中学受験は1発勝負です。
日頃どんなに頑張ってきたのか、小学校でどのように過ごしてきたのか、そんなことは評価されません(面接を重視するごく一部の学校を除く)
ただただ、入学試験の点数だけで合否が決まります。
潔い公平な入試制度ではあるのですが。
日頃の勉強はよく出来ているのに入試に失敗する生徒の中にたまにいるのです。
「いったい何があった?」
「全然時間が足りなくて。最後のほうは白紙でした・・・・・」
今回は、そうした事態を未然に防ぐ、テスト時間不足の解決法を一緒に考えましょう。
合わせて、試験時間が余った場合の有効活用法にも触れていきます。
テスト時間不足の原因
(1)知識不足
実はこれが一番大きな原因です。
しかし勘違いしてはならないのは、ただの「知識量」の不足が問題なのではないことです。
もちろん「知識」そのものの「量」が不足していたのでは話になりません。
ただし、その「知識量」をいくら増やしたとしても解決にはつながらないのです。
「使える知識」を増やさないと意味はありません。
「料理」に例えてみましょう。
料理初心者が、本格的なカレーをスパイスから作ることを考えてみましょうか。
料理本やネットなどでいくらでもレシピを調べることはできますね。そこで、調べながら作ってみます。
「ふむふむ。クミン・コリアンダー・ターメリック、この3つでカレーになるって書いてあるぞ。あれ、こっちには、クミン · コリアンダー · ターメリック · レッドペッパー · ガラムマサラ · カルダモン · オールスパイス・クローブの8種が基本ってあるけど。いったいどっち? そもそもガラムマサラってスパイスをミックスしたものって書いてあるけど?」
さあ、もう頭の中が混乱してきましたね。そこで、各種スパイスを調べてみますが、たぶん深みにはまるだけです。
「いいや、とりあえず3つで。それで次はどうするの? え、スパイスのホールを炒める? ホールって何? 粉じゃないの?」
とまあこんな具合で、日頃馴染みの全くない単語に翻弄されます。それでもまあレシピとにらめっこしながら何とかカレーまでたどり着きました。自分で苦労したカレーはさぞ美味しいことだと思います。
さて、1年後。久しぶりに本格スパイスカレーを作ろうと思いました。
残念ながら、そもそもスパイスの知識が全て抜けていますね。やっといくつか名前を思い出したとして、何をどのような順番で使えばいいのか、さっぱり覚えていません。
しかし、一度作った本格スパイスカレーを毎週作り続けていたとしたらどうでしょう?
もう自然に手がスパイスの瓶に伸び、さほど意識することなく、的確な順で的確に使用するでしょうね。もしかしたら自分なりのアレンジまでできるようになっているかもしれません。
こうなってはじめて、「私は本格スパイスカレーが作れます」と言えるのです。
お腹が空いてきたので話を戻しましょう。
知識についても、ただ単語として頭に入れたところで何の意味もありません。それを自分で使ってみる経験が伴わないかぎり、「使える知識」とはならないのです。
テスト本番で、解答用紙を前にうなっている生徒の大半がこの状態なのですね。
(2)読解力不足
「いったい何のことが書いてあるの?」
「問題文を読み終わらないよ!」
「何度読んでも頭に入ってこないんだけど」
「えっ! 周りはもう答を書く音がするけど、俺はまだ半分しか読めてないよ!」
とくに国語の読解問題がまずいですね。一部の学校では社会科でも6000字を超える長文を読むことが前提となっています。
読解力は全ての教科の基本です。
ここができないと、それは試験時間がいくらあっても足りないわけです。
(3)分析力不足
何を聞かれているのかが把握できない。
そうした生徒も多くいます。読解力ばかりか分析力も不足しているのです。
(4)論理力不足
論理的に筋道だった思考が苦手な生徒は多いですね。
こうした生徒の場合、「何を書けば答えたことになるのか」がわかりません。
あらゆる問題には、出題者が想定した「模範解答」というものが存在します。
