中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

小学校の評価が中学受験に与える影響とは?

Photo taken by Taylor Flowe

今回は、小学校での評価が中学受験の合否にどれくらい関係するのかについて考えてみたいと思います。

1.中学受験生は小学校の先生に嫌われる?

毎年のようにうけるご相談があります。

「うちの子供は小学校の通知表の評価がとても低いのですが、〇〇中学は無理ですか?」

「学校の担任の先生に嫌われているようです。通知表の評価がとても下げられています。」

通知表は、どうしても担任の先生の主観が入りますので、ペーパーテスト(カラーテスト)の点数が高いからといって、必ずしも高い評価になるとは限りません。

そのため、上記のようなご相談となるわけです。

また、塾で受験勉強をしている子供にとって、学校の授業は退屈でつまらなく感じる場合も多いでしょう。どうしても授業を軽視したり、場合によっては先生を馬鹿にしたような態度をとってしまうかもしれません。

これもまた評価を下げる要因となります。

私が公立小学校の授業見学をした率直な感想としては、「これは優秀な子供にとってはつらいだろうな。」というものでした。

 

授業に関係のないことを大声で何度も言いたがる生徒、落ち着いて座っていられない生徒、質問に対してわざとふざけた答えを返す生徒。

 

こうした生徒を上手にあしらいながら授業をすすめるベテランの先生もいらっしゃいます。

本当に尊敬します。私には無理です。

しかし、残念ながら全ての先生がベテランというわけではありません。

 

私が指導する生徒が、よく小学校の授業の愚痴をこぼすのももっともですね。

2.まずは、低評価とならないようにするのが本筋

いくら小学校の勉強が退屈だからといって、小学校の学びを軽視するのは間違いです。
 
そもそも授業の目的が塾とは違います。
主要教科については、先生のお話を集中して聞き、クラスメイトの発言にしっかり耳を傾けましょう。
自分だって、もし塾に行っていろいろ学んでいなければ、同じような発言しかできなかったのかもしれないのです。
主要教科以外の教科はもっと重要です。
 
課題や提出物をきちんとこなすのはもちろん、積極的な姿勢を見せなくてはなりません。
 
くれぐれも、親が小学校を批判したり担任を悪く言ってはいけません。
そうした親の態度は子供に伝染します。あくまでも小学校が本筋です。
塾>>小学校 となってはなりません。
 

3.中学校受験は一般化している

 以前はいました。中学受験に批判的な小学校の先生が。例えば、調査書の記入を5校分お願いにいくと、「同じ日に二つの学校は受験できませんよね? 進学する学校は1つですよね? 私は1通しか調査書を書きません。」と宣言されたなどという話が珍しくなかったのです。
そうした際には、私は以下のようなアドバイスをしていました。
①まずは、母親から、担任の先生に丁寧に事情を説明して理解してもらいましょう。
②それが無理な場合は、父親の出番です。お父様から説得してください。
③それでも無理な場合は、お父様から校長(教頭)先生に直談判してください。
④それでも無理な場合は、教育委員会に訴え出てください。
 
小学校は、担任の一存で調査書の記入を拒むことはできません。とはいえ、先生の「私情」による意地悪であったとしても、まずは低姿勢でお願いすることが大切です。
過去には、③までこじれたケースはありましたが、さすがに④までこじれたケースはありませんでした。
 
しかし、こうした話も今や過去のものになりました。
まずは、出願に際して小学校の調査書を要求する学校が減りつつあります。
さらに、中学受験が一般化したため、中学受験に反対する先生というものが絶滅危惧種となっているからです。
ここに、東京都教育委員会が公表している、都内の私立中学に進学した生徒の割合の一覧表をまとめました。

都内私立中進学率

 

都内全体平均は19.8%です。
ただし、このデータは、都内小学校→都内私立中学へ進学した生徒の割合ですので、都外(神奈川県や千葉県)の学校に進学した生徒や、国立中学に進学した生徒は含まれていません。したがって、実際の「地元公立中学以外への進学率」=中学受験率はもっと高くなります。
 

4.調査書の提出パターン

学校によって、出願時に小学校の書類を提出させるかどうかは、次の3パターンに分かれます。

 (1)調査書を提出

 これがいわゆる内申書ですね。
 昔はほとんどの学校が出願時に調査書の提出が必須でした。
 しかし、徐々にこうした学校は減っています。
 それでもまだ調査書の提出を求めるというのは、中身についてある程度気にしているとみていいでしょう。
 ※国立中学及び公立中高一貫校は必須です。

 (2)通知表のコピーを添付

 こうした学校も多いですね。
 調査書ほど形式ばっていないが、一応提出させる、というスタンスでしょうか。
 あまり内容を重視していないと考えられます。

 (3)提出の必要なし

 最近増えてきました。
 小学校の評価など関係ない、入試のテストの点数のみで合否がきまる学校です。
 

5.中学校は、調査書・通知表のどこを見ているのか?

 (1)出席日数

 ここが重要です。
 というより、ここしか見ていないといってもよいでしょう。
 なぜなら、これだけが、唯一客観的な情報だからです。
中学校側にたって考えてみましょう。
欠席日数がとても多いとどう考えますか?
この生徒は、なぜ小学校をこんなに休んでいるのだろうか?
健康に問題があるのだろうか?
不登校なのだろうか?
家庭の方針なのだろうか?
うちの中学校に、ちゃんと通えるのだろうか?
 
