今回は、2024年の開成算数入試問題を見ながら、算数と数学の解法の違いについてみてみましょう。
題材とするのは、大問1(2)の問題です。
1.問題
2本の金属棒O,Pがあります。長さはPの方がOより2㎝長く、重さは2本とも同じです。長さ1㎝あたりの重さは、Oはどこでも1㎝あたり10gです。Pは、中間のある長さの部分だけ1㎝あたり11gで、それ以外の部分は1㎝あたり8gです。
2本の金属棒を図の左端から同じ長さだけ切り取るとすると、切り取る部分の重さが等しくなるのは、切り取る長さが34.5㎝のときだけです。
(ア)図の★の部分の長さを求めなさい。
(イ)金属棒1本の重さを求めなさい。
2.解法
(1)図(グラフ)を使った解法
さて、あれこれ考える前に、まずは図(グラフ)を書いてみます。
縦軸は切り取った重さ、横軸は切り取る長さとしました。
棒Oは重さが一様ですので、グラフは直線となります。
棒Pは重さが真ん中だけ異なりますので、2回折れ曲がるグラフとなります。
↓こんな具合ですね。
この図を見ていると、旅人算を思い浮かべた生徒も多いでしょう。
横軸を時間、縦軸を距離と読み替えると、旅人Pは一定の速さ(10m/分)ですすみ、旅人Pは、最初は8m/分で進みますが、途中で11m/分の速さに変えたので、出発してから34.5分後に追いついた、そういうパターンの問題です。これなら簡単ですね。
34.5分でOは10×34.5=345m進みました。
もしPが8㎝/分のスピードで34.5分進むと、276m進みます。
すると、Oとの差は345-276=69mです。
もしPが1分だけ急ぐ(11m/分)と、1分で11-8=3mだけ二人の距離は減ります。
全部で69m減らすためには、69÷3=23分だけ、Pは急ぐ必要があります。
34.5-23=11.5
すなわち、Pは最初の11.5分は8m/分のスピードで、次の23分は11m/分のスピードで走ると、Oに追いつきます。
まあ無理やり旅人算に読み替えなくとも、長さと重さの単位のままで支障なく解けるでしょう。
★印の長さは11.5㎝ですね。
実は、この(ア)は今解いたように簡単です。
少し問題なのは(イ)のほうです。
この図をみていると、もう一度OとPが交わる点が出てきます。上の図の矢印のところです。
さきほどの旅人算の読み替えでいえば、一定の速度で進むOをPが一度追い越したのに、結局ゴール地点にはPのほうが2分早くついているわけですので、途中でもう一度Oに抜き返されていなければおかしいですよね。
ところが問題は、「切り取る部分の重さが等しくなるのは、切り取る長さが34.5㎝のときだけです。」とあります。
ここをじっくりと考えます。
すると、問題の条件を満たすのは以下の図の場合であることに気が付きます。
あとは簡単です。
34.5分の段階で旅人PとOは出会い、そのあと差が開いていきます。Oがゴールしてから2分後にPがゴールします。Oがゴールしたとき、Pはあと2分進む距離を残しており、それは2×8=16mです。二人の距離が16m開いたということは、1分に10-8=2mずつ開くことを考えると、そこまで16÷2=8分たったということになります。
Oだけを考えると、34.5分+8分=42.5分進みました。
距離にすると、42.5×10=425mということになります。
最初の設定である重さと長さに戻すと、425gですね。
※注意
わかりやすくするために旅人算に読み替えましたが、旅人算の場合は横軸を時間、縦軸を距離ととるのに対し、この問題の図では、横軸を長さ、縦軸を重さとしています。
この距離と長さを混同しないように注意しましょう。
最初から旅人算にせずに、重さと距離の問題で解けば何の問題もありませんが。
(2)方程式を立てる解法
★印の長さをxとおきます。
Oの切り取った部分の重さ・・・34.5×10=345g
Pの切り取った部分の重さ・・・ x×8+(34.5ーx)×11
この二つが等しいというのだから、
8x+(34.5ーx)×11=345 この式を解くと
→x=11.5
瞬殺で答えが出ました。
ただ、ここではインチキを一つやっています。
本来はもう一つの解がある式が立つはずです。つまり、重さが等しくなる場合がもう1つあるのですね。ただ、問題の条件から1回だけしか重さが等しくならないので、簡単に解を求めることができました。
もしその条件がなかったらどうなったかを考えてみます。
それは場合分けです。
1つ目の場合は上で解いたとおりです。
もう一つの場合は、図03の赤矢印のところが34.5㎝の場合を考えます。
その際、図中の緑色で表した部分の長さ、つまり重さが11g/㎝の部分の長さをyとおきます。
8x+11y+(34.5-x-y)×8=345 と式が立ちます。
未知数が2つあるのに式が1つしかありませんので、この式は解けません。
やはり問題の条件のとおり、解が1つということで解くしかないのですね。
(イ)の数学的解法は省略します。
どうやったところで、算数的解法と同じになるからです。
昨年の開成の算数の話題についてはこちらをどうぞ。
この問題に関してだけですが、そんなに難しい問題ではなかったと思います。
算数的解法でも数学的解法でも、問題なく解けます。
これくらいの問題なら、あえて図を書かなくても、方程式だけで攻めたほうが早かったかもしれません。
ただし、(イ)を解くためには、二つの棒の重さが一致する切り方は1つしかないという条件をきちんと把握する必要があります。図を書いていれば簡単ですが、式だけを扱っていると混乱してしまいます。