或る意味、入試というのは、この「出題者が書いてほしい答」を推理するゲームのようなものなのです。
ここで大切なのは、「正解を書く」のではないことです。
「どう考えてもこっちが正解だよな」と言う場合が入試でもあるのです。
でも、そこは自分の考えなどどこかに捨ててください。
あくまでも、「出題者の考えている答」を書くことが重要です。
「この問題は、きっとこういう答を書いてほしくて出題しているんだろうな」と考えることができなければ、永久に〇にはたどり着けません。
(5)確信の無さ
せっかく解答がわかっているのに、「本当にこれでいいのだろうか?」と迷ってしまう場合も多いですね。
生徒の答案用紙を見ると、何度も何度も消した跡があるのです。見たところ、消された答で合っているのです。でも、最終的に書いた答が間違っています。
よくある話です。
「この答で正解」と確信を持って書くことができなければ、いたずらに時間が過ぎていくばかりとなってしまいます。
(6)書くのが遅い
丁寧なのは素敵なことです。
雑な殴り書きよりも、丁寧に書かれた字は気持ち良いですね。
でも、程度問題です。
とくに長文記述の場合など、書くスピードで明暗が分かれます。
字の綺麗さ・丁寧さとスピードのバランスがとれるところを見つけるのが重要です。
(7)集中力の欠落
テスト本番で集中を失うなど信じられませんが、そうした生徒も大勢見てきました。問題を読むわけでもなく、考えているわけでもなく、ただぼんやりしているのです。
焦りは禁物ですが、落ち着き払いすぎるのもまずいですね。
適度な緊張感のもと、普段よりも少し加速したスピード感で問題にあたりましょう。
(8)筆記用具の問題
信じられませんが、テスト中にシャーペンの修理をはじめる生徒というのが必ずいます。ペン先を外してつまった芯を取り除いたり、芯がなくなったので補充したり。
馬鹿です。
また、消しゴムをよく落とす生徒もいます。
見ると、丸く小さくなった消しゴムを愛用しているのです。
それはころがってどこかに行きますね。
物を大切にするのも程度問題です。
テスト時間不足の解決法
(1)筆記用具について
まずは形から整えましょう。
数百円~千円程度で解決可能ですから。
今でも小学校では「シャーペン禁止」なのでしょうか。
(この記事では、Mechanical Pencil、シャープペンシルのことを「シャーペン」という略称(愛称?)で統一します。子供たちはみなそう呼んでいますので)
実は、中学入試では鉛筆・シャーペンどちらでも可の場合がほとんどです。
鷗友学園の「入学試験の注意事項」の項目にはこうありました。
筆記用具(2B、B、HB程度の鉛筆またはシャープペンシル)と消しゴム
※振って芯を出すタイプのシャープペンシルは使用できません。
※合格祈願などの文字の書いてある鉛筆は使用できません。
ここまで丁寧に書いてあると助かりますね。
文字が書いてある鉛筆(シャーペンも消しゴムも)が禁止なのは当たり前です。
ただし、メーカー名や商品名は問題となることは無いでしょう。(よほど変な商品名やメーカー名ならわかりませんが)
そして、振って芯を出すタイプのシャーペン禁止も納得です。隣の生徒に肘がぶつかるし、カチャカチャとうるさいですから。私もあれを生徒が使っているのは大嫌いです。
そこで試験では鉛筆を推奨しています。
数本ずつ束にして輪ゴムでとめておき、1科目終わるごとに取り換えるのですね。
輪ゴムで束ねておけば転がりにくいですし。
そして、筆記具慣れするためにも、日頃の勉強でも鉛筆に統一すればよいのです。
ただし、ここに1つだけ問題があります。
普段の勉強で書く量を考えると、エンピツよりもシャーペンのほうが使い勝手が良いのです。いちいち削りに行かなくてすみますし、荷物も減らせますし。
となると、日頃使い慣れている筆記具がシャーペンということになってしまいます。
そこで、普段でもテストでもシャーペンを使うのなら、きちんと考えたものを使ってください。
◆芯の太さ・・・0.7mm / 0.9mm
◆芯の濃さ・・・2B(濃くはっきりと書くのならこれ!)
