中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

桜蔭中学に向く子、向かない子の考察

 

 先生、うちの娘は桜蔭中学校に向いていますか?

 

保護者と面談をしていると、実によく同様の質問をお受けします。

「先生、うちの子は〇〇中学校に向いているでしょうか?」

この「〇〇」のところには、あらゆる中学校の名前が入ります。

今回は、桜蔭中学校について、どんな学校なのか、どんな生徒が向いているのかについて考えてみましょう。

例によって、完全に私個人の主観と偏見にもとづく意見なので、「こんな意見もあるのね」程度の、あくまでも一つの参考意見としてお読みください。

そもそも学校に対する評価は、100人いれば100通りです。通っている生徒・保護者の評価もバラバラなのが当たり前です。
「日本人は真面目だ」という意見が何の意味も成さないのと同様に、学校について感覚的に評価することは無意味です。
それでも、冒頭の保護者のように、
「いったい我が子はこの学校に合うのだろうか?」
「入学した後勉強についていけるのだろうか?」
などと心配するのはもっともだと思います。

保護者の不安な心情も十分にわかりますので、こうしたご相談があった際には、私なりの意見にすぎなくても、お話しすることも大切なのだと思っています。


1.驚異的な大学合格実績

いうまでもなく、全国の女子校トップの実績を誇っています。

わかりやすい指標として東大の現役合格者数を見てみると、このようになっています。

桜蔭東大実績

もう、さすがと言うか何というか、驚異的な合格実績であることは間違いありません。

参考までに、首都圏のいくつかの学校の東大実績をあげてみます。
(合格率については、学年平均在籍数を分母としていますので概算です)

主要校東大実績

合格者数・現役合格率ともに駒東を上回っています。理3合格者については、開成をも上回る実績となっています。東大ということだけにしぼってみれば、最近偏差値で桜蔭と並んだとうわさの渋谷教育学園渋谷をはるかに凌駕しています。
(※渋渋に関しては、男女合算の合格実績しか公表されていないので、この実績も男子の手柄なのか、女子の手柄なのか、それとも男女差が無いのかは不明です)


こうして数字をあげておいていうのも何ですが、実は私は東大実績だけをクローズアップするのは好きではありません。中高6年間は、もっと多様な価値観をもって過ごしてほしいと思うからです。

桜蔭の、その他の合格実績の一部をあげてみました。

桜蔭大学実績

なるほど。
理系、とくに医学部が多いですね。

1学年の生徒数が235名ほどですので、東大&医学部に、過半数の生徒が合格していく、そういう学校です。

このことが、学校の雰囲気にどのような影響を与えるのか考えてみましょう。

と、その前に。

学校のHPで大学実績がどのように紹介されているのかについてみてみます。

 ★学校により異なる大学合格実績の公表方針

桜蔭は、現役・既卒生を区別せず、4年分の合格者数を公表しています。多くの学校で現役生と既卒生がわかるように公表していますので、桜蔭のように合わせて公表する場合というのは、以下の2つのケースが考えられます。

〇浪人生の多さを隠し、数値を合算することで合格実績を高くみせたい
〇情報公開に積極的ではない、あるいは無関心

これは、どう考えても後者ですね。驚異的な合格実績はすでに知れ渡っていますので。

もう一点注目すべきなのは、どこまでの大学実績が公表されているか、です。

これは、その学校の姿勢を反映します。

 (1)すべての合格実績・進学実績を包み隠さず公表する

 ・情報公開が学校の価値を高めると考えている
 ・在校生すべての合格・進学先について分け隔てする気はない

 (2)一部の学校しか公表しない

 ・情報公開に積極的ではない
 ・個人情報保護意識が高い
 ・学校の価値を高めない(恥ずかしい)大学名は隠したい

 (3)複数年度の合格実績を合算して公表している

 ・とても公表できないほど実績が低い
 ・直近の実績が低すぎる

受験生(&私のような職業)にとっては、(1)の学校がうれしいですね。
週刊誌等の信憑性の低いデータを見なくとも、学校の合格(進学)実績がわかることは大事です。なにも、すべての受験生が高偏差値の大学だけを志望しているわけではありません。自分の進みたい進路がすでにあれば、受験する中高からもそうした大学への合格(進学)者がいるという情報はとても重要ですね。

