私は中学受験の専門家ではありますが、教え子の中には中学受験から高校受験に切り替えた子もいましたし、以前は高校受験生の指導をしていたこともあります。
そこで今回は、高校受験について、中学受験側から見た景色を書きたいと思います。
※どうしても高校受験について辛口になりがちなのですが、ご容赦ください。あくまでも私の雑感にすぎませんので。
学校数・生徒数
東京都教育委員会のデータをあたってみます。
【高校数】
国立 6校
公立 186校
私立 237校
このようになっています。
ちなみに中学校数は以下のとおりです。
国立 6校
公立 613校
私立 188校
つまり、私立高校237校のうち、中高一貫校は188校と考えられますので、高校のみの私立高校は49校ということなのでしょう。
生徒数はこうなっています。
【高校生徒数】
国立 3279名
公立 137759名
私立 177328名
【中学生徒数】
国立 2767名
公立 230151名
私立 74322名
学校数と同様に考えると、103006名が高校から私立に進学した生徒なのだと思われます。
ただし、この103006名が全員上述した49校に進学したわけではもちろんありません。
中高一貫校の中にも、高校募集を実施している学校が多数あるからです。
ところで、上の数字には、公立中高一貫校は含めていません。
別のデータを見ていて、高校募集がある私立高校の数は187校だとありました。
この数字が正しいのかどうかが確認できないのですが、それを採用すると、こういうことでしょうか。
◆高校募集しない中高一貫校・・・50校
◆高校募集のある中高一貫校・・・138校
◆高校募集のみの私立高校・・・・49校
私立中高一貫校が高校募集を次々打ち切っているのが流れだと思っていたので、私の認識とはだいぶずれた数字となりました。
中高一貫校でも高校募集を継続している学校のほうがまだまだ多いのですね。
ただ、学校数が多くても、募集定員が多いとは限りません。
例えば、学習院高等科の募集定員は20名で、今年の進学者数は21名でした。
この21名が、中等部からの内部進学者183名に混ざる形となっています。
城北中学・高校については、中学募集定員:高校募集定員は270:20です。
成城学園中学・高校については、140:60です。
もちろん、国学院久我山高校のように、高校からも145名募集と高校募集に力を入れている学校もあります。この学校の比率は、320:145です。
いろいろ調べていると、私立高校については以下のように分類できました。
(1)高校募集のみの学校(中学がない)
(2)高校募集が多い学校
(3)高校募集が少ない学校
(4)高校募集がない学校(つまり高校からは入れない)
この(4)については、高校受験の範疇にないので今回は省略します。
ただし、募集定員と実際の入学者数は乖離します。
一部の学校では、こんなケースもあります。
◆中学募集定員は多いのに入学者が少なく(つまり定員割れ)、高校募集で何とか生徒を集めている学校
◆中学も高校も定員割れしてしまい、結果として「アットホームな少人数」教育を売り物にしている学校
◆中学校から全員高校に上がれることが売りなのにもかかわらず、多くが他校へ逃げてしまい、1/3程度しか高校へ内部進学していない学校
加速する少子化の中、私立高校も生徒募集には苦戦しているのでしょう。
そうした社会情勢は理解できますが、進学すべき魅力が感じられない高校もまた多数あるのも事実です。
もっとも、同様のことは私立中学にもいえることです。
さらに付け加えると、知人でそうした定員割れした中高にお子さんを進学させたところ、「とても良い学校だった!」と親子で喜んでいた方もいますので、一概に「定員割れ=ダメな学校」と決めつけるわけにもいかないところが、学校選びの難しいところなのですね。
高校から入れる私立高校のレベル
これは残念ながら辛口評価にならざるを得ません。
中学受験における難関校・人気校のほとんどが高校募集をしていないのです。
それでも、日能研偏差値50以上の学校で、高校募集をしている東京都の私立高校をひろってみました。私がざっと見て抜粋しただけですので、漏れもたくさんあると思います。
開成
*慶應女子
*慶應義塾高校
早稲田実業
早稲田高等学院
青山学院
学習院
国学院久我山
芝浦工大附属
城北
巣鴨
成蹊
成城学園
青陵
世田谷学園
中央大附
帝京
都市大等々力
桐朋
広尾学園
法政
三田国際
明大中野
明大明治
明大八王子
立教池袋
*慶應女子と慶應義塾高校は高校のみの学校ですが、中高一貫といえなくもない。
男子の開成は別格として、難関校と呼べるのは早慶附属くらいですね。
もちろんもう少し視野を広げれば様々な良い学校もありますが。
女子校は皆無です。慶應女子しかありません。
公立高校受験と私立高校受験の壁
成績上位の生徒にとっては、高校入試で上を目指そうと思うと、必然的に都立・県立高校の上を目指す流れにならざるを得ないですね。
漏れ聞いた噂では、高校から開成に合格したのに、日比谷高校に進学する生徒も増えているとか。開成としては、筑駒に抜けられるのは仕方がないが、日比谷に抜けられるのは許しがたい、そんな声があるとかないとか。
開成高校の入試結果では、180名合格に対して、入学者は100名でした。入学辞退者は80名ということになります。
筑駒の高校合格者数は47名ですので、開成を蹴って、筑駒以外に進学した生徒が多数いることは推測できます。
ちなみに、開成中学の入試結果では、424名合格したうち、303名が入学ということなので、辞退者が121名もいたのですね。何ともったいない!
