中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

【中学受験】模試の結果で志望校をあきらめないといけないのか?

模試はあくまで「模擬」試験です。

しかし、他に頼れるデータも無い中、「合格判定 20%」などという数値が出たら、志望校をあきらめるしかないのでしょうか?

模試の精度について

これについては以前にも書きました。

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模試の性格上、その模試の受験者の層(レベル)が重要です。

お子さんの志望校の受験者層が厚い模試が信頼度が高いからです。

もし開成や桜蔭を第一志望とするなら、SAPIXの模試がもっとも信頼できます。他塾の模試では、残念ながらこのレベルの受験者層が薄いからです。

逆に、サピックスで30以下の偏差値となっている学校を志望する場合は、サピックスはもちろん、四谷大塚日能研の模試も信頼性は低くなります。この場合は首都圏模試を受けるべきですね。ちょうどそのあたりの受験者層が厚い模試だからです。

 

さらに、普段通っている塾の模試も大切です。指導している教師が、その基準に慣れているからです。しかも過去の受験生のデータと指導経験がリンクしているのです。

ああ、この子は模試データでは合格可能性40%だが、去年のあの子も同じような得点力で合格していたな。だからあとは算数のここを強化すれば十分チャンスはあるぞ」と言った具合ですね。

 

ただし、忘れてはいけないことがもう一つあります。

それは、模試の問題傾向です。

 

ずいぶん昔の話で恐縮ですが、四谷大塚「合不合判定テスト」という模試が、中学受験の合否判定のスタンダードだった時代がありました。

サピックスの生徒も全員がこのテストを受けていたそうです。

そうなると、事実上合否判定の基準となりますね。

とくに難関校の判定には定評があったのです。

しかし、いつの頃か、このテストの判定の信頼性が下がったと感じるようになりました。

「合不合判定テストのデータではとても合格しそうにないと出ている。しかし、この生徒の普段の実力からいえばそんなことはないはずだ」

そう感じることが増えてきたのですね。

これは進路指導にとっては迷惑な話です。

「予定どおり開成で行きましょう。おそらくは筑駒まで行けるはずです」

「でも先生。合不合判定テストでは、どちらの学校も合格できないというデータが出ているのです。だから1日は安全策をとって駒場東邦にします」

こんな話が増えてきたのです。

私見ですが、どうやら合不合判定テストの問題傾向が、実際の入試傾向と乖離しつつあったのです。

いわゆる「四谷流」とでもいいますか、四谷大塚が普段の日曜テストで実施しているテスト傾向の延長線上で、より難易度を上げて作られたテストといった印象でした。

明らかに普段四谷大塚に通っている生徒には有利です。

ただし、実際の入試問題のトレンドからは外れているのです。

もうこうなると、このテストは信頼できなくなります。

私は、自分が指導している生徒に受験させるのをやめました。ただし、替わりになるテストがなくて苦労したことを覚えています。

テスト作成者としては、どうしても徐々に難易度を上げる傾向が出てしまいます。

忙しさにかまけて、入試問題の分析がおろそかになっているということもあるでしょう。

ここ数年の合不合判定テストはだいぶ良くなっているとは思いますが。

むしろSAPIXのテストの難易度が上がり過ぎていると思っています。

日能研は昔も今もあまり変わりません。

 

複数のテストを参考程度に受験する。

これが正しい姿勢ですね。

 

志望校をあきらめる必要はない

 頼りになるべき模試の精度が前述した程度ですので、それのみを参考にして憧れの第一志望校をあきらめる必要は全くありません。

 もちろん、偏差値で20以上も届いていない学校の受験は無謀です。

 

第一志望校は下げないでいきましょう。

これは私がいつもするアドバイスです。

午後入試が増えた昨今、第一志望校をあきらめずに、その他の日程で確実に合格を見込める受験がずいぶんやりやすくなりました。

 模試の結果は気にせずに、第一志望校はそのまま受験し、その他の学校を上手に選択する。これが今の正しいやり方です。

 

 ただし、一つだけ注意があります。

お通いの塾は、もしかして「合格率100%!」などという数値を宣伝で強調している塾ではないですか?

ここでいう「合格率」とは、その中学校を受験した生徒のどれくらいが合格したのか、という数値です。

この数値を強調している塾は要注意なのです。

なぜなら、この数字はいくらでも操作が可能な数値だからです。

そうです。分母を調整する、つまり合格しそうもない生徒を受験させなければいいのです。

そうすれば、合格率はいくらでも上げることが可能です。

最低の塾です。

もしそうした塾で、「いやあ、お子さんは〇〇中は受からないですよ。△△中に下げましょう」などと言われても、無視しましょう。

 

※念のために言っておくと、そうした塾の中にも良心的な塾はあると思います。

つまり、少しでも合格に不安のある生徒の受験を回避させ、確実に合格しそうな生徒だけを受験するように指導している場合ですね。これは塾と家庭の信頼関係がそうとう厚くないと難しいことです。「先生に言われたからこの学校の受験はあきらめます」と納得し、受験終了後にも、「もしあの学校を受験していたら受かったかもしれない」などと後悔することが一切ない場合です。

難しいですね。

少なくとも私には無理です。

 

得点力に注目しよう

模試データ以上に注目すべきは、お子さんの得点力です。

志望校の過去問でどれくらいて得点できていますか?

標準的なレベルの入試問題の得点力はどうですか?

 

母集団のレベルや塾の思惑に左右されがちな模試のデータより、この得点力を丁寧に追いかけてください。

その得点力が上昇トレンドにあるのなら、第一志望校をあきらめなくてすむかもしれません。

 

偏差値と得点力の関係はこちらにも書いています。

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