シャーペンというと、一般的な芯の太さは0.5mmですね。生徒を見ても、100%の生徒が0.5mmを使っています。
しかし、この芯の太さは小学生には向きません。
◆筆圧が強いと折れやすい
◆筆圧が弱いと薄くて読みにくい
→折れないようにペンを立てて保持するおかしな握り方が癖になる
→字が下手になる
生徒のペンの持ち方を観察していて気が付いた真実です。
「何でペンを立てて書く癖が定着しているのかな?」
この疑問から、生徒を観察していてわかりました。
なぜなら、エンピツ派の生徒達は、誰一人として鉛筆を垂直に立てる謎の持ち方などしていなかったのです。
変な持ち方をしていた生徒は全員シャーペン派でした。
0.9mmと0.7mmは迷うところです。
書きやすさだけなら、圧倒的に0.9mmで2B芯です。
芯が折れることなど心配せずにガシガシと書けます。
ただ、日頃から0.5mmのシャーペンでチマチマと細かい字を書く癖になっている人はギャップが大きすぎるかもしれません。
そこで、エンピツ派の人なら0.9mmを、シャーペン(0.5mm)からの移行なら0.7mmを選ぶのが正解でしょう。
あまり多くの種類は見かけません。
文房具店でも、0.9mmのものなら3種類程度、0.7mmのものなら1種類程度しか売っていないでしょうね。
私が強く推奨するのは以下の商品です。
ぺんてる「Tuff」
もともとは、土木建築分野をターゲットとした商品のようですね。
0.7mmと0.9mmがあります。
これを私がすすめる理由は2つです。
◆安い(=重くない)
変に金属など使った高級品はやめましょう。重くて疲れるだけです。また、床に落としたときに、重いほうが壊れやすいのです。
この商品は安っぽいプラスチック製です。これでいいのです。
◆消しゴムが実用的
シャーペンに付属の消しゴムって全く使い物にはなりません。緊急時ですら使用できるレベルではありませんね。
でも、この商品の消しゴムは実用に耐えるものなのです。しかも取り換え可能です。
消しゴム部分を繰り出すとこれくらいになります。
これなら、消しゴムを別途用意する必要すらないほどです。
「残り5秒!」
こうした場面で、ペンをくるりとまわして消してすぐに書き直せるこのペンのありがたさがわかると思います。
(もちろんアフィリエイトなどやっていません。あちこちでこのペンのすばらしさを書いているのですが、私はぺんてるの回し者ではありませんよ)
(2)使える知識を増やす
ただ覚えただけの知識など何の役にもたちません。
例えば、入試で電子辞書が許されたとしましょう。
あらゆる知識を調べることができます。
でも、それだけで満点がとれますか?
◆瞬時に必要な知識が浮かぶ
◆知識同士が関連づけられている
この状態にないと、「使える知識」とはよべません。
そのためには、入試問題を大量に解いてください。
そしてねちっこく丁寧な答え合わせをしてください。
(3)漢字・熟語・単語
「あれ、この字、どう書いたっけ?」
ぶつぶつ言いながら何度も書き直している生徒をよく見かけます。
これではテスト時間が足りなくなるわけです。
瞬時に的確な漢字を書く訓練をしましょう。
※社会科用語に注意
小学生のレベルを超えた漢字を要求されることはよくありますね。
「尊王攘夷」「井伊直弼」が漢字指定なのが当たり前の世界です。
これも迷っている時間は無いのです。
(4)問題文の読解スピードを上げる
問題文の、どこを丁寧に読んでどこを斜め読みするのか、それを瞬時に見極めながら読むことができなくてはなりません。
こればかりは訓練です。
とにかく多くの入試問題に触れることが重要です。
(5)分析力を上げる
入試で問われる点というのはだいたい決まっています。
「ああ、この問題なら、きっとここを聞かれるんだろうな」
「だいたいこれを答えさせるんだよな」
こうした「慣れ」は重要です。
これも大量の問題演習でしか身につかないスキルです。
時間が余ったら?
子どもたちは見直しが下手ですね。
せっかく数分の試験時間が余っても、有効に活用している生徒はほとんど見かけません。中には、まだ終了の合図がかかっていないのに鉛筆を置く生徒までいます。
一番良いのは、時間を余らせないことです。
残り時間と自分の解くスピードと問題量を瞬時に見極めながら解くスピードを調節するのが理想なのです。
そのためには練習量が物をいいますね。
それでも時間が余った場合は、とにかく1問だけ、一番自信が無かった問題だけ見直しすることをおすすめします。
どうせ全体をざっと見直すことなど無理なのです。
だったら、1問だけでも丁寧に見直しするほうが得策です。
ただし、書き直す場合には、残り時間を正確に把握してください。
消しゴムで消したタイミングで「終わり!」の合図がかかったら悲劇としか言えませんので。
たまに長文記述を全て消して書き直そうとする生徒を見かけます。
絶対やってはいけません。
さすがにそれだけの分量を書き直す時間は与えられていないはずですので。
こちらにもいろいろ書いています。ぜひお読みください。