ところで筑駒の中学合格者数が128名ですので、開成蹴りの生徒の多くが筑駒に進学したことが推測されます。
高校入試の試験科目は大きく2分されています。
公立高校・・・5科目
私立高校・・・3科目
もちろん例外はあり、開成高校は5科目ですし、慶應女子は4科目(英数国+作文)となっています。
ということは、理社を捨てて3科目で私立高校を目指すのか、公立高校を主軸に、私立も受けるのか、といった戦略になるのですね。
個人的には、理社を捨てるのはあり得ません。
中学校で学ぶ理社は、大人になるための大事な基礎教養だからです。
中学入試をせず(つまり算国理社はさほど学ばず)、さらに高校入試でも理社を捨てるとなると、いったいいつ理社を学ぶ機会があるというのでしょう。
大学共通テストに備えて頑張るのか、あるいは統合型選抜・推薦選抜狙いで回避し続けるのか。
憲法も学ばずに選挙に行くような大人にならないことを祈るばかりです。
そう考えると、公立高校を目指すのは健全な感じがしますね。
偏差値がわかりづらい
わかりづらい理由は二つありますね。
◆内申点の存在
◆試験科目の相違
それでも、進研Vもぎ・新教研W合格もぎ といった模試をほとんどの受験生が受けるので、ある程度の偏差値データは出ています。
ただし、手元にあった2023偏差値表を見てみると、高校入試における偏差値50の私立高校はこのようなラインナップです。
神田女学園 首-40
麹町学園女子 首-39
東海大高輪台 N-38 首-44
自由が丘学園
目黒日大 N-45 首-55
八雲学園 首-45
関東国際
下北沢成徳
玉川聖学院 首-41
東亜学園
城西大城西 N-35 首ー45
大東文化大
桜丘 N-39 首ー44
東京成徳大 N-39
岩倉
上野学園 首-37
中村 首-43
足立学園 首-45
中学入試の世界では見慣れない学校名も多いです。高校募集のみの学校でしょう。
判る範囲で中学入試における偏差値(日能研・首都圏模試)の数字を入れてみました。
Vもぎで偏差値50の高校が、中学では首都圏模試偏差値40~45くらいということのようですね。
もちろん、中学受験と高校受験、しかも全く異なる模試の偏差値を比較することなど無意味です。
いえることは、同じ中高なら中学からより高校からのほうが入り易いということではなく、模試の受験生の層が低くなっているということでしょうね。
都立高校を見てみると、多少の順の入れ替えはあるとしても、これらが上位グループの高校です。
日比谷高校
西高校
国立高校
立川高校
戸山高校
青山高校
立川高校
八王子東高校
新宿高校
納得のラインナップです。
ところで、都立青山高校の大学実績をみてみるとこうでした。(現役)
東大 7(3)
一橋 14(14)
東工大 1(1)
早稲田 72(63)
慶應 48(41)
明治 152(128)
さすがに東大まで届く生徒は少ないですが、卒業生数約280名から早慶レベルの生徒は大勢いるのですね。
都県立高入試問題のレベル
これについては他の記事でも書いています。
また、内申点についてはこちらに書きました。
怒られることを承知で言うと、易しいのです。
場合によっては、中学入試のほうがはるかに難しいと思うほどです。
測ろうとするものがそもそも異なるということなのかもしれません。
中学入試が、「これからの伸び」を測ろうとするのに対し、高校入試は「現在の完成度」を測っているように思えます。
前者の場合は、思考力・記述力を重視した出題になりますし、後者の場合は、基本問題をいかに落とさないかを重視する出題になりますね。
私の率直な感想としては、「これでは、高校入試をする優秀な生徒はつまらないだろうな」というものです。
もっと先の学習までする能力がありながら、高校入試のレベルで足踏みさせられるわけですから。
個人的には、高校入試問題がもっと難しくなってくれればいいのにと思っています。
その上で、内申など無関係な、テストのみで合否が決まる入試を望みます。
子どもたちの日ごろの努力の結果としての公平な入試制度になってほしいというのが、塾屋の本音です。