中学受験から撤退し、高校受験に切り替える方がいます。
いつ、どのタイミングなのか?
どういった理由なのか
戦略は?
今回はこういった疑問について考えてみたいと思います。
中学受験から撤退した理由
1.疲れた
おそらく最も多い理由がこれです。
精神的にモチベーションが保てなくなってしまったのですね。
◆毎日子どもの塾の送り迎え・弁当作り、子どもの勉強スケジュールの管理。親がすっかり疲れてしまった。
◆毎日子どもに小言を言い続ける日々。もう疲れてしまった。
◆小学校の先生から、子どもがいつも授業中に寝ていると聞いた
他にもたくさんあるでしょう。
子ども本人が疲れてしまった場合と、親が疲れてしまった場合と2パターンあります。圧倒的に後者が多いです。
2.成績があがらない
いくらお尻をたたいて勉強させても、いっこうに成績があがらない。当然志望校も当初考えていたところには全く手が届きそうにない。
お子さんの能力に限界を感じてしまった場合です。
3.周囲から言われた
最近聞くのが「教育虐待」という言葉です。
親があまりに子どもに勉強をやらせすぎて、それは教育虐待のレベルだというのですね。
◆成績があがらないと叩かれた
◆テストの点数が低いと罵倒された
◆夜遅くまで勉強を強制された
こういったものです。
もちろん、単純な話ではありません。教育熱心と虐待の線引きも難しい。
親が子どもに過度な期待を抱き、思い通りにしようとするところに虐待が潜んでいるのです。
しかし、親が子どもに期待を抱くのは当たり前であり、そのための努力をさせることもまた当たり前です。何でもかんでも「教育虐待」という言葉でくくることの怖さを感じます。
親戚や知人などから「あなた、それは教育虐待ね」と指摘されて、はっと我に返ってみれば、たしかに虐待の一歩手前だった。
思い切って中学受験から撤退する、そうしたケースもあるでしょう。
4.子どもの意志を尊重した
子ども本人から「中学受験したくない」と言われる場合もあります。
これは、受験勉強に突入する前の段階で、家族できちんと意思統一をしていなかったことが原因です。子どもは選択肢などないものと思って塾に通って勉強していたのが、自我が芽生えてきて、中学受験をしない選択肢に気づいてしまったのですね。
それが確固たる子どもの意志ならよいのですが、単に受験勉強から逃れるための言い訳だったら問題です。ほとんどの場合はそうです。
5.別の目標ができた
これは素晴らしいですね。中学受験をすることで、その夢の実現が難しくなる、そうした判断です。
しかし、だからといって勉強をしなくていい道理はありません。例えばサッカー留学のためにポルトガル語の取得に力を入れたいとか、バレエ留学のためにロシア語を学ぶ必要が出てきたとか、そういった理由ならわかります。勉強の内容を変える必要が出て来たのですね。
しかし、「eスポーツに力を入れるため」「声優のレッスンに行く」などのように、子どもが勉強より楽しいと感じていることをやりたいだけ、というものでは困ります。
小中学生(+高校生)で学ぶ内容は、将来大人になったときの選択肢を広げる基礎教養の学習です。ここをおろそかにできませんので。
6.経済的な理由
これはもっともな理由です。
中学受験して私立に進学することにはお金がかかります。家庭を犠牲にしてまですることではありません。
もっとも、開成会道灌山奨学金のような奨学金を利用したり、特待生制度を利用するという手は無いわけではありません。また、筑駒に進学するというのもよいですね。もちろん公立中高一貫校の選択肢もあります。
ただし、相当の学力が必要です。
塾については、塾無しでの中学受験も可能です。
こちらに詳しく書きました。
撤退の時期
思い立ったとき、です。
おそらくは塾に通っていると思いますので、月謝が無駄にならないよう月末ということになるでしょう。
撤退するのは簡単です。
家族で「中学受験はしない!」と意志統一するだけだからです。
ただし、いったん撤退を決めてから、「やっぱり受験する」と思いなおすのはおすすめできません。たとえ3か月後に再開したとして、その3か月の間に皆は学習をすすめているのです。その遅れを取り戻すことは困難です。
撤退戦略
中学受験から撤退する=勉強から撤退する ではないことに気をつけてください。
小学生のときに勉強しなければ、中学生になってから苦労するだけです。
私の知人の子どもは、今中学1年生なのですが、必死で小学生の漢字を4年生のものからおさらいしています。勉強していなかったからです。なんとなく小学生時代を遊んで楽しく過ごし、学校の勉強だけやっていればそれでいいと勘違いしていたのですね。いざ中学生になってみると、周囲はみな小学生時代にきちんと勉強していた子ばかりで、完全に落ちこぼれてしまいました。この夏が勝負ということで今必死です。
中学受験をしないかわりに、何の勉強をすればよいのでしょう。
算数・数学
〇〇算といった特殊算はある程度省略しても大丈夫です。ただし、確かな計算力は必須です。また、図形問題は重要です。中1の数学で出てくる図形問題は、ほとんど中学受験レベル(かそれ以下)だからです。
国語
国語は継続して学ぶことがとても重要な教科です。漢字や語句の知識はもちろんですが、長文読解・長文記述の学習も欠かせません。
理科・社会
中学生になって最も役立つのが理科社会の学習です。これは中学受験レベルまで進める必要があります。
英語
英語に力を注ぐ時間がとれるのが、中学受験撤退の最大のメリットですね。
単なる英会話レベルではない、きちんとした英語を学ぶべきでしょう。
中学1年生の教科書や問題集から先取りで始めることをお勧めします。あるいは、英検を目標とするのもよいでしょう。いちおう英検3級が中学校終了レベルといわれていますので、まずは4級でしょうか。中学1年生のうちに3級まですすめば悪くないレベルだと思います。
こうしてみると、中学受験から撤退したからといって、勉強が楽になるわけではないことに気が付きますか?
むしろ英語学習が付け加わって、より忙しくなりそうです。