中学受験のプロ peterの日記

中学受験について、プロの視点であれこれ語ります。

早稲田アカデミーの指導スタイルと合格実績

早稲田アカデミー、最近勢いを感じますね。難関校の合格実績も、四谷大塚日能研を抜いて、サピックスにせまる勢いだとか。(まだだいぶ差はあります)

 

1.沿革と指導スタイル

さて、この塾は、1970年代に、当時早稲田の学生だった須野田誠氏によって設立されました。2007年に須野田氏が急逝したあとも指導方針は変わらないようですね。

その方針というかスタイルというのは、「精神論重視」というものです。全員鉢巻を巻いて気勢をあげる夏期合宿は有名ですね。中学の入試日にもこのハチマキ君たちが続々と学校にやってきます。そのスタイルは生徒だけではなく、職員室で仕事をしていた職員がトイレに行く際にも「田中、トイレに行ってまいります!」と大声で挨拶をするとか。さすがにそれはネタだろうと思ったのですが、入社して3日で辞めた元社員から直接聞いた話です。一部の校舎だけの話なのかもしれませんが。

HPには「本気でやる子を育てる」とありました。

また、保護者対応も手厚いと聞いています。しょっちゅう塾から電話がかかってくるそうですね。

一言でいえば「体育会系」とみてまちがいないでしょう。そうしたスタイルが好きなご家庭なら合うと思いますし、嫌いなご家庭はやめておいたほうが無難です。

四谷大塚の予習シリーズを使った安定感と、教師の熱気、その両方を求めるのならフィットすると思います。

 

2.合格実績の重視

さて、この塾を物語るもう一つの側面とは、優秀な生徒集めに長けているという点です。公開テストで優秀な成績だった生徒に対する勧誘はそうとうなものだと聞きました。もちろん特待生制度もあります。

7年前に、自由が丘に「SPICA」という難関校中学受験専門の別ブランドを立ち上げました。一言でいえば、「お高級」路線の教室です。電子黒板完備の教室、ウッディな雰囲気の自習室、図書室スペースにはコンシェルジュが、さらにフリーWi-Fiとドリンクサーバー完備のラウンジまであり、保護者はここで子供の帰りを待つことができます。自由が丘という塾の激戦区で勝算はあるのか? とも思いますが、どの塾の教室もぎりぎりまでコストを削った設備が普通ですので、SPICAの雰囲気は異色で魅力に感じる方もいるのでしょう。ただし、授業料は公表していません。1科目の受講で月3万円くらいだと思いますが。どの講座も週1回の単科制で月4回となっており、他の塾に在籍しながらでも受講しやすいしつらえです。6年生の筑駒・開成 算数思考力講座は金曜日、筑駒・開成 国語分析力講座は水曜日となっていました。この曜日設定を見て気が付くかたは、プロかサピックス生ですね。そうです、駅の反対側には早稲田アカデミーが(おそらく)ターゲットとするサピックス小学部自由が丘校があり、そこの6年の授業曜日は火・木・土なのですね。相変わらずうまいなと思います。

さらに特筆すべきは、灘中学受験ツアーですね。なんと、早稲田アカデミーの通塾生のみならず、模試を受けたことのある他塾生でも成績上位の生徒に対しては、新幹線代・ホテル代を親子の分まで塾が全額負担してくれるそうです。太っ腹ですね! そうした生徒には塾から招待状が届くとききました。もちろん目的はただ一つだと思います。

いちおう塾の団体というものが存在します。「(社団法人)全国学習塾協会」というものです。合格実績についてのここの自主基準はこうなっています。

「受験直前の6ヶ月間の内、継続的に3ヶ月を超える期間当該学習塾に在籍し、通常の学習指導を受けた者とし、かつ、受講時間数が30時間を超える場合とする。なお、当該時間に受験直前における集中講義等の受講時間を含めることを妨げない。 」

この基準が妥当なものなのか、そして会員の塾がその基準を守っているのかどうかについては私はコメントする立場にはありません。

ちなみに、早稲田アカデミーはこの協会の会員ですが、SAPIXも四谷大塚日能研も会員ではありません。ここの会員であることが合格実績の信頼度と関係があるのかどうか、やはり私はコメントする立場にはありません。

まあ塾も営利企業ですから、優秀な生徒を一人でも多くあつめて合格実績を稼ぎたいという本音はどこの塾にでもあるのでしょう。

これについては、賛否両論だと思います。しょせん塾の合格実績などその程度、という割り切りもあるでしょう。我が子が招待されたり授業料が面所される側なら、お得でいいじゃない、となるかもしれませんね。もちろん他塾にはいろいろいいたいことがあるとは思います。

いずれにしても、受験生側からすればどうでもいい話です。

子どもの合格は子供だけのもの、塾に対して義理立てする必要もないわけですし、我が子の合格にプラスになるなら何でもかまわない。そういう見方もできるでしょう。

ただし、塾選びの際に大いに参考となる合格実績には、こうしたカラクリも含まれていることは承知しておくべきでしょうね。

 

3.志望校に特化

こちらの塾の売り物は、6年生からはじまる「NN志望校別特訓」という講座です。最難関校の学校名を冠とした講座が設定され、志望校合格に向けて徹底的な対策をとるそうです。似たものに、サピックスで6年生後半から行われる「SS特訓」がありますね。こちらも志望校対策を行います。SSとはサンデーサピックスの略だそうですが、NNとは「何が何でも」の略だとか。ネーミングにも塾の社風が反映されていますね。

 

4.高校入試の実績は良い

もう一つ、中学入試ではないのですが、この塾は高校入試では圧倒的な実績を誇ります。サピックス中学部がパッとしないのとは対照的です。もしかして中学生にはこうしたスタイルが合うのかもしれません。さらに加えて、高校入試の塾は面の展開が有効ですので、その点でも早稲田アカデミーはすぐれています。

 

5.おすすめなのか?

私個人としては、熱血系は苦手です。気合や精神論では成績は上がらないと思っています。また、実績づくりのための生徒勧誘の営業にかける時間があれば、その分良い教材作りとか予習に使いたいと思うのです。あくまでも私見ですが。