しかし、大多数の学校は(2)となっています。あまりに細かい情報を開示することは、個人情報保護の観点からも好ましくない、私のような下種の勘繰りを招きたくない、そういう姿勢なのだと思います。
ただ、「これくらい公表しておけばいいでしょ。細かいところを気にするような受験生はうちに来なくてけっこう」といった高飛車な態度が感じ取れてしまうのは私の職業病でしょうか。もっと嫌なのは、「こんな大学名、うちの学校の恥だから公表したくない」などと考えている可能性もあることです。もし自分がその学校の卒業生で、自分の進学大学名が母校のHPから抹殺されていたら、とても悲しくなりますね。

桜蔭のHPでどれくらいの学校名があげられているのか、見てみます。

◆国公立 13校
 その他医学部
 その他国公立

このようになっています。国公立大学については13校が表にあり、その他医学部・その他国立と数値がまとめられていますい。やはり、同じ国公立でも、医学部合格者数は別にして明記したいのですね。

では、私立はどうでしょうか。

◆私立 29校
 その他私立
 海外大
 防衛医科大他

このようになっていました。
海外大と防衛大・防衛医科大を別に分ける高校は多いですね。

このように、国公立13校、私立29校の公表というのは、他の学校にくらべてどうなのでしょうか?

渋谷渋谷のHPを見てみます。
国公立については、防衛医科大を含め17校が表になっています。
私立については、10校だけが表にあり、それ以外は「上記以外の大学」とひとくくりでした。
上記以外の大学」に進学した生徒がかわいそうです。

 

※実は、塾についても同様のことがいえます。

HPで全ての合格校をあげている塾もあれば、主要校の実績しか公表していない塾もあります。どんな学校であれ、生徒本人が頑張って合格を勝ち取った成果ですので、隠すことなどありえないと私は思っています。塾の本音はこういうところに表れます。


2.鉄緑会の存在

桜蔭といえば、鉄緑会に通う生徒が多いことでも知られています。
鉄緑会のHPによれば、2023年5月現在在籍している桜蔭生は、開成の1126名についで二番目に多い871名です。

中高6学年の桜蔭在籍者数は1387名ですので、なんと鉄緑会在籍率は63%となっています。

ちなみに開成は2128名の生徒がいますので、鉄緑会在籍率は53%です。

ということで、鉄緑会在籍率は筑駒の70%に次いで2番目ですね。

学年別の在籍者数まではわかりませんが、単純に6で割ると、学年あたり145名が鉄緑会に通っていることになります。

この数字って本当なんでしょうか?

鉄緑会の公表数値を鵜呑みにしていいかどうかはわかりませんが、たしかに教え子に聞いてみると、「鉄の上のクラスは、桜蔭と開成と筑駒の生徒ばっかり」だと言っていました。

このことをもって、「桜蔭の東大実績は、学校の手柄じゃない、鉄のおかげだ」と批判する人も多くいます。

そうした面もあるでしょうが、「鉄緑会に行ってもがんばれる資質の生徒」が多いというのは、これも桜蔭の特質ではないでしょうか。課題が多いという鉄緑会と学校の勉強を両立できるということなのだと思います。

個人的には、鉄緑会などに行かなくても十分に東大に合格できる力がある子が多いのだと思います。でも、「皆が行くから」という集団心理が働くのでしょう。

 ★大学進学実績の負の側面

これは桜蔭に限ったことではありませんが、高い大学合格実績を誇る学校の負の側面についてお話しておく必要があります。
それは、「その学校の全ての生徒が最難関大学へ進学できるわけではない」ということです。

当たり前のことですね。

どの中高にも、学校の学習についていけない生徒、いわゆる「落ちこぼれ」とよばれる生徒は存在します。
中高の大学合格(進学)実績の一覧表を見ていると、おや? と首をかしげたくなるような学校名も散見されます。
もちろんその大学・学部が第一志望であった可能性もゼロではないでしょうが、……まあゼロですね。不本意な進学をしたのだろうことは簡単に推察できます。

