちろん鉄緑会に課金するという意味ではありません。海外短期留学等に活用してほしいと思います。
 

◆時間の節約になる

 残念ながら小学校での学習が中学受験につながっていない以上、受験のための勉強は、小学校に行っていない時間をあてるしかありません。
平日でしたら夕方から、土日祝日でしたら1日中。他の習い事をしている方も多いと思いますので、ほんとうに受験生には時間が足りないのです。
中学受験というのは、この限られた時間をどれくらい有効に使うのかという勝負だともいえるでしょう。
 
塾に通うと、どうしても時間の無駄が生じます。
 
〇通塾の往復時間
〇塾での待ち時間
〇授業中の無駄な時間
 
歩いて行ける範囲の塾だとしても、通塾時間はゼロではありません。塾についてからも、授業がすぐ始まるわけではありません。また、すべての塾の授業が緻密に時間配分されていて無駄が一切ないということもありません。私は無駄な時間が大嫌いな性分なもので、自分の授業はそれこそ1分1秒でも有効に活用する手立てを考えます。しかし、塾の中には、生徒に入試問題を3時間かけて解かせ、一切の解説も無しで家に帰す、そうした塾もあるのが事実なのです。さらに、自分は理解している項目を長々と他の生徒のために説明するのを聞くこともあるでしょう。

もし塾に行かなければ、これらの無駄な時間をゼロにできるのです。
 

◆余計な情報に惑わされなくて済む

塾に通わせていると、実にさまざまな情報が入ってきます。有用な情報も多いですが、信用ならない情報もまた多いのです。
 
「〇〇中は来年は狙い目だ」
「〇〇中は、同じ小学校からは1名しか合格させない」
「〇〇中は、△△塾と癒着していて多く合格させている」
「〇〇中の地理の先生が変わったので、来年の入試では地図の問題は出ない」
 
まだまだ聞いた話は他にもあります。もちろん、すべてデマです。
 
こうしたデマが、保護者の噂話として広まっているのならともかく、塾の教師まで口にすることもあるのです。もちろん程度の低い塾・講師です
 
 東急線沿線に、ある男子校があります。中堅といってよいでしょうか。こちらの学校では、自分のところに進学した生徒に、通っていた塾とお世話になった先生の名前を聞き出すのですね。それで、夏前くらいの時期に、塾の先生宛に招待状が届くのです。学校で頑張っている僕たちを見に来てください、とそんな招待状です。
そこに行きますと、全教室の授業見学が自由にできます。教え子の様子や先生の授業の様子がよくわかります。教え子と話す機会も別にあり、生徒から学校について直接聞くこともできます。さらに、最後には塾の教師と学校の先生との交歓会までセッティングされているのです。ケータリングされた食事(美味しいです)に加えてビールまで出される立食パーティー形式です。まさに至れり尽くせりです。こうして学校や卒業生の様子を目にすると、受験生にも勧めやすくなりますので、学校としても上手な作戦ですね。
 さて、私もせっかくの食事ですので失礼にならない程度に少しだけいただきますが、ビールには一切口をつけません。主目的は、学校の先生とお話することですので。もちろんそこでは入試についてのマル秘情報など聞けはしません。それより、授業を担当されている先生方に指導方針や教科についての思いをうかがえる貴重なチャンスですので、さきほど拝見した授業について質問しながらお話を聞きます。また校長先生や教頭先生にご挨拶をしながら、最近の生徒の様子や学校運営への思いなどをうかがうこともできますね。
 周りを見ると、ビールで顔を真っ赤にしている塾の先生が必ず何人かいます。学校の先生に親し気に話しかけているところをみると、近所の塾の方なのでしょうか。ただしその態度は、まるで自分の立場が上であるかのように「偉そう」なのが目に余ります。もちろん学校の先生方は、嫌な顔一つみせずに気長に相手をされています。
なるほど、こういう塾の先生が、「〇〇中学の来年の入試はこうなると聞いた」「〇〇中学校は俺の顔が利くから」といった勘違い発言をするのですね。
 
こうしたくらだない情報を遮断できるのもまた、塾無し受験のメリットでしょう。
 

◆能動的な学習姿勢が子どもに身に着く(かもしれない)

 塾に通っているだけでは勉強にはなりません。自分で疑問を解消しようとする意志が本人になければ、塾での時間は無に等しいものとなるでしょう。
 自宅学習をメインとすると、頼るべき相手はいません。自分の意志しだいなのですね。
 さらに、他の受験生(ライバル)を意識する必要がありませんので、勉強は常に自分との戦いとなることも、長い目でみれば子供の成長に大きく寄与すると思います。
 
 
◆能動的な姿勢(親の)が生じる(かもしれない)
 塾に丸投げする保護者はとても多いです。塾に入れさえすれば、我が子が出来るようになる、そう錯覚しているのですね。もちろん、塾サイドからもその錯角を誘導するような発言があります。
 断言できます。
 塾まかせの学習では出来るようになりません。
 仮に志望校へ合格できたとしても、その先の成長が見込めません。
 そこでまた中高一貫校生用の塾を探そうとする、負のループにはまっていくのですね。
 
 
◆親子のコミュニケーションが密となる
 
これはシンプルに触れ合う時間が多くなるということです。
どうせ中学生になれば、否が応でも子供は親離れしていきます。せめて小学生の間くらいは、親子の時間を多く過ごすのは悪くないと思います。
 
◆中学校にあがってから伸びる
塾無しで難関校に進学した生徒の話です。
とにかく中学校の授業が楽しくて仕方がないというのです。
先生が何か質問すると、頭の回転の速い生徒達が口々に正解を言い合う。「もしかして塾の授業ってこんなかんじだったのかな?」と言うのがその生徒の感想でした。
なるほど。切磋琢磨し合う教室環境というのが初体験だったのですね。
だから、授業中にスマホをいじっていたり塾の宿題をしていたりする他の生徒が信じられないそう。先生にお願いして、教室の中の席はなるべく一番前の真ん中をキープしていると言っていました。席替えがあっても、その席が一番不人気席なのですぐに誰かが替わってくれるとか。この先が楽しみな生徒です。
 
別に塾に行っていたから中学校で伸び悩むわけではないですが、塾無しの思わぬメリットだと思います。