その中学校を志望する生徒を選ぶために不合格者が出るのが入学試験ですので、せっかく合格を出した生徒が中学校に通わないというのを学校が歓迎するはずもありません。
 
それくらいなら、熱心に通ってくれたであろう他の生徒を合格させてあげたいですよね。
 
私が昔に指導した生徒に、足が少しだけ不自由な生徒がいました。
お母さまは、第一志望にしていた学校に、事前にご相談したそうです。
こうした子供でも入学できますか?
学校の返答はこうでした。
「べつに問題はありません。でも、本当に通えるのですか?」
通えると判断したから受験するのに、こんな言い方をしなくても!
お母さまは涙ながらに私に話してくれました。
その話を聞いたときには、まだ私も若かったこともあり、一緒に憤慨したものです。
でも、今になって考えると、学校の対応はわかります。
お互いの不幸にしかならないミスマッチを避けるために、確認をしただけなのですね。
 
さて、学校側が出席日数を気にする理由がおわかりいただけたと思います。
では、皆勤賞でなければだめなのか?
もちろんそんなことはありません
正当な理由があって、数日程度、年間に何回か、そんなレベルなら全く問題はないとお考え下さい。
〇体調不良で、2日ずつ、年に3回ほど休んだ
〇実家で法事があり、2日間休んだ
〇家族旅行のため、3日休んだ
これで年間11日ほど休んだ。
これくらいなら何の問題もないと考えられます。
また、骨折により2週間入院した。
これも問題ないでしょう。
 
理由が不明確な長期欠席
これがまずいのです。
 
 ◆不登校?・・・うちの中学校に進学しても通えるのか?
 ◆家庭方針?・・通学することを軽視するようなご家庭の方針なのか?
 
こうした疑惑を抱かれるのは避けたいですね。
※仮に欠席日数が長かったとしても、事情をきちんと中学校に説明すれば、問題ないケースがほとんどです。例えば、5年生までは小学校でいじめがありほとんど学校に行けなかったが、6年生になってクラスが替わってからは行けるようになった、そうした事情があるのであれば、中学校側にきちんと説明すればわかっていただけると思います。
 

 (2)教科の成績

ここは見られません。
そもそも、中学受験をするような生徒の場合、ここが気になるほど低い成績ではないはずです。
また、小学校と一口にいっても様々です。
優秀な生徒が多く集まる小学校と、村の分校(極端な例ですが)では、成績評価が異なるのもあたりまでしょう。
したがって、中学校は、入学試験の成績のみで、その受験生の成績を把握するのです。
ただし、算国理社は問題ないとしても、その他の成績が極端に低い場合は要注意です。
あきらかに、提出物を提出していないとか、授業中に遊んでいるとか、集団生活に合わせることができない何かの理由が考えられるからです。
 
「勉強だけできればそれでいい」
中学校とて、そうは考えていません。
小学校の成績については、普通であれば気にしなくてもよいでしょう。
 

 (3)学校での様子・教師所見

ここも、とくに気にしなくてもいいでしょう。
特別に先生・学校に気に入られようと、積極的に活動に参加するようなことは無意味です。
普通の小学校生活を過ごしていればいいのです。
 
 
 
調査書を気にしなくてはならない場合とは?
 
中学受験には、調査書は気にする必要はないと申し上げてきました。
 
ただ、調査書が問題となる場合が2つだけあります。
 

6.調査書が重要なケース

 (1)公立中高一貫校&国立中学

私立中とは異なり、公立中高一貫校の合否は、適性検査と調査書の両方で決まります。
学校によって重視度合いは異なりますが、得点化して、適性検査8割、調査書2割程度と考えればよいでしょう。
また、国立中学も同様に、調査書を点数化して合否の判定に用います。
 
「入学者の選考は、第1次は抽選で、第2次は学力検査(国語、社会、算数、理科、各教科100点)と報告書(100点)により行います。」
 
これは、筑波大付属駒場中学の募集要項です。
4教科が400点、報告書が100点と換算されます。
もうこれは、そういうシステムだととらえ、普段から内申点を下げられないような学校生活を心掛けるしかありません。
 

 (2)極端に生活態度に問題がある生徒

子供だって個性はさまざまです。
小学校での集団生活が苦手な子だっています。
私が教えていた生徒にも、授業中おとなしく座っていられず、ずっと体が揺れている生徒もいました。授業に集中しさえしてくれれば、私は全く気にならないのですが、小学校の先生の中にはとても気にする先生もいるかもしれません。
 
最初から、調査書を必要としない学校を受験する。
これだって立派な対策だと思います。
ちなみに、前述した生徒は、麻布中に進学しました。
 

7.結論

 調査書について神経質にならない
 
小学校受験・高校受験・中学受験・大学受験、あらゆる受験の中で、中学受験が最も学力勝負の色合いの濃い受験です。大学受験もかつてはそうだったのですが、推薦入試やAO入試の流行により、必ずしもそうとはいえなくなってきました。
中学受験は、ほんとうに当日のペーパーテストの得点で決まります。この点数さえ高ければ、確実に合格が近づきます。
必要以上に調査書の内容に神経質になるより、得点をあげることを考えることのほうが大切なのです。