その中高に進学できた段階では、かなりの学力が備わっていたのです。ただ、その後の学習の努力がなければ、たちまち地に堕ちる結果が待っています。

学校の華麗な大学実績は、在校生たちのたゆまぬ努力の賜物です。学校名にあぐらをかいていると、ひどいことになることは断言できます。

教え子の一人に、こうした女子生徒もいました。
中高がトップレベルの学校だったのですが、進学した大学は、いわゆるGMARCHのうちの一つだったのですね。家庭の事情で浪人という選択肢はありませんでした。
彼女が進学した大学も十分良い大学だと思うのですが、本人は大学在学中、ずっとそのことを気にしていました。国公立が当たり前、早慶でぎりぎりOK、それ以外は負け組。それくらいのプライドがあったのでしょう。このプライドが、学校全体に満ちていたものなのか、それとも本人の心の中に育ったものなのかはわかりません。

自己肯定感が得られない学校生活は不幸です。

要は本人の気の持ちよう次第ではあるのですが、難関中高に特有の問題だと思います。


3.学校施設

2023年末、建て替え工事中だった東館が竣工しました。

www.oin.ed.jp


2024年が桜蔭の創立100周年ですので、その記念事業として進められていたものです。
東館というのは、中高の教室がある敷地から道路をはさんだ向かい側ですね。普通教室・物理室・化学室・理科講義室・体育館・プール・職員室などがもうけられています。

学校HPによると、学校施設としては以下のようになっています。

物理室/化学室2/生物室/社会科室/音楽室2/美術室/工芸室/書道室/礼法室/被服室/調理室/LL教室/コンピュータ室/大教室/プラネタリウム/天体観測ドーム
小講堂/図書館/第1・第2体育館/卓球室/保健室/生徒会室/放送室/カウンセリングルーム

特筆すべきものはないですが、過不足なく一通りそろっていますね。
都内女子校としては、屋内プールがあるのは良いですね。だいたい半数の学校にプールがありませんので。
もっとも、教え子に言わせると、「プールがあるから桜蔭は受けない」そうです。その前に、「成績が足りないだろ! 」と突っ込みたくなりました。


学校の敷地面積は0.67万㎡です。

これがどれくらいの広さかというと、都内小学校の敷地面積がだいたい1万㎡くらいですので、それよりもだいぶ狭いですね。

男子校は、麻布や駒東が2万㎡、開成が2.5万㎡です。
まあ男子校は運動系部活がさかんなところも多いですからね。

あくまでも感触ですが、狭いことで知られる渋谷渋谷の2.5倍以上はあると思います。女子学院は敷地面積を公表していませんが、グラウンドを外に設けられている分だけ、女子学院のほうが広いのかな。(Googleearthで概算すると1.1万㎡でした)

まあ、桜蔭を志望する生徒に、敷地面積を気にする生徒はいないと思いますが。

ただ、桜蔭は北軽井沢に山荘を持つ以外に、ひばりが丘(西東京市)にグラウンドを持っています。


★隣接地へのタワーマンション建設について

話題になっていましたので、ご存じの方も多いでしょう。

桜蔭の教室棟に隣接して「室生ハイツ」という8階建てのマンションがあります。ここを建て直して、地上20階、高さ76mのマンションにしようという計画があるのですね。2025年着工・2028年竣工予定だそうです。

なんでもかんでも高層化される中で、8階建てのマンションのほうが価値が高いと思うのですが、そうもいかない大人の事情があるのでしょう。

しかし、このタワーマンションが出来てしまうと、完全に教室が見下ろされて丸見えになってしまいそうです。
年頃の女子生徒が学ぶ環境としては最悪ですね。
もちろん学校は激しく抗議し、都議会にも申し入れを行っているそうです。

そもそも、この地域は高さ46mの制限がある土地です。それが特例により高さ制限・容積率ともに緩められたそうです。

このあたりは、狭いエリアに、都立工芸高校・昭和第一高校・順天堂大学東洋学園大学などが集まる文教地区です。水道橋駅前の喧騒を一歩離れただけで、落ち着いた街並みとなっています。桜蔭とこの建替えマンションの前の道路は「忠弥坂」という名前で、この名前を聞いただけで歴史好きな人は「おっ」となりますよね。丸橋忠弥といえば、由井正雪の乱に加担して処刑された人物ですね。「槍の丸橋」とも称された槍の名手で、この地で宝蔵院流槍術の道場を開いていたそうで、捕縛されたのもまたこの地だといわれています。

せっかくの素敵な町を、目先の「金勘定」だけで破壊していく愚行がまたここで繰り返されるのですね。

そういえば、日本最古の歴史を誇る女子学院でも同様の問題が起きています。

千代田区の番町といえば、言わずと知れた明治以来の文教地区です。
一番町には女子学院、三番町には大妻女子、六番町には雙葉があります。江戸時代には旗本の屋敷が立ち並び、明治以降には政治家・官僚、そして島崎藤村泉鏡花といった文人たちの住む町でした。
その千代田区二番町、女子学院の正面にある日本テレビが、最大150mの超高層ビルに建て替え計画を発表したのです。
千代田区条例により60mの高さ制限があったものを、これもまた特例とかで150mまで制限を緩めるそうです。

もう、何をか言わんや、ですね。

 

4.教育理念


以前の記事でも触れました。

peter-lws.hateblo.jp

 

学校を考えるときに最重要なのは学校の教育理念です。
ある意味、学校というのはその教育理念を実現するためにのみ存在するのです。

www.oin.ed.jp

桜蔭中学校高等学校のHPにはこうあります。

◆教育の目標

桜蔭学園は、中学校・高等学校六ヵ年を通じて、一貫した女子教育を実施している。
桜蔭中学校においては、時代に適応した学習と道徳の指導を行って建学の精神である「礼と学び」の心を養い、桜蔭高等学校進学にふさわしい 品性と学識を備えた人間形成を教育の理念として実践につとめている。
桜蔭高等学校は中学校の教育を基礎として、豊かな愛情と自主の 精神をもって博く学び、正義の念に基づいて行動する女性の育成が念願である。卒業後は、大学進学を経て社会への参加、よりよい家庭 生活の建設など、各方面に活躍する有能な女性を世に送り出している。

◆校訓
勤勉 ・温雅 ・聡明であれ。
責任を重んじ、礼儀を厚くし、よき社会人であれ。

 

いいですねえ。
私は保守的な人間なので、こうしたアルファベットもカタカナもないところに惹かれます。
人によっては「古臭い」と思われるでしょう。たしかに古臭いです。100年前に創立した古い学校なのです。制服を見てもおわかりのように、現代の価値観からみると古臭いと感じる理念・校訓であるのはしかたがありません。
そもそも、時代に合わせて教育理念を変える学校は、私は信頼しません。変えなくてはならないレベルの理念だったのか、とつい思ってしまいます。


5.どういった生徒に向くか

いよいよ本題です。
桜蔭は、いったいどういった生徒に向くのでしょうか?

 

 ◆真面目な生徒

拍子抜けしましたか?
あまりにも当たり前のことで申し訳ありませんが、これは事実です。

過去の教え子で桜蔭に進学した生徒の顔を思い浮かべても、みな真面目な生徒ばかりでした。
コツコツと努力を積み重ねることができる生徒ばかりでした。
ひらめきや瞬発力を発揮するタイプよりも、言われた課題をきちんと、しかも自主的に高い水準でこなしていく、そういう努力が継続できる子でないと、桜蔭は向きません。たとえ合格できたとしても、ついていくのは困難だと思います。

別に、勉強命のがり勉君であれ、といっているのではありません。
明るく陽気な子、地味で控えめな子、積極的な子、消極的な子、それはいろんな性格の生徒が桜蔭に進学しています。
でも共通していえるのは、みな真面目に努力できる子だったということです。


 ◆自立した生徒

中学入試を突破するだけなら、親が完全に学習をコントロールして合格させることは可能だと思います。(もちろん資質も必要です)

この、幼少期より親に言われたことを言われた通りにやっているだけの「いい子」は、桜蔭には向いていないと私は思っています。

こうした生徒の多くは、学年が上がるにつれて成績が下降する傾向にあります。それでも親の経験値が豊富で、子供の成績の下降までも計算しながら勉強の指示ができればよいのですが、そんな方はいません。(それはプロの教師の仕事です)
そんな生徒が、桜蔭に進学してしまうと、不幸です。
なぜなら、周囲は自分よりもはるかに「出来る」生徒ばかりだからです。
親が大学入試まで並走する覚悟があるのならともかく、親の指示通りの学習しかできてこなかったような生徒にはこの学校は不向きであるとはっきりといえますね。

なかには、悲しいことに「カンニング癖」を身に着けてしまう生徒というのもいるのです。まあ子供なんてものは、目につくところに他人の解答用紙が見えてしまえば、思わず見てしまう、そんなものです。しかし、この「癖」がある生徒というのは、それとは次元が違います。そして、そうした生徒の親というのが、例外なく子供の教育、というより点数に厳しいのです。
「あなたは何がなんでも医学部に進学しなさい!」
「絶対東大に進みましょう。そのためには、桜蔭に行き、鉄緑会に入らねば!」
こんな親に多く出会ってきました。
2月2日の合格発表のその足で鉄緑会の申し込みに行くようなタイプです。

私の偏見なのは承知でいいますが、桜蔭には向かないと思います。

やはりこの学校に向くのは、自分で自分の勉強をきちんとコントロールできた生徒なのです。


 ◆志望の理由が東大(医学部)の実績ではない生徒

たしかに大学合格実績の素晴らしい学校ですが、桜蔭は大学受験予備校ではありません。
能力が高い生徒たちの切磋琢磨の結果としての大学実績であることを忘れてはいけません。

もし桜蔭の志望理由が大学実績にしかないのであれば、おそらくは授業に不満が出てくるでしょう。学校の授業よりも鉄緑会の宿題を優先してしまうかもしれません。

◆授業中に鉄の宿題をしていて怒られた生徒がいる
◆先生が、大学受験の勉強は鉄でやれ、と発言した

こんな噂があるのも、このような生徒が多いからなのでしょう。

大学についてはまだ考えてはいないけれど、一所懸命勉強することで未来を切り開きたい、こんな風に考える生徒が桜蔭向きの生徒です。

実は、東大・医学部が目当てでの桜蔭進学でも、こういった生徒なら大丈夫です。
私の昔の教え子の話です。
この子は、桜蔭から東大の理3に進学しました。こんなことを言っていましたね。

「私は、こういう医者になりたいという目標が小さい頃から明確にあり、そのために塾でも学校でもめちゃくちゃ努力して理3に進学した。」

なかなか言えるセリフではありません。

もっとも、その後にこう続きます。
「それなのに、周囲の理3に進学した生徒たちは、偏差値が一番高いからという理由で理3を目指した(そして進学した)子ばかりで嫌になる」

憤懣やるかたない彼女の顔を思い出します。


 ◆スマホSNSに興味がない生徒

いるのです。
スマホSNSに全く興味がない生徒というものが。

それは、今時の中高生ですから、皆所有しています。
しかし、持っていながらも、必要最低限の連絡と調べものにしか使わないのですね。
部活や親との連絡手段、あとは電車の経路検索と天気予報チェックくらいにしか使わない。本格的な調べものや文書作成・メール等は家のPCで行う。

スマホSNSは麻薬のようなものだと思います。子供の意志の力だけではどうしようもない魔力が秘められています。大人でもそうですよね。街を歩く大人のいかに多くが、スマホに顔をうずめるようにして歩いていることか。

スマホに溺れない生徒というのは、確固たる意志の力があり、さらに他に興味関心の対象がある生徒です。また、対面のコミュニケーションが大切であることも知っている生徒です。
そうした生徒は、まさに桜蔭向きだと思います。


 ◆幼い生徒

前述したことと矛盾するようですが、なぜかとても幼い生徒も進学していきます。
たまにいるのですよね、成長がゆっくりな生徒が。ほんとにこの生徒は小6か? と学年誤魔化し疑惑まで抱くほど、小さくて幼い生徒です。
 ところが、そうした生徒が、抜群に勉強ができたりするのですから、不思議です。勉強に向かう姿勢ができているというべきか、あるいは勉強に疑念を抱かないだけなのか。
保護者にうかがうと、家でもずっと勉強をやっているといいます。他の時間の過ごし方がわからないのかもしれません。こうした生徒は、とにかく勉強に費やす時間が長いので、成績も良いのです。
 こうした生徒が、そのまま中高生になっても、さほど自我が芽生えずに、ひたすら勉強に取り組み続けると、それは素晴らしい成果が得られると思います。
 別に統計をとっているわけではありませんが、桜蔭に進学してうまくいっているという生徒の顔を思い浮かべると、何人かこうした生徒の顔が浮